天地を喰らう 三国志群雄伝
【てんちをくらう さんごくしぐんゆうでん】
ジャンル
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SLG
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対応機種
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スーパーファミコン
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メディア
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12MbitROMカートリッジ
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発売元
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カプコン
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発売日
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1995年8月11日
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定価
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12,800円(税抜)
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プレイ人数
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1人
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セーブデータ
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2個(バッテリーバックアップ)
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判定
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ゲームバランスが不安定
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ポイント
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戦争以外やる価値がない 強すぎる劉備軍 雰囲気は良い
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天地を喰らうシリーズリンク
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概要
天地を喰らうシリーズ唯一のスーパーファミコン作品。
内容は国取りSLGで、コーエーの『三國志シリーズ』とは全く違うシステムを採用している。
原作のように魔界やら魔物といったファンタジー要素はなく、純粋に人間同士の戦いで中国を統一するのが目的。
シナリオは「桃園の儀(195年)」「赤壁の戦い(208年)」「三国鼎立(214年)」の三種類。
コーエー版よりも簡略化されており、SLG初心者への敷居は低いが…。
システム
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難易度設定は「初」「普」「難」の3種類。
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「初」と「普」では全ての戦闘を自分が操作する。「難」は、近衛軍(君主が率いる軍団)以外の戦闘は自動となる。
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「初」だと、ある程度勢力を拡大した所でクリアとなる。それ以外は、全土統一でクリアとなる。
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戦略フェイズでは1年を4季節に分け、各君主がランダム順に行動を起こすという、国取りSLGによくあるシステムを採用。
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君主には勢力に応じて2~6の「行動力」が与えられ、それが0になるまでは1季節に何度も行動可能。
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軍団制が採用されており、君主以外にも軍団長と部下を編成して行動させることができる。
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移動や戦争は軍団単位で行われる。軍団は軍団長を含めて最大7人、1つの城につき3軍団まで駐屯できる。
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軍団長の「兵法」が高いほど戦争時の行動力が増える。また「国政」が高いほど民忠誠度が上がりやすくなる。
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君主を含む武将に官位を与えることができる。
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勢力が大きくなると、史実通り自ら「皇帝」を名乗ることも可能になる。また、太守(郡の長官)も設定できる。
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官位には武官と文官がある。武官は徴兵時に兵が多く集まり、文官は内政で有利になる。
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君主と同じ城に居る近衛軍と軍団長から「意見」を聞くことができる。
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武将には「猛将」や「智将」といった性格があり、それぞれ違った意見を出すことが多い。
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意見を保留にして別の武将に聞くこともできるが、その場合は他の者がその意見に「同調」し、自分の意見を言わなくなることがある。
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意見を採用した場合、通常の半分の行動力消費で行動することができる。
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武将ごとに戦闘時の特技を持っている。
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「一騎打ち」は、敵武将に一騎打ちを仕掛ける。相手が応じずに失敗することもある。武勇が高いほど有利。負けた側は士気が大幅に低下する。
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「弓術」は、敵武将に弓攻撃を仕掛ける。能力に関係なく必ず成功し、士気を低下させる。
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「謀計」は、敵武将か城壁に使用可能。智謀が高いほど有利。武将に使った場合は兵士数を、城壁に使った場合は耐久度を低下させる。
問題点
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プレイできる選択できる君主が少なく、マイナー君主プレイができない。
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「桃園の儀」シナリオでは7人の君主、「赤壁の戦い」では5人の君主、「三国鼎立」ではわずか3人の君主しか選べない。
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マイナー武将に顔グラフィックがない。また顔ありの武将も、原作と違う顔になっていたりする。
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ファミコン版ですら全武将に顔グラがあり、マイナー武将を集めるという楽しみ方もあったのに劣化している。
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敵武将のいない城も、いちいち戦争を仕掛けなければ自国領にできない。
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内政をする価値がない。
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「民政」をすることで民の忠誠度を上げられるが、忠誠度MAXでも反乱が発生することがある。限られた行動力を割いてまで上げる価値はない。
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「財政」をしても、せいぜい城壁の防御度が増えるだけ。しかも住民反乱が起きるとすぐボロボロになってしまう。
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「兵糧」をするとその城の兵糧が増えるが、兵糧が尽きる心配などまず無い。民忠誠度が下がることもある。
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戦略フェイズの行動力増加量は、国の豊かさではなく領土の広さで決まる。
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つまり領土がボロボロだろうと反乱が起ころうと何の問題もないので、内政するくらいならガンガン戦争して領土を広げるべきである。
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外交もする価値がない。
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外交で他国との友好度を上げると同盟を組めることがある。言い換えると、同盟を任意で行えない。
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さらに同盟は君主同士ではなく城同士で行われるため、同盟と言うより両城間の街路封鎖とでも言ったほうが正しい。
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全土統一のためには同盟する必要はもちろんない。というか同盟したら街路封鎖されて全土統一が遠のく。
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武将が死にやすすぎる。
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戦争で敗北して捕まった武将は敵の配下になるか死亡するかのどちらかで、選択の余地はない。このため「強力な敵将を配下にしようとしたら死亡してしまった」という事故が頻発する。
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敗走させずに決着がついた場合もなぜか戦死するので、倒さずに残しておくという作戦も通用しない。
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勝利側の武将も、戦場で敗走した場合は死亡することがある。
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幸い城に武将が居なくても空白国にならず自国領のままとなるので、武将の数が足りずに詰むということはない。
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原作主人公である劉備率いる蜀の武将が強すぎる。
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五虎将軍のうち4人(関羽・張飛・趙雲・馬超)の武勇が13以上なのに対し、他の武将(君主除く)は全部11以下という極端なバランス。
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このゲームは武勇の差が大きいと一兵も失わずに攻撃ができるので、関羽と張飛が最初から居る劉備軍は並みの相手なら兵力を減らすことなく勝利でき、連戦しても一向に疲弊しないというチート級の強さを誇る。
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逆に、敵役だった曹操の配下武将が弱すぎる。夏侯惇や許チョといった勇猛武将ですら武勇9しかない。
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他勢力から魏に降った張遼や顔良は武勇10以上ある。どうやら魏出身というだけでマイナス補正がかかるらしい。
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呉をはじめとする他の勢力にも武勇10以上の武将がいるが、劉備軍に比べるとパッとしない。
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前述通り、新たな武将を配下にしようにも死亡してしまうことが多いので、戦力増強はかなり難しい。
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さらに、シナリオ3になるとこのゲームで最高の智謀を持つ「諸葛亮」も劉備軍に加わっているため、ますます無双状態に…。諸葛亮を軍団長にすると戦争時の行動力がとにかく凄まじく、先述の武将達で攻めればそれこそあっという間に城は落ちる。他の勢力でプレイした場合、これに対抗するのは至難。
賛否両論点
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意見採用コマンドシステムが特徴的。行動力の低い序盤は特に役に立つ。
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積極派の張飛、慎重派の孫乾、状況を考慮する関羽など、個性豊かな部下の性格をうまく生かせている。
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しかしゲームで役立つのはせいぜい戦争の進言だけなので、ほぼ猛将の意見しか聞く価値がない。
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ゲーム後半になると無意味な提案が多くなる。ボロボロの城開発をしたいのはわかるが、何の意味もないのでは…。
評価点
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良く練られた戦闘方式。
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戦闘時のマップは、この時代にしては珍しい上空からの見降ろし型で、迫力がある。
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戦場は四角ヘクス制だが、斜め方向にも移動や攻撃が可能。強敵には2~3人の武将で連係して当たるといった進軍を行いやすい。
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戦場では各部隊に敷くべき陣形を指示する。
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移動力に優れる「移動の陣」、戦闘力に優れる「攻撃の陣」、3マス先まで探索できる「探索の陣」がある。
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敵武将は隣接するか、探索部隊が3マスまで近付かないと見えない。これは敵軍も同じで、探索部隊から先に倒すなどして敵の視界外に出れば、敵の統率が乱れる。
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士気の概念があり、兵士数か士気が0になった武将は敗走する。戦争中に士気を回復する方法はない。
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兵士数が多い武将も、策略や集中攻撃で士気を下げれば簡単に倒せる。
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「攻撃の陣」を敷いていない武将が戦闘すると大幅に士気が下がる。強い武将を奇襲で壊滅させたりできると爽快。
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攻撃を仕掛けた側も士気が下がるため、一人の武将だけ強くても一騎当千の活躍はできない。
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各武将には3ポイントの行動力が与えられ、ターン中に3ポイントまでなら複数の行動が可能。
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「移動の陣」で3マス動いたり、1マス移動してから攻撃(2ポイント消費)もできる。
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軍団長の「兵法」の数値によって1ターンに1回ボーナスポイントが与えられ、特定の武将をボーナスポイント分余計に行動させることができる。もちろん敵も同じ。
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「偵察部隊を先行させる」「攻撃の陣のまま移動して攻撃」「弓を撃ってから味方の後ろに退避」など非常に応用が効く。
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近付いて探索しないと見えない敵、策略を用いなければ突破しにくい強固な城門など頭を使う場面もあり、強敵と戦う手ごたえを感じられる。
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その分、空っぽの城を攻めるのが単なる作業になるのは残念なところ。
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シリーズ伝統の評価が高いBGM。
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勢力を拡大するごとに戦略フェイズ時のBGMが壮大なものに変わっていき、辺境君主から戦国の雄への成長が実感できる。
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このゲームにはスタッフロールがなく、作曲者は不明だったが、コンポーザーの浅川政夫氏がかつて自身のWebサイトでサウンド担当だったことを公表していた(リンク)。
総評
戦闘に限れば出来は良いが、他はまるでダメと言いきってしまえるほどバランスの悪いゲーム。
国取りSLGのくせに内政する必要がなく、とにかく戦争ばかりのゲームである。このノリはむしろアクションゲームであるアーケード版に近い。
各勢力間のバランスも悪い。最初に劉備を選ぶか他を選ぶかで難易度が天地の差というのはさすがにやりすぎである。
しかし、部下の意見を聞きながら進めてみたり、お気に入りの武将に官位を与えてみたりでき、三国志の雰囲気だけならそれなりに味わうことができる。
使う価値は低いものの内政や外交という要素もあるので、SLGに触れたこともない初心者の入門ゲーとしてはむしろ丁度いいかもしれない。
定価12,800円という強気な価格設定だが、今は捨て値に近い価格で手に入る。三国志好きな人はネタで買ってみる?
余談
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tacticsのブランド設立などで知られるYET11氏によると、本作の前に未発売となった同機種同タイトルが存在したようである。(リンク)おそらくこちらもSLGとして作られていたと思われる。
最終更新:2024年07月12日 16:37