ケイデンス・オブ・ハイラル: クリプト・オブ・ネクロダンサー feat. ゼルダの伝説
【けいでんす・おぶ・はいらる: くりぷと・おぶ・ねくろだんさー ふぃーちゃりんぐ. ぜるだのでんせつ】
ジャンル
|
ローグライクリズムゲーム
|

|
対応機種
|
Nintendo Switch
|
発売元
|
スパイク・チュンソフト
|
開発元
|
Brace Yourself Games
|
発売日
|
ダウンロード版:2019年6月13日 パッケージ版:2020年10月23日
|
定価
|
ダウンロード版:2,980円(税10%込) パッケージ版:4,780円(税10%込)
|
DLC
|
シーズンパス:1,800円(税10%込) 新たなる挑戦者たち:600円(税10%込) リミックスメロディパック:600円(税10%込) 仮面交響曲:1,000円(税10%込)
|
レーティング
|
CERO:B(12才以上対象)
|
判定
|
良作
|
ポイント
|
まさかのコラボ 良作だがゼルダファンは少々不満があるかもしれない
|
備考
|
パッケージ版にはすべてのDLC(2,200円相当)が含まれる
|
ゼルダの伝説シリーズ
|
ネクロダンサーシリーズ CotND / CoH
|
概要
ローグライクとリズムゲームの組み合わせが話題を呼んだインディーゲーム『クリプト・オブ・ネクロダンサー』と説明不要のアクションアドベンチャー『ゼルダの伝説』のコラボ作品。
元々『ネクロダンサー』側のスタッフが同作のDLCとして『ゼルダ』のキャラを使えないかと任天堂に打診したところ、任天堂社員内において同作が高い評価を得ており、むしろ単独タイトルとして発売しないかとの話を持ち掛けられたとのことで実現したコラボ作品である。(参考リンク 4Gamer.net)
その結果生まれた本作だが、中身の方はというと下記の通り『ネクロダンサー』をベースにしつつ随所に『ゼルダ』要素が盛り込まれているのが特徴となっている。
当初はダウンロード専売だったが、2020年10月23日にパッケージ版が発売された。
ストーリー
「ハイラル王国」にやって来た旅人の「オクターヴォ」が、神の力「トライフォース」を宿した「黄金のリュート」の奏でる音楽の力で国王を眠らせ、王国を支配してしまう。
力の均衡を取り戻すべく、トライフォースが異世界(クリプト)から戦士「ケイデンス」を召還。
トライフォースの勇者「リンク」、王国の姫「ゼルダ」と共に、オクターヴォの野望を阻止するための、冒険の旅に出るのだった。
(公式サイトより)
特徴
-
ゲームルールは『ネクロダンサー』同様、
ビートに合わせて動いて攻撃するローグライクゲーム
となっている。
-
ただしロビーを拠点にして各ダンジョンに潜っていくスタイルではなくなり、広い画面切り替え型フィールドを探索する『初代』~『神トラ』のような2Dゼルダ風のゲームとなっている。
-
また、ビートに合わせるのが難しいプレイヤーに向けて「ノービート」モードも実装されており、同モードにしておけばビートに合わせなくても自由に動けるようになる。
-
各モードのクリア成績等はビート・ノービートでそれぞれ別に記録される。
-
マップはゲームスタート時に自動生成され、大まかな法則自体はあるが、配置は毎回異なる物となる。
-
操作キャラは基本的にリンク・ゼルダ・ケイデンスの三人(+隠しキャラ1名)から選択。
-
最初はチュートリアルマップをケイデンスでプレイした後に、リンク・ゼルダのどちらかを選んでプレイすることになる。選ばれなかったキャラ及びケイデンスはサブイベントを攻略すれば加入する。
-
操作キャラはそれぞれ装備できる武器や固有能力が異なる。各地に存在するワープ地点となるシーカーストーンに接触することで、操作キャラの切り替えが可能。
-
2Pプレイにも対応。それぞれ違うキャラを操作して遊ぶことになる。
-
基本的なゲームの流れは「ハイラル各地を冒険しダンジョンを攻略→最奥にいるボスを撃破→4体のボスを撃破できればハイラル城に入りラストダンジョンへ挑む」という形になる。
-
各地にはボスのいないミニダンジョンも点在する。最奥の宝箱には冒険で役立つアイテムが隠されている。
-
ボスの攻略に至るまでのストーリーイベントで入手するアイテムは固定となっているが、ミニダンジョン及び中のアイテムがどこに配置されるかはマップ同様ランダムに決定される。
-
道中敵にやられてしまった場合、それまで入手したルピーとダンジョンの鍵、装備品が消失する。
-
代わりに救済ポイントとして、ダイヤを消費して買い物する特殊ショップに行ける(ダイヤだけはたおれても消失しない)。ダイヤを持っていない場合、1コ無料でショップからもらえるので安心。
-
通常モードの他、毎日違う世界に挑戦できるデイリーチャレンジと、高難易度モードであるハードコアモード、各モードのキャラクター固定モード、そして大きなダンジョンをひたすら突き進むネクロダンサーらしいダンジョンモードで遊べる。
-
DLC「仮面交響曲」を購入している場合はパズルモード、アリーナモードが追加される。パズルモードはひたすら謎解きパズルをしたい方に、アリーナでは敵を一掃してどれだけのフロアにたどり着けるかを試したい方にオススメ。
評価点
-
『ネクロダンサー』特有の「ビートに合わせて攻略する面白さ」については本作でも健在である。
-
短時間でどう動くかを考えねばならず判断力も要求される難しさはあるが、
うまくリズムにノッて魔物の群れをいなしたときの悦びと達成感もまたひとしお。
-
また、オプションからコントローラー振動をオンにすることもでき、これによりビートに合わせやすくなっている。
-
良質なドットグラフィック
-
グラフィックは『ゼルダ』の世界観に合わせて本作用に全て一から打ち直されている。
-
『ネクロダンサー』は(海外発ということもあり)洋ゲー感あふれるビジュアルだったが、本作ではキャラクター・背景双方がちゃんと本家ゼルダらしい物となっている。
-
製作の上では特に『神トラ』とGBA『ふしぎのぼうし』を意識したとのこと。同作を遊んだユーザーならばあちこちの類似点を感じられる楽しみもある。
-
と同時に、今回初めてドット絵になる敵キャラや、本作の世界観に合わせてリデザインされた敵もいるため、シリーズファンならば一見の価値があると言える。ダイラやタロスといった懐かしいメンツも勢ぞろい。
-
ザコ敵の代表格ともいえるボコブリンやスタルフォス、
強敵として有名なライネル
など、敵キャラの見た目も非常に可愛く、しかもそれがビートにあわせてノリノリで動くものだから実に見てて飽きない。
ちなみに、みんなのトラウマとして印象深いアンデッドのギブドとリーデットも参戦しているが、
彼らのグラフィックもある意味必見である。
-
ボスキャラは「楽器」をデザインと名前に取り込んだユニークなものとなっている(たとえばゼルダでおなじみの甲殻獣ゴーマはマラカスを握った「ゴーマラカス」になっていたり)。
-
「ダニー・バラナウスキー」氏によるBGMの出来も素晴らしい。
-
いずれも歴代ゼルダ作品から選曲されているアレンジBGMとなっている。『ゼルダ』の楽曲はテンポの早い楽曲も多いが、いずれも本作のゲーム性に合わせたアレンジがなされている。
-
選曲は全体的に『神トラ』と『時オカ』のメジャーな楽曲が多い
ものの、複数の楽曲を組み合わせたメドレー方式だったり、異なるシリーズ作の楽曲をワンフレーズ織り交ぜたりと、シリーズファンならば「おっ!」‥と来る曲に仕上がっている。
-
画面内の敵を全て倒すことでビートモードが解除され自由に動くことができる。
-
オリジナル版からの改良点で、敵がいない時も一々ビートに合わせて歩かなければならない‥という縛りがなくなったことで自由に進めるようになり、ゲームテンポが向上。
-
今作では『ネクロダンサー』と違い、フィールドやダンジョンBGMもループ式となる。また通常時、戦闘時、ポーズ時とで曲調も異なり、1つのフィールドBGMで3つのアレンジを楽しめるというボリュームの大きさも見事である。
賛否両論点
-
難易度はオリジナルの『ネクロダンサー』からかなり極端なバランスとなった。
-
追加された武装・アイテムにはかなり強力な物があり、それを使いまくればクリアがかなり簡単になる。
-
本家ゼルダ同様ハートの器・かけらを取ることで体力の最大値をあげられるシステムとなっている。
これ自体は『ゼルダ』ではお馴染みだが、本作は『ネクロダンサー』よりもハートを増やしやすく、自由な進行ルートで進める都合上「ゲームが進むにつれ強力な敵や罠が配置されている」ということが出来ないために一定値以上のハートがあれば戦略性を廃した体力にモノを言わせるゴリ押しが通用してしまう。
-
ゴリ押しをしない場合であっても、特定のアイテム入手後はいつでもメニュー画面からフィールド内のシーカーストーンの前にワープが行えるため「ヤバくなったら安全地帯に脱出」という方法を繰り返すことで、あっさりとノーミスクリアが出来てしまう。
-
さらに『ネクロダンサー』には行動に強烈すぎる制約のついたプレーヤーキャラが複数名存在したが、本作はメイン3人ともこれといった大きな縛りはなく、繰り返し遊ぶ上での歯ごたえに少々欠けるという意見もある。
-
一応強烈な制約のついた隠しキャラも用意はされてるが、各種アイテムを使用できるという抜け道もあるため自分で縛らない限りはクリア自体はある程度ゲームに慣れている人なら出来なくもない難易度。
-
とは言え『ネクロダンサー』のプレイ経験がないプレイヤーやゼルダファンが手に取ることを考えれば、これらは妥当な調整ともいえる。
-
ハートの器・かけらに関してもゴリ押しできる程度に溜めるためには各地を探索したりミニゲームを攻略して収集する必要があるため、タイムアタックをする場合には安定を取るか時間を取るかという選択肢も生まれている。
-
BGM以外の双方の要素があまりうまく噛み合わさっていない印象も若干見受けられる。
-
『ネクロダンサー』の面白さと言えば咄嗟の判断や短いマップをノンストップながら気軽に遊べることだが、これに対し「じっくり謎を解き各地のアイテムを収集して行動範囲を広げていく」という『ゼルダ』の遊びにはあまり合致しているように思えない‥という意見もある。
-
『ゼルダ』でよくあるダンジョンごとの特色ある謎解きが少なく、特にボスダンジョンでは基本的にひたすらビートに合わせて敵との戦闘を繰り返して進むことになる。
-
これは重要なアイテムの配置もランダムになっているためシリーズお約束の「直前に入手したアイテムを使った謎解き」が出来ないのも原因ではある。
-
また、『ネクロダンサー』同様繰り返しプレイでのプレイヤー自身の腕前の上達の実感やスコアアタックがメインとなるストイックなゲームに仕上がっているため、『ゼルダ』のストーリーやキャラクター・背景設定そのものなどを楽しむライト層から見ると物足りなく見えてしまうかもしれない。
-
上述した通りゼルダファンなら喜べるポイント自体はいくつかあるのだが、それ以外にシリーズ作として見た場合に珍しい部分と言えば「国内でも発売される2Dゼルダとしては初めてゼルダ姫を操作できる」ことと
「ある人物が(顔は見えないが)意外な年恰好で登場する」ぐらいであり、総じてゼルダファンが喜びそうな部分自体が皆無ではないが、ファンの期待値以上+αに相当するだけのネタが入ってはいないと言える。
-
特定の地形が生成された場合に限り、条件を満たさずにハイラル城内に侵入・没アイテムと思しき隠し装備を入手できてしまうことがあった。
-
公式がタイムアタックを遊び方の一つとして想定しているゲームで、このような地形の良し悪しでタイムが大きく左右されてしまう事に対してはユーザー間で裏技じみてて面白いという意見もあれば、運要素が大きすぎるという意見もあった。
-
この他仕様かバグか曖昧になっていた敵の攻撃やアイテムを利用したショートカット共々スタッフとしては想定外の進行ルートだったためか、アップデートでいずれも修正され、現在は全て不可能になっている。
-
アプデ前のverのなんでもあり感を好んでいたユーザーからは不評だが、客観的に見てアプデ後の方がフェアなゲームとなっているため一概に問題点とは言えない。
問題点
-
練習モードがない。
-
ネクロダンサーでは一度戦った敵やボスキャラといつでも一対一で戦う特訓モードがあるのだが、残念ながら今作にはそれがない。
-
このため初見の敵の動きは実際に戦って覚えていくしか無い。
-
変則的行動パターンを持つ敵が多い。
-
ネクロダンサーの敵キャラは強敵揃いだが、行動ルーチンが比較的単純であり慣れれば対処しやすい部類でもある。
-
一方で今作ではホワイトダイラ、ドボンゴ、オブロック、ヒノックス、タートナック、アイアンナックライダーなど、パターンがつかみにくい強敵が多い。
-
弓矢やヤリといった遠距離攻撃など強力な攻撃手段であればそれらも倒しやすいが、裏を返せば
それらのアイテムに頼らねば太刀打ちすることすら困難
となっており、難易度バランスの大味さに拍車をかけてしまっている。
-
ダンジョンは全体的に窮屈になってしまった。
-
『ネクロダンサー』にはなかった落とし穴、トラップドア、深い水やマグマが追加されたことで、1部屋1部屋を安全に歩けるスペースがかなり狭い。
-
上述したように今作は正面切って戦いにくい難敵も多く、あっという間にカベに追い詰められたり落とし穴に落とされてしまうなど理不尽に感じることも増えている。
-
ハートを増やしてのゴリ押しがきくキャラならまだしも、ハートを増やせない(しかもハート1個~半分しかない)イヴとアリアに関しては尚更凶悪な難易度となっている。
-
内容がかなり短い。
-
初見プレイでも数時間でクリア出来てしまい、値段を考えても若干の物足りなさが有る。
-
ニューゲームを始める度に世界が丸ごと生成されるのでリプレイ性はそれなりに高いが、一般的なローグライクのように運次第で大きく展開が変わるということはない。
-
一周が長い。
-
上記の問題点と反するように見えるかもしれないが、『ネクロダンサー』は短いステージをいかに早く進むか、短距離走的な面白さがあった。
-
一方、本作はデイリーチャレンジ・ハードコアモードを行う上でクリアするまでの気の抜けない時間がしばらく続く。このため同作の評価点だった「難しいがお気楽に遊べる」ポイントが無くなってしまっている。
-
ほこらの効果の説明文がなくなっている。
-
ダンジョンに点在し、起動することでフロアの落とし穴が水辺になったり、装備品をすべてガラスにするなどの効果が起こるが、今作では『ネクロダンサー』と違ってその説明文がないため、初見では何が起こるかわからずかえって混乱を招く。
-
DLC「メロディパック」のリミックスにボス戦と別DLC「仮面舞踏会」で追加されるダンジョンのBGMが入っていない
-
DLCを購入することでネクロダンサーでもアレンジを担当したA_Rival、Chipzel、FamilyJulesにより今作のBGMのリミックスを楽しめる。
-
しかしネクロダンサーと異なりボスキャラのアレンジが入っておらず、この点はファンからすると少々歯痒い。
-
また「仮面交響曲」の新ダンジョンのBGMもリミックスがないのも残念。
総評
原作である『ネクロダンサー』自体が評価の高い作品であり、システムも概ね同作に近いものであるためこちらも安定した評価を獲得している。
『ネクロダンサー』未プレイ者への入門編的な側面があり、ゼルダシリーズを触ったことがなくても安心して遊ぶことができるので、原作に興味がある人はこちらから先に遊んでみてもいいかもしれない。
原作未プレイのゼルダファンから見た場合、原作自体が「面白いが人を選ぶ」タイプのゲームであるため、肌に合うかどうかは情報だけでは判断し難い。
現在は体験版も公開されているため、まずはそちらをプレイして判断材料にするとよいだろう。
余談
-
『ネクロダンサー』ではリミックス含めたサウンドトラックが別途発売されているが、こちらでは未だにサントラが未発売。
最終更新:2024年03月13日 09:25