羽生名人のおもしろ将棋

【はぶめいじんのおもしろしょうぎ】

ジャンル 将棋
対応機種 スーパーファミコン
発売元 トミー
開発元 アクセス
発売日 1995年3月31日
定価 12,000円
判定 なし
ポイント (社)日本将棋連盟推薦
初心者お断り
名局の豪華詰め合わせ
変則ルールでCPUと勝負


概要

プロ棋士監修のSFC将棋の第5弾。
監修は、当時6冠を保持し非常に知名度が高かった羽生名人。本作は彼の将棋ゲームの第一弾でもある。日本将棋連盟推薦。
羽生名人の多くの名局が解説付で鑑賞できる。更に、CPUとの通常対局の他に、変則ルールを盛り込んだおもしろ将棋も用意されている。

特徴

将棋対局

  • AIと対局が出来る。
    • AIの強さは「入門」「初級」「中級」「上級」の4つから選べる。
    • オプションは色々とあり、先手後手は勿論、振り駒で選ぶ事も可能。
      • 駒落ちも角落、飛車落、二枚落が選べるがプレイヤーに課せられるのみで厳しい。
    • 持ち時間も色々と選べる。TVモードでは持ち時間15分、1手30秒、考慮時間1分が10回のNHK杯仕様*1。COMの方は無制限だがこちらの方も無制限に出来るので対等と言える。
  • 隠し要素は一切なく最初から全ての要素を選ぶ事が出来る。なお、バッテリーバックアップは対局の記録に使われる。

おもしろ将棋

  • 衝立将棋
    • 相手の駒が全く表示されず、動いている間のみ駒の姿が見えるという変則将棋。ゲーム性の都合上AI戦のみ。
      • 相手の駒の位置の暗記が要求され、当然だが難易度が非常に高い。AIがただでさえ強いとなればなおさらである。
      • 要するに目隠し将棋であり、常人には太刀打ちできないが、プロ棋士のような棋力の非常に高い者にとっては手ごたえがある。当時のSFCの(プロやトップアマ水準では)不十分なAIの棋力を厳しい条件によって補ったモードとも考えることができる。
    • 実際の「ついたて将棋」は、相手の駒が全く見えない状態で、「駒取り」「反則(不可能な駒の移動先)」「王手」の情報だけで遊ぶ変則将棋。本作のものとはやや異なる。
  • 地雷将棋
    • 対局前に自陣に地雷を3つセットする。その地点に駒を移動させたり打ったりすると無条件で相手に取られ手番も回る。ただし駒を取っている際は手駒に入る。
      • ゲームの仕様上、待ったは出来ないようになっている。
  • 将棋大戦略
    • 対局前に自陣の四段目以内に好きなように配置できるモード。王は盤上にいる必要があるが、他の駒は好きな場所に配置しても持ち駒にする事も自由。
  • お面将棋
    • こちらも通常対局に悪条件を複合。成り駒がお面で表示され判別が難しくなるというもの。これを楽と言えないようでは衝立将棋に挑むのは夢のまた夢と言える。
    • 衝立将棋と違い、プレイヤー同士の対局も可能である。

名勝負回顧録

  • 昭和61年から平成5年までの22局の名局を解説付きで見る事が出来る。羽生名人の要素が最も集約したモードと言える。
    • 羽生名人は1年以上前に『将棋名鑑'92と'93』も監修されており、その仕様を実装したと思われる。
      • 4択ではなく3択になり盤面が文章で一部隠れてしまってたりするので不便なところがあるものの、操作性がかなり良くなっていたり、文章量も豊富で更には変化図まで実演するなど更に充実している。
    • 対局相手は、宮田利男、中村修、森内俊之、大山康晴、森下卓、加藤一二三、村山聖、中原誠、米長邦夫、島朗、小林健二、森雞二、南芳一、大内延介、福崎文吾、佐藤康光、内藤國雄、谷川浩司、高橋道雄、郷田真隆、有吉道夫、塚田泰明とトップ棋士達が揃う。

対局時計

  • チェスクロックとして使う事が出来る。振り駒機能もあり。

対局再開

  • 他のモードで中断した対局を再開。

評価点

  • 名勝負回顧録
    • 棋譜はボタン押し続けで進行、巻き戻す事も可能で快適。読み上げもOFFにできテンポ良く進行。
    • 要所では羽生名人の顔グラがアニメーションをしながら解説をしてくれて非常に充実している。当時の話や心得まで教えてくれるので分かり易くて為になる。ファンなら一度は目を通されたし。
    • 時に、次の一手が出題される。名人が指した手を当てるのは難しいが選択肢が3択用意されており外してもペナルティはないようになっている。外した際も丁寧に解説が用意されており変化図を交えながらどういう風に形勢を損ねるのか示してくれたあとに本譜に戻る。
    • 伝説の5二銀も登場、ファンならどの名局かお分かり頂けよう。
  • 演出の良さ
    • オープニングでは実写の対局姿の羽生名人が「王手」の声と共に出迎えてくれる。トミーが手掛けているだけあって全体的に構成が良く、音声読み上げ、文章時フォントに羽生名人のアニメ調の顔グラなど高品質である。
    • 作中でも監修が行き届いており、AIの対局の際の持ち時間ではNHK杯仕様が採用されている。
  • AIの棋力はSFC将棋の中でも強い部類にあたる。
    • 入門からして14級・レーティング200*2はある。時間をかけて深く読んでくるだけあってSFC将棋の中でも上位の強さであり、パックマン戦法も効かない。

賛否両論点

  • 初心者お断り
    • そもそもAIがかなり強く設定されている上、「おもしろ」要素である変則将棋もプレイヤー有利のものが無い。
      • ゲーム全体で高難易度であり、将棋上級者向けの設定と考えれば無理は無い。

問題点

  • パッケージ詐欺
    • 『おもしろ将棋』というタイトルに加え、白基調のパッケージ、裏のゲーム画面にはアニメ調の羽生名人が登場している。
      • これらにより、初心者には気軽に楽しめる、上級者には大したことが無いという真逆の印象を与えてしまった。実際にプレーしてから難易度のギャップに驚愕したプレーヤーも多数。
  • AIの長考
    • 強いがその分だけ時間もかけてくる。1局あたり1~2時間はかかる見通し。本作に限った話ではないのだがやはり棋力を上げるには考慮時間が長くなってしまうところである。
  • ゲームをクリアしても何も起こらない。
  • 駒落ち
    • 落とすのはプレイヤー側のみでAIは落としてくれない。本作には前述した衝立将棋のように盤面の駒を見えづらくするような厳しいモードがあるので尚更AI側に駒を落として欲しかったという需要があった。
  • 選択画面の表記
    • モードによっては選べなくなる機能があるが、選べない機能についてはその文字を灰色にしておくなどがあれば分かり易かった。
  • 操作性
    • 駒台にカーソルを合わせようとすると違う項目に合わさってしまい、そこから駒台に移るのが僅かに面倒。

総評

おもしろ将棋という楽しそうな題名とは裏腹に、実際には上級者向けの要素が多くプレーヤーにとって厳しいものばかり。特に衝立将棋はSFC最難関とされておりおそろし将棋としても知られている。初心者は本作よりも将棋セットと書籍の購入が良いだろう。
おもしろ将棋に羽生名人の要素はないものの、回顧録の名局が非常に充実しており、羽生名人のファンで高度な棋力を有するというのなら本作は選択肢に入ると言えよう。

余談

  • 羽生名人は丁度8週間後に発売される『早指し二段 森田将棋2』の署名もされている。本作の衝立将棋を乗り越えたプレーヤーなら挑戦権はあるだろう。
    • 後にアトラスから発売された『プロ棋士人生シミュレーション 将棋の花道』でもモデルとなっており作中で6タイトルを保持しているという設定である。
    • 後に『最強羽生将棋(N64)』『羽生善治 将棋で鍛える「決断力」DS』も発売されている。
  • 羽生名人は翌年の1996年に初の全7タイトル制覇を達成した。

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SFC 1995年 将棋
最終更新:2023年05月31日 20:20

*1 当時。現在は持ち時間10分

*2 居飛車、穴熊といった陣形をスムーズに組んでくるレベル、しかも終盤はAI特有の強さを発揮。駒の動きを覚えた程度ではまず勝てない。