LAST RESORT
【らすとりぞーと】
ジャンル
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シューティング
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対応機種
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アーケード(MVS)
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発売・開発元
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SNK
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稼働開始日
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1992年3月23日
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プレイ人数
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1~2人(同時プレイ可)
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配信
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バーチャルコンソール 【Wii】2011年3月29日 926ポイント アケアカNEOGEO 【PS4/One】2017年5月2日 838円(税込) 【Switch】2017年6月1日 838円(税込)
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レーティング
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CERO:A(全年齢対象)
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判定
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良作
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概要
SNKより発売された横スクロールSTG。
重厚なグラフィックとサウンド、そして、『R-TYPE』の影響を強く受けた作風・システムが特徴の作品。
アイレムの元スタッフが開発に関わっており、『R-TYPE』とは様々な点で共通または類似している要素が多いことで有名。
ストーリー
西暦2XX0年、総人口は900億を突破。しかも、激しい大気汚染と化石燃料の長年に亘る消費により砂漠化が進行、すでに緑の地球は過去のものとなっていた。人類は本格的に宇宙移民を開始。ここに宇宙新世紀を宣言する。
スペースコロニー(宇宙植民地)へと脱出した人類により、銀河系内の惑星にも次々と恒久都市が築かれてゆく。科学文明により"新たな大地"宇宙を征服した人類は、再び急ピッチで繁栄を始めたのだが。
"SOS! SOS! …"
突如、全コロニーの中枢を司るマザーコントローラーが緊急信号をキャッチ。第3コロニー内メインコンピュータに自然発生したコンピュータウイルスに意志が芽生え、人類除去を開始したのだ。同じ目的をインプットされた機械生命体があらゆるコロニーへと向かう。
かつてのスペースヒーローたちも次々と敗れ去り、ウイルスにより機械生命体となってゆく。薄れ行く意識の中、正義の心が宇宙で叫ぶ。
"SOS! SOS! …"
最後の作戦「ラストリゾート」。今、緊急発令!
※Wii VC版紹介ページより
特徴
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全5面2周エンドの戻り復活方式。2人同時プレイの場合は、その場復活方式。
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初期状態の自機の武器は単発ショットのみ。
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ユニット
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ショットアイテムを1個でも取得すると自機に装備される、球体の補助兵器。
決して破壊されず、接触した敵にダメージを与え、敵弾を消去できる。
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自機が移動すると、ユニットは自機の周囲を回りつつ、反対側へ移動する性質を持つ。ボタン操作でユニットの位置を固定可能。再度ボタンを押すと固定解除。
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ユニットには砲門が付いており、ショットに連動して援護射撃する。砲門は自機が移動した方向の反対側を向くように動き、固定は不可。
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ユニットシュート
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ショットボタンを押し続けるとチャージが開始され、離すとユニットを射出する。
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チャージ中は画面下のゲージが溜まっていき、溜まった量が多いほど威力と貫通力が向上する。
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射出方向は、ユニットを装備していた位置によって決まる。前方のみならず、上下や後方に撃つことも可能。
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射出されたユニットは「画面外へ飛ぶ」「高耐久の敵に命中する」「射出から一定時間経過」などにより自機の所へ戻っていく。
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ショットアイテム(下記)を取得した時の色で、シュート時のユニットの挙動が変化する。
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グランドユニット(赤):地形に当たると地形を沿うように動く。
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リターンユニット(青):地形に当たると反射する。
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ショットアイテム
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特定の敵を破壊すると出現するパワーアップアイテム。L,H,Gのいずれかが表記され、一定周期でアイテムの色が赤と青に切り替わる。
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1個目はユニット装備だけだが、2個目(1段階目)からは取得時の種類に応じたショットを撃てるようになり、4個目(3段階目)で最強状態となる。
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各ショットは自機から発射されるため、ユニットシュート中でも撃つことが可能。
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レーザー(L):直線状レーザーとリング状レーザーを撃つ。直線状レーザーは敵や地形を貫通する。リング状レーザーは2段階目から付加され、3段階目で大きくなる。
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ホーミング(H):パワーアップに応じて、一度に最大6発発射されるミサイル。ミサイルは前方に進みながら前方の敵にのみ誘導する。
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グレネード(G):上下に発射され、敵や地形に当たると爆発する爆弾。パワーアップすると連爆の数が増え、威力や爆発の進む範囲が強化される。
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スピードアイテム
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自機はスピードアイテムを取得することで3段階のスピード調節ができる。
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Sアイテムではスピードが上がり、逆Sアイテムではスピードが下がる。
評価点
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綿密かつ美しいグラフィック
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本作をプレイしてまず目を引く要素。全編通してキャラクターや背景など、あらゆるものがきめ細やかに描かれている。
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メカの描き込みに関しては一切の妥協がなく、中でもボスのデザインや、動力部の描写に至っては職人芸の領域。複数のパーツが独立して滑らかに稼働する演出もあり、その動きは有機的。「機械生命体」という設定が上手く表現されている。
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キャラクターには全体的に影の描写が多用されているのが特徴で、大型のキャラクターほどそれが分かりやすい。このため、立体的に見えるだけでなく、本作の重厚な作風の強調にも役立っている。
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背景描写もキャラクターに負けないほど秀逸。特に1面の都市は非常に芸術的で、イメージイラストやエンディングにも用いられていることから、本作を象徴する場面と言って良いほど。
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一部の敵を倒すと、中に乗っていたパイロットが落下する。演出としてはやや過剰なおふざけ要素ではあるが、大量の敵を破壊してボロボロと多くの人が落ちていく様はある意味爽快。
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作風と見事にマッチしたBGM
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機械や重金属をイメージしたような、重々しくドスの利いたメロディーが特徴。低音を多用したシンセサイザーや、力強いギター及びドラムサウンドが印象的。楽曲を担当しているのはSNKサウンドチームの山手安生氏と清水敏夫氏。
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暗い雰囲気を醸し出しているが決して地味ではなく、作品の世界観の表現に大きく貢献しており、聴き応えは十分にある。
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1面BGM「Jack to the Metro」は本作を代表するBGM。他と比べて派手な曲調かつ終始ノリが良いため、特に印象に残りやすい。前半に鳴り響く空襲警報のサイレンは、ステージの雰囲気によく似合っている。
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5面BGM「Don't Touch Me Baby」は、短いながらも激しいドラムイントロとサビまでの盛り上げ方が素晴らしく、最終ステージらしい緊迫感が漂う。
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エンディングBGM「The Sunset Sky Part II」は、本作の退廃的世界観を象徴するかのような、非常に哀愁漂う曲調。背景の赤い光で染まる都市が、曲名や曲調と合致している。
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ネームエントリーBGM「Flower Dancing」は他と打って変わって解放感に満ち溢れている。それでいて、本作の作風を壊していない曲構成が特徴。
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高い戦略性に加えて洗練された自機システム
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本作最大の特徴であるユニットの存在
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『R-TYPE』のフォースに相当するオプションであり、自機の攻撃力・防御力を大幅に強化してくれる高性能な兵器。これを如何に使いこなすかが攻略の上で最重要となる。
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オプションはこのユニット1つだけだが、その代わりに自機の全方位に配置及び攻撃ができる。敵がどこから襲ってきても対応可能で柔軟な運用が行える。
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ユニット操作はシンプルで、自機の移動とボタン1つで行える。「移動方向の反対側へ動く」「ボタン操作で固定や固定解除できる」ことを覚えれば、配置に関しては簡単に可能。
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ユニットはフォースのみならず、波動砲の役割を兼ねているのも特徴的。ユニットシュートは言わば「全方位に発射可能な波動砲」であり、様々な局面を打開するのに役立つ強力な攻撃手段となる。反面、無暗な運用は自機を長時間無防備にすることに繋がるため、使うタイミングをある程度考える必要がある。
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シュートに関して、小チャージと最大チャージどちらにも使い道がある。自機が最も高い攻撃力を発揮するのは「小チャージシュート連発しながら自機本体攻撃を加える」ことであり、これを用いることで高耐久の敵を素早く撃破できる。一方、弱点の露出時間の短さなどで攻撃の機会が限られる敵の場合は、正確に最大チャージシュートを叩き込んで高い瞬間火力を発揮することが求められる。
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3種類のパワーアップショットにはどれにも活躍できる場面が存在し、武器のバランス調整が上手く行われている。
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レーザーとホーミングは前方を中心に攻撃する武器のために汎用性が高く、趣味でどちらを選んでも問題ない性能。レーザーは貫通性能を活かせる4面ボス戦で役に立ち、ホーミングは軌道の関係で破壊可能弾を防御しやすいために2面ボスと相性が良い。
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グレネードは『R-TYPE』で言う黄レーザーこと対地レーザーの役割を担う上下特化攻撃。それ故に汎用性は高くないが、特筆すべきは爆弾の威力の高さ。ユニットシュート連発と合わせると驚異的な攻撃力を発揮する。また、2面後半の砲台地帯やラスボス戦などでは如何にも「グレネードを使え」と言わんばかりの敵配置となっており、武器の特性をフル活用できる。特にラスボス戦に関しては最終兵器となり得るほどの活躍振りを見せる。
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良好なゲームバランス
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ステージは自機のシステムを適切に活用しないと突破できないような複雑な地形、敵配置、トラップで構成されている。パターンゲームとして面白みのある、作業感を覚えさせないゲーム内容。
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アーケードSTGとしては簡単な部類に入り、初心者にもプレイしやすい。
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ユニットの存在により、全方位に対して溜め撃ちを含めた攻撃や防御ができることから、自機は攻撃面・防御面共に優秀。また、敵弾防御能力を有することで、高度な弾避け技術がなくてもプレイできる。
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ミス後の復活がしやすい。1個でもアイテムを取ればユニットが付くので、たとえパワーアップショットが撃てなくても十分な戦闘力を確保できる。
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ステージ構成に関して、『R-TYPE』ほど突破方法が分かりにくい場面はない。普通のプレイでは思いも付かない方法でしか攻略できない状況もないので、何度かプレイすれば自ずと攻略法を見つけられる調整がなされている。
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2周目はSTG初心者がクリアできるほど甘くはないが、それでも無理ゲーのような調整がされがちな2周目としてはクリアが現実的な難易度で収まっている。1周目をノーコンティニューでクリアできるほどのプレイヤーならば、やろうと思えばクリア可能と言える絶妙な調整。復活しやすいゲームバランスであることも大きい。
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『R-TYPE』のオマージュ
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ゲームデザインやシステムなどがよく似通っており、同作品のファンであればスムーズに受け入れられるゲーム内容。それでいてパクリにはなっておらず、差別化を図ろうとしていることが伝わるゲーム設計。
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この差別化は特にシステム面で表れている。フォースは前後にしか付けられない(その代わりにビットで上下の死角を補う)のに対し、こちらのユニットは全方位に配置できるなど。
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作風に関しても、機械的なキャラクターデザインを強調することで、生物的要素も強かった『R-TYPE』とは異なる世界観を作り上げている。
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明らかに『R-TYPE』を意識した敵キャラクターが登場する。
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アイテムキャリアーはほぼPOWアーマーそのもの。他には、パタパタ、キャンサー似の雑魚敵や、インスルーのような蛇型中ボスがいる。
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同作品で好評だった、超巨大敵キャラクターも存在する。3面では巨大潜水艦、5面では巨大宇宙戦艦と戦う。ただし、後者についてはグリーンインフェルノというより『サンダーフォースIII』のケルベロスに近い。
賛否両論点
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一部場面で発生する処理落ち
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敵や敵弾が多くなると処理落ちが起こる。2面後半の砲台地帯や3面ボス戦などが顕著。
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ただし、処理落ちする場面は大抵が難関であり、これによって攻略の手助けにもなっている。
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一方で連射ボタンを使用していると処理落ち中にユニットの固定/解除の反応が悪くなりやすいという弊害もある。
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復活が簡単な作品ではあるが、『R-TYPE』7面後半ほどではないとは言え、難関ポイントは存在する。
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3面ボス戦前では、高耐久かつ強力な攻撃をしてくる中ボスが行く手を阻むこと、ボス自体が本作最強の敵のために中盤の関門となっている。
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最終復活ポイントである5面ボス戦前は恐らく本作最難関箇所。
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その理由は、復活からしばらくの間はアイテムが出現せず、隕石群を貧弱なショット一つで突破しなければならないため。
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ここでは大量の隕石が降り注ぐ上に中型のやや倒しにくい雑魚が出現し、極め付けにキャンサー型雑魚が一斉に押し寄せて来る。
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隕石や他の敵の出現方法は完全に固定なのでランダム要素はなく、パターン化は可能である。ここの難しさはむしろ、「ショット連射用ボタンがないと長時間の連射で腕が疲れる」ことにある。
問題点
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癖のあるユニット固定
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ユニット固定は45°単位でしか行えない。その間の角度でユニット操作ボタンを押しても固定可能な角度に来るまでは固定されないので動き方を間違えると意図しない角度で固定されてしまいピンチに繋がる事も。
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前述の処理落ちも厄介さに輪を掛けている。一応音でボタンが反応しているかの判別は可能。
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使いにくいリターンユニット
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グランドユニットは「地表の敵を一掃する」非常に便利な機能を持つのに対し、こちらは単に反射するのみ。明後日の方向にユニットが飛んでいくと、無防備な時間を増やすだけなので、ほとんどメリットがない。
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上記特性故に使い所はほぼなく、本作で唯一の死に武器になっている。
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エンディングは2周クリアしないと見られない。
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1周クリアではメッセージが表示されるのみで、すぐ2周目に移行する。
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簡単と言っても2周目である以上誰でもクリアできる難易度ではない。まともにエンディングを見るには相応の腕前が必要となる。
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設計ミスレベルで不親切なネームエントリー
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文字入力受付時間があまりに短く、文字を探している間に時間切れになりやすい。しかも残り時間の表示がない。
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操作をしていないと勝手に中断される。また、全体で20秒も受付時間がなく、BGMを最後まで聴くことができない。
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ランク外の場合は僅か4秒ほどしかランキングが表示されない。
総評
『R-TYPE』を模倣したSTGは多く存在するが、その中でも特に評価が高く、「オマージュ」「リスペクト」という表現が似合う作品。
ユニークなシステムを取り入れたことに加えて、優れたグラフィックとサウンドも相俟って、完成度が高い作品になった。
STGとして目立った欠点もなく、低難度で遊びやすいために、初心者にも向いている。
本作が稼働した時期は格ゲーが流行り始めた時代である上、発売元のSNKが格ゲーで知名度を大きく上げたことから、ゲームセンターでは影の薄い存在になってしまった。
このため、シューターに好まれてプレイされた程度に留まっており、「知る人ぞ知る名作」「隠れた名作」という立ち位置にいるSTGである。
長らくアーケード以外ではプレイ困難な状況が続いていたが、VCやアケアカで配信されたことで、以前よりはプレイしやすくなっている。
移植
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ネオジオROM版(1992年4月24日発売)
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ネオジオCD版(1994年9月9日発売)
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『SNKアーケードクラシックス Vol.1』(PSP:2009年5月21日発売)
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バーチャルコンソール版(Wii:2011年3月29日発売)
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アケアカNEOGEO版(PS4/One:2017年5月2日, Switch:2017年6月1日)
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アケアカNEOGEO セレクション Vol.3(Switch:2025年4月10日)
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収録ソフトの一つ。上記アケアカNEOGEO版を収録。
余談
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本作に『R-TYPE』の元スタッフが関わったことは、『NEOGEO HEROES ~Ultimate Shooting~』の公式HP内の記事で言及されている。ただし、裏話を知らないと伝わらない、意図的にぼかした表現で記載された。
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自機の名称は1P機が「TZ-024」、2P機が「YS-024」。
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本作の開発スタッフはその後『KOF94』の開発にも参加している。
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SNKは本作の発売から3年後、再び『R-TYPE』似のSTG『パルスター』を発売している。こちらはエイコム(後の夢工房)が開発を手掛けている。
最終更新:2025年04月29日 16:00