つるピカハゲ丸 めざせ!つるセコの証

【つるぴかはげまる めざせつるせこのあかし】

ジャンル アクション
対応機種 ファミリーコンピュータ
発売・開発元 ジャレコ
発売日 1991年12月13日
定価 6,300円
プレイ人数 1人
判定 ゲームバランスが不安定
バカゲー
ポイント ×セコ ○ガチ
色んな意味で頭を使うゲーム
コロコロコミックシリーズ


概要

コロコロコミックで連載されアニメ化までされた『つるピカハゲ丸』を題材としたゲーム作品が、クリスマス商戦に向けて発売された。
電源を入れるとジャレコのマークが地球と宇宙に変化。それをバックにハゲ丸がロボコップ、スーパーマン勇者の姿で出迎えてくれる。
このように冒頭から原作譲りのギャグが繰り広げられ、原作を知っていればより楽しめる…はずなのだが、アクションパートが非常に高難易度であり、ハゲ丸ファンの小学生達を容赦なく退けた。


特徴

シナリオ

  • 2億年前に地球に飛来して叡知をもたらしたとされる「つるセコの証」を手に入れ、「つるセコキング」を目指すのが目的。
    • ちなみに本作の「つるセコ」の意味は原作のようにセコい節約術というわけではなく、物を蓄える事となっている。

登場人物

ハゲ田ハゲ丸
  • 主人公。石頭など人間離れした身体能力で「つるセコの証」を探し旅に出る。
ハゲ田ハゲ蔵
  • ハゲ丸の父。通称とおちゃん。オープニングで「つるセコの証」についてハゲ丸に試練を課す。なお、道中でゲームオーバーになった際は所持金半分と引き換えにコンティニューさせてくれる。回数無制限。
ハゲ田つる子
  • ハゲ丸の母。通称かあちゃん。お土産を催促してきて、何か渡すとお駄賃で¥10くれる。不要なアイテムなら渡しても良いが大事なアイテムを渡すと面倒な事になる。
ハゲ田つる丸
  • ハゲ丸の弟。秀才キャラであり、本作でも色々な発明品を作ってくれる。
ペス
  • ハゲ田家の愛犬。人間とある程度コミュニケーションを取る事が出来る。
都留聖子
  • 本作のヒロイン。原作でも人気キャラ(小学生にしてはスタイルが良い上に、ハゲ丸世界では美人であるため)であった。
  • 他のキャラが一枚絵しかないのに彼女には多数あり、容量を使いまくっている。
  • 他にも、近藤勝、桜咲子先生など原作のキャラが色々登場。同時期にコロコロで連載していたキャラも一部で友情出演する。

ゲーム構成

  • 本作は「マップ」と「アクションパート」をこなして進めて行く。
  • 「マップ」
    • 各所を回り、手掛かりを聞いたり、アイテムを買ったり、アクションパートが用意されていたりする。回る順番には結構頭を使う。金魚鉢のイベントでは何をはなすのかも問われる。
    • 序盤は日本から始まり、アメリカ、南極など、全世界が舞台となっている。ただし、ヨーロッパの半分は無くなっている。
  • 「アクション」
    • 全て横スクロール仕様である。市街地、ジャングル、砂漠、海中など実に多彩であり多くのギミックも用意されており、ステージ最後にはボスが待ち構えている事も。
  • 基本操作
    • ハゲ丸くんらしく、基本動作も人間離れしている。
    • ジャンプ
      • Aボタンでジャンプ。敵を踏んづけようとしても逆にこちらが痛い目を見るが、助走をつけてからのジャンプで大側転に移行、そのまま敵をなぎ倒して進むことが出来る。
    • 下への頭突き
      • Bボタンを押し続けて頭を下に突き出す。敵への攻撃は基本的にこれで行い、Aボタンで敵を踏んで大ジャンプも可能。砂漠の流砂やジャングルの河も簡単に抜け出せるが、流石にトゲは痛いしサメには押し負けるので注意。
    • チャージコイン
      • 上+Bを押し続けると手持ちの通貨をチャージして飛び道具を繰り出す。5・10・50・100・500と上がっていくのは実際の通貨に倣ったものと思われる。上位になるほど射程が伸びる。当然、その分持ち金を消費。
  • 通貨
    • 敵を倒すとコインを落とすので、後で買い物をしたり、チャージ攻撃に使ったりできる。もっともミスるたびに半減するので、貯める事は難しい。コインよりもプレーヤーの腕前の方が大事になってくる。
    • なお、終盤のイベントを見たプレーヤーからコインの最大数についての質問も寄せられたが65535でカンスト。素人目には中途半端な数にうつるが、これは16進数のFFFFの事であり、一般的にファミコンでは上限とされている数値である。

評価点

素材・演出・原作要素

  • シナリオ
    • ギャグ漫画のゲームで特に大切なのが話である。各地で展開される登場人物の常識離れしたやり取りはプレーヤーの笑いのツボを見事に刺激した。
    • 問題の解決方法もいくつかあり、例えば、高額な飛行機代のかわりに弟の発明で代用して海を泳いで行くなど、つるセコで解決するあたりが、貧乏ネタを振りかざすハゲ丸らしいと言える。
    • 買い物要素もあるが、価格が103円や412円と中途半端。
      • 1989年当時に導入された消費税3%から算出されたものと思われる。*1
    • アニメでは登場機会の無かったつる丸や聖子にもきちんと役割や見せ場が用意されている(特に聖子)。
  • 文章の品質
    • フォントに「ハゲ丸」「つるセコの証」「聖子」など一部であるが漢字が使われており、更にハートなどの記号もアクセントになっている。
    • アイテムのリストも自動整頓されている。
      • 重要アイテムから優先的に上に来るようになっているので分かりやすい。
      • 「聖子の写真」は役に立たないと思われているが、自宅でかあちゃんとの会話でうっかりボタンを押しても、これにカーソルが合うおかげで渡しそうになってもいらないと言われるため、結果的に必要なアイテムを渡してしまわずに済むようになっている。
      • 一応、アイテムの表示数は8つまでで、9個目以降は持っていても表示されないという欠点はあるものの、埋もれるのは意味のないアイテムばかりなので、この問題点に気付かなかった人もいるくらいである。
  • フィールドマップ
    • フィールドはアニメ主題歌のBGMが流れ、斜め視点で立体感があり当時の舞台を忠実に再現している。
    • 移動できる地点にゴミ捨て場小学館があるのは『ハゲ丸』ならでは。小学館のビルにはコロコロで共演していたオバQの飾りが付いていたり、*2ショップの形がファミコン風だったりする。
    • なぜか町内に存在するエジプト(ピラミッド)とジャングル。その一方でハワイやアメリカ本土、南極へ行くには海を渡らなければならない。
  • 各所では精緻に描かれた背景とともに人物が出迎えてくれる。
    • 人物の一枚絵は豊富で、メインの登場人物は勿論、サブキャラまでグラフィックが用意されている。
    • 終盤では特に力が入っており、最終ステージに行く際は専用の演出があったり、聖子はアニメーションまでする。
  • アクションパートではハゲ丸の動作も多彩である
    • 基本動作やローリングは勿論、原作の「しゅたた走り」が再現されていたり、やられた際の「しょえ~っ」やステージクリアの際の「もうけたぜ~」のポーズは大きく表示される。
    • 海中、防寒など、ステージによって服装なども変わる。更にラスボス戦ではシリアス顔で挑む。
  • ステージも多彩で、背景まで緻密に描かれている。
    • ベルトコンベア、流砂、河、海中、針地形、魔法の絨毯、氷地形、低重力などギミックも多彩である。
  • BGM
    • 音楽はフィールドの主題歌をはじめ、各種ステージで使われる曲も多彩であり、ヒロイン格の聖子には専用曲まで用意されている。

問題点

  • 凶悪な難易度。これが本作の評価を下げてしまった要因である。
    • 最大HPは3しかなく、上限が増えることは無い。しかもステージ中には回復アイテムが一切存在しない(敵を倒しても落とす事はなく、配置されている事もない)。さらに残機もなく、落下死は即ゲームオーバーと、非常に厳しい。
    • 中間地点など甘いものはなく、2つエリア構成なら2つ目でミスればフィールドに戻されステージ最初からという有様。
    • ボス戦も最初から厳しいもので、槍を投げてきたり盾で頭突きを防いだり強敵である。しかも負けるたびにステージの最初に戻されるのでリトライも容易ではない。ボス戦の前にHPを全回復させてくれるのがせめてもの救い。
    • 南極ステージのボスは全3問のクイズを出してくる。1問でも間違えるとステージの最初からやり直しとなる上、南極ステージ自体も中々難しいステージであるため、ここも答えを知らないとかなりキツい。
      • 実はステージに入る直前のシーンで「すいしょうだま」を使うとクイズの正解を知る事ができるが、気付かなったプレイヤーも多かったと思われる。
    • ジャンプしてBボタンを押す事で下の敵を攻撃する頭突きが出るが、この時十字キーの上を押すと攻撃が解除され、こちらがダメージを受けてしまう。場合によっては不要、不当にダメージを受けてしまい、ストレスが溜まる。
  • 進行状況を保存して中断する事は出来ない
    • コンティニューは無制限であるものの、セーブもパスワードもないため、通しでプレイしなければならない。
  • 演出面でスキップ不可
    • 台詞は遅めで、ムービーも飛ばす事は出来ない。これが1回で済むなら可愛いものだが、本作では何度もゲームオーバーになる事が前提なので、リトライの度にいちいち何度も見せられ非常にテンポが悪い。
      • 実は台詞は十字キーの上ボタンで早送りできるが、これも気付かないプレイヤーは気付かなったと思われる。
    • 特にラストステージでは演出と会話のため、リトライに毎回1分以上かかる事になる。問題点は複合されると更に厄介になるのである。
  • アイテム
    • アイテムは店で売られていたり、弟が発明したりしてくれるが、どれもイベント進行用。アクションパートでプレイを有利にするアイテムは無い。
  • チャージコイン
    • チャージで射程は伸びても攻撃力は同じなので、最大で¥500も使わされるだけ無駄。
  • ハゲ田家
    • 最初にとおちゃんが出て、「よぶ」を押すたびにかあちゃん、つる丸と切り替わる。
      • しかしとおちゃんは話すと怒るだけ。かあちゃんは出るたびに「おみやげをくれ」と言われ、アイテム欄が勝手に開かれるので、面倒でしかない。また何かあげても¥10くれるだけで、物によっては「そんなものいらない、もっと喜ぶものをくれ」と暴言を吐く始末。2人の存在意義が無さ過ぎる。

その他

  • エンディングで1分待たないとスタッフロールに移行しない。

総評

本作には、ハゲ丸くんの世界が詰め込まれており、良質な作品になる可能性は十分にあった。
しかしながら、ハゲ丸くんのゲームだと喜んで手に取った小学生達はそれらに触れる事無く凶悪難易度に逆立ちしても勝てず、涙を飲んでいった…


余談

  • ゲーム内の店では「もえぷろが¥10で投げ売りされている」など、自社ゲームのネタも採用されている。
  • ニューヨークステージ冒頭にて女神らしき女性キャラクターが登場するが、これは同社のゲームボーイ用ソフト『バニシングレーサー』(1991年)に登場する女神と同一人物と思われる。
  • 月面ステージに日の丸扇子を持った雑魚敵が登場するが、同社のファミリーコンピュータ用ソフト『西遊記ワールドII 天上界の魔神』(1990年)にも同じ造形の雑魚敵が登場する。
  • ゲーム内の海外にもゲーム機を模したビルがあるのだが、形状がファミコン仕様。
    • 「ファミコンは日本専用の製品であり、海外の場合はNES(Nintendo Entertainment System)仕様にすべき」という意見もある。
  • エンディングでは意外な人物が?!
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  • 道中で薄々気付いたプレーヤーもいたと思うが、実は原作者(のむらしんぼ)と登場人物達による壮大なヤラセだった。それは作者がいつものようにネタが思い浮かばないため、ハゲ丸に本当に冒険させてそれをネタにしてしまおうという話である。結局のところつるセコの証というのは最初からなく*3タイトル詐欺と言うプレーヤーもいた。
    • …のだが、ゲーム難易度の方はセコではなくガチであり、本作を見事クリアしたプレーヤーにはガチゲーマーの証が認められたと言っても良いだろう。
    • ちなみに、ハゲ丸の作者のむらしんぼはPC時代からゲーム好きで、かなりのディープゲーマーである*4。しかし本作発売後しばらくして受けた、ゲームラボのインタビューでゲームに自分が出ていた事を知らなかったと発言している。つまりゲーマーである作者本人もエンディングを見ていないということになる。*5
    • 本作について作者は「クソゲーとは失礼、せめて屁ゲーと呼んでほしい」との事。
  • アニメ版にてハゲ丸の声を務め、主題歌の歌唱も行っていたつかせのりこ氏は、本作が発売するより前の1989年5月15日に亡くなっている*6
    • これに対し、スタッフロールの最後ではスタッフによる追悼メッセージが表示される。下記にそのメッセージを引用。
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      たいへん みじゅくではありますが、
      このさくひんを 故つかせ のりこさんに
      ささげさせて いただきます。
      ごめいふくを おいのりいたします……

  • なお、アニメ版は1989年10月に最終回を迎えている。
  • ハゲ丸くんのゲーム化は本作のみである。
    • 家庭用ゲーム機以外では、エポック社からLCDゲームウォッチ『つるピカハゲ丸くん おむすび屋大繁盛の巻』も発売されている。
    • ファミコン通信(現:ファミ通)1991年6月14日号によると、当初のサブタイトルは『セコリンピックの巻』であり、開発当初はスポーツゲームにする予定であったことが三才ブックス出版の『ファミコン発売中止ゲーム図鑑』149ページにて判明した。
    • 非売品ソフトとして、1989年に開催された「夏休みゲーム大会キャラバン」で使用されたPCE用ソフト『ハイテク王国』がある。
      タイトルは『ハゲ丸・桃太郎の木登りゲーム』で、ハゲ丸一家と桃太郎が木登りで競争するという内容で、パッドを連打して一番早く頂上に到達した人が優勝という内容。
  • 作中では「だんぺい君」という名前が登場するが、これは同時期にコロコロで連載していた『ドッジ弾平』の主人公である。

最終更新:2024年09月21日 13:06

*1 原作では消費税絡みで、せっかくためた100円で物を買えなかったり、ご飯の量を3%減らされるなどのネタがある。

*2 当時の小学館本社ビルは「オバQ」の大ヒット直後に建てられたためオバQビルとあだ名されていた。

*3 実際に「つるセコの証」というアイテムは存在するのだが、よく見ると「メイドイン小学館」と書かれている。

*4 光栄マイコンシステムが出していた『オランダ妻は電気ウナギの夢を見るか?』について語れるほど。

*5 氏の著書「コロコロ創刊伝説」にて、難易度があまりに高すぎて一面もクリアできなかった…というエピソードが語られている。

*6 つかせ氏が亡くなられた後のハゲ丸の代役は、杉山佳寿子氏が務めた。また主題歌はつかせ氏歌唱の物が番組終了まで使われた。