ウルトラマン倶楽部 地球奪還作戦
【うるとらまんくらぶ ちきゅうだっかんさくせん】
ジャンル
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ロールプレイング
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対応機種
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ファミリーコンピュータ ディスクシステム
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発売元
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バンダイ
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発売日 ()は書換開始日
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1988年10月22日(1989年1月13日)
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プレイ人数
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1人
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定価
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3,300円
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判定
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良作
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ポイント
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SDウルトラマンゲーム第1号 RPGにターゲッティングを導入 コミカルに反してBGMがドラマチック ノーヒントで総当りが辛い
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ウルトラマンシリーズ
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概要
SD化したウルトラマンによる「ウルトラマン倶楽部」としては、初のゲーム作品。リアルなウルトラマンを入れると第3弾。
ウルトラマンが兄弟を助けながら、その兄弟とともに怪獣たちと戦うRPG。
結果的に、SDウルトラマンとしては唯一のディスクカード作品となった。
ストーリー
謎の宇宙人により怪獣たちが地球に来襲。
地球は征服され、戦いに出たウルトラ兄弟たちも捕らわれてしまった。
唯一脱出したウルトラマンはゾフィの命令により、反撃に出る。
兄弟たちを救い出し、謎の宇宙人を倒し地球を奪還せよ!
登場キャラ
()内はゲーム中の表記
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ウルトラマンエース(エース)
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必殺技はメタリウム光線、エースバリア(2ターンの間、敵の攻撃を完全無効化)
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ウルトラマンタロウ(タロウ)
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必殺技はストリウム光線、ウルトラフリーザー(威力はやや弱いが敵の動きを止める効果)
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ゾフィー
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戦いには参加しない。ステージのどこかに潜伏しておりヒントをくれる。
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ウルトラの父
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戦いには参加しない。ステージのどこかに潜伏しておりエネルギーを全回復してくれる。
システム
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HPのみで、当時のRPGでは恒例のMP(必殺技ポイント)やお金、経験値という概念は存在しない。
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L(ライフ)最大HPにあたる
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E(エネルギー)現在のHPにあたる
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P(パワー)攻撃力
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S(スピード)
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ステージは6ステージ構成。()内はそこに囚われている仲間。
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山岳(セブン)
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コンビナート(タロウ)
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森林(しんマン)
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氷河(エース)
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都市(レオ)
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地底都市
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ラストステージで、上記の「都市」から入る形になる。
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宿屋にあたるものとして、ウルトラの父がいて、特定のポイントで会うことができHPを全快してくれる。
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お金はないが、アイテムが6種類あって倒した怪獣たちがランダムでドロップする
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レベルという概念はないが、マップのミッションクリアによりパワーアップできる。
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アイテムの種類
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カラータイマー
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仮死状態から復活させる。救出したばかりの仲間は仮死状態なので、これを使う必要がある。
ただし行動できる仲間は3人までという制限があり、現在行動可能な仲間が3人いる場合は使えない。
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Eカプセル
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オーラ
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ウルトラベル
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キングハンマー
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マント
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怪獣たちは実際のウルトラシリーズに登場したものがSD化している。
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上位種として、その色違いも存在し名前も一部付加したものになっている。(例・「ツインテール」の上位種が「ツインテールボス」、「エレキング」の上位種が「エレキングサンダー」)
そのマップの最上位の怪獣の上位種がボスとして登場する。そのボスはエンカウントするデフォルトの個体よりも更にパワーアップしている。
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戦闘のシステム。
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攻撃は「チョップ」「キック」「必殺技(2種類)」の4パターンで「キック」はエネルギーを1、「必殺技」はエネルギーを2消費する。
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怪獣を攻撃する場合、ターゲットが出現しどこを狙うか決められる。
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弱点にヒットすれば絆創膏が出現しダメージが大幅アップする。
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レベルアップは経験値によるものではなく、各マップのミッションをクリアすることでレベルアップする方式。
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その間に怪獣を多く倒すほど、攻撃力が上がり、逃げが多く成功するほどスピードが上がる。
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つまり、「逃げる=ただの戦闘回避」ではない。
評価点
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ターゲッティングシステムにより、非常に斬新な戦闘を実現している。
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とにかく、まずは敵のいろいろな部分を攻撃することで、弱点を発見する、また、それを推測する面白さがある。
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新しい敵との戦闘を経験すれば経験するほど、弱点の知識が増えてリアルな経験値になる。
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上記の通り、弱点を知ることで以降の戦いが有利になる。
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戦闘はしっかりバランスが取れたゲーム性。
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よく「エースバリアは敵の攻撃を完封するからバランスブレイカー」と言われがちだが、エースバリアを使った状態ではアイテムのドロップがなくなる。
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更にエースバリアも必ず最初に発動できるわけではなく、使用する前に敵の攻撃を喰らうケースは普通にあるので、バリアにばかり頼りきっていると初回のダメージがジワジワ蓄積しジリ貧のようになる。
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SDでもしっかり再現されたウルトラマンらしさ。
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エネルギーがライフ(エネルギーの最大値)の1/4を切ると、コマンドを選ぶときに「ピコンピコン」とカラータイマーのようなSEが鳴る。
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氷河では実際の放送(30話)にあった「まぼろしの雪山」の再現イベントがある。
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アイテムはちゃんと効果の住み分けができている。
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アイテムは6種類しかないものの、それぞれの効果はわかりやすく、しかも死蔵してしまうようなものもない。
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まだRPG草創期ながら必殺技など固有のグラフィックが用意されている。
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しかも怪獣に弱点でとどめを刺した時の絆創膏から爆発エフェクトが出るなど、かなり細かい所まで凝っている。
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怪獣に関しても火炎や稲妻がちゃんとグラフィックで表現される。
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非常に良質なBGM。
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コミカルなSDに似合わないような本格的でシリアスなBGMが多いが、全体的に出来は良い。
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タイトル画面BGMは『ウルトラセブン』の没主題歌のアレンジというマニアックな出典。
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ボス戦のBGMは『帰ってきたウルトラマン』の「M-81(怪獣出現/ピンチの戦い)」のアレンジで、決戦の気分を盛り上げてくれる。
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またゲームオーバーのBGMも哀愁漂うものでドラマチック。
問題点
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ミッションがノーヒントでわかりにくい。またエンカウント率が高い。
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マップのどこかにミッションに該当する怪獣キャラがいるのだが、マップ内総当りのような形で探さなければならない。
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マップ自体はそこまで広くはないが、上記のようにミッションはノーヒントで、必然的に歩くことが多くなる。結果として戦闘も相当な回数になるので、弱点を知った後にもなれば、若干だれがちになる。
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また選択できるステージが5つあるのだが、これに関してもヒントがない。うっかり「都市」から始めると、バルタンなど初期能力のウルトラマンからすれば凶悪なザコモンスターにあっさり瞬殺される。
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一応、カーソルの初期位置が「山岳」なのは不幸中の幸いだが。
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経験値がわかりにくい。
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直接的にレベルアップするわけではなく、それまでの経緯からイベントクリアでレベルアップするスタイルなのでややわかりにくい。
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上記の通り、戦うだけでなく逃げることもパワーアップに関与するため、いささか理解しにくいところがある。
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エースとタロウ以外の必殺技はダメージのみなので棲み分けがあまりできていない。
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特にレオは最後の都市ステージでの加入なのでレベルが遅れ気味になりやすく、ダメージ系の技しかないので眠らされたままで終わることが多い。
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地底都市の入り方がわかりにくく、またバグがある。
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「調べる」のコマンドを使うのはゲーム中でただ一度、地下都市の入り口をみつける時だけのため、気が付かない人が大勢いた。
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他ステージのミッションで手に入れたアイテムとヒントを総動員する必要があるのだが、入り口のドアに「キー」を差し込んでも開かないため、その後どうすればいいのかわかりにくい。
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都市のミッションで登場するゴモラに再度話しかければバグメッセージが出るため、なにをすればいいかはおおむねわかるが、会話になっていない。さらにそのメッセージから想定される行動の前にもう一つすることがあるため、ゴモラのメッセージ通りにならず混乱する。
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ただでさえ広い都市のマップを往復し、さらに続けて同程度の広さがある地下都市を攻略する必要があるので、事前にしっかり準備をしていないと詰む可能性がある。
総評
当時は「RPG=文字ばかり」という時代だったが、グラフィックを交えた戦闘展開で視覚的にも楽しめるようになっている。
そのシステムに関しても、ただ対象と攻撃方法を選ぶだけでなく、ターゲットで「どこを攻撃するか」を選ぶスタイルは今までになかったもので、しかもその弱点を考えて狙うなど目新しいものになっている。
ノーヒントのミッションや高エンカウントなどバランスの上で少々問題がある部分は見られるが、1つ選択肢を間違えばステータス問答無用でゲームオーバーのような理不尽さはなく、新しいスタイルのRPGとして楽しめるものになっている。
当時のRPGは2メガ必須の時代でありながら、1メガのディスクカードでこれほどのゲームに仕上げた手腕は見事と言えるだろう。
その後の展開
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1990年4月7日に、続編『ウルトラマン倶楽部2 帰ってきたウルトラマン倶楽部』が発売された。
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ターゲッティングによる戦闘システムは失われたものの、ふんだんなアクションを取り入れたバトルは健在。またNPC相手に会話して情報収集をするようになり、王道なRPGに近づいた形態となっている。
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同時期の1990年5月26日にゲームボーイソフトとして『ウルトラマン倶楽部 敵怪獣ヲ発見セヨ!』を発売。
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シミュレーションゲームだが、これも非常に独創的なゲーム性になっている。
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また王道なウルトラ兄弟のみならず、80やジョーニアス、更には主役以外のゾフィー、父、母、アストラ、ユリアンなども参戦し全員が戦う、豪華オールキャストな点も見もの。
余談
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ゾフィーは本作ではヒントをくれるのみで、戦闘には参加しない。そのせいか説明書でマンが「本当にもうゾフィーってズルい」とボヤいている。
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不運なことに本作発売の翌23日は、あの『スーパーマリオブラザーズ3』発売日だった。
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そのため、話題もそちらにかっさらわれてしまい、当時最も求められていたジャンルであるRPGだというのに注目されなかった。もちろん、当時最も花形だった「剣と魔法で戦う」ファンタジーではないという事情もあっただろうが。
「ウルクラ」か?「マンクラ」か?
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SDウルトラマン『ウルトラマン倶楽部』は当時から「ウルクラ」と略称されていたが、1998年にサミーからパチスロ化された折に、パチスロ攻略ガイドによりその略称が「マンクラ」として出回り始めた。この時点ではパチスロ攻略マガジンが「ウルクラ」と表記してお互い譲らず平行線だったが、4号機末期の2005年にBタイプのストック機として『ウルトラマン倶楽部ST』が登場した折に、メーカーのサミー自身が発行したそのチラシには「マンクラ復活」と銘打たれていた。
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元々SDと言えばSDウルトラマンより「SDガンダム」の方が二次、三次展開が多くネームバリューがあり、それを思えばSDウルトラマンこと「ウルトラマン倶楽部」は割と地味な存在だったことや、該当のパチスロはかなりのヒットだったことに加えて、ゲームでの「ウルクラ」世代が後にパチンコ、パチスロ世代になり自然と「マンクラ」に馴染んだこともあり現在では「マンクラ」が主流になりつつある。
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当然「スーパーマン」「バットマン」等アメリカンヒーローや初期の『スーパー戦隊シリーズ』(「デンジマン」「ダイナマン」「バイオマン」等)のように「~マン」という名前は腐るほどあるのに対し「ウル~」という名前はウルトラシリーズ以外ほとんどないので「ウルクラ」の方が自然と言えば自然だが、それに関する異議も不思議なことに2005年当時にはほとんど出なかった。
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中にはパチスロのみ「マンクラ」と呼びながら、それ以外では「ウルクラ」と使い分けている人もいる。
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余談中の余談だがパチンコ絡みでが2003年に『デビルマン倶楽部』(ニューギン)というSDデビルマンの羽根モノパチンコが全国のホールに導入された。「デビルマンクラブ」なので、これも「マンクラ」と略せなくもないが誰もそう略すものはおらず、「これもマンクラになるから「ウルトラマン倶楽部=マンクラ」はまずくね?」と問題提起されることもなければ、それが冗談のネタになることもほとんどなかった(メーカーのニューギン自身も2013年にこのリメイク機を販売する折には「デビクラ」という独自の略称を用いていた)。
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不幸中の幸いと言うべきか上記の『ウルトラマン倶楽部ST』以降『ウルトラマン倶楽部』に該当するパチスロは出ていないが、こんな事例がありながら2005年に「マンクラ」をメーカー自身が認めたような節もあり、今後パチスロで『ウルトラマン倶楽部』が再登場しようものなら「マンクラ」がますます主流になっていくと思われる。
最終更新:2023年06月12日 13:55