本項では『鉄道にっぽん! 路線たび』シリーズのうち『三岐鉄道編』『明知鉄道編』をあわせて紹介します。



鉄道にっぽん! 路線たび 三岐鉄道編

【てつどうにっぽん ろせんたび さんぎてつどうへん】

ジャンル 鉄道運転シミュレーション/旅情
対応機種 Nintendo Switch
発売・開発元 ソニックパワード
発売日 2021年12月23日
定価 7,678円
プレイ人数 1人
セーブデータ 1個
レーティング CERO:A(全年齢対象)
判定 シリーズファンから不評
ポイント 価格不相応の収録内容
あらゆる面でボリューム不足
鉄道にっぽん! 路線たびシリーズ

概要

Nintendo Switchにおける『鉄たび』第2作で、久しぶりの完全新作となった。今回は三重県北部の私鉄である三岐鉄道が舞台。三岐鉄道は三岐線と北勢線の2路線を持つが、本作に収録されているのは北勢線である。
北勢線は「ナローゲージ」という言葉に象徴される通り、線路の幅が762mm(ほぼ新幹線の半分)しかないという珍しい路線の一つ*1


ゲーム内容

  • 操作方法や資料獲得システムはSwitchの第1作となる『叡山電車編』と基本的に同一。
  • 収録映像は北勢線の上下線で、合計2本。いずれも昼間の走行である。
    最初は下りしか運転できないが、下りを終点まで走破することで上りが運転できるようになる。
    • シリーズお馴染みの「全線走行」は「ワンマン!なりきり運転」に名前が変更。これまでフリー走行限定の要素だったドアの開け閉めのほか、駅間アナウンスがタスクに追加された。
  • 車両は270系。かつて北勢線を運営していた近畿日本鉄道(近鉄)から受け継いだもので、最高速や加減速性能は控えめ。
  • 資料館は沿線案内と北勢線の路線紹介となっている。

問題点

  • 何の工夫もなく1往復だけを収録した薄い内容
    • 収録路線は僅か20.4kmの北勢線1路線のみ。一応往復収録ではあるものの紅葉や桜といった自然の景勝もなく、農地や宅地に終始する内容には流石に飽きが来る。ナローゲージも映像では分かりづらく*2、他路線との接続もないため、鉄道ファン的にも見どころは薄い。
      • 北勢線自体、この約20kmを約1時間かけて走る(表定速度は約20km/h)という相当な低速路線である。後述のダイヤの緩さのためゲームでの速度はもっと低く、よほどコアな北勢線ファンでもなければダレてしまうだろう。
    • 同様の状況である作品には『上毛電気鉄道編』があり、そちらは鉄道ファン向けに特化した資料を充実させている。だが本作にはこのような要素はなく、北勢線の案内という名目で一本化されており当該作より劣化したともいえる。
    • 「往復じゃなくていいから三岐線を収録してほしかった」という声も多い。三岐線は北勢線と違って狭軌で、車両も近江鉄道のごとく西武鉄道から移籍した複数形式が存在する。前作で複数路線複数系統実装という芸当が可能ならば、本作でもできないわけではなさそうだが…
  • 映像の粗の再発
    • 運転速度がゆっくりな割にフレーム数は変わっていないようで、過去作で駅発着時に観られたようなカクつきがやや顕在化している。
    • また上りの映像はほぼ常に逆光となっているため、お世辞にも精細とはいえない映像がよりぼやけてしまっている。
  • ダイヤが過剰に緩い
    • 前作の最初のダイヤほどではないものの、本作でもダイヤが緩すぎる傾向は変わっていない。自己の裁量で速度を調整しようものなら評価が落ちる、というスタイルは3DS時代にはあまりなかったものでありシリーズファンからの評価は芳しくない。
  • 運転時のBGM
    • 過去作と違い、運転モードでは初期設定でBGMがONになっている。
    • OFFにしたい場合は一度ポーズ画面を開いて設定を変える必要があるのだが、これはゲーム終了時にリセットされてしまうので、OFFで運転したいプレイヤーにとってはかなり煩わしい。
      • 前作では終了前の設定で再開できていた。
  • ブレーキ音
    • 常に停車直前のブレーキのような摩擦音が鳴っており、明らかに過剰。
  • 作業的な実績
    • 本作の実績には「フリー走行で起点から終点まで10回運転」「区間走行で100回走破」といった非常に手間のかかるものがいくつかあり、作業感が強い。
    • これらもクリアしないと手に入らない資料もあり、後述の割と良い内容ではあるのだが、それでも相当にきつい。
    • 『明智鉄道編』以降は1往復分以上の周回を求める実績は基本的になくなっている。

評価点

  • 再現面の問題は少ない
    • 運転操作やキーコンフィグ、資料館といったシステム面での前作の評価点は概ね引き継がれている。よって、初心者でもすぐに運転に慣れやすい点はそのまま。
    • 270系は加減速性能が悪いが、元々の運転速度が控えめなためストレスは感じにくい。
    • HD振動が前作よりも自然になり、オンにしていても差し障りのないレベルとなった。
    • 吊り掛け駆動方式の加速音も本物さながら。
    • 実績28個達成時に解放される資料映像は鉄道ファン必見。
      + ネタバレ
      • ED457による三岐線貨物の20分弱に及ぶ前面展望映像。JR関西線と接続するほうの富田駅を出発し、重厚なモーター音を轟かせながら保々駅に至る光景は普通に三岐線に乗っても経験できない。

総評

再現の面で大きな問題点はなく、システムも前作同様のものが引き継がれているのだが、収録内容はあまりに薄味でとても価格に見合ったものとはいえない。
路線が短い割に大した追加点がないゲーム内容が続き、『上毛電気鉄道編』のように鉄道ファン向けに特化した要素もなく、シリーズの中でも遊び応えに大きく欠ける作品となってしまった。せめて三岐線が収録されていれば評価が変わる見込みもあったのだが…


鉄道にっぽん! 路線たび 明知鉄道編

【てつどうにっぽん ろせんたび あけちてつどうへん】

ジャンル 鉄道運転シミュレーション/旅情
対応機種 Nintendo Switch
発売・開発元 ソニックパワード
発売日 2022年8月25日
定価 7,678円
プレイ人数 1人
セーブデータ 1個
レーティング CERO:A(全年齢対象)
判定 なし
ポイント 相変わらずの単純すぎる内容
収録路線からして当然の帰結

概要

恵那駅〜明智駅*3間25.1kmを結ぶ明知鉄道の明知線を収録した、Switchでは第三弾となる『鉄たび』。

下りの駅間運転を走破すると上りが解放、それもクリアすると「なりきり」が解放、なりきりも制覇でフリー走行が解放される内容となっており、前作『三岐鉄道編』と全く同一のゲームモード構成である。

評価点

  • 安心の鉄たびクオリティ
    • 運転ガイドや停止位置ガイドといった遊びやすさへの工夫は健在で、車両性能の違いを苦にしづらい。
    • 短距離の路線ながら鉄道情報や観光スポットを細かく拾っており、資料館は充実している。
    • 沿線には短距離ながら桜並木の名所があり、満開の時期に撮影されているため見ていて楽しい。
  • 前作からの改善点
    • コンフィグできるもの以外の警笛やドア操作のガイドをポーズ画面からいつでも見られるようになっている。
    • 勾配の有無が常時表示されるようになった。
    • 調整が行われたからかは不明だが、日陰と日向が切り替わる際の白抜けが緩和されている。
    • ダイヤの調整がちょうどよく、指示速度通り走っても大幅な早着になることはほとんどない。

問題点

  • 収録路線の問題
    • 恵那駅付近以外は開けた地形がほとんどない山中をひたすら走り抜く路線であり、路線長も含めてやはり3DS時代の作品と比べるとバリューダウンしている感は否めない。
    • 約25km/hという表定速度自体は叡山電鉄と大差ないが、明知線の場合は駅間が非常に長いため、これも冗長さを感じる一因となっている。
    • ただし前作と違い明知鉄道の路線は明知線ひとつだけであるため、1作につき1社という括りかつ国鉄末期に生まれた第三セクターという条件では、これ以上の収録が不可能であることは考慮すべきである。
  • 未収録要素
    • 実に半数近い途中駅を通過する急行列車「大正ロマン」が運行されているのも特徴である明知線だが、同列車は未収録となっている。
      • 隠しである上りだけでも運転したかったところ。フリー走行でやってくれというスタンスなのだろう。
  • 車両の挙動
    • ブレーキングの挙動がおかしく、数段切り替えても減速力がほとんど変化しない。そもそも全体的に実車より減速力が低すぎる。
  • 前作から据え置きの点
    • ブレーキ音が過剰な点、BGMオンが標準かつ設定を保存できない点は相変わらずである。
      • さらに本作ではエンジン音や警笛も実車とはあまり似ていないものになってしまった。

総評

前作よりはマシなものの、上下線収録とはいえ景観の面でも鉄道ネタの面でも3DS時代の作品からは数段見劣りする内容である。変わらずフルプライスである点も新規層からの反発が大きい。

明知鉄道は歴史の浅い小規模な事業者ゆえ工夫の余地が小さく、シリーズファンからは仕方なしとする意見も一定数存在する。だが、根強いファンがいるからこそ路線選定にはもう少し気を配るべきではないだろうか。

最終更新:2025年07月11日 17:58

*1 北勢線以外では同じく三重県北部の四日市あすなろう鉄道、富山県の黒部峡谷鉄道がある。

*2 運転台の位置が低いため、よく見ないと目視での幅は狭軌路線と特に変わっていないように見える。

*3 社名・路線名が「明知」なのに対し、駅名は「明智」となっている。ただし国鉄時代は駅も「明知」表記だった。