甲子園
【こうしえん】
ジャンル
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スポーツ(野球)
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対応機種
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ファミリーコンピュータ
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発売元
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ケイ・アミューズメントリース
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開発元
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ホームデータ
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発売日
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1989年10月6日
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定価
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5,900円
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プレイ人数
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1~2人
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判定
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なし
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ポイント
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前年再現のため残念ながらPLがオミット 高校野球らしいロジックはできている 選手の能力はわからないのに根性だけは数値でわかる
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甲子園(魔法株式会社)シリーズ 初代 / 2 / 3 / 4 / V / '98 / '99 / ポケット / 2000 / 2001 / 紺碧の空
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概要
1989年10月にケイ・アミューズメントリースから発売された高校野球のゲーム。
開発はホームデータ(現:魔法株式会社)が担当。同社の『甲子園』シリーズの第一作である。
内容
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各都道府県から1校(北海道は南北、東京は東西で計2校)ずつの高校野球大会で優勝を目指して戦う。
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各出場校や選手データは前年の第70回全国高等学校野球選手権大会に準じている。
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10点差がつくとコールド勝ちになる(裏ならばその時点で終了)。
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点差無関係でどちらかが100点目を取った時点でもコールド勝ちになる。もちろん意図的でもなければまず起きないことでこれは単にオーバーフローによるバグを防ぐための措置と思われる。
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延長は18回までで、18回を終わって同点なら引分再試合となる。
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基本的な操作はファミスタ同様の王道な野球ゲームに則っている。
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ピッチャーは下を押しながらAで速球、上を押しながらAならスローボール。
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ファミスタなどとの違いとしては、バントをBボタンで行う。バットスイングを途中で止めて当ててもいい。
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本作独特の操作としては、守備のポジショニングがある。
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内野は「ノーマル」「ダブルプレー」「バックホーム」「バントシフト」の4通り。
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外野は「ノーマル」「前進」「後退」の3通り。
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野手のステータス
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打力(8段階)
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パワー(8段階)
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走力(8段階)
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守備力(8段階)
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ピッチャーのステータス
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スタミナ(8段階)
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体力の持続度合で、これが高いほど球威が落ちにくい。
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スピード(8段階)
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カーブ(8段階)
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シュート(8段階)
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スローボール(8段階)
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スローボールの緩さ。上記の「スピード」とこれの両方が高いと速いボールは速く、スローボールは一層遅いと言う緩急の激しいピッチャーになる。
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共通のステータス
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根性(5段階)
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「根性」と言うより「精神力」に近い。チャンスやピンチの場面で力を発揮できるかの関係する。
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例えばバッターならこれが高いとチャンスで回ってくると予告ホームランのようなポーズを取り、逆に低いとガタガタする。
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のり(3段階)
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これも精神的な要素で、これが高いほど良い結果を出すとノッてきてイモヅル式に後の結果も良くなりやすい。
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各学校の選手データは詳細な部分はマスクデータになっており、プレイヤーが見られるのは「根性」のみで、「打力」「投手力」「機動力」「守備力」は学校全体レベルのみである。
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選手名に付いたマークがボールになっている選手がピッチャー適性だが、縛りはなく誰でもピッチャーに入れられる。
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選手の体型は「小柄」「普通」「大柄」の3タイプに分かれている。
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甲子園大会は、まず全国区に散らばる49校からどの学校をプレイヤーが操作するか決める。
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プレイヤーに指定した学校は試合前に、CPUにすることもできるが、以後CPU扱いとなり勝ってもその学校は二度とプレイヤーに戻すことはできない。
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CPU同士の試合になった場合「結果だけみる」でスキップできる。
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プレイヤーの学校が優勝した場合はエンディングが見られる。CPUの学校ならば表彰式まで。
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プレイヤーの学校が敗退した場合、試合後「選手諸君 熱いドラマをありがとう」とゲームオーバーデモが流れる。
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プレイヤーの学校が全部敗退しても大会は最後まで見ることができる。
評価点
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野手のポジショニングができる。
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スーパーファミコンでも取り入れられていないソフトがある中、ファミコン時代の野球ゲームでこれが取り入れられているのは『スーパーリアルベースボール '88』ぐらいなので非常に珍しい。
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バントを多用する高校野球らしいCPUロジックができている。
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ランナーが出たらバントで送り、ノーアウト・ワンアウト時に三塁にランナーがいればまずスクイズという、いかにも高校野球らしい攻め方をしてくる。
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片や根性度の高い選手は積極的に狙ってきたりと、選手の個性もそれなりに出ており一本調子というわけでもない。
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また選手は根性度に応じて行うアクションも個性の表現になっている。
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演出面もなかなか良い。
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グラフィックは観客など細かい部分まで描かれており、勝利時の校歌斉唱のシーンのスコアボードなども漢字らしい表記がある程度見えている。
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エンディングに入る一枚絵のカットも、人物の表情がよく出ている。
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BGMも高校野球らしい雰囲気が出せている。
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守備時の動きはスピーディーでジャンプやスライディングなども滑らか。
問題点
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選手のデータの大部分がマスクデータで自分の選手の能力すらイマイチつかみきれない。何故か目に見えるステータスは「根性度」のみというのは不自然。それが一番数値化しにくいものでは……。
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プロに比べて高校野球選手の未知数さを表現したにしても、自分の選手すら満足に分からないというのはゲームとして非常に不便。
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詳細な個人のステータスを知りたければ攻略書籍が必須となる。
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普通に考えれば地区大会などの成績を数値化されたデータを表示した方が現実らしさがあったはず。
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唯一数値で見える根性度は上記の通り選手自身のリアクションで示されるので、わざわざ数値として表示する必要性が感じられない。むしろ見えない方が選手のリアクションから読み取る自然な形で面白味が生み出せただろう。
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学校名に付いている都道府県名の改変は不自然。
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例えば南北海道代表の札幌開成(さっぽろかいせい)が「さっぽろせいかい」のように都道府県名がないならばともかく、広島代表の広島商業が「しまひろ商業」高知代表の高知商業が「ちたか商業」と学校についている県名が改変されているのはさすがに違和感が強い。
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一応、任意に変更できるのでどうしても気に入らないなら直せるが手動なので手間がかかる。
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このような名前の改変方法(前後を入れ替える)は以降の魔法株式会社の同系統のゲームへ引き継がれる。
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学校のラインナップが乏しい。
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あくまで対象は70回大会(前年度)のみなので前年に出場できなかった「帝京(東東京)」「横浜(神奈川)」「中京大中京(愛知)」「PL学園(大阪)」といった名立たる名門校が一切出ていない。
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特にPLのような当時その名を轟かせていたようなネームバリュー抜群の学校が出ていないのは盛り上がりを弱めている。
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投球の動作が遅すぎて試合のテンポを悪くしている。またピッチングモーションが滑稽。
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細かいモーションがあること自体は悪くないが、動作が遅く更に妙にカクカクした動きになっている。
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ピッチャーは投げた後の体勢が、急に縮こまったり、平面絵のようなぺったんこになったりと見た目がおかしい。
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併殺時にアウトカウントが1つしかされないバグがある。
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併殺自体そこまで高頻度には起きないし併殺されたランナーは消滅するので無駄ではないが、野球ゲームとしては見逃せない欠陥。
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守備時の視認範囲が狭く、特に外野守備がやりにくい。
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『ファミスタ』にしても『燃えプロ』にしても守備時は広範囲が見えるが、本作はそれらと比較してズームアップされたような画面でかなり狭い。内野はベースが大まかな指標にはなるが。
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特に右中間や左中間に飛んだ場合、レフトやライトありきで動かせばいいのかセンターありきで動かせばいいのか判断するのにも相当な慣れが必要となる。
総評
当時はプロ野球モデルのゲームが多かった中、高校野球を題材にした点は個性になっている。
しかもその思考ロジックもプロ野球系のゲームとは異なり、バントを多用するなど高校野球らしさがしっかり表現できている。
反面、ゲームとしては選手のデータが自分のチームでも根性度しか見えないのは不自然で、それが選手起用判断の不便さにも繋がっている。
更に出場校を前年1大会にしぼったため、学校ラインナップの寂しさは否めず、PLのような有名強豪校の不在なども高校野球に憧れる少年層からしたら魅力を削いでいる。
その後の展開
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野球ブームは翌年を待たずして終焉したこともあってか、翌年以降の野球ゲームは順当に結果を出してきたプロ野球モデルのゲームばかりだった。
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1990年に『水島新司の大甲子園』がカプコンから発売されたが、これは「高校野球のゲーム」と言うより「ドカベンのゲーム」で、しかも『キャプテン翼』のようなシミュレーション方式で「高校野球のゲーム」と呼ぶには無理があるので、次に発売された高校野球のゲームは2年半以上を経た1992年3月17日発売の『究極ハリキリ甲子園』ということになる。
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本作の続編としては3年後の1992年6月26日にスーパーファミコンで『甲子園2』を発売。
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こちらではゲーム中登録されている学校数は4027校と申し分ないラインナップ。
余談
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海外では『Little League Baseball: Championship Series』のタイトルで発売している。
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グラフィックや、演出が大幅に変更されているが基本的にゲーム内容は変わらない。
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選手データをよく見ると後にプロとして大成した選手たちが垣間見える。
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名前が特徴的な「かわのこう高校(江の川高校)」に「たにしげ(谷繁元信)」は一目瞭然で、他に「みつく高校(津久見高校)」に「かわさき(川崎憲次郎)」、「そうじょう学院(常総学院)」に「にし(仁志敏久)」などが登場している。
最終更新:2024年03月23日 15:53