ゴルビーのパイプライン大作戦
【ごるびーのぱいぷらいんだいさくせん】
ジャンル
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落ち物パズル
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対応機種
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ファミリーコンピュータ
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発売元
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徳間書店
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開発元
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コンパイル
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発売日
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1991年4月12日
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定価
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4,900円
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プレイ人数
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1人
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配信
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プロジェクトEGG 規制版『パイプライン大作戦』 2021年6月15日/550円 オリジナル版『ゴルビーのパイプライン大作戦』 2023年4月11日/550円
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判定
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なし
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ポイント
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落ち物パズルとしては均整の取れたバランス 当時の基準でも演出不足
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概要
1991年4月に徳間書店が発売した落ち物パズルゲーム。
上から落ちてくるブロックのパイプを左から右へ1本のパイプラインとして繋いで通すゲームで、根本的にはハイスコアを目指すスコアアタック目的のゲーム。
MSX専門誌『MSX・FAN』の1990年3月号の投稿プログラム『水道管II』をアレンジし、「ゴルビー」こと当時ソ連(ソビエト社会主義共和国連邦)の最高権力者であり最初で最後の大統領であったミハイル・ゴルバチョフ氏をイメージキャラに起用したものである。ただし、ゲーム本編には一切登場しない。
世界観
キミの手で日ソ友好パイプラインを造れ!
日本のすぐ隣にあるのに、ぼくたち日本人にとって遠い存在だったソビエトという国。
でも、ゴルバチョフ大統領(ゴルビー)の登場によって、日本とソビエトはぐーんと友好を深めつつある。
そして更に友好を深めるために計画されたのが東京とモスクワを結ぶパイプラインの建設なのだ。
シベリア鉄道に沿ってパイプラインを造るという壮大な計画。その成功はキミ自身の手にかかっている。
日ソ交流新時代は、キミ自身が作り上げるのだ!
(説明書より引用)
内容
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様々な水道管のブロックが上から落ちてきて、右側の壁で水が出ているところから、このブロックのパイプを繋げて左側の壁でパイプのあるところまで通すことが目的。
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ブロックは2つペアで落ちてくる。その片方が接地すると、もう片方は猛スピードで落下するが、その状態でも回転は可能。
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基本的に右側の給水パイプは最下段から水が出ており、そこが詰まってしまうと空いている最下段から水が出るようになる。
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パイプラインを繋ぐと、その1本に囲われていた部分のパイプブロックが全て高得点の「ブルーブロック」に変化する。
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特定本数のパイプラインを通すことで、ステージクリアとなる。特定の本数はステージごとに決まっている。
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東京をスタートとして、ナホトカ、ハバロフスク、イルクーツク、クラスノヤスク、ノボシビルスク、オムスク、スベルトロフスク、ベルミを経由してモスクワを目指す。
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ステージをクリアする毎に地図上のパイプラインが伸びて、次の地区に繋がりモスクワに近づいていく。
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一応モスクワまでパイプラインを伸ばすことを目的としているが、ゲームそのものはエンドレスにハイスコアを目指すクラシックなスタイルである。
特殊なアイテム
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水滴
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水が出ている部分につけると、そこから下のブロックが一気に消え、ラインも1本作ったことと判定される。それ以外に落とすと何も起こらない。
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ビン
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水が出ている部分につけると下から得点の高いブルーブロックが4段出現する。もちろん4段分上がってしまうので自滅に繋がることも。それ以外に落とすと何も起こらない。
得点方式
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パイプラインが成立した時に加点される。計算式は下記の通り。
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(パイプの長さ - 11)× 消えたブロック(ブルーブロックは× 5)× ステージ数
評価点
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独自性のある落ち物パズル。
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これまでの落ち物パズルと被らない完全なオリジナリティを持っている。
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クリアとハイスコアのバランスも重要。
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単純に長いパイプを通すだけではブルーブロックを大量に出してしまうので、自ずとスペースを圧迫してしまう。もちろんそれを出して消すことでハイスコアを大きく補助してくれるには違いないが、後が苦しくなるのも間違いない。
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こういった部分で計画性が必要とされるので、早く消すだけ、多く消すだけとこのようなゲームにありがちな悪癖「単純さ」を排したものになっている。
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瞬時の回転の判断が重要。
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ブロックがペアなので、切り離しての回転がいかに好判断してできるかも重要となる。これができるか否かでもスコアにしてもクリアにしても効率が違う。
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BGMはかの有名な『テトリス』同様、ロシア系で統一されている。
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チャイコロフスキーの「白鳥の湖」やロシア民謡の「トロイカ」など、こういったロシア系サウンドは、このような落ち物パズルではプレイヤーのリズムを整えてくれるので親和性が良い。
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音質自体もファミコンながら非常に良く、聴き心地は良好なもの。
賛否両論点
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ポーズ機能
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この手の思考を伴うゲーム性を持つ作品は、ポーズで一時停止中に次の一手を考えるのを防ぐために画面を暗転するなどして隠してしまうことが多いが、本作では画面が隠されることはない。
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パーツ構成や組み方自体が少々複雑であり、ピースの素の落下速度が初期レベルの段階から速めになっているので、じっくり考えられるのはありがたい。
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反面このようなゲームではそのスピードもゲーム性のうちなので、それを壊すズルの許容とも取れてしまう一面もある。
問題点
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難易度が高い
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上述の通り、パイプの繋げ方に計画性が求められるため感覚的なプレイが効かない事、パイプの先端を塞いでしまうと「ドリル」を使わない限りカバーできない上、次のピースの種類次第で状況が左右されてしまうこともあり、ルールのシンプルさとは裏腹に難易度はシビアな部類に入る。
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ピースの素の落下速度がレベルの上昇と同時に上がっていくのは他の一般的な落ちものパズル同様だが、難易度最低であるレベル1の段階で落下スピードがそれなりに速め。最終ステージともなるとゆっくり考える間もなくなるためかなり難しい。
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アイテム「ビン」はマイナスアイテムになりやすい。
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4段上げてしまうのでそれを消すことでハイスコアの援護になるとはいえ、相当やり慣れないと自滅に繋がることの方が圧倒的に多い。
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イヤならば水を避けて落とせばいいとはいえ、結局このアイテム自体の価値はないに等しい。
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モスクワに到達しても、ただ地図画面で花火が上がるだけで、達成感が薄い。
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元々根本はハイスコアを目指すエンドレスなパズルなので気にするなと言えばそれまでだが、同じようなゲーム性の『テトリス』もカチューシャをバックにダンスしたり、専用の画面で花火が上がったりと、ちゃんと特別な演出がされている。
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更にエンディングのようなデモもない。
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水滴はパズルのコンセプトを壊す一面もある。
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初心者には優しいが、これだけで「パイプラインを1本繋げた」とカウントし、得点を与えてしまうのは、少々やりすぎな感も否めない。
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水滴自体滅多に出ないとはいえ、反射神経や瞬時の判断力を重要視する落ち物パズルとしては手放しで褒められるものではないだろう。
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絵面的な地味さゆえの爽快感の薄さ
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仕様上連鎖という概念が存在しないためパイプを繋げた時の爽快感にかける他繋げた時のエフェクトなども特になく、プレイ画面のデザインも全体的に簡素で演出面での刺激に欠けているため、作業感が強い。
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対戦モードなどがないのも盛り上がらない要因となっている。
総評
「右から左に一本に繋ぐ」というスタイルの落ち物パズルはそれまでにない独自性があり、ステージの数が得点に関与しハイスコアを目指す上でカギになることはあのゲームボーイ版『テトリス』に通ずるものがある。
またテトリス同様にソ連に纏わるゲームらしくBGMもロシア系で統一されており、ロシア系サウンドと落ち物パズルの親和性の良さを改めて実感させてくれる。
とはいえ、単にパイプラインを繋いでハイスコアを目指すだけで対戦もできないゲーム性は、スピード要素を持つ落ちモノパズルとしては少々物足りなさが感じられる。
良くも悪くもシンプルでかつ高い難易度を前提とし、もくもくとやりこむスタイルに面白みを見出せるかどうかがカギと言えよう。
移植
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MSX専門誌の投稿プログラムを基に作られた本作だが、本作発売の後にFC版がMSX2に移植されるという形で古巣に出戻りを果たす格好となった。
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グラフィックはもちろん、サウンドもハードの性能を活かしてグレードアップしている。
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本作の権利はD4エンタープライズに移行しており、2021年1月18日に同社の月額制スマートフォンアプリ「PicoPico」、2021年6月15日にWindows PC向け配信サービス「プロジェクトEGG」にてそれぞれ本作が移植されている。
しかし、権利問題からか「ゴルビーの」の部分が消去された『パイプライン大作戦』というタイトルに変更されている(EGG版紹介ページ)。
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原作でタイトル画面に大きく描かれていたゴルバチョフ氏の部分が空になっており、元々は氏ありきでデザインされていただけに寂しいタイトル画面になった。
イメージイラストでもゴルバチョフ氏が黒塗りのシルエットになって存在を消されている。さらに掲載されているパッケージ画像の裏側に載っているタイトル画面もご丁寧に修正後のものになっている。
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ストーリーでも「ゴルバチョフ大統領(ゴルビー)の登場によって」の部分だけがきれいに削除され「でも、日本とソビエトは、ぐーんと友好を深めつつある。」となっている。
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言うまでもなく、この頃にはソビエト(ソ連)という国は既にない。
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後の2023年4月11日にプロジェクトEGGでオリジナル版そのままの『ゴルビーのパイプライン大作戦』が配信された(紹介ページ)。従来の上記規制版『パイプライン大作戦』も継続して配信されている。
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権利問題などをどうクリアしたのかは定かではないが、タイトル違いで内容がほぼ同一のゲームが並列するという珍しいケースである。
余談
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ソ連大統領の名を冠したゲームで同じロシア系BGMなので勘違いされることもあるが、『テトリス』生みの親のアレクセイ・パジトノフ氏とは一切無関係な作品である。
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徳間書店発売のゲームで『MSX・FAN』投稿プログラムから採用した作品は『ファミマガディスクシリーズ』の第1弾『香港』第2弾『パニックスペース』に続いて三度目となる。
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また本作を手掛けたコンパイルは後に上記シリーズ第5弾であり、後に一大シリーズとなる『ぷよぷよ』を生み出すこととなる。
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なお、その海外移植版の1つである『Qwirks』はパッケージに上記パジトノフ氏が監修という体で顔写真が大きく掲載されていた。
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東西冷戦を終結させたゴルバチョフ氏はこの頃西側諸国のメディアに引っ張りだこで、バラエティ番組やドラマへの出演のみならずファストフード店のCMにまで起用されるなど非常に露出が多かった。特に親日家として知られる同氏は日本向けの活動も多く行った。
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同時期には(おそらく無許可で)ゴルバチョフ氏をイメージしたキャラクターを登場させたゲームが他社からも何作かリリースされている。それだけ当時の日本人にとって馴染みが深かった人物だということだろう。
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だが、その反面ソ連・ロシアでは強力な改革に対する保守派からの反発を招き、同年8月には副大統領ヤナーエフ氏を首謀者とするクーデターが発生。それ自体は失敗に終わるも政局はますます混乱し、12月のソ連崩壊につながることになる。良くも悪くも、ゲームで描いたような図式にはならなかった。
最終更新:2024年10月19日 08:40