AI: ソムニウムファイル ニルヴァーナ イニシアチブ

【あい そむにうむふぁいる にるう゛ぁーな いにしあちぶ】

ジャンル アドベンチャー

対応機種 Nintendo Switch
プレイステーション4
Xbox One
Windows(Steam/Microsoft Store)
発売元 スパイク・チュンソフト
発売日 【Switch/PS4/One】2022年6月23日
【Win】2022年6月25日
定価 6,800円(税別)
プレイ人数 1人
レーティング CERO:C(15才以上のみ対象)
判定 良作
ポイント 人間とAIコンビの刑事サスペンスの続編
改善されたソムニウムパート
前作とは全く違ったシナリオ展開
元気○倍!半パンマン!
AI: ソムニウム ファイルシリーズ
AI: ソムニウム ファイル / ニルヴァーナ イニシアチブ
チュンソフトサウンドノベル関連作品



あなたが、わたしのAIを引き裂いた



概要

刑事とその自身の義眼の中にいるAIと共に事件を調査していくアドベンチャーゲーム『AI: ソムニウム ファイル』の続編。
前作に引き続きシナリオは打越鋼太郎氏、ディレクターは岡田昌氏、キャラクターデザインをコザキユースケ氏が務めている。
また、嘗ては打越氏と共にinfinityシリーズを生み出し、『ルートダブル -Before Crime * After Days-』や『ワールズエンドクラブ』も手掛けた中澤工氏*1も一部シナリオに参加している。

本作では「 伊達 (だて) (かなめ)」に代わり「みずき*2」が主人公となり、AIの相棒「アイボゥ」と共に今作の主な出来事となる「ハーフボディ連続殺人事件」を調査していく。
また、もう一人の新主人公「龍木」とAIの相棒である「タマ」の新キャラも加りダブル主人公形式となっている。
みずきは現代の主人公として、龍木は6年前の過去の主人公として事件の調査を進めることとなる。


ストーリー

最初に【右側】が発見されたのは、今から6年前のことだった。
中心からまっぷたつに切り裂かれた死体……。
当時どれだけ捜索しても、もう片方が見つかることはなかった。

それから6年後、行方がわからなかった【左側】が発見される。
時空を超えて現れた半分の死体……。
それはまったく腐敗しておらず、
まるでついさっきまで生きていたかのようだった。

特殊捜査班ABISの新人捜査官であるみずきと龍木は
パートナーの眼球型AI――アイボゥやタマとともに
過去と現在、夢と現実を行き交いながら
この【ハーフボディ連続殺人事件】の真相を解き明かすべく捜査を始める

※公式サイトより抜粋。


特徴 (前作からの変更点)

前作同様に現場で証拠物件を調べる「捜査パート」と、重要参考人の夢の中に入って操作を行う「ソムニウムパート」に分かれており、これらのパートを行き交いながらストーリーを進めていく。
基本的なシステムは『前作の記事』を参照。ここでは主な変更点を記載していく。

システム全体

  • 難易度が選択できるようになった。
    • 前作は難易度自体が設定できなかったが、本作は「スタンダード」「イージー」「ストーリー」の3つの難易度が選べるようになった。
    • 主にプレイヤー自身の直接的な操作が必要となるQTEとソムニウムパートの難易度設定が可能。
      • 「スタンダード」は前作同等の難易度設定。QTEの制限時間と連打回数は前作とほぼ同じ感覚*3。ソムニウムパートの制限時間は6分に変更は無く、移動をし始めると秒数通りに減る。リトライ回数は3回まで。
      • 「イージー」はQTEパートの制限秒数が1.5倍に増加し、連打するシーンに関しては全体の1/2の回数でクリアできるようになっている。ソムニウムパートは時間減少速度と選択肢の消費秒数が1/2となり、リトライ可能回数も6回まで増える。
      • 「ストーリー」は物語だけに集中したい人向けの難易度となっており、QTEシーンの制限秒数は3倍、連打回数は1/4になるほか、ソムニウムパートでは時間減少速度と選択肢の消費秒数が1/4となり、リトライ可能回数は無制限となる。
    • 各難易度はQTE・ソムニウムパートそれぞれ別々に設定可能。
  • 前作のプレイ経験の有無について聞かれるようになった。
    • シナリオの序盤で「"第2サイクロプス連続殺人事件*4" について知っているか」と尋ねられる。
    • 「知っている」と答えるとテストと称し、前作の事件に関するクイズが始まる。
      • 回答欄は選択肢ではなく文字を入力するシステムなので、当然当てずっぽうで回避することはできない。
    • 全問正解するとシナリオ内で前作の事件に関与していた人物から当時の話について、そしてその後に話についての台詞が追加される。
      • このシステムはいわば前作未プレイヤーに対してのネタバレ配慮の一環。クイズの問題が全て事件の真相に関する事なので前作をクリアしていないと答えられない内容になっている。
      • なお、似たようなシステムを打越氏が関わっていた『ワールズエンドクラブ』でも導入されている*5

捜査パート

  • 新たに「拡張視覚パート」と「真相再現パート」が追加。
    • 「拡張視覚パート」は特殊な視覚機能を使い、事件が発生した場所やその当時の状況を再現して捜査を行う。
      • このパートの追加により龍木またはみずき自身を操作できるようになった。
    • 「拡張視覚パート」で手がかりが集まると「真相再現パート」に移行する。
      • 時系列で事件の状況を再現しつつ、途中で発生する問題に対して正解を選ぶ事で状況再現率が進行。
      • 最終的に状況再現率が100%になると真相に辿り着ける。
    • なお、この2つのパートに置き換わる形で前作における証拠を突きつけて情報を入手する尋問パートがほぼ無くなった。
      • 完全に無くなったというわけではなく、一部シーンにおいて尋問パートは存在する。
  • 新しい捜査方法として「Wink Sync」が追加。
    • 捜査パートにおいて特定の人物に対し、選択肢の一つとして使用可能になる。
      • 「Wink Sync」はいわばソムニウムパートで行うPsyncの簡易版、短時間ではあるが相手の思考を読み取ることができる。
      • 「Wink Syncを使うとAI-Ball自体のバッテリーの消費が激しくなる」という設定のため、短時間しか見ることができない。また、使用可能回数も1回に限られている*6
      • 相手の思考を読み取ることで真実がわかるものもあれば、調べるだけ無駄なものも存在する。

ソムニウムパート

  • オブジェを調べるバリエーションの増加
    • 前作では「オブジェを調べると必ず選択肢が発生し、選択肢に応じて秒数が消費される」要素しかなかったが、本作は選択肢が存在しない要素も追加された。
      • 選択肢の無いオブジェは消費秒数が固定されており、調べるだけで指定された秒数が消費される。
      • この要素が設定されているオブジェにおいては通常・悪性共にTIMIEの使用はできない。
  • 鍵則 (きそく)」の追加。
    • ソムニウムパートの不評な点であった「推理しようにも推理しようがない」問題を改善する新要素。
    • 本作のソムニウムパートにはPsync対象者の意識や記憶に基づいたルール「鍵則」が設定されており、これを紐解くことで行うべき選択や行動が絞り込みしやすくなる。
    • パート開始時の鍵則は殆ど隠されている状態だが、調査を進めることで鍵則の一部を発見することができる。
  • 抗性意識体の追加
    • 抗性意識体とはソムニウム世界で具現化されたPsync対象者の警戒心の存在、要するに敵キャラ。
      • 接触すると残り秒数が減少してしまう。プレイヤー側から攻撃はできないので接触を避けるのが基本的な対抗策となる。
  • 特殊イベントの追加
    • 本作のソムニウムパートでは通常の捜査とは別に特殊なイベントが発生するようになった。
      • クイズゲームやミニゲームといった特殊なイベントが発生し、通常の捜査とは一味違ったイベントが展開される。
      • 制限時間以内に選択肢を選ぶイベントや、UIとコントローラー操作が反転したりといった奇抜なイベントも中には存在する。
  • クリア後の「無制限Psync」の追加。
    • ソムニウムパートにおいて各ステージをクリアした後、「無制限Psync」が追加されるようになった。
      • 「無制限Psync」は本編で設定されている6分の時間制限がないモードとなっており、時間に縛られることなく各ステージ内を探索したり、イベントを隅々まで楽しめるようになった。

シナリオルート

  • 本作では6年前の過去を捜査する「龍木編」と現代を捜査する「みずき編」の両方のルートに分かれてシナリオを進めていく。前作における「左ルート」と「右ルート」のような扱い。
    • 前作同様にマルチエンディング方式を採用しており、龍木編(またはみずき編)のソムニウムパートの結果次第で結末が分岐する。
    • 一部のルートは分岐ポイントにおいて必要な暗号を入力すること進めることができ、その答えはシナリオ中に隠されている。

謎解き要素が強化

  • 前作では不評要素の1つであった「謎解き要素の薄さ」が本作では改善。『極限脱出』シリーズさながらの謎解き要素が追加された。
    • 捜査パートにおいて様々な謎解き要素が追加されたほか、ソムニウムパートにおいても謎解きがメインのステージが存在する。
    • これらの暗号は選択肢ではなく全て文字入力となっており、前作のように適当に選択して進めることはできない。
      • 間違いを繰り返すとヒントを貰ったりスキップできる救済要素は存在するので、謎解きが苦手な人でも進めることができる。

その他の新モード追加

  • 本作では新たに『めだまっぺ』『アイボゥの部屋』『タマの部屋』が追加された。
    • 『めだまっぺ』は『たまごっち』風のガジェットに表示されている謎の生物を育てるミニゲーム。
      • 20分おきに『めだまっぺ』から質問されるので、4つの選択肢から回答を選ぶ形式。
      • 回答に応じてめだまっぺが成長。様々な姿に変化する。
  • 『アイボゥの部屋』『タマの部屋』はアイボゥもしくはタマの姿を鑑賞できるコンテンツとなっている。
    • このモードではゲーム中もしくはDLCで入手した衣装を変更できる。
      • 基本的に衣装は本編を進めたり、やりこみ要素の進行次第で追加される。
      • 衣装はクリア済みのパートのみ反映され、未クリアの場合は通常の姿となる。
    • また、アイボゥもしくはタマがプレイヤーの悩みに答える「AI的人生相談」も実装されている。
      • 『めだまっぺ』と同じく、質問に対して4つの選択肢から答える形式となっている。
      • 選択肢次第でアイボゥもしくはタマが答えてくれるというもの。

評価点

完成度の高いシナリオ

  • 本作のシナリオは前作と同じく殺人事件の調査、犯人と真実を見つけ出すという流れは同じ。
    • 「過去と現代を駆け巡って真実を見つけ出す」という前作とは違った観点でシナリオを構成しており、2つの時代に鏤められた謎や伏線を回収して事件の真相を解明していく。
      • 前作同様にシナリオ終盤で怒濤の伏線回収が行われる。前作とは全く違った形で真相が明かされるため、前作プレイヤーでも驚かされるような内容となっている。
    • 主要人物のキャラクターの描き込みもしっかりしており、シナリオ面でも上手く絡んでいる。
      • 前作同様に各キャラクターの強烈な個性は今作も健在。前作のキャラクターに加え、AIでありながらとてつもないナイスバディなタマ、四角い頭にピンクのスーツという奇抜な外見の米治、可愛いマスクとは裏腹にとてもゴツい体型をしている厳、外見も奇抜なら声もボイスチェンジャーで喋る仮面の女など、一癖も二癖もある新キャラクターが登場する。
    • 本作は前作以上にとても辛い出来事がそれぞれの主要人物に重くのしかかるが、6年という歳月をかけてその苦境を乗り越えていくシナリオとなっている。
      • シナリオを進めるうち主要人物達が苦境を克服し、最終的に一致団結して事件を解決するという熱い展開が行われる。

前作を壊さない、続編シナリオ

  • ネタバレなので割愛するが、前作に深く関わっていた重要な要素・人物は本作では一切関わる事がない。
  • 前作のトゥルーエンドにおいて盛大な内容かつ大団円でシナリオが終わったことから「あの終わり方からどう続編に繫げるのか」がファンの間である意味心配されていたが、杞憂に終わる形となった。
    • 「前作とは繋がりのない独立した物語」と定義付けることで前作のエンディングとの繋がりは薄くなり、前作とはまた違った楽しみ方ができるようになった。
      • この定義付けによりみずきの怪力設定*7ある人物の存在そのものなど、前作のトゥルーエンド時点での設定が一部変更されている。
    • 繋がっていないとは言え本作は前作のトゥルーエンドが基となっているため、一部登場人物の会話において前作の事件のその後が明かされる。
      • 前述の通り序盤の事件の真相に関わるクイズに全問正解していないと明かされることはないので、(事件に関して正直に「知らない」と答えていれば)前作未プレイのプレイヤーに対してネタバレされることはない。

前作の問題点の改善

  • 前作ではシステム面や設定面において評価を左右していた箇所が改善された。
    • 前作ではQTEパートやソムニウムパート自体が難しく、ストーリーを楽しみたい人にとっては厄介な存在となっていたが、今作では難易度選択が追加されたことにより緩和された。
      • 特に一番簡単な「ストーリー」はこれでもかというぐらい難易度を下げており、各パートが苦手な人でも楽しめるようになった。
    • ソムニウムパートにおいて調査の対象となるオブジェがわかりづらかったり、目的が不明確なままただ動き回るしかなかったのだが、UIの改善や鍵則が追加されたことで進めやすくなった。
      • 前作にあった理不尽なステージも本作では無くなり、全てのステージにおいて調べやすい構成になっている。ただ、調べやすいと言っても終盤になるにつれ難易度は高くなる。
    • 前作のトンデモ設定として挙げられていたみずきの怪力設定が本作で明確な形で明かされる。詳しくは伏せるが、本作のシナリオのテーマに沿った内容であり設定としても破綻していない。
      • ちなみに、同じく挙げられていた伊達のエロ本怪力設定の経緯も一応出てくる。伊達自らが話すので信用して良いのかは微妙だが。

本作も健在する豊富な小ネタ・パロディ

  • シナリオの重さに対して緩和するために置かれた大量のギャグ要素は本作でも健在。
    • ソムニウムパートにおいてはステージ開始前に人間とAIによるコントが始まり、明らかに無茶のある選択肢に関してはアイボゥやタマが身体を張ってネタを行うのは前作同様。
      • この流れは龍木編・みずき編共通。みずきはそこまで変化はないのだが、龍木はテンションが異様にハイになり完全に別キャラと化している。
      • 一部のソムニウムパートのステージにおいてはギャグ漫画さながらのクッキングバトルが始まるなど、前作よりも大きな形でネタが込められている。
    • なお、前作にもあった熱海エンディングは本作でも健在。それどころかシナリオ中に所々熱海に関するネタが出てくる。
  • また、どこかで見たようなパロディ要素も前作以上にパワーアップしている。
    • 前作ではお馴染みとなった「ぼく、ドラム缶」のネタの他、「溶岩ピン抜きゲームの主人公並みの鈍さだわ」というどこかのスマホゲーム広告*8の話を彷彿とさせるような台詞や、「元気○倍!半パンマン!」といったパロディ要素が随所に鏤められている。
    • なお、ステージ自体が他のゲームのパロディであるソムニウムパートは本作も健在。前作の『イクラマンふとし』に代わり本作は『クセモンGo』が登場。
      • いかにもソレっぽい青色のモニュメントを調べ、クセモン(仲間)を集めてジムリーダーにバトルを挑む」という、システムもソレっぽければこのパートのためにわざわざクセモンと闘うバトルシステムも実装しているという徹底的なパロディっぷり。というかもう某法務部に怒られろ。
      • ちなみにこのステージに限り、スパチュンの有名シリーズのキャラクターが隠しキャラとして登場する。このステージでこんな物仕込んで本当にいいのかスパチュン。

良い意味で後味の悪いルートの存在

  • 本作では様々なルートが存在するが、その中でもあるルートはとてつもないインパクトを誇っている。
    + 深刻なネタバレにつき折りたたみ
  • トゥルーエンド後に発生する隠しルートで、とあるルートの選択肢においてあることをすると「存在しないはずのルート」に行く事ができる。
    • 条件を達成するとゲーム画面全体がバグ(という演出)が入り、その中で拡張視覚パートと同様にキャラクターを操作することができるようになる。
    • このルートに入ると一部のキャラクターやオブジェの配置がおかしくなっており、キャラクターに話しかけても不可解な言葉しか返さず、壁のすり抜けも行うことができるいわばバグの中でゲームを行うようなもの。
      • グラフィックも不可解なら音楽も非常に不可解な曲が流れており、不気味さがより一層増している。
    • 不可解な世界の中でキャラクターを操作し、ある人物に接触するのが本ルートの目的となっている。
    • ルート自体は短いものだが、シナリオを進めていくことで強烈なエンディングが待ち構えている。
  • + ルートのエンディング内容(さらにネタバレ)
  • 簡単に説明するとこれから起こる未来を龍木が全て知り、真っ先に事件を解決するというもの。
    • つまり、このルートではこれ以降の殺人や、一部登場人物の大きな悲劇が全く起こらないという何も起こらないエンディングとなっている。
    • (知っている前提なので)完全解決に6年かかるはずの難事件をあっさり解決。誰もが不幸にならず龍木も出世してABISの副本部長へ昇進とある意味ハッピーエンドではあるが、「プレイヤー自身がトゥルーエンド後にこのルートを触れる」という効果でハッピーではあるが、後味が悪いエンディングに仕立て上げている。
    • このルートはただプレイヤーを驚かせるために作られたオマケ要素の存在ではなく、トゥルーエンド時点で明かされなかった謎を回収する役目が込められている。

賛否両論点

オカルト・ホラー演出

  • 前作では少ないながらも残虐なスプラッター演出があったのだが、本作には全く存在しない。その代わりにオカルト演出やホラー演出が前作よりも強化されている。
    • 本作で扱っているシナリオがオカルト方面に寄っており、前作における「右ルート*9」よりも一層オカルトさが増している。
      • シナリオ中に「NAIX」という思想団体の関係者との会話や捜査があり、そこで交わされる内容がオカルトまみれとなっている。
      • さらに、前作の登場人物であるイリスがオカルトや都市伝説の話が好きという設定もあり、彼女の会話はより一層オカルトさが強化されている。
      • ただし、今回のオカルトは見方を変えると「本作がゲームであること」を逆手に取ったメタネタとも解釈できる。
    • 龍木が時折発症するバグ演出や配信動画、ソムニウムパートの一部演出においてホラー要素がふんだんに使われている。
      • シナリオ中に配信される動画の演出や龍木をはじめとした一部登場人物が時折狂い始めるシーン、突然画面が乱れたり視界がブラックアウトするシーンやホラー演出が主体のソムニウムパートのステージがあるなど、気味悪く感じるホラーシーンが多く人を選びやすい。
    • そして本作には特定人物を痛めつけたり、残虐な殺害を連想させるシーンがいくつか存在する。
      • あくまでイメージとしての表現であり一部を除き直接的ではないものの、本作のオカルト要素も雰囲気も相まって強烈な演出に仕上がっている。
      • 残虐な描写ではないとは言えイメージと音声でプレイヤーの精神面にダメージを与えるような演出のため、苦手な人は辛い展開となっている。

強化された下ネタ要素

  • 本作のギャグ要素のうち、下ネタに関しては伊達からタマが引き継ぐ形で炸裂することとなる。
    • そのタマが発する下ネタは前作の伊達以上に直球の表現となっている。
    • さらに伊達が加勢するような形で下ネタを発揮するので、前作以上に下ネタの癖が強い。
      • もっとも本作では何かと下ネタを喋っていた伊達が主人公でなくなったので、前作よりは若干ながら下ネタが減っている。

モデルデータの使い回し

  • 龍木編とみずき編の間で6年という年月が経っておきながら、一部登場人物のモデルが何一つ変わっていない。
    • 衣装も同じなら髪型も同じ、6年という長い期間にもかかわらず外見が全く同じなのはさすがに違和感を感じやすい。
    • 一応、「みずき」をはじめとした一部キャラは6年の間で外見が変わっている人物もいる。そのため、「変わったキャラ」と「変わってないキャラ」が同じ画面に並ぶと尚更違和感が生じやすい。
      + しかしこの使い回しは…(ネタバレ)
    • このモデルの使い回しこそ、シナリオの核心においての重要な伏線となっている。
      • もし使い回し対象の登場人物に少しでも変化があった場合、その時点でシナリオに矛盾が生じてしまう。
      • ゲームの開発においてはモデルの使い回しはよくある話だが、そのよくある話を逆手に取りシナリオの伏線として繫げるのは見事な演出とも言える。
        • ただ、それを踏まえても「見た目が全く変わらない」以上、違和感を感じやすいのは咎めないが。

とある登場人物の扱い

  • 本作に登場するキャラクターのうち、とある人物の扱いがやや残念な事になっている。
    + その人物とは…(ネタバレ注意)
  • 宴田米治は元クイズ王のピン芸人で芸名は「アンデス米治」で、売れない芸人ながらも息子の祥磨のために日々仕事をこなしている。
    • シナリオを進めることで米治は多額の借金により苦しい生活を強いられている事実が判明する。
    • そして米治は返済のために事件に関連する危険な行動を取り、その結果連続殺人事件の犠牲者の1人になってしまうというもの。
      • 「借金を返済するために危険な行為に手を出し、最終的に殺される」という末路はまさに自業自得そのもの。
      • しかし、シナリオを進めるうちに米治に関わるある人物の真意が判明するのだが、その真意を知った上で展開される本シーンは非常に重苦しいものとなっている。
    • そして残念な事にこの米治が殺される展開そのものがみずき編へと続くルート、つまり過去から現代への正史である。
      • シナリオを進めると判明するのだが、むしろ米治が殺されないと流れが成り立たないというシナリオ構成になっている。
    • 前作ではトゥルーエンド時点で(既に殺されていた人物を除き)主要人物のキャラクターはすべて生存することが可能だったので、本作のこの展開はなんともいたたまれない。
      • 別のルートでは米治が生きていたり、殺された後のソムニウムパートでも米治が活躍するのが救いではあるが。
  • そしてもう1人、ある人物の扱い方も賛否両論になっている。
    + その人物とは…(ネタバレ注意)
  • その名前は「フレイヤー(frayer)」で、ゲーム画面内には一切登場しないが、一部シーンの会話でその人物の存在が触れられる。
    • 本作のシナリオはこの「フレイヤー」の存在が事件の真相に近づく鍵となる。
    • そしてその「フレイヤー」の正体とは……。
  • + 核心に関わる深刻なネタバレ
  • 「フレイヤー(frayer)」は第四の壁にいる人物。つまりプレイヤー自身のことである。
    • 本作のシナリオの一部はプレイヤーに対して騙している箇所がいくつか存在する
      • この「騙していた」部分を正常化することで、シナリオ内の謎の一部が解明するというもの。
    • 演出という点では驚かされるのだが、「プレイヤーそのものを騙す」という点においては評価が分かれている。
      • 前作でも似たような演出はあったのだが、本作は露骨に現れるので人によっては印象の悪さを感じやすい。
    • 「フレイヤー」もといプレイヤー自身に語りかけるシーンは少ないため、「シナリオを進めるうちにいつの間にかプレイヤーも主要人物として巻き込まれていた」という印象になりやすい。
      • 一応、ある登場人物が直接プレイヤーに話しかけるシーンがあるのでのでこれが「フレイヤー」が関わる導線にはなっているのだが。

問題点

理不尽なイベント演出

  • 本作のソムニウムパートで追加された特殊イベントにおいて、唯一理不尽なイベントが存在する。
    • とあるソムニウムパートにおいて敵から逃げたり隠れたりする必要があるイベントが発生するのだが、これに失敗すると残り時間に関係なく即ゲームオーバーになる。
      • 他のイベントにおいてはチュートリアルが表示されるのだが、このイベントにおいては事前の説明は一切無い。
      • 「間違えたら即死」というそれっぽい演出は感じられるので説明が無くても感覚でわかると言えばわかるのだが、理不尽さは咎められない。
      • ゲームオーバーになると所定のシーンに戻されるほか、「イージー」以上はRetry回数も減るのでやり方によっては作業感が増してしまう。

特定の登場人物の扱いが悪い

  • 前作でも特定の登場人物の扱いが悪かった要素があったのだが、本作でも一部キャラの扱いが非常に悪い。
    • しかもとても重要な人物なので扱いの悪さが尚更目立ってしまっている。
      + 問題の登場人物とは…(ネタバレ注意)
    • その人物の名前は龍木来斗、つまり本作の主人公の1人である。
      • 主人公でありながら奇怪な言動・行動を繰り返し、シナリオ全体で問題行動を繰り返す存在となっている。
        • 序盤では泥酔によりみずきの質問に対して無視するシーンから始まり、捜査中に不祥事を起こしボスに迷惑をかける、みずきの捜査に全く協力しないどころか逆に攻撃的な姿勢を見せるなど、主人公でありながら感情移入がづらいキャラクターとなってしまっている。
        • 一応シナリオ終盤には龍木自身の問題行動の原因が明かされ、終盤で活躍するフォローがある。ただ、それを踏まえても龍木自身の行動には疑問を抱かざるを得ない。
      • また、龍木が時折発症する「視界が突然バグり、その後発狂する」原因がシナリオ中に明かされない。
        • 龍木自身の過去の経験と配信された動画のある演出の因果性など考察すると一応規則性はあるが、これらがシナリオ内でフォローされることはない。
      • 「扱いが悪い」というよりかは「シナリオ中での龍木というキャラクターの描画不足」と言うべきか、挙げた問題点の細かいフォローが入っていないため扱いが悪いようになってしまっている。
      • なお、龍木のキャラ設定は打越氏も意識していたのか、電撃のインタビュー記事において「龍木はもしかしたら嫌われちゃうかもと思っていたのですが」と語っている。
        • と同時に「蓋を開けてみれば大人気でびっくり」と語っているので、キャラクターとしては人気がある模様。

ゲーム中に発生する不具合

  • 前作同様にゲーム中において処理落ち、描画不具合、そして本作ではロード時間の長さが目立ってしまっている。
    • 処理落ちや一部モデルの描画がおかしくなる*10他に前作よりもロード時間が長くなっており、希にフリーズも発生するなどの報告もある。
      • これらの不具合は軽微なもので、発売当日に配信されたアップデートである程度改善はされている。
    • 前作のうちSwitch版はフレームレートの低下が目立っていたが、今作ではフレームレートが安定しているので前作より状況が悪くなったというわけではない。

エンディングムービー

  • 前作のエンディングではリアルタイムレンダリングの演出で展開されたが、本作はスペックの都合があったのかプリレンダリングによるエンディングムービーとなっている。
    • ムービーの演出自体に問題はなくむしろ楽しい内容となっているのだが、動きが激しいシーンでブロックノイズが目立ってしまっている*11
      • 前作に続き本作でもエンディング演出が良かったため、動画の荒さは残念な印象を感じやすい。

総評

前作のゲームシステムの改善や追加よりゲーム内容が強化され、本作もシナリオの完成度が高く仕上がっており、初めて本シリーズに触れるユーザーも楽しめるのはもちろんのこと、前作プレイ済みのユーザーなら一層楽しめる作品となった。
所構わないギャグ要素や強烈な世界観のソムニウムパート、下ネタ要素やオカルト・ホラー要素と本作でも相変わらず人を選ぶが、ADV好きにはオススメできる作品となっている。
前作プレイヤーはもちろんのこと、未プレイヤーでも楽しめる内容となっているので、気になる人は実際に手に取って貰いたい。


余談

  • 本作のタイトルが前作よりもとても長くなったほか、『AI:ソムニウムファイル』の表記が変更されている。
    • 前作は『AI:ソムニウム ファイル』と単語の間に空白があったが、本作では『AI:ソムニウムファイル』とそれぞれの単語を繋げ合わせている。
      • 本カタログにおいては前作は前者の空白入りのタイトル、本作は後者の空白なしのタイトルで扱っているため、他の記事で取り扱う際は注意されたし。
      • なお、PS4/Switch版限定で配信されている前作と本作が収録されたダブルパックの正式名称は『AI: ソムニウム ファイル ダブルパック』と各単語に空白がある。とてもややこしい。
  • 打越氏自身も「田中優美清春香菜ばりに長い名前」と自負している。
  • 前作のCERO:Z(18歳以上のみ対象)に対し、本作ではCERO:C(15歳以上のみ対象)に落ち着いた。
    • 残虐かつ流血表現が激しかった前作と比べ、本作は「半分になった死体」というインパクトの強さはあるものの、死体そのものから流血してる描写も無ければ死体の断面が見えることもない*12
    • アクションシーンをはじめとした一部シーンにおいて若干の流血演出はあるが軽微なものとなっており、最終的に15歳以上対象に落ち着いたかと思われる。
  • シナリオ序盤で発生する事件において死体に刺さっている看板「Fray to free」にあるQRコードはダミーではなく実際に読み込むことができる。
    • QRコードの内容はYouTubeへのリンクとなっており、アクセスするとゲーム内で『QR動画』と称されたものと同じ映像が再生される。
  • 2023年1月12日から2日間、電撃オンラインにて前作と本作に関するインタビューが前後編構成で公開された。→前編インタビュー / 後編インタビュー(ネタバレ注意)
    • このインタビューで本作において伊達が主人公から外れた理由が初めて語られる。
      • ダブル主人公は開発初期に決まっており、そのうちの1人を伊達にする予定だったが、最終的に新キャラである龍木が担当することとなった経緯が判明する。
      • これは打越氏が勤めているトゥーキョーゲームスの小高和剛氏から「みずきと伊達にしてしまうと1作目のファンにしか刺さらない内向的な作品になってしまうのでは」とアドバイス受けた結果とされる。
      • また伊達自身も主人公としてではなく、重要な役回りを行うことで前作ファンにも納得いく活躍をするキャラクターとなっている。
    • 打越氏は本作の下ネタについて触れられており、「2作目では極力下ネタは減らそうと思っていたのですが、通しでプレイするとやっぱり多く感じますよね……」と語られている。自覚はあったんかい。
      • オアシズの大久保氏の「下ネタはね、誰も傷つけることがない優しい笑いなのよ」という言葉に感銘を受け、「僕はこれからも下ネタを書き続けていこうと、固くなったあれに誓ったのでした」と語っている。全くもって懲りてない。
  • 本作のキャンペーンの一環としてTwitterを利用したリアルタイム謎解きプロジェクト『Hidden Bats カクレコウモリ』というイベントが開催されていた。
    • 失踪者が地下室に監禁され、事前にYouTubeで公開された『Bats489*13』をヒントに、監禁部屋にある『数字9桁のロックが掛かった箱』の暗号を解いて監禁された失踪者を脱出に導くというもの。
    • 失踪者は「壱来アイネ」「卒斗原ビナト」の2名から始まり、開催期間中に新たな失踪者として「門前マリハ」「離久浄ルミナ」「吾志木カイロ」と、本作でも登場する「左岸イリス」が追加された。
      • なお、この謎解きと本作のシナリオに関連性は無く、失踪者達はイリスを除き本編には出てこない。この謎解きに参加していないからと言って本作を楽しめなくなるということはない。
      • 一応「配信された動画を見た視聴者が行方不明になる」という話は会話中に出てくるが、本イベントの主催である「カクレコウモリ」や、関連団体の「砂育財団」の存在については触れられない。
  • 2025年7月25日にSwitch/Switch2/Steamで新作『伊達鍵は眠らない -From AI:ソムニウムファイル』が発売予定。
最終更新:2025年04月04日 10:51

*1 KID退社後はレジスタに所属していたが、打越氏らがトゥーキョーゲームスを立ち上げる際に誘いを受けてそちらに移籍した。

*2 本作では正式に伊達の養女となったためフルネームが「伊達みずき」になっている。

*3 シーンによって制限時間や連打回数が異なる。これは前作と同じ。

*4 前作においてのメインとの事件となる猟奇連続殺人事件のこと。

*5 移植元のApple Arcade版のユーザー向けの要素。ネタバレに関するクイズに正解することでSwitch版で追加されたシナリオまでスキップすることができる。

*6 一部展開において例外的に2回以上使うケースもある。

*7 前作のネタバレ座談会では「みずきの怪力は祖父の隔世遺伝子によるもの」と語られていたが、シナリオを進めるとこの設定が当てはまらなくなる。

*8 『ガーデンスケイプ』や『Hero Wars』の広告のこと。『ピンを動かすパズルゲーム』として広告で演出しておきながら実際に遊べるのはごくわずか。そのため、『ガーデンスケイプ』に関しては苦情が殺到しイギリスの広告審査機構が禁止を通告された前例がある。

*9 前作では最初の分岐点である「左ルート」と「右ルート」のうち、後者を選ぶとオカルトと電波にまみれたシナリオが展開される。

*10 みずき編においてみずきの顔グラフィックの髪の毛がおかしくなる現象がある。

*11 ブロックノイズは動画のビットレートという1秒間あたりのデータ量が低いと発生しやすくなる。本作のエンディングムービーにおいては容量の関係でブロックノイズが目立つ動画になってしまった可能性がうかがえる。

*12 正確に言うと死体の断面は黒で塗りつぶされている。

*13 本作では『Bats490』という配信された動画が存在するが同じ動画ではない。映像を見比べてみると内容に差違がある。