本項は完全版であるSwitch/Win版について記載しています。
Apple Arcade版は余談扱いとして記載しています。

ワールズエンドクラブ

【わーるずえんどくらぶ】

ジャンル アクションアドベンチャー
対応機種 Nintendo Switch
Windows(Steam)
発売元 イザナギゲームズ
開発元 トゥーキョーゲームス
グランディング
【Win】エスカドラ
発売日 2021年5月27日
【Win】2021年12月1日
定価 4,928円(税込)
【Win】3,278円(税込)
プレイ人数 1人
レーティング CERO:B (12才以上対象)
判定 なし
ポイント 12人の小学生による12のデスゲーム……のはずが
全体的に明るい雰囲気のシナリオ
練り込みが甘いアクションパート
突然ですが、このデスゲームは中止しまーす!


概要

ストーリーアドベンチャーに2D横スクロールアクションの要素が融合されたAADVで、『デスカムトゥルー』に続くイザナギゲームズ発売のゲーム第二弾。
「12歳の少年少女12人による1200kmの旅」をテーマに、登場人物である「ガンバレ組」の小学生達がある謎を解明を求めて日本を横断するジュブナイル・ロードムービーを彷彿とさせる冒険物語となっている。
2020年にApple Arcade専用コンテンツとして配信され、後の2021年にSwitchに完全版として移植・販売された。同年12月にはSwitch版ベースのWindows移植版もSteamにて配信が開始されている。

ディレクター・シナリオは『極限脱出』シリーズの打越鋼太郎。クリエイティブディレクターは『ダンガンロンパ』シリーズの小高和剛。
そしてもう1人のディレクターを『I/O』や『ルートダブル -Before Crime * After Days-』の中澤工が務めた。
打越氏と小高氏が設立したトゥーキョーゲームス*1が設立当初から発表していた作品であり、有名シリーズを手掛けた両氏がタッグを組んだ作品としても話題になった(開発自体はグランディングが行なっている)。
但し、実際に開発を主導していたのは打越氏と中澤氏infinityコンビであり、小高氏はそこに自分の意見を出す(氏曰く「わがままを言う」)立場だったとの事(参照)。

発表当時は『デスマーチクラブ』というタイトルだったが、Apple Arcade版のリリースと共に本作品名の『ワールズエンドクラブ』に変更された。


ストーリー

東京のとある小学校に、全国からおちこぼれだけが集められた「ガンバレ組」と呼ばれるクラスがある。
れいちょ達はそんなクラスに所属する、ちょっと周りと変わった子供だ。
ある夏の日のこと。
彼らが修学旅行に向かう途中、乗っていたバスが事故に巻き込まれる。

目覚めると、そこは海中に建造された遊園地。
だいぶ前に閉園し、人気のない寂れた廃墟のような場所にれいちょ達は閉じ込められる。
そこで、どこからともなく現れた謎のピエロ、仲間同士で「殺し合いのゲーム」をするように命じられる!
事態を飲み込む間もなく、その命がけのゲームに巻き込まれる一同。

このあまりにも異常な局面を、子供達だけでどう乗り切っていくのか?
途方に暮れる一同だったが・・・
そんな中、彼らに不思議な能力が目覚め始める。
一方その頃・・・
地上では「ある異常な事態」が発生していた。

※ 公式サイトより転載

+ 登場人物
  • れいちょ(CV:上田麗奈)
    • 主人公。ガンバレ組のリーダー的存在の少年。どんなピンチに陥っても諦める事を知らない。
    • 喋らないタイプの主人公だが、他のゲームのようにアクションパートで声を上げる事すらしない。しかし見ての通り担当声優は存在する。その理由は果たして。
    • 十二支のモチーフは「申(サル)」。
  • バニラ(CV:茅野愛衣)
    • ピンク色の長い髪で、白いワンピースを着た少女。『パンチライン』のみかたんや『AI: ソムニウム ファイル』のイリスと言った、近年の打越作品のピンク髪ヒロインを彷彿させるゆるふわ系。
    • 天真爛漫な性格でどこか大人びたメンバーの多いガンバレ組では比較的年相応であり、空気を読まない発言が多いせいか、いつもスルーされるが…。
    • 十二支のモチーフは「卯(ウサギ)」
  • 関西(CV:藤原夏海)
    • 関西弁を話す少年。情に厚く熱血な性格でリーダーを自称するが当人はドジでおっちょこちょい。野球好き。
    • 十二支のモチーフは「寅(トラ)」
  • チュー子(CV:菊池こころ)
    • 小柄でネズミのようにすばしっこい少女。ドSな性格で相手の発言に度々噛みつく。ツンデレ。
    • 十二支のモチーフは「子(ネズミ)」
  • モーちゃん(CV:松岡由貴)
    • 肥満体の少年。臆病者で穏やかな性格だが食いしん坊であり、空腹時は見境が無くなる。食べ物の知識が豊富。
    • 十二支のモチーフは「丑(ウシ)」
  • ニョロ(CV:真堂圭)
    • 褐色肌で、長身の少女。高名な科学者の娘で、物事を論理的に考えるクールな性格。
    • 十二支のモチーフは「巳(ヘビ)」
  • 兄貴(CV:赤羽根健治)
    • バニラの兄。冷淡な性格で、メンバーたちとの関わりを避けている。かつては人望もある好青年(少年)だったが、ある事件が暗い影を落としている。
    • 十二支のモチーフは「午(ウマ)」
  • パイ(CV:中原麻衣)
    • 性格的にも肉体的にも柔らかくふっくらとした少女。おっとりした口調ながら包容力がある。
    • 十二支のモチーフは「亥(イノシシ)」
  • たっつん(CV:皆川純子)
    • 眼鏡をかけた少年。超が付くほど真面目でスーパーヒーローに憧れる特撮ファン。
    • 十二支のモチーフは「辰(タツ)」
  • ポチ(CV:緒方恵美)
    • 目元が前髪で覆われた少年。内向的で口数が少なく、常に携帯ゲーム機を手に持っている。しかし実際は常識人で協調的。
    • 十二支のモチーフは「戌(イヌ)」
  • ジェンヌ(CV:豊口めぐみ)
    • 長身で、男役を思わせる容姿の少女。宝塚ならぬ「宝石塚歌劇団」にあこがれ、将来入団することを望んでいる。
    • 十二支のモチーフは「酉(トリ)」
  • 雪(CV:南里侑香)
    • 雪と共に落ちてきた少女。旅の途中で出会い、ガンバレ組の一員となる。
    • 十二支のモチーフは「未(ヒツジ)」
  • ピエロピ(CV:釘宮理恵)
    • デスゲームの進行役で、ピエロのようなキャラクター。相手を小馬鹿にした態度で挑発する。

特徴

本作はプレイヤーとして主人公である「れいちょ」を操作してゲームを進める。
ADVパート、2Dアクションパート、キャンプパートの3つに分かれており、各パートが入れ替わる形で進行する。

ADVパート

  • ADVパートはガンバレ組達の会話が主体で、展開の途中で仲間同士がとある理由で別行動を行う際に選択肢が発生する。
  • プレイヤーが選んだ選択肢がそのままルート分岐となり、分岐を経由することでシナリオの展開に変化が発生する。
    • 基本的に一部を除き、「どちらを選んでも結果は同じ」という選択肢は存在しない。

2Dアクションパート

  • 2Dアクションパートではキャラクターを直接操作し、移動やジャンプ、特定の場所で操作できる特殊アクションの他、後述する能力の発動を使用し目的地まで移動するのがおおまかな流れとなる。
    • このパートでは障害物や穴を飛び越える、敵を倒す、ボスが現れるといったアクション要素のほか、フィールド内にあるオブジェやスイッチを使ってギミックを発動させるといった謎解き要素も含まれている。
    • 大きな特徴として体力ゲージは存在しておらず、一発でも当たったらすぐにゲームオーバーになるいわば「死にゲー」の要素も持ち合わせている。ゲームオーバーになるとすぐに直前のチェックポイントに戻されて再開するトライアンドエラー形式となっている。
  • 多くの場合はガンバレ組の仲間も同行するが、基本的についてくるだけでアクションには影響しない。
    • ただし、このパートに限り「れいちょ」以外のキャラクターを操作する展開もある。
  • シナリオを進めるとガンバレ組の仲間の一人があるきっかけを元に覚醒する展開が入る。覚醒後は特殊能力「バディスキル」を発動することができる。
    • バディスキルは各キャラクターでそれぞれ内容が違っており、例えば「れいちょ」の場合「一球入魂(ダイリーグボール)」という特殊能力を獲得することができ、岩やボールなどの手に持ったものをすごい勢いで投げることができる。
    • 各スキルの読み方は「無敵鉄人(アイアンシェフ)」、「超絶発明(トーマスエジソン)」などと、小学生らしさを意識したのか安易なネーミングになっているが、中には「無敵張円(クローズドサークル)」「天地反転(ドンデンガエシ)」など、まるで製作陣の作風を表現したかのような名前もある。
  • また、このアクションパートに限り難易度の選択が可能。
    • 難易度は「イージー」と「ノーマル」の2種類。
    • 難易度の主な違いは敵のHPと攻撃頻度の違いで、それ以外の挙動は同一となる。

キャンプパート

  • ADVやアクションパートの他にキャンプをするパートがいくつか組み込まれており、「れいちょ」と共に同行しているガンバレ組のメンバーと個別に会話できる。
    • このパートにおいて誰に話したかによってルートが分岐することはない。
  • キャンプ地での会話は基本的に任意であり必須では無く、誰とも話さずにキャンプパートをスキップすることも可能。
    • 但し、ガンバレ組の内面や物語を深く理解するには聞いておいた方が良い。また、同じメンバーに複数の台詞が用意されている事もある。

評価点

キャラクターデザイン

  • 登場キャラクターはガンバレ組という12人の12歳の小学生が主な登場人物となり、十二支にちなんだキャラクター設定がなされている。各キャラはキャラクターデザインも含めてキャラの書き分けがハッキリしており個性豊かになっている。
  • 敵キャラである「ピエロピ」もいわば『ダンガンロンパ』の「モノクマ」と似たような立ち位置のキャラだが、こちらも設定と性格が相まって個性を出せている。
    • しかしモノクマに比べるとかなり間抜けで、しかしダイレクトに主人公達を潰しに来るなど、キャラクターとしても差別化が出来ている。
  • キャラデザイナーは小説『戯言シリーズ』で知られる竹氏で、各キャラのイラストも個性豊かにかわいく描かれており、キャラクターの設定をうまく引き出している。

シナリオ

  • ストーリーを進めるうちに様々なトラブルが発生するが、ガンバレ組は力を合わせて頑張りそれらを乗り越えていくまさにロードムービーのような冒険劇が繰り広げられる。
    • シナリオ全体は舞台設定に反して明るい雰囲気で、ギャグやシリアス、そして感動的なシーンが入り交じったガンバレ組達のドタバタ劇が楽しめる内容となっている。打越氏と中澤氏が手掛けた『パンチライン』のハチャメチャさと、『ダンガンロンパ』のポップな部分を抜き出して突き詰めて行ったとも言える。
  • 小高氏や中澤氏、他のシナリオライターのアイデアは勿論取り入れられているが、シナリオそのものは打越氏による。
    • ガンバレ組に関わる謎や伏線要素も進行途中で張られ、先が気になる構成となっている。少しずつ謎が明かされつつもそれをひっくり返すどんでん返しが待っていたりと、終盤に近付くにつれて物語は二転三転四転していく。ミスリード、叙述トリック、そしてサプライズにカタルシスと言った氏の持ち味はこのような作風の中にも活きている。
      • 最終的にはそれら伏線も回収されており、クリア後はスッキリとした気持ちでストーリーを楽しむことができる。全ての真相を知った上で再プレイすると色々と違った発見があるのも氏の過去作同様。
    • 小高氏は自称「シナリオにはノータッチ」とのことだが、打越氏は「全然ノータッチじゃない」と言っているので、実際どの程度だったのかは開発陣のみぞ知り得る…*2

元気が出るテーマ曲

  • ノーモア★ヒーローズシリーズなどに参加していた福田淳氏が作曲を担当しており、本作のテーマ曲として採用されている「ガンバレ組のテーマ」はまるでガンバレ組達の元気豊かな姿をイメージできるとても明るく元気が出る楽曲で、耳に残る良曲となっている。トゥルーエンディング主題歌としても使用されている。
    • アレンジも様々なシーンで流れ、そしてストーリーの展開にも一役買っている。ボーカルはガンバレ組の声優陣であり、実際に彼らが歌っている体で違和感無く展開される。
    • 作詞担当はもはやこの手の曲の作詞が板に付いた打越氏で、遊び心を感じつつもテーマに合致した詞になっている。

豪華声優陣

  • 「オススメ声優を出し合った」と公言されている通り、『infinity(Never7)』『Remember11』『Myself;Yourself』『AI: ソムニウム ファイル』『ダンガンロンパ』『ルートダブル』『パンチライン』など、過去の打越・小高・中澤作品*3に出演していた声優が数多く参加している。
    • 演技の良さは勿論のこと、御三方の作品のファンにとっては感慨深い起用である。
    • 無論、新規声優でも有名所を起用している。

個性豊かなキャラクター

  • 主人公のれいちょを含め、ガンバレ組の「背が低いツンデレ少女」「ヒーローに憧れる真面目少年」「ぶっきらぼうな兄貴キャラ」など、個性豊かなキャラクターが物語を盛り上げてくれる。
    • ガンバレ組は全員に活躍の場が用意されており、空気化するキャラは誰一人としていない。
      • 終盤戦はガンバレ組全員が一人ずつ順番にボスと対決したり、全員の能力を駆使して突破するダンジョンが登場し、クライマックスらしく盛り上がる展開になっている。
    • いかにも打越キャラらしく大人顔負けに博識だったり、チート級のスキルを持っていたり、性格も大人びたメンバーの多いガンバレ組だが、物語の要所要所で歳相応の振る舞いも見せてくれる。
  • ガンバレ組以外にも「メインキャラの一人が尊敬している男性」「謎のカルト教団のオネエ教祖」などのサブキャラも強い個性を放つ。

賛否両論点

シナリオ面

※シナリオの展開の都合上、全てが本作のネタバレに繋がるため折りたたんでいます。

+ シナリオ全体に関わるネタバレ

デスゲーム

本作である意味大きな話題を呼んだ部分。

  • まず前提としてこのワールズエンドクラブは「デスゲームで生き残る」ではなく、「人類が滅亡したとされる日本を舞台に、ガンバレ組が住んでいた東京へ向かい旅をする」というのが本来の内容であり、告知等で主体として出していた「デスゲーム」要素はシナリオのごく一部として組み込まれるだけに留まっている。
  • ストーリーにデスゲームが導入されている時点でいかにも小高氏の『ダンガンロンパ』シリーズのような「デスゲームの小学生版」を彷彿とさせていたのだが、肝心のデスゲームはストーリーの序盤のみ。しかも最終的に中止されてしまう。
    • そしてそれ以降は冒険活劇となりデスゲームは一切出てこない展開となっている。
  • Apple Arcade版のリリース後に本作において「デスゲーム要素はつかみ」という事実が判明した際は大きな賛否を呼んだ。
    • 「小学生同士の殺し合い」が無くなるという時点で安心するユーザーがいる一方、デスゲームによる殺し合いの展開を期待していたユーザーにとってはかなりのガッカリ要素となってしまっている。
      • 倫理的に考えて「小学生同士の殺し合い」のゲームなど発売出来るのか*4という懸念もあったが杞憂であった。そもそもやらないのだから。
    • 制作陣は過去にも『ニューダンガンロンパV3 みんなのコロシアイ新学期』の終盤の展開や、『シークレットゲーム -KILLER QUEEN-*5のBETシステムなど、(プレイヤーを含む)「他者の殺し合いを望む人間」を皮肉る風刺要素を盛り込む事もあったが、本作もまたそれに該当するとも言える。
  • しかし後述するアクションやシナリオの問題点もあり、「デスゲームが一番面白かった」と言われてしまうことも。

舞台設定のオーバーテクノロジー

  • 舞台は1995年の日本ではあるのだが、その時代はおろか現代から見てもAIやナノマシン、自立式ロボットなどといった明らかに時代を錯誤しているオーバーテクノロジー要素がいくつか登場する。
    • 1995年は現実では「ノストラダムスの大予言」などをはじめとした第二次オカルトブームが起こっており、実際ゲーム内では教団や地震兵器と言ったオカルト要素が具現化されている。
    • ことから察するにこの時代に設定したのかもしれないが、それを踏まえても時代に対しての不釣り合いの要素が多い。
      • 或いは本作のメイン購買層(特にKID時代からの打越・中澤作品の古参ファン)が主人公達と同じ「12歳」を過ごしていたであろう時期を選んだのかもしれない。
    • 一応、ある天才科学者が生み出した超科学的存在が、世界中の技術を掌握して作り上げたと説明はされる。それでも基本のテクノロジーのレベルからして実現できるかは怪しい所である。
    • ただ、主人公達の特殊能力など、そもそも現実とはかけ離れた要素が盛り込まれた世界観であるため、無理に現実と照らし合わせない方が混乱せず良いかもしれない。

相変わらずな下ネタ要素

  • 『ダンガンロンパ』シリーズや『AI: ソムニウム ファイル』にあった下ネタは本作でも健在。
  • 本作の下ネタは前述の各作品とは違い表現はマイルドで、いかにも小学生が言いそうな下ネタに留まっている。
    • とはいえ『AI: ソムニウム ファイル』同様に下ネタがしっかりとメインストーリーに絡んでおり、挙げ句の果てにはその下ネタがある人物の必殺技の名称として採用されてしまう。
    • 「ちょっと含まれている」程度なら気になるものではないのだが、本作でも何かとそういう方向に持って行きたがっている空気がある。特に「雪」はそのイメージに反して言う事がいちいち下ネタチック。
      • マイルドな表現とはいえ、必要以上に盛り込まれた下ネタに対し不快に思うユーザーは少なくない。
    • ある展開で出てくる装置は形と言い名前と言い、明らかに狙っている。しかもこれは上記の必殺技と違って、ただ画面に映らない場面で使った事が語られるだけで実際に使用が描写される事が無いまま海に投棄される。シナリオ上の存在意義も怪しいもので、ただ下ネタをやりたいがために作ったとしか思えない。

唐突に現れる第四の壁

  • ストーリーを進行していると唐突にとある人物から第四の壁、すなわちプレイヤーへ問いかけるシーンが発生する。
  • それらしい設定やその人物から意味深な台詞があるので一応伏線は張られているのだが、前触れもなくその人物からプレイヤーに問いかけるため、いきなり引っ張り出された印象が強い。
    • ここまでは第四の壁要素としては他のゲームでもよくある話であまり気にならないのだが、問題はその後の展開。
      • その人物はプレイヤーにむけて会話する……のだがプレイヤー側と思われるものに台詞が存在している。プレイヤー側に選択肢で選ばせるといったものではなく、プレイヤーの意思に関係なく勝手に喋る。
      • この台詞の存在によりこの人物が一体誰に向けて話しているかがわからなくなっており、そもそもこれ自体が第四の壁演出なのかも怪しいものとなっている。
    • だが、この第四の壁かどうか判断し辛い展開自体は(未プレイ者へのネタバレ防止のためタイトルは伏せるが)打越・中澤両名の過去作にも登場している。そちらを知っていれば、同じ流れと考える事も出来なくもない。
      • とは言え、設定が作り込まれてストーリーの根幹に根差していたあちらと比べると、どうにも唐突で練り込み不足なのが否めないのもまた事実。

良くも悪くも「何も起こらない」鬱展開

  • 制作陣の、特に小高氏の作品において頻繁に登場している「騙し合い」、更には「仲間割れ」「裏切り」、「仲間が殺される」と言った暗い展開だが、明るい雰囲気の本作においても登場する。
    • しかしそれらはあたかも何事もなかったかのように全て解決してしまい、後腐れもなくストーリーが進行する。
      • それどころか一番重そうな要素に関しても最終的にはあっさり解決してしまう
  • 嵐の海に飛び込んで全員無事に海岸に流れ着く、列車が脱線しても全員無傷など、ご都合主義的なシーンも幾つか見受けられる。
  • 小高氏は元より、『極限脱出』を手掛けた打越氏、『シークレットゲーム』や『リベリオンズ』の監督を務めた中澤氏が関わっているとなれば、必然的にそう言った展開が主体となると期待され易いが、実際はこのような構成となっている。
    • 暗い展開がすぐに消え明るい雰囲気が続くのはある意味、制作陣の過去の実績が本作全体のミスリードとなっている。意表を突くのは確かだが、御三方が過去に制作していた作品のような雰囲気を期待していた人ほどガッカリな印象を受けやすい。
      • 但し、打越・中澤両名は元々はinfinityシリーズを始めとするミステリアスSFや恋愛モノを主に手掛けており、小高氏ほどこの分野に突出していた訳ではない。

発売前に煽った期待とのズレ

  • ここまで書いた通り、本作は発表時の印象と実際のゲーム内容がかなりかけ離れている。
    • 更には多くの媒体で「『極限脱出』シリーズの打越鋼太郎と『ダンガンロンパ』シリーズの小高和剛の合作」という紹介をされてしまったが故に、多くのプレイヤーは必然的にこの2シリーズと同じくダークでシビアな流れを期待したのだが、実際は子供でも楽しめるようにと作られた内容である。
    • 「事あるごとに皆で声を揃える」「肩を組んで歌を歌う」「何度も友情を強調する」などと言った子供向け作品風の演出の数々も最初からそういう作品と捉えるなら問題は無いのだが、制作陣の過去作(特に前述の2シリーズ)のようなイメージを持って観ると、気恥ずかしかったりむず痒く思えても仕方ない。

ゲームボリューム

  • プレイ時間は概ね10~15時間程度で、アドベンチャーゲームにしてはやや短め。手早くプレイすると10時間を切る。
    • ルート分岐も部分的で、根幹のストーリー自体はほぼ一本道のため、何周もするようなゲームでもない。
      • 『infinity』や『極限脱出』のように各ルートを攻略して最終ルートに入るのではなく、本作は終盤のルート分岐で最初にバッドエンドルートに進み、バッドエンド後にトゥルールートが解禁されるという至ってシンプルな構成である。
      • 選んだルートの組み合わせで終盤の展開やエンディングが変わる事も無い。エンディングはバッドとトゥルーの2種類のみである。
    • 隠しアイテムとしてビッ○リマン風のシールが存在するが、全30枚と少な目で殆どが見つけやすい通り道にあるので、コンプリートも然程難しくはない。
  • これを丁度良いとする人もいれば、少ないと感じる人もいる。
    • 後述するアクションパートの問題から、クリア後の要素もしくはこれ以上のボリュームがあると投げ出していたという意見を行う人もいるほど賛否が多い。

問題点

アクションパート全体

本作のアクションパートだが、残念なことに完成度が高いとは言いにくい内容となっておりこれが評価を下げる一因となってしまっている。

アクションパート全体のテンポと操作の悪さ

  • アクションパート全体で言えることとして、まずテンポの悪さが挙げられる。
    • ゲームスピードが全体的に遅く、プレイヤーが操作するキャラクターの動きも重い。
    • ジャンプや特殊能力のアクション要素にワンテンポ間が入っており、機敏な操作がしづらくなっている。
    • また、ゲームスピードの遅さ故に敵キャラやボスの行動パターンも遅いため、攻撃や操作のタイミングが非常に取りづらくなっている。
    • タイミングが取りづらい上に概要でも説明したとおり一発でもダメージを食らうと即死となるため、プレイヤーが意図しない形で死にやすくなっており、これが結果としてストレスに繋がってしまっている。
  • さらに死にゲー要素を導入しておきながら『Celeste』や『VVVVVV』のような「死んだらすぐにチェックポイントに戻る」といったシステムではなく、「プレイヤーが死ぬ瞬間をスローで再生し、そのゲームオーバー画面が入ってはじめてチェックポイントに戻る」という演出が入り、これがアクションパートのテンポの悪さを助長してしまっている。
    • 死にゲー特有の初見殺しの箇所が多いため、このシステムは尚更ストレスを感じやすくなっている。
  • アクションパートでは途中デモ会話が入るのだが、障害物や穴を見つけたとき、敵に会ったとき、謎解き地点、能力を使う必要がある地点などでありとあらゆる所に頻繁に入る。
    • ヒントや敵の倒し方を教えるという意味では合っているのだが、会話パートへ入るたびに読み込みが入りデモ画面をアクションパートで繰り返し頻繁に発生するため、これもテンポの悪さに拍車がかかってしまっている。
  • このような仕様で当然難易度も高い*6のだが、これでも開発中より簡単になっているとの事。
    • 開発中はチェックのために何度もプレイするのが「地獄だった」と評されるほどで、中澤氏曰く「クリア不能じゃないかっていうレベル」だったという。

難易度が低すぎる謎解き要素

  • 本パートには謎解き要素があるのだが、アクションの難度に反してどれも謎と言えるほどの難易度ではなく、すぐに解明できてしまう。
    • 回答を入力するパートでは最初こそシンプルな暗号問題があるが、以降は会話の中で正解が言われる問題ばかりでわざわざ謎解きとして入れる必要があったのか疑わしいものが多い。
    • 万が一忘れたり、悩んだ時のためにご丁寧にヒント機能まで付いている。
      • 終盤になると手持ちの情報から答えを導き出す問題も出るのだが、よりによって入力画面に入るとメニューが開けなくなる。そうなるとヒント機能で教えて貰った答えを入力するだけで完全な作業になってしまう。
    • アクションステージ中にもパズル的な仕掛けは存在するも、こちらも簡単過ぎる問題で拍子抜けも良いところ。にも拘わらず、メンバーからは「さすが」「頭いい」と称賛される。
    • 「アクション部分をただの作業にはしたくなかった」という理由でアクション面の難易度は上げられているのだが、こちらの方は作業化してしまっているという皮肉な事に。ゲームパートの不出来さと併せ、『パンチライン』と似た問題を抱えてしまった。

誰も協力しようとしない同行者

  • アクションパートではチームに分かれて一緒に行動するのだが、概要でも触れた通りその同行者は付いてくるだけで何もしようとしない。
    • 敵を倒したり主人公を助けたりする手助けもしなければ操作しているプレイヤーと交代することもできない。
    • しかもプレイヤーはその同行している仲間を操作できるわけでもないので、ただ「存在しているだけ」になってしまっている。 当たり判定が無駄に増えるよりはマシだが
  • 状況に応じて「れいちょ」以外を操作するのだが、これを任意に変更することはできない。
    • それぞれのキャラの能力の使い所があるため仕方なくもあるのだが、各キャラの能力を使い分けたり、どの能力を使えば良いのか試行錯誤する、と言った遊び方は用意されていないのがやや残念な所。
  • また、操作キャラが能力によってなんとか自分だけ突破するシーンが少なくないのだが、イベントに入ると同行者が当然のように付いてきている。
    • ゲーム的な都合なので仕方ない話ではある。…と思いきや、「どうやって付いてきたのか」をわざわざ説明する箇所もあったりする。中途半端に説明があるせいで、却って気になってしまうかもしれない。

シナリオの細かいツッコミ所

  • メインストーリーはまとまっているのだが、細部には未解明の謎や投げっ放しの設定と言ったツッコミ所も見られる。
+ ネタバレ注意
  • 旅の途中、ガンバレ組が大分から四国へ移動するのだが、どうやって移動したのかが触れられていない。
    • 現実世界では大分~愛媛間の豊予海峡に橋はなく*7船を使って移動する必要があるのだが、この舞台では人がいないので船も動かす事もできない。そういった話は一切触れること無く次の目的地である四国に移動している。
      • 全体マップの演出を見る限り、船ではなく歩いて渡った模様。現実と違って橋でもあるのだろうか?
      • 広島から愛媛に移動するルートもあるが、こちらは「しまなみ海道を通る」と説明されている。
    • その後のあるルートで四国から兵庫へ向かう展開もあるのだが、それも同じでどうやって移動したかが触れられていない。
    • 一応マップを見る限りでは淡路島を渡っているのだが、その橋の一つである明石大橋は舞台設定の3年後である1998年に開通されるため、どうやって移動したのかが不明である。現実と違って(ry
  • ガンバレ組が途中で出会う教団がどうやって生き残ったのか、そこで何を活動しているのかが詳しく掘り下げられない。
    • 関連シナリオでは「生け贄を捧げようとしている」という話が飛び出し、ガンバレ組が巻き込まれるのだが、何が目的でそのようなことをしたのかが一切触れられない。
    • その教祖は本性を現して以降は終始敵側の人間として対立するのだが、スタッフロールの後日談を描いた背景のスチルでは唐突にガンバレ組と和解したような様子を見せている。これもストーリーで解明されることがない。
  • 本作のヒロインである「バニラ」が会いたがっていたとある人物の存在。
    • 話を聞いている限りいかにも重要そうなキャラなのだが、実際はバニラが単独行動で会いに行き、それをキャンプ時にれいちょに話すだけで終わる。
    • これの関係するイベントもなければその人物自体が物語に関わる事も無い。それどころかそれらしい人物も出てこない。
    • また、これに関連する話で「日本ではある敵に対抗するレジスタンスが存在する」と会話で触れられるのだが、そのレジスタンスはストーリーに登場しないどころかそれらしい人物も存在しない。
  • バニラは天才的なプログラミング技術を持つと言う設定なのだが、作中の実際にその設定が活きるシーンまで語られない。公式サイトに載っているのみ。
    • 正確には最初のキャンプで彼女に2回話しかければ分かるのだが、それを知らずに進めてしまうと唐突に設定が飛び出したように見えてしまう。
  • 日本で発生しているとある山の噴火や異常気象といった天災がどのような原因で起こったかが解明されない。
    • 一応ストーリー中に原因とされる話が挙がるのだが、あくまでも可能性でとどまったままでそれが断定に変わることがない。
  • 「東京壊滅」という見出しの新聞が序盤に現れるが、これがどういった理由でこのような記事が書かれたのかが一切解明されないまま終わる。
    • 壊滅した一番の原因と思われていたものもストーリーを進めると実はそうでなかった事が判明し、最終的に「何が理由で東京が壊滅し、その新聞が発行された」のか、そもそも本当にその新聞が存在していたのかがわからない。
  • 上記以外にも回収されないもしくは解明されない謎がいくつか残っており、少なくともゲーム中に解明されることはない。
    • 子供向け作品と考えれば些細な問題とも考えられ、あまり細かい所に突っ込むべきでもないのかもしれない。制作陣も分かってて突き詰めなかった可能性もある。
    • しかし賛否両論点で前述した通り本作のメイン購買層は『極限脱出』や『ダンガンロンパ』のような作品を期待した大人プレイヤーと思われ、そう言った層から見ればどうにも気になってしまう所である。
    • また、打越作品らしい小難しい蘊蓄や深いテーマも多数盛り込まれているので、簡単に子供向け作品として見做すのも難しい。

展開に関する問題点

+ ネタバレにつき折りたたみ
  • 終盤直前である人物に対して「ガンバレ組での活躍がない」のを理由に仲間外れ……いわばイジメに発展する展開があるのだが、仲間外れしたとされる人物は目立たないながらも活躍をしているという矛盾が発生している。
    • 1人ないし数人が否定するならまだしも、その活躍を見ていた他の人物に関しても賛同するという違和感が発生している。
    • 一応この展開は終盤に向けての重要な伏線ではあるのだが、何も前触れもなく唐突に発生するのでこの展開自体に疑問を抱きやすい。

ルート分岐と整合性の取れていないシナリオ

  • 前述の通り本作にはルート分岐があり、選んだルートによって立ち寄る場所や、ストーリー展開が変わる。基本的には、選んだルートに合わせてキャラクターの会話等も変化するようになっているのだが、一部、特定のルートを進んできたこと前提で話が進む場面がある
    • そのルートを選んでいれば問題はないのだが、違うルートを選んでいた場合は、知らない情報が会話でいきなり飛び出してくるため、混乱すること必至。
  • 本作はルート分岐は数回あるものの、最後の分岐以外は数ステージ後に合流する部分的なもので、以降のストーリーそのものには大した影響は無い。
    • にも拘わらず、ある分岐にて片方のルートでのみ重要な事実を明かす構成にしているため、合流後の共通ルートで混乱を生む事になってしまっている。
  • 「別ルートの展開を知る」という要素は『極限脱出』や『AI: ソムニウム ファイル』にもあったし本作でも終盤で触れられるのだが、上記の例に関しては登場人物が特別な反応をする事もなく説明もないため、ただ整合性が取れていないだけにしか見えない。

アドベンチャーとしては使いづらいUI

  • 本作はアドベンチャーパートもメインとなっているのだが、アドベンチャーゲームとしてのUIが使いづらいものとなっている。
    • 例えばバックログを参照したい場合、ゲーム画面で直接参照する手段がなくメニューを挟まないといけない。
    • メッセージスキップやシーンスキップは可能だが、それはクリアしたステージのみである。
      • メッセージスキップはやや遅めで演出まではスキップできない。シーンスキップはイベント単位でのスキップなので場合によっては何度もスキップさせられてしまう。

総評

アクションパートや序盤の展開、シナリオの細かいところで問題はあるものの、シナリオに関しては全体的にうまくまとまっている。
アクションとしてではなく、アドベンチャーとしてプレイするなら十分楽しめるだろう。
ただ、本作のコンセプトの関係上、大人向け要素と子供向け要素が混在した構成になっているのだが、「大人も子供も楽しめる」と言うよりは「どっちつかず」になっている印象も否めない。
それでも『infinity』『極限脱出』『ダンガンロンパ』といった作品を作ってきた製作陣には珍しい「綺麗なシナリオ」であり、それを見たい方は本作はある意味お勧めである。
シナリオを見る際にも、これら過去作のような作風は一旦忘れ、小高氏が言った(後述)ように「子どもに戻って子どものような気持ち」で手を出すのが良い。


余談

  • 4Gamerのインタビューによるとイザナギゲームズとの話の際、「中国を含めた全世界で発売できるゲームを作ってみたい」という理由で本作が作られた。
    • 表現の問題からこの時点で最初から「子供たちの物語にしよう」と決まっていた模様。
      • つまり、序盤の展開も最初から「そのつもりだった」ということがわかる。
    • 本作は上記の理由から全体的に子供向けに作られており、シナリオの構成や鬱展開、下ネタなどの要素が比較的マイルドだったのはそのためかと思われる。
      • しかし、Switch版のCEROレーティングは12歳以上が対象のCERO:Bとなっており、コンセプトと矛盾していまっている。
    • インタビューによれば小高氏は元々CERO:Aを目指して製作していたようだ。
      • 理由のひとつに当時小高氏がシナリオを担当した『名探偵コナン&金田一少年の事件簿 めぐりあう2人の名探偵』では殺人事件で人が大量に死んでいるにもかかわらずCERO:Aだった*8ことを挙げている。
      • CERO:B判定に小高氏が納得していなかったのか「死んでもよければ死体はあったかもしれないですね」という物騒な発言をしている。
    • インダビューの内容から、どうやら漫画版の掲載先であるコロコロコミックの読者である子供達に向けたような内容を意識していたらしい。ただ、漫画掲載はコロコロアニキ*9読者がメインであろうコロコロオンラインの漫画コーナーだが。
      • 制作陣の作品のファンというと20~40代がメインと思われ、それらユーザーが購入した後でその子供達に伝わっていく事を想定していた模様である。
  • デスゲームに元ネタがあり、デスゲームのルール自体は『ニューダンガンロンパV3』から。バングルは『極限脱出』シリーズを参考にしている。
    • 舞台となる「崩壊した海中遊園地」も正に『Ever17 -the out of infinity-』のそれである。更にその奥にある扉に関しても、同作プレイヤーなら思い出すものがあるだろう。
  • 本作の要素は『グーニーズ』や『スタンド・バイ・ミー』などといった冒険映画や、『MOTHER』など影響を受けて製作されている。また前者に対してリスペクト要素も含まれている。
    • ホラー映画『IT』もモチーフの1つであり、ピエロピの存在はその影響が大きい。
  • 本作はコミカライズ展開も行われており、「コロコロオンライン」で掲載中。本作と同じストーリーの展開となっている。現在は第一巻が紙媒体・電子版共に発売中。
    • 「れいちょ」が喋らないという点まで再現しており、漫画においてもモノローグ以外に台詞が無い
  • スナック菓子の老舗の湖池屋と清涼飲料メーカーのチェリオとコラボしており、作中に「カラムーチョ」と「ライフガード」が登場する。Apple Arcade版発売後にはそれぞれ一箱プレゼントするキャンペーンも行われていた。
    • カラムーチョの方はあるキャラの能力を引き出すアイテムとして使用され、その能力名までストレートに「カラムーチョ」になっている。
    • 一方、ライフガードの方は単純に主人公達の大好きな飲料としての登場であり、一応、アイテムとして入手はするがプレイヤーが任意に使用する事はできない
      • 作中ではその良さについて熱弁されたり、飲んだだけで気力が回復したり、殺人的に不味い料理の口直しにされたりなど事ある毎に持ち上げられており、異様に宣伝に力が入っている。
+ ネタバレ:Apple Arcade版発表時の展開について
  • Apple Arcade版発表時は旧タイトル名である『デスマーチクラブ』と、当時のキャッチフレーズである「12歳による12のデスゲーム」としていた事から、本作の本来の姿を徹底的に隠していたことがわかる。
    • 実際は12のデスゲームどころか最初のデスゲームの時点で中止となり、12人の殺し合いも存在しないのでこのキャッチフレーズは完全なウソとなってしまっていた。
    • そしてゲリラ配信を行ったと同時に本来の姿を露にしており、発表当時の要素に期待していたファンほど大きな落胆と批判を生んだ。
    • Apple Arcade版リリース当時の反響がいわば炎上に近い形になっていたのはそのため。また、Apple Arcade版はさらに問題点が存在していた。それは後述。
    • 小高氏は過去にも『ニューダンガンロンパV3』で「堂々と主人公だと発表しているキャラが実はフェイク」という良くも悪くも話題になったサプライズを仕込んだことがあった。本作でも「デスゲームだと思っていたら旅が始まる」という展開がユーザー達の間で話題になることを狙ったとの事で、確かに話題にはなった。…主に悪い意味で。
      • しかも当初の構想ではApple Arcade版は出さず、Switch版の体験版でデスゲーム部分のみをやり、「デスゲームが続くと思ったら旅が始まる」…という所で製品版に続く構成にする予定だったとの事である。結果的にApple Arcade版の発売によりその構想は無くなったが*10、仮に実現していたら批判はより強くなっていた事だろう。実際に体験版に触れてからフェイクだったと明かされる訳であり、体験版をやらないプレイヤーは実際に買った後で分かるのだから。
    • 結局の所、本作の不幸は難解で重苦しい作品を作ってきた製作陣の実績と、その過去作に通じる部分をフェイクのためだけにアピールしていた事であり、期待を煽るだけ煽ってから実際は全くの真逆である真の姿を明かした事であろう。驚かせたかった、注目を集めたかったという宣伝上の意図は分かるとしても、ユーザー側としては「騙された」形となるためかなり印象が悪く、マイナスのイメージが強くなってしまったのも仕方ない話である。
      • プレイヤーを騙し、驚かす仕掛けを盛り込んできた制作陣ではあるが、それが基本的に「物語を面白くする」というポジティブな方向に働いていた打越氏と中澤氏に対し、小高氏は賛否両論上等で良くも悪くもインパクト重視であり、本作もその傾向が宣伝面でも強く働いてしまったと言った所だろうか。
    • 長年ゲーム開発に携わった事で心境の変化があったのか、小高氏は「デスゲームとか人が死ぬとかそういう殺伐としたこと言ってないで、子どもに戻って子どものような気持ちで冒険してほしい」「四六時中人が死ぬゲームをやっていてもしょうがない」「最近は人と戦ったり、人と殺しあうようなゲームがいっぱいあって……そういうのあんまりよくないと思う」と、過去の作品からは考えられない発言をしている*11だったら最初からデスゲーム要素を前面に出さなくても良かったのでは。

余談:Apple Arcade特有の問題点

  • 本作はSwitch版に先行してApple Arcadeの独占コンテンツとして2020年9月に先行配信が行われていた。
    • 内容自体はSwitch版とほぼ同一でアクションパートの難易度の違い程度……だったのだが、Apple Arcade版はなんと終盤の展開に入る前にエンディングを迎える内容となっていた。
    • しかもエンディング後には「続きは完全版で2021年春更新予定」というまさかの展開となり、プレイヤーにとって謎の解明は2021年春、つまりSwitch版の発売までお預けされることとなった。
    • 終盤のどんでん返しや怒涛の伏線回収を特徴とする過去の打越・小高・中澤作品同様、本作もまた終盤に伏線が一気に回収される上、さらに配信時点で完全版の告知はなく*12、エンディングを迎えて初めて完全版の存在がわかる内容だったためこれが大きな批判を呼ぶこととなった。
  • 現在、Apple Arcade版はSwitch版発売と同時に更新データが配信されたことによりこちらも完全版としてプレイすることができる。
最終更新:2024年06月25日 11:39

*1 中澤氏も在籍。

*2 小高氏としては「これはライターの仕事じゃない」という部分のみに関わったという認識らしい。

*3 前述の作品にも参加しているが、元を辿れば打越・中澤両名の初期作品『Close to 〜祈りの丘〜』に出ていた声優もいる。

*4 ダンガンロンパシリーズでさえ、『絶対絶望少女』の悪役「希望の戦士」もその悪行にも拘わらず子供だからという事なのか全員生存している。

*5 元はアダルト同人ゲームだが、コンシューマー用にフルリメイクする際に中澤氏が監督を務めた。

*6 4Gamerのインタビューでは、インタビュアーが「ファミコンライク」「真のデスゲーム」と語っているほど。

*7 橋や海底トンネルを建設する「太平洋新国土軸豊予海峡ルート」の構想はあったものの様々な事情で凍結している。

*8 確かに『名探偵コナン&金田一少年の事件簿 めぐりあう2人の名探偵』ではシナリオの展開上殺人事件が幾度となく起こるのだが、表現面では直接的なものを可能な限り避けており結果CERO:Aとなったと思われる。

*9 80年代~2000年代前半頃のコロコロ読者をメインターゲットとした大人向けのコロコロコミック。休載後は連載漫画をコロコロオンラインに移している。

*10 実際のSwitch体験版は確かにデスゲーム部分を抜き出したものとなっている。

*11 この思想自体はダンガンロンパシリーズの頃から(作品の内容とは裏腹に)片鱗が見えてはいた。

*12 一応「2021年春にSwitch版で発売決定」とは告知はされていたが、完全版の存在については触れられていなかった