AI:ソムニウム ファイル

【あい そむにうむふぁいる】

ジャンル アドベンチャー

対応機種 PlayStation 4
Nintendo Switch
Windows
Xbox One
開発・発売元 スパイク・チュンソフト
発売日 【Switch】2019年9月18日
【PS4/PC(Steam)】2019年9月19日
【One/PC(Microsoft Store)】2021年9月30日
定価 7,480円(税込)
プレイ人数 1人
レーティング CERO:Z(18才以上のみ対象)
判定 良作
ポイント 人間とAIの異色コンビによる刑事サスペンス
「夢の世界を調査する」という斬新なシステム
全ての伏線を見事に回収するシナリオ
「提灯怖い!提灯怖い!」
チュンソフトサウンドノベル関連作品リンク


殺したのは AI が欲しかったから…




概要

極限脱出』シリーズの監督・脚本を手掛けた打越鋼太郎と同シリーズのプランナーを勤めた岡田昌による新作アドベンチャーゲーム。
舞台は現代に近い東京で、主人公である特殊班に所属する刑事「 伊達 (だて) (かなめ)」となり、自身の義眼の中にいるAIの相棒「アイボゥ」と共に連続猟奇殺人事件を調査していく。

本作発売前に打越氏はスパイク・チュンソフトを退社し、新会社トゥーキョーゲームスを立ち上げている。
そのため、氏がスパチュン時代に手掛けた最後の作品となる*1


ストーリー

東京。
11月のとある金曜日の夜。

降りしきる雨の中、ひとりの女性の遺体が発見された。
場所は廃墟と化した遊園地のメリーゴーランド…。

その遺体の顔には左目がなかった。
どうやら犯人にくり抜かれ、奪われたらしい。

一報を聞きつけ事件現場に訪れた刑事、伊達。
彼の遺体の顔には見覚えがあった。
なぜ、彼女が――

――これは、夢と現実を捜査し、失った記憶と因縁の殺人犯を追う、ある刑事と相棒の物語。

※公式サイトより抜粋。


特徴

本作では各地を移動し、関係者との会話でストーリーを進める他に、現場で証拠物件を調べる「捜査パート」と、重要参考人の夢の中に入って操作を行う「ソムニウムパート」というものが存在する。

「ソムニウムパート」は相手の夢の世界で擬人化された「アイボゥ」を操作し、制限時間内に事件に繋がる手がかりを探すというもの。
このパートの存在が他のADVでは見られないかなり変わった要素を持ち合わせており、本作の大きな特徴となっている。

捜査パート

  • 捜査する場所を選択した後に画面内に背景や人物をカーソルで選び、話を聞いたり調べたりすることで情報が集まり物語が進行する。一般的な推理ADVの調査パートと同様。
    • ただ調べるだけでなく「アイボゥ」の特殊能力であるズーム機能やX線機能、サーモグラフィ機能などを使って捜査することもある。
      • アイボゥはネットの情報なら瞬時に検索可能で、監視カメラの記録や電話の通話履歴などにも即アクセス可能というハイスペックぶり。そこから受け取った情報を武器に伊達は捜査・聞き込みを進めていく。
    • 事件に関わる物だけではなく全く関係ないシナリオフレーバーなど、プレイヤーを楽しませる要素が多数用意されている。
  • ある程度ストーリーが進むと、捜査中に発見した証言と証拠を重要参考人につきつける「取り調べ」や、ゲーム中の演出に会わせてタイミングよくボタンを押すことで展開が変化する「クイックタイムイベント」(QTE)も存在する。

ソムニウムパート

  • 本作の目玉となるパート。相手の夢の世界に入ることができる「Psync(シンク)装置」を使用し、重要参考人の夢の世界に潜入して捜査の手がかりを探す。プレイ感覚としては謎解きパズルに近い。
    • 夢の世界では主人公の伊達の代わりにアイボゥが擬人化した姿で夢の世界を歩き回る。数あるADVの中でも珍しく、キャラを直接操作する3Dアクション的なシステムとなっている。打越氏の関わった作品としては『ペプシマン』以来である。
    • 「ソムニウム(SOMNIUM)」とは、ラテン語で「夢」や「幻想」を意味する。
  • 本パートでは捜査パートとは違い夢の世界では6分間しか滞在できず、その時間内で捜査を完了しないと次へ進むことができない。
    • とはいえ、特殊な手法によりアイボゥが止まっている間は夢の世界の1秒の進行が100秒ごととかなり遅くなるため、焦らずにじっくり考えて行動する事が可能。
    • ただし移動時は動いた秒数分の時間が減り、後述する選択肢次第でも設定された時間が減る。
  • 夢の世界では現実の世界ではあり得ない、非論理的な世界で構成されている。
    • 例をあげると「部屋のスイッチを入れると骸骨が現れる」や「アイスピックが床に刺さっており、それを抜こうとすると近場にある装置が停止する」などといった常識が全く通用しない世界となっている。
    • その中で物や人物を調査しようとすると現実世界では見られない奇抜な選択肢が現れ、選んだ選択肢によって時間の消費が大きく違う。5秒で終わる選択肢もあれば120秒もかかる選択肢も存在したりと様々。
  • 選択肢によっては選択後に特殊なアイテム「TIMIE(タイミー)」を獲得できる。
    • これは選択肢の際にかかる消費時間を半減したり、10秒に固定するなどに短縮する効果を持っており、ソムニウムパートの調査では欠かせない存在となっている。
      • 入手したTIMIEは任意のタイミングで使用できる。
    • TIMIEの中には逆に特定の倍率に増やす「悪性TIMIE」も存在している。
      • 悪性TIMIEは取得後、次の選択肢で強制的に使用しなければならず、かつ通常のTIMIEを使用することはできない。また、悪性TIMIEの使用の撤回は取得した時点で不可能となっている。
      • ゲームの進行に関わる選択肢に悪性TIMIEが含まれているケースがあるため、次の選択肢で時間の消費が少ない無関係なものを選ぶなどして消費時間を抑える対策が必要となる。
  • 基本的にはアクションの消費時間と残り時間を照らし合わせ、TIMIEの入手場所と使い所を試行錯誤しながら、予測不能のオブジェクトを手探りで探索していく形になる。
    • 時間も移動しなければほぼ進まないので、制限時間制というよりライフ制に近い。
  • 途中、「メンタルロック」という障害壁が複数存在するが、これらは正しい選択肢を選ぶことで解除が可能となる。
    • すべてのメンタルロックを解除し、夢の世界の主である重要参考人の記憶の核心を突き止めればクリアとなる。
    • 最後の選択肢のみ、正解を選べば制限時間に関係なくクリアになる(制限時間自体は減るが、0.01秒で止まる)。
      • 但し、1秒以上残してクリアすればアルバムが入手可能。後半になると、最後の選択肢で制限時間が一気に尽きるようなパートが増えてくるので、アルバムが欲しければTIMIEは必須になる。

マルチエンディング

  • 本作はマルチエンディング方式で、主人公の行動によってストーリーの展開や結末が違ってくる。
    • 基本的にソムニウムパートで選んだ選択肢によってルートが分岐され、捜査パートの調査結果や選択肢によって分岐されることはない。
    • ただ結末が複数存在するのではなく、過去の打越作品同様にそれぞれのルート・結末に横の繋がりがあり、真の結末を迎えるにはこれらを巡って謎を解き明かさなければならない。
      • いくつかの分岐の中で物語の核心に迫るルートが存在するが、そのルートは進行途中でシナリオロックがかかり、他のルートを攻略するまでロック解除ができない仕組みとなっている。

やりこみ要素

  • 本作には様々な会話を聞いたり、ソムニウムパートで特定の条件でクリアしたり、隠しアイテムを入手すると「補記」と「アルバム」が解放されるやりこみ要素が搭載されている。
    • 「補記」は所謂「TIPS(用語集)」。各項目の補足説明的な存在で本作の世界観を掘り下げる。『』や『428 ~封鎖された渋谷で~』、過去の打越作品でも極限脱出シリーズや『Remember11 -the age of infinity-』でお馴染み。
      • 筆者(恐らく打越氏)の個人的な話が所々混ざっていたりと、楽しんで読めるものになっている。勿論、解説はしっかりしているのでネタに走り過ぎて解説になっていない事もない。
      • 終盤やクリア後にはストーリーの疑問点や語りきれなかった部分の補足も追加される。
    • 「アルバム」はキャラのラフなどの設定資料やネタ画像などの特別な画像を閲覧できる。

評価点

打越テイスト溢れる完成度の高いシナリオ

  • 極限脱出シリーズやinfinityシリーズで多くのプレイヤーを驚かせ、ストーリーに引き込んできた打越氏が手掛けただけあり、今作のシナリオもまた氏の持ち味が存分に活かされている。
    • シナリオ自体は人間の刑事とAI(義眼)の相棒で事件を解決する一風変わった設定で、過去の打越作品でもあまり見られないものではあるものの、刑事バディものとしてはしっかり作られている。
    • 「連続猟奇殺人事件」の事件を中心にストーリーを進めれば進めるほど謎が深まるのだが、終盤に近づくにつれそれらをすべて解き明かしていく展開となっており、プレイヤーがどんどんのめり込むような内容となっている。
    • 勿論、氏が得意とするSFミステリーの要素も多分に含まれ、『Ever17 -the out of infinity-』や『12RIVEN -the Ψcliminal of integral-』などで発揮されてきた、プレイヤーに強烈なカタルシスを与える展開も健在。シナリオ自体は勿論こと、登場人物の設定やゲームの設定まで至るところに伏線が張り巡らされており、終盤の怒濤の伏線回収は驚かされるであろう。
      • infinityや極限脱出のプレイヤーがニヤリとする展開や、逆にこれらのシリーズをやっていたが為にミスリードされそうになる展開もある。
    • ソムニウムパートによるシナリオ分岐も、ちょっとした行動の違いで以降の展開がガラリと変わってしまうため、初見では何故分岐が起こるのかよく分からない場合が多いが、事件の全容が見えてくるにつれて思い返すと納得できるようになっている。
    • また、事件に限らず登場人物達に関するストーリーも盛り込まれる構成のため、プレイヤーを飽きさせない。
      • 登場人物の内面を描く部分にもかなりの尺を割いているためキャラの掘り下げも深く、後述するように人を選ぶ面は強いもののギャグも多いため、クールな外観やCERO:Z(18歳以上のみ対象)の印象とは裏腹に涙あり笑いありの盛り沢山の内容となっている。
    • それでいてトゥルーエンディングは後腐れ無い大団円で、投げっ放しで終わったり後ろ暗い含みを持たせる事は一切無くしっかり後日談も描いており、クリア後の読後感は『Ever17』にも劣らないほどの良さである。
      • 極め付きは重いテーマに反してのある種はっちゃけたスタッフロール。様々な人と関わり、事件を追ってきたプレイヤーにとって笑いと多幸感に溢れた「最高にハッピーでピースフル」なエンディングであり、感動とカタルシスを高めてくれる粋なご褒美となっている。更にクリア後にはノンクレジットで鑑賞可能。
  • シナリオの量はクリアまでの平均時間が20~30時間。更に捜査パート、ソムニウムパートでの探索・お遊び要素もあるのでADVとしては満足のボリュームである。
    • フローチャートで自在にシナリオ間の移動が可能なため、ルート網羅のために何周もする必要があるADVと比べると早く終わる印象があるかもしれないが、逆に言えば同じシーンを何回もプレイさせられる冗長さは無いという事である。
    • 小ネタも豊富であり、関係無いところを見て回るのも面白い。極限脱出シリーズや打越氏がかつて一作携わったEVEシリーズのような調べる楽しみもある。
    • ソムニウムパートも全部で13と、『ZERO ESCAPE 刻のジレンマ』のクエストパート並に用意されている。更にパート内にも分岐があるため、足りないという印象を抱くことは恐らく無いだろう。

個性豊かなキャラクター達

  • AI搭載の義眼を持つ主人公、高校生ネットアイドルのヒロインを始め、隠れアイドルオタクのヤクザの組長、スナックのママ(オカマ)などといった個性溢れる人物達が登場しストーリーを盛り上げる。
    • そして一部の登場人物を除き「記憶と左目がない」「怪我で右腕が動かない」などといった「訳あり」の過去を持っており、それらは前述のシナリオの伏線要素となっているのもポイント。
    • 登場人物1人1人に身長、体重、年齢、好きなもの、嫌いなもの、趣味、特技とプロフィールが異様に細かく設定されており、そこにもネタが仕込まれている。メインキャラどころか、モブ同然のキャラにまである。
  • 主人公の伊達は見た目ではクールで格好いい大人の男性で、頭脳面でもフィジカル面でも鮮やかに活躍する。そして人情味もあり、時には熱くもなれる。
    • その一方、ギャグのはっちゃけ方も凄く、残念なイケメンぶりも全編に渡って披露する。
    • 相棒のアイボゥも普段の愛らしい(?)マスコット姿*2に反して非常に有能且つ、擬人化体も妖艶な美少女なのだが、やはりギャグ面でも大いにはっちゃける。両者とも有能なだけではない残念さとのギャップや、ソムニウムパート内の夫婦漫才は本作の魅力の一つである。
  • キャラクターデザインは『ノーモア★ヒーローズ』シリーズなどを手掛けたコザキユースケ。主人公の伊達を始め、多くがスタイリッシュで洗練された造形となっており、打越氏が「ジャケ買いしても良い」と公言していたほど。
    • 老若男女様々なキャラが登場するが、全体的に見ると平均年齢は高め。主人公からして三十路であり、他も30代以上のキャラが多く大人の雰囲気が強いが、コザキ氏のデザインにより堅苦しさは感じさせない。こう言った作風が不慣れな人も手を出しやすく、逆に若者達が織り成す物語に飽きてきた人にもお勧めできる。
    • その一方で70年代頃のアニメのようなデザインのキャラもいたりと、どこか混沌とした雰囲気も実に個性的で特徴的。
  • エピローグ~エンディングでは死亡したキャラを除き、脇役含めたほぼ全員*3が登場して会話ができるという大盤振る舞い。キャラクターを大事にしている事が窺える。
    • その脇役含むキャラの殆どが一堂に会し、一丸となって演出するスタッフロールは正に壮観である。

高クオリティの3Dキャラクターモデル

  • 極限脱出ADV 善人シボウデス』以降の打越作品の流れを汲んで、本作でもゲーム内に登場する人物はすべて3Dモデルで描かれる。
    • 動きのあるイベントはアニメかドラマのようなムービー形式で描かれ、会話シーンでもウィンドウにも顔グラフィックの代わりに3Dモデルが表示されるこだわりぶり。口パクやモーションも勿論ある。
    • 『刻のジレンマ』でも3Dモデルの出来や映画のようなイベントムービーは評価されていたが、本作はハードの進化*4に伴って完成度が更に高くなっており、各キャラの専用モーションは勿論のこと、主人公が話しかける際に必ず目を合わせるなど、細かいこだわりも見ることができる。
  • ヒロインのイリスのダンスはアクターによるモーションキャプチャーによって本格的に作り込まれている。
    • その成果が最も活きているのが上述したトゥルーエンディングである。これから本作をプレイする方は、是非ともその手で事件を解決し、その「目」で確かめて欲しい。
    • しかもクリア後には背景とダンサー(男女問わず)を指定して自由に鑑賞も可能。
  • また、3Dである事を活かして調査画面は勿論、会話画面も通常のADVのような固定された画面ではなく、状況に応じて逐一変化することで躍動感と臨場感のある構成になっている。
    • 会話相手や調べるオブジェクトを小ウインドウで表示し、そこから直接アクセスさせたりと、他のADVではあまり見られないプレイ感覚も体験できる。

全編フルボイス

  • 本作はモブも含め、登場人物全員にCVが付いており、かつ全編フルボイス構成となっている。声優陣も、昨今の人気声優からベテランまで幅広く起用しており、演技力は申し分無い。
    • ノベル形式のテキストアドベンチャーなら標準的だが、本作のように調査・探索要素の強い作品では大抵パートボイスであり、フルボイスはなかなか無い。
  • 各声優陣のボイスは各キャラクターの個性や特徴をしっかりと引き出しており、違和感のない演出を行っている。
    • アイボゥは現実におけるマスコット風のゆるキャラ姿でも普通の女性ボイス&男性口調で話すので最初はややシュールに思えるかもしれないが、捜査を進めて行くうちにしっくり来るはずである。

親切設計のユーザーインターフェース

  • 音声再生可能なバックログ、フローチャート&シナリオジャンプ機能、オートセーブ、メッセージスキップ、TIPS、皮肉抜きで充実したオプションなど、ADVに必要な機能はほぼすべて搭載。快適なプレイができる。
    • シナリオジャンプはかなり細かく飛べるようになっており、戻りたいシーンにはほぼピンポイントで戻れる。
    • また、各機能のチュートリアルは勿論のこと、ルートをクリアするとどういった事をすれば良いかの説明をきちんと行っており、この手のADVに慣れていないプレイヤーの誘導に成功している。

豊富なパロディ・小ネタ

  • 本作はメインとなる猟奇殺人事件のストーリーや、各登場人物の過去がかなり重く作られており、これを緩和するためなのかギャグ演出が随所にちりばめられている。
    • ソムニウムパートに至っては伊達とアイボゥの序盤の会話が実質コントのようなやりとりで始まるので、これでもかというぐらいギャグが多い。おまけにどのギャグもすべてフルボイスなので、内容お構いなしにちゃんと喋る
      • 特にアイボゥは眼球の時はひたすら優秀なのに、ソムニウムパートに移ると途端に残念な美少女と化すというのも本作ならではの笑い所である。「フォークリフトで豪快に海に落ちる」「熱々の鍋の中身をがぶ飲み」「水の入ったバケツを頭から被る」など、実に体を張ってくれる。
    • ギャグ漫画やコント番組のようなストレートなギャグに加え、ネットでよく使われているネタやパロディネタ、下ネタも多い。
      • ドラム缶を調べて「こんにちは。ぼく、ドラム缶」。扉を開けて「ちわーす。三河屋でーす」など唐突なエンタメ、漫画、アニメのパロディは本編の良い塩梅である。
    • 他のADVのようにキャラの台詞で済ませるばかりではなく、3D作品である事を活かしたアクションや演出でもしっかりギャグを表現する。数あるADVでも無駄に豪華な作りになっている。
    • かの『Minecraft』のパロディ*5も盛り込まれているのだが、なんとこれが丸々ソムニウムパートのステージになっている(しかも2種類)。
      • このステージではアイボゥもあのキューブの集合体のようなゴツゴツした姿になり、その姿のままダンスまで披露する凝り様。
    • 時には「芸能事務所の受付嬢と熱海に駆け落ちして屋台の射的屋のおやじとして生きていく」という『街』『428』ばりのトンデモENDすら存在する(しかもトロフィー/実績付き)。
    • 但し、賛否もある。詳しくは後述。
  • スパチュン作品のADV作品では恒例となる「過去作品に関するネタを会話シーンにさりげなく入れている」要素は本作も健在。
    • 『街』の七曜会や、『かまいたちの夜』の大阪編のオマージュをはじめとした原作を知っている人ならニヤリとするネタが仕込まれているのだが、その中でもズバ抜けて「意味がわかると強烈なネタ」が仕込まれている。
      + 強烈なスパチュンネタ
    • とあるパートにおいて「店内に飾ってあるサイン色紙」を調べることができるのだが、そのサインを提供した人物として『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生』『かまいたちの夜』『極限脱出 9時間9人9の扉』より1人ずつ名前が登場している。
      • その人物と言うのが、いずれも各ゲーム内においてとてつもなく重要なポジションを持っているというキャラであり、元ネタをプレイ済みの人からすれば驚愕ものの演出となっている。『999』に関しては他2作ほど露骨な人選ではないが、それでも相当に重要なキャラである。
      • しかも各サインを調べるごとに各ゲームの意味深なSEが鳴る他、この3人のサイン色紙をすべて調べるとストレートな名前の実績/トロフィーが解除されるというおまけつき。上記の作品を未プレイで、これから手を出そうと考えている人は注意が必要かもしれない。こんな物仕込んでいいのかスパチュン。

賛否両論点

ソムニウムパート

  • 本作の目玉となっているソムニウムパートだが、その世界観やゲームシステムにおいて賛否が分かれている、
    • 評価点でも触れた通り、ソムニウムパートは現実の常識が通用しない非論理的な世界観で構成されており、その世界に出てくる調査物も不可解な選択肢や動作を行うものばかりである。一度正に「常識は、今のうちに捨てておいてください」と言わんばかりの不条理世界であり、ただ現実的なADVでは味わえない超常的体験ができる。
    • しかし本作は捜査・推理を前面に押し出しているため、ロジカルな推理ゲームと期待した人には、「推理をしようにも推理できないもの」としてパート自体を面白くないと思う人もいる。
      • 但し、元より本作はネット記事などでそう紹介される事はあっても、公式には「推理アドベンチャー」とは定義されていない
      • このゲームで作り手が想定しているソムニウムパートのプレイスタイルは、まずは時間制限を超えて失敗することを前提にフィールド内にあるオブジェクトを片っ端から触ってみて、リトライを何度も繰り返しながら効率的なクリア方法を導き出す、というもの。
      • なお、各ソムニウムパートには何かしらのテーマのようなものがあり、そのテーマに沿ったオブジェクトを調べることでクリアに近づけるようになっている。なので、総当たり的な探索が必須というわけではなく、そのテーマを暴き出すことこそが推理要素と言える。
  • 「選択肢を選んで制限時間を消費する」というシステムも癖が強い。
    • 限られた時間でトライ&エラーを繰り返してクリアを目指すパズル系ゲームは珍しくないが、本作は「選択肢を選ぶことで制限時間が減る」形式なので、「制限時間を目一杯使って正解を探す」ということができない。試行錯誤すればするほど早くタイムオーバーが迫り、やり直しとなるケースが多く、最初は緊張感として働くもののこれを何度も繰り返すので作業感が出てしまっている。
      • これが前述の不条理な夢世界と合わさり、「常識的な推理が通用しないのに、では推理材料を集めようと探索をすると制限時間が足りなくなる」という噛み合わせの悪さに繋がっている。
    • メンタルロックを開ける度にチェックポイントが入るシステムを採用しており、「リトライ」を選択するとそのポイントに戻れるのだが、何故かリトライがポイント制であり、ポイントを使い切ると最初から「リスタート」するしかなくなる(リスタートするとポイントも回復する)。
      • ポイントは3なのだが、戻るチェックポイントが遠いほどポイントも多く消費する。具体的には2つ前のメンタルロック解除の地点に戻るとポイントも2消費してしまう。3つ前に戻れば即使い切ってしまう。
    • ソムニウムパートにおいてもネタ要素の選択肢や面白い反応がいくつも存在するため、それを見たい人にとってもこのライフ制のような制限時間システムとは相性が悪い。
    • 打越氏の過去作『パンチライン』のイタズラ・イタゴラパートは宣伝の割にゲーム性が薄く、ほぼおまけ扱いだった事の反省があるのもかもしれないが、今度は逆に少々取っ付きにくいものになってしまっているのが否めない。
    • 調べるポイントはミニマップで確認できるが、調べたいポイントをマークしたりマップを回転したりもできずキャラの向きが表示されないため、位置関係や目的地が把握しづらい。そのため、中盤以降はこまめにマップを確認していかないとあっという間に迷子になる。

少ないながらも強烈なインパクトを誇るスプラッター要素

  • さすがに「猟奇殺人事件が題材」であることとレーティングがCERO:Zのだけのことはあり、一部シーンでスプラッター要素が含まれたショッキングなシーンが演出として組み込まれている。
    • シーンひとつひとつが強烈なインパクトを持つシーンだらけなので、こういった演出が苦手な人には当然向かない。
      • ゲームを始めるとまず描写される「片目がくり抜かれた死体」の時点で駄目な人は、他のシーンも辛い演出の連続になるだろう。あるルートで見せられる殺害シーンはトラウマになるレベル。
      • これらを越えて最終シナリオに辿り着いても、クライマックスではそれまでの描写をも上回る強烈なスプラッターを見せられる。内容的には残酷というより悲壮なシーンなのだが、かなりダイレクトに映るため、(その人物の姿も相俟って)衝撃は大きい。
    • 他のCERO:Z作品のグロ描写と言うと大抵はイラストで描かれているのだが、本作は3Dモデル。しかも時には動作付きでダイレクトに描かれるので、きつさが増していることも。
    • ただし、一般的なCERO:Z作品や、隙あらば残虐な展開に持って行く血みどろ路線だった極限脱出シリーズ(特に『刻のジレンマ』)に比べると数は少なく、バイオレンス・スプラッター要素自体は(作品全体で見れば)控えめである。無論、レーティング相応の表現はあるが、ある程度の耐性があれば過度に身構える必要は無い。

捜査パートでの謎解き要素の薄さ

  • 捜査パートでも「凶器は何なのかか」「犯人はどこへ逃げたか」みたいな謎を選択肢で推理させるギミックが存在するのだが、謎に関するヒントが多数あるので、極限脱出シリーズのようなものを求めていると肩透かしを食らう。ソムニウムパートではプレイヤーの選択によってルートが変化したりバッドエンドになるが、捜査パートでは謎解きに失敗しても展開は変わらない。
    • 証人に証拠を突き付けて尋問するシーンでは間違えても伊達やアイボゥに「これじゃない」「違うんじゃないか?」と即指摘される*6
      • 複数の選択肢から正解と思うものを選ぶケースもあるが、こちらも間違えても即座に否定されるので精神的なデメリットを除けば影響は無い。または、質問しておいて結局全部の選択肢を選ぶというケースも。
    • ただ、本作はどちらかといえばストーリー重視なのと、過去の打越作品では謎解きが異様に捻くれて分かりにくいケースもあったため、ストーリーに専念できるという見方もできる。

見た目に反して強烈なギャグ要素

  • 上述の通りギャグも満載なのだが、これが一部シーンとかそういうレベルではなく、シナリオ全体に満遍なく存在し、進めるだけでも容赦なくギャグが入る。
    • 関係ない選択肢を選んだりオブジェクトを調べて発生するギャグもあれば、メインシナリオのシリアスなパートでも唐突にギャグパートが発生する。
    • 人を選ぶネット・パロネタ、下ネタもあるため、笑える人は大いに笑えるが、それでない人にはダダ滑りの状態のギャグを聞かされるようなものでモチベーションの低下を招く要因となってしまっている。
    • 言ってしまえば、infinityや極限脱出的シリアスさの中に『パンチライン』的なノリを詰め込んだようなもの。前者にもギャグ、後者にもシリアスはあったが、今作は双方で突き抜けた作りと言える。
      • 勿論、楽しめる人は楽しめるし、物語の陰惨さへの緩衝材として働いているという点では長所でもある。しかし、かなり人を選ぶ要素になってしまっているのもまた事実。

シナリオの流れ

  • 本作のルートは基本的に「ソムニウムパートの選択次第で2つルートのどちらかに分岐する」方式であり、フローチャート上で最初のソムニウムパートを起点に大きく左右に分かれることから、これらは「左ルート」または「右ルート」と呼ばれている。このどちらのルートを最初に選んだかで本作の印象が全く違ってしまう。
    • 左ルートを選んだ場合、純粋な推理サスペンスとしてシナリオが展開するのだが、逆に右ルートを選んだ場合オカルトと電波にまみれたシナリオが展開される。
    • 進めば進むほどオカルトや電波要素が強くなり、その原因が解明されない上に後味の悪い状態で終了するので、左ルートと比べると消化不良具合が強い。
    • その違和感の大きさは「右ルートを先にやって面白味を感じなかったが、そのあとに左ルートを進めたらすごく面白かった」という評価があるほど。
    • 無論、右ルートも投げっぱなしというわけではなく、ちゃんと最後のルートまで進めればオカルトや電波要素の真相が解明されるのだが、その解明までに他のルートをすべてクリアする必要があるので先に右ルートを攻略してしまうと真相が長いこと解明されない状態が続いてしまう。
    • ソムニウムパートのどこの選択が分岐かというのが、通常のADVよりも分かり辛いことも指摘されている。抽象的なヒントと枝分かれした図は表示されるが、初見では分かりにくい。
      • さらに話を読み進めるだけでは、どちらが「右ルート」「左ルート」かが分かり辛い。ただ、これはフローチャートを見れば分かる。
  • また、本作のメインストーリーは「猟奇殺人事件を調査し、犯人を見つけて解決する」のが目的なのだが、前述の通りラストのルート終盤に怒濤の伏線回収が行われるため、真相を突き止めるまでの流れが長い。
    • 一つの事件を追うなら終盤まで解決されないのは当たり前ではあるのだが、本作はすべてのルートを回る必要があり、最終ルート以外は多くの謎を残して終わるので、事件の真相には近づけない。
      • 例を挙げると「そのルートの主要人物が抱えた問題は解決する一方、肝心の事件は何も解決しないまま、スタッフロールが流れてエンディングを迎える」「容疑者死亡によって事件は終わり、真相は闇の中」など*7
      • また、一応のエンディングを迎えることすらなく、「この先のルートはまだ未解禁」というゲーム上の理由のみで唐突に進行がストップされ、他ルートの巡回を強制される場面もある。
    • この構成は打越作品ではお馴染みであり、終盤のカタルシスの為に欠かせない要素でもあるのだが、今作は「猟奇殺人事件の解決」という大目標が設定されているため、真相究明を求めてしまうと人によってはモチベーションが維持しにくい。
      • 特に氏の過去作を知らない人、この手の作品に慣れていない人は、これらに耐えたが故のカタルシスが終盤に待っているのが分からずそうなりやすい*8
      • 逆に慣れている人からは「スムーズに進めて20時間程のADVと考えると、そこまで長くはない」と言う意見もあり、気にならない人なら寧ろクリフハンガー的な各ルートラストの演出で別ルートへの意欲を高められるだろう。
    • また、『ルートダブル -Before Crime * After Days-*9のように同じような場面や回想を繰り返す事も無いので冗長さという問題は無い。回想や再現シーン自体は多いが大抵はコンパクトにまとめられている。
      • ただ、再現を演出としてコンパクトにまとめたが故の処理落ち問題はある(後述)。

一部登場人物の個別ルートのシナリオ

  • 評価点でも触れたとおり、本作の主要な登場人物は個性豊かな一面を持つのと同時にほぼ全員「訳ありの過去」を持っているという、一癖も二癖もある設定となっている。
    • 特にとある人物をフォーカスに当てたルートは、その強烈な設定とシナリオ内容から賛否がかなり分かれている。
+ 一部登場人物に関する大きなネタバレ
  • 「真津下 応太」は小学生のような外見ながら実年齢は24歳のネットアイドルオタクという強烈な設定で、初登場時からして「SNS上で好きなアイドルのファンとアンチの自作自演を行う」「殺人現場に小学生を置いて自分だけ逃走し、しかもそれを隠す」など、第一印象も最悪である。しかもルートによって 警察官の伊達に暴行を働くれっきとした犯罪者でもある。 しかし彼を中心に展開する「応太編」では更にドぎつい境遇が判明する。
    • 詳細な内容はネタバレの為避けるが、要約すると両親に不幸が起こったにもかかわらず、甘やかされて育った応太はそれを省みる事なく何年も好き勝手にしていたという展開である。その様子を詳細に語るルート終盤のソムニウムパートは、人によってはかなり心をえぐられる内容となっている。
      • 応太は母までが事件に巻き込まれた事でようやく自身を顧み、自分の境遇と過去を打ち明けるのだが、それを知った伊達もアイボゥとの会話で事件に対するフォローをかけつつも、「応太はクズ人間」とハッキリ言い放っている*10
    • 無論、投げっ放しでは終わらず、最後は真津下家に家族の絆や応太の改心がしっかり描かれる。トゥルーエンドの後日談でも同じように心を入れ替えた様子が語られている。
      • だが、それを踏まえても「このルートだけはいらなかった」という人がいるほど本作の評価を左右する存在となっている。

問題点

機種によって頻発する処理落ち

  • 本作背景から人物まで至るところ全て3D演出で展開されるのだが、処理落ちが発生しやすくなることがある。
    • 会話の途中で読み込み処理を行っているシーンもあるため、読み込み中はフレームレートが大きく落ちることもある。特にSwitch版は顕著で、フリーズと間違えるほど深刻な場合も。
    • 本作ではサブウインドウで再現シーンを映す演出が多用されるのだが、これの読み込みが負荷が大きいらしく、2~3秒待つ事もしばしば。特に後半以降は頻度が上がるので、負荷もより大きくなる。

一部キャラクターのトンデモ設定

  • 本作は比較的現実に近い設定で物語が展開されるが、「Psync装置」やAIである「アイボゥ」の存在などのSF要素が含まれており、過去の打越作品同様に超理論の超科学が存在する、ある程度現実離れした世界観となっている。
  • それは良いのだが、一部明らかに無茶なトンデモ設定が存在している。
    • そうは言っても『12RIVEN』で問題視されたようにあからさまな矛盾があるという訳ではない。本作の「トンデモ」とは、ギャグに突っ切ったという意味である。物語の雰囲気を壊すようなものまでいくつか含まれており、好意的な意見は少ない。
    • この影響もあり、本作で頻繁に訪れるアクションシーンでは「マシンガンを射撃する敵を無傷で倒す」「至近距離で乱射されているのに銃弾が全く当たらない」などリアリティに欠けたご都合主義なシーンが多い。
+ よく槍玉に挙がるトンデモ設定
  • 沖浦 みずきの怪力設定
    • 物語の中心人物のうちの一人となる小学生の「沖浦 みずき」だが、小学生とは思えない怪力の持ち主であることが判明する。
    • その力は当たり前のようにバーベルを軽々しく持ち上げ、過去には同級生の前歯をへし折った力の持ち主である。
      • 当初は本人もその力に気付かず、どうせ多勢に無勢だと反撃もしなかったので学校でいじめられていたのだが、本編の1年前に伊達に修行を課せられた際に気付き、以降はその力を公然と使っている。
    • この設定はゲーム中にかなり奇抜な理由なものの説明*11はされている。
    • だが、特定のルートのバトルシーンにおいて「小学生が愛用の鉄パイプを使って銃を持った大量の傭兵を相手に対戦している」という場面があり、ギャグマンガのような雰囲気になってしまっている。
    • 無論、この戦闘力に物を言わせて「もう全部あいつ一人でいいんじゃないかな」的なチート展開で片付ける事は無く、どのシーンでもみずきは最終的に何かしらピンチに陥っては伊達に助けられている。だが、それでもこの演出が受け入れられるかは人による。
  • 伊達のエロ本設定
    • 主人公の伊達はエロ本*12に執着しており、「『エロ本』という単語を耳にすると通常よりも反応速度が3.6倍速くなる」という設定を持っており、これがギャグシーンのひとつとして完結するならまだ良いのだが、よりによってこのエロ本反応能力が本作のメインシナリオにも関わるバトルシーンにおいて発揮されるという展開が行われる。
      • 簡単に説明すると敵に包囲される→アイボゥが「あそこにエロ本があるぞ!」と言う→それを聞いた伊達がエロ本に向かって素早く移動し包囲網を突破→そのついでに敵を倒すというもの。
      • これが1シーンだけならまだ良いものの、バトルシーンにおいて高確率で複数出現する。『パンチライン』のミヤケンか。
    • 伊達は他にも「人を抱えたまま装甲車の荷台に飛び乗る」「アッパーで人間を数メートルも殴り飛ばすなど」常人離れした身体能力を見せる事もあるが、上記のみずきの件やエロ本に比べれば目立ってはいない。
  • 多国籍マフィア達のエロ本設定
    • エロ本に反応する設定は伊達に限らず、多国籍マフィアにまで似たような設定が存在する。
    • 伊達がマフィアに向かってエロ本を投げると、マフィア達が警備そっちのけでエロ本に注目し、その後伊達達によって一網打尽にされるというどこかの敵兵以上に無能*13な一面を見せる。
  • これらのトンデモ設定は主にメインシナリオではバトルパートで展開されるため、他のギャグを許容していたプレイヤーでも「バトルパートだけは白ける」といった意見もあるほどの印象を与えてしまっている。
    • 捜査パートのギャグ要素は関係ないオブジェクトを調べるなど任意イベントになっているものが多いが、バトルパートのギャグは必ず目にすることになる。
    • 後に公開されたファミ通のネタバレ座談会でこれらの設定の経緯が説明されているのだが、ゲーム中では一切触れられないため取って付けた感が強くなってしまっている。
    • トンデモ設定で超人的バトルを展開していた『パンチライン』のノリとも言えるが、あちらは世界観に沿った理由付けや説明が作中で成されており、バトルにおけるシリアスとギャグのメリハリもあった。

一部ソムニウムパートの難易度

  • ソムニウムパートは物語が進むにつれて難易度も上がるのだが、その中でも難易度が高いというより理不尽なステージが存在している。
+ どのように理不尽かと言うと…
  • そのキャラの夢世界は真夜中の森の中
    • 真夜中なので視界が非常に悪く、アイボゥの周り以外の景色は一切見ることができない。マップを見ない限りどこにいるかもわからない上、どこを回っても同じ景色ばかりなので非常に迷いやすい。
    • しかも面積も広めで、遠方にある小さな名前表示から目的のオブジェクトをしっかり見極めないと方向も把握できない。立ち止まっている間は時間進行が遅くなる恩恵を最も感じられるステージだろう。
    • また、クリアに必須ではないオブジェクトからTIMIEを獲得して活用しないとクリアできない難易度の高さを誇っていおり、理不尽さに拍車をかけている。
  • 他にも難易度が高いソムニウムパートは存在するのだが、全景が見えるだけでも理不尽さは感じられない。

特定の登場人物の扱い

  • 本作の登場人物のうち、一部ルートを除いたすべてのルートにおいて非常に扱いが悪いキャラが存在する。
    • これがモブキャラならまだよかったものの、重要な登場人物となるため、その扱いの悪さが非常に目立っている。
+ その登場人物とは…(深刻なネタバレ)
  • 左岸 イリス」。本作のヒロインにあたる人物である。
  • 実際にストーリー全体で深く関わる人物なのだが、その扱いの悪さはヒロインとは思えないほどであり、一部ユーザーには「実はアイボゥが真のヒロインではないか」と言わしめている。
    • 基本的に最後のルートである「解決編」以外の全ルートにおいて何らかの形で死ぬ展開になっている。『アイドルは100万回死ぬ*14』か?
      • 「必ず死んでしまうヒロインを助ける為に奮闘する作品」は珍しくなく、本作もその系統と考える事も可能だが、その当人が初登場時にいきなり脅迫まがいの方法で伊達への同行を求めるという問題行動を起こし、片方のルートでは打越作品でちらほら見かけるような電波キャラ全開で伊達に接するなど、プレイヤーによってはただ不快でしかない描写が少なからず存在するキャラクターとなっている。また収入源がほぼない応太が多額の金をイリスに貢いでることも含めて「可哀想」や「助けたい」という感情も湧きにくい。
    • 別ルートに至っては猟奇殺人の容疑をかけられる上、特定の場面以降一切出てこなくなる。
      • ここでさらに分岐するルートの終盤で「イリスが生きていた」という話が出てくるが、別の分岐ルートを解禁して話を進めるとそのイリスは「イリス本人ではなく、イリスのようななにか」であり、イリス自体はもう生きていないという事実が遠回しに判明する。
      • それ故、こちらでは他方にあったような伊達と行動を共にしたり絆を深める展開は無く、それどころか潔白とは到底思わせない不可解な行動が目立ち、プレイヤーに親近感ではなく猜疑心を植え付けるようなシーンが多い。
    • ヒロイン相応の扱いを受けているシーンも勿論あるのだが、その前に与えられる悪印象が強過ぎてやはり一般的なADVのヒロインのような好感は湧き辛い。
    • 無論、これらが投げっぱなしということはなく、「解決編」のルートでは生存しており、殺人容疑をかけられた経緯や不可解な行動の理由、電波キャラになってしまった経緯も全ルートを巡ると説明されるのが救いではあるが。
    • 尚、打越氏は元々はイリスの母の瞳の方をヒロインに据えるつもりだったらしい。主人公が30代の本作でヒロインも30代にすることで大人の愛を描く予定であり、国内では厳しくても海外では受け入れられるだろうと考えていたのだが、コザキ氏から上がってきたイリスの絵を見て考えを変えたとの事。この路線変更も影響しているのかもしれない。
      • 実際の所、ストーリー全体を見るとイリスだけではなく瞳もアイボゥもヒロイン級と言えるほど重要なポジションにあり、複数のヒロインが存在すると捉える事も可能な作りになっている。変にイリスばかりを「ヒロイン」と意識しない方が混乱しなくていいかもしれない。
  • 他の登場人物の行動にも理解に苦しむ部分がある。
+ (深刻なネタバレ)
  • 真犯人は序盤のメリーゴーランドでスマホを馬の中に隠したのだが、その隠した理由は 「面白そうだから」 。このスマホのせいで伊達が真相に近づいたのは言うまでもない。
    • 一応、真犯人はサイコパスなので、常人には考えられない価値観の持ち主という擁護もできるが……。

捜査パートの問題

  • 調べられるオブジェクトが多いのは良いのだが、意味のないオブジェクトも多い。
    • 特に突っ込みようの無い普通の家具はそのパターンが目立ち、テーブルを調べて「テーブルだ」、ロッカーを調べて「ロッカーだ」などただのオウム返しで面白みがないものが少なくない。
      • 一応、伊達が話を繋げたりアイボゥやその場の人物が反応してくれることもあるが、数は少ない。
  • 調べたいオブジェクトにカーソルを合わせて調べるのだが、オブジェクトの当たり判定が本当に見かけどおりの範囲にしかないので、小さいもの、細長いものを調べたい場合カーソル合わせが面倒である。画面アップも一部場面でしかできない。

その他

  • 補記がストーリー上では飛べない。
    • 『街』や『428』では用語がTIPSに追加されると即座に参照できたが、本作では「追加された」というアナウンスすら入らない。そのため、どの話の補記なのか分からなくなることがしばしば。
      • どちらかと言うと、アルバムと同様に後からまとめて参照するおまけのようなものに近い。
  • メニュー画面からロードが出来ないので、一旦タイトル画面に戻る必要がある。一般的なテキストADVとは違う事情もあるのだが、クイックセーブ&ロードも無い。
    • フローチャートから細かく移動できるので困る事は少ないのだが、セーブしたポイントにダイレクトに戻りたい時は少々不便である。また、ロードすると直近のシナリオの流れを振り返る演出が入るので、やや時間が掛かる。

総評

ソムニウムパートのシステムや世界観、満遍なくちりばめられているギャグ要素、そして強烈なグロテスク要素など人を選ぶ部分は多いが、個性豊かなキャラクター達が織り成すシナリオの完成度は高く、それらさえ合えば打越作品のファンは勿論のこと、ADV好きにも強くおすすめできる作品である。
現在は体験版が配信されており人を選ぶ要素は概ね集約されているため、気になる方はまずそちらに触れてから判断することを推奨する。体験版で面白いと思えたなら、本作は間違いなく楽しめるだろう。


余談

  • キャッチフレーズの「AI」は文字通り「人工知能」でもあるが、読みは「エーアイ」ではなく「アイ」である。
    • 日本語で文字通り「愛」と、目を英語で言う「Eye」と、私を意味する「I」と、様々な意味が込められている。これらの詳しい意味合いはシナリオを読み進めばわかるだろう。
    • 各章にも「容態youdAI」「觸媒syokubAI」など、「AI」を含むタイトルが付けられている。ソムニウムパートのステージ名も同じく。
      • ヒロインの持ち歌で本作のエンディングテーマである「虹ノ矢ハ折レナイ」にも「アイの火は消せない」という歌詞があり、曲名も「nizinoyahaorenAI」で「AI」が入っている。
  • 本作は本来2019年の7月に発売予定だったのが9月に延期。そしてその9月は『モンスターハンターワールド:アイスボーン』や『ゼルダの伝説 夢をみる島 (Switch)』の発売月であり、その次の10月は『ペルソナ5 ロイヤル』の発売と、超有名シリーズの話題の新作にこれでもかと挟まれ、かつCERO:Z指定で宣伝がしにくかったからなのか、初週の売り上げはPS4版が2267本でSwitch版が1767本と厳しい結果となってしまった。
    • 売り上げは厳しかったが、本作自体は国内・海外共に高く評価されており、海外のメタスコアでは2021年6月時点で80点とかなり高いスコアを得ている。
  • 4Gamerのインタビュー記事によると本作ははじめからCERO:Zをターゲットに作られていたことが判明する。
    • 打越氏によると「極限脱出シリーズでも人体欠損が必要な面白いトリックを考えていたが、CERO:D(17歳以上対象)の範囲内では納められずそこがすごく嫌だった」と語られている。バラバラ死体や人間を酸で溶かす演出でもまだ物足りなかったのか…。
  • 本作の発売から1ヶ月半近く経った2019年11月2日に超ネタバレ座談会の記事が公開されており、開発秘話やゲーム中では語られなかった各キャラクターの(問題点のトンデモ設定も含めた)掘り下げも行われている。
  • 評価点でも書いた通りCGのクオリティ、声優陣の演技力共に高い本作だが、その中でもみずき(CV:黒沢ともよ*15)は担当声優のあまりの演技力から、ボイスを聞いたモーション班がさらにクオリティの高いモーションに差し替えたという逸話がある。
  • 本作の公式アカウントとして応太とイリスのTwitterアカウントが実在している(リンク)。
    • 双方のアカウントで本作のシナリオの一部の流れをTwitterの投稿で再現実況したり、イリスに至ってはYouTuberとして動画を投稿しており、作中のネットアイドル活動を現実にやっているかのような作りになっている。ちなみにこちらのイリスは設定上はスパチュンと打越氏の共同プロデュースという事になっている。
      • 中文字幕版も同時に上げていたり、海外ユーザー向けの英語版チャンネルまで用意する凝り様だった(Twitterも英語版あり)。
      • 挙句、発売前後には本作の実況プレイ動画まで上げている。まさかのヒロインによるセルフ実況プレイである。
    • しかしこれが発売間近になると、突如ツイートが途絶えたり、イリスが殺されそうになっている動画が公開されるなどと緊迫の演出が成され、製品版の宣伝として機能していた。
    • その後も発売一周年となる2020年9月19日まで積極的にツイートが続いた。以降は基本的にツイートは行っていないが、RTはしているのでアカウント自体は生きてる模様。
      • 2022年に至っても新年の挨拶や、打越氏の次回作『ワールズエンドクラブ』の発売、本作の続編発表の際などにまたツイートを投稿している。
+ 発売前のセルフ実況プレイ

  • スパチュン作品ネタが盛り込まれているのは上述した通りだが、打越氏の過去作を想起させる要素もある。
    • 本作ヒロインのイリスは「A-set」の名義でネットアイドルとして活動しており、ファンからは「あせとん」の愛称で呼ばれているという設定である。
      • そして打越氏の代表作『Ever17』では、ヒロインの1人が主人公の顔の落書きを消すために有機溶媒のアセトンを塗ったくるギャグシーンがあり、A-setのキャッチコピーも「ネット界の揮発性溶媒」である。氏がこれらを意識したのか、ただの偶然なのかは謎である…。
      • 他にも『Ever17』に登場したとある単語が全く別の意味で登場するシーンもある。これは意図的であろう。
    • また、深刻なネタバレになるので詳しくは書けないのだが、『Remember11』や『善人シボウデス』などで用いられていたトリックに近いものもある。
    • こちらも意識したのか偶然なのか不明だが、『パンチライン』を思わせる要素も見受けられる。
      + 本作と『パンチライン』のネタバレ
      • ヒロインはどちらもアイドル且つ、余命幾許も無い。更に髪も左右を束ねている点や、色も同じ。平仮名四文字の呼び名を持つ。どちらも歌うのは打越氏作詞電波ソング、など。
      • 主人公の名前は本作の「伊達鍵」に対し、あちらは「遊太」である。伊達の容姿も『パンチライン』の敵役にどことなく似ている。更には主人公と敵役の関係性もかなり通じるものがあり、ゲーム版『パンチライン』に至っては主人公の最終的な境遇も似通っている(アニメ版は結末が異なる)。
      • まゆみの顔がまるで老けた明香である。
+ エンディングの若干ネタバレ
  • トゥルーエンディングは明るく終わるハッピーエンドなのだが、当初はエピローグ自体が無くその前の段階で終わりの予定だったらしい。
    • しかしそれでは寂しいという事で、スタッフロール後に一連のエピローグを追加したらしい。更にスタッフに「スタッフロールはエピローグの後じゃないか」という意見を出された事で、そっちの方がいいかと考えた結果、現在の形になった。スタッフロールの演出も、打越氏はダメ元でスタッフに伝えたら快く承諾してくれたという。
      • 確かにエピローグ前に終わっていたら物悲しい結末だったが、結果として当初の予定とは正反対の底抜けに明るいエンディングになった。
    • 尚、スタッフロールの演出について岡田氏は最初は「ダサッ!」と思っていたらしいが、プレイヤーからは好評だったということもあって後々思い直したという。
      • 余談だが、この演出の中で「右腕が動かない」という設定の人物が思い切り両手を振り回しているが、これは若干ファンタジーを含むシーンなので問題無いとの事。

その後の展開

  • エピローグにおいて次回作への意欲とも取れる台詞があったのだが、前述のような初動売上状況と本作の内容が綺麗に終わるため続編は望み薄…と思われていたが、2021年6月29日に本作に関連性をほのめかす謎のディザーサイトが公開された。
    • そして、同年7月1日に本作の続編として『AI:ソムニウムファイル ニルヴァーナイニシアチブ』が発表された。2022年6月23日発売。
      • 長いタイトルだが、打越氏自身も「田中優美清春香菜ばりに長い名前」と自負している。
    • 主人公は新キャラに加えて成長したみずきのダブル主人公となっている。本作主人公の伊達ももちろん登場*16
    • 岡田氏やコザキ氏など主要スタッフは続投しており、原案・シナリオももちろん打越氏が手掛けている。また、『ルートダブル』の中澤氏もシナリオに参加している(参考)。
  • また、発売から2年が経過した2021年9月30日、東京ゲームショウ2021にてXbox One/PC版の発売が発表され、即日Microsoft Storeで配信開始された。更にXbox Game Passへの対応も発表されている。
    • 次回作がXbox系列でも発売されるため、それに向けての対応とも思われる。
  • 2022年に発売されたターン制アクションゲーム『RESEARCH and DESTROY』ではDLCにて本作のコラボ衣装が配信された。
    • 衣装は伊達、アイボゥ、イリスのものだが、アイボゥはあちらの設定に合わせて人型ではなく眼球型の方である(参考)。
最終更新:2022年08月10日 16:18

*1 打越氏はかなり早い段階で退社しているが、円満退社でスパチュンとの関係は続いているため、最後まで本作の開発に携わっている。また、トゥーキョーゲームスの名も協力会社として本作のスタッフロールに載っている。

*2 モチーフはハムスター。

*3 伊達と比較的親しくなった芸能事務所の受付嬢、メイド喫茶のメイドはおろか、ヤクザの事務所で軽くあしらったチンピラ、事件現場にいただけの鑑識官、一度しか登場しないタクシー運転手すらも含む。

*4 『刻のジレンマ』のオリジナル版は3DS、PSVと携帯機用だった。また、『刻のジレンマ』と近い時期にMAGES.から出た打越作品の『パンチライン』はPSVとPS4の同時発売だったが、3Dモデルの出来は不評だった。

*5 ちなみにそのゲームのタイトルは「イクラマンふとし」。これを並び替えると…。

*6 ノーミスでクリアすると尋問毎にトロフィー/実績が解除される。

*7 一部のルートでは主人公が捜査が止めたわけでも何でもないのに話が終わってしまう

*8 氏の代表作『Ever17』も今でこそ名作と名高いが、発売当時は最後までプレイせず低評価を下される例が散見された。

*9 infintyのもう一人の生みの親・中澤工の作品。余談だが、主人公の担当声優が本作と同じである。

*10 ただ、「(クズ人間だが)事件を起こすような悪い奴じゃない」というニュアンスで。

*11 みずきの祖父はイルカに育てられ、十代の時にはカツオを手掴みで捕まえられるようになっており、そのまま陸に上がって起業したという伝説がゲーム中で語られているが、ネタバレ座談会ではこれが紛れもない事実であり、その力を隔世遺伝子で受け継いだのがみずきとされる。

*12 ネタバレ座談会では「この世界ではエロ本が規制されていて、手に入れるのが難しくて貴重なもの」という設定が後に判明する。

*13 補記には「薬の服用で頭が豆腐みたいになっていてまともな判断ができない」と記載されており、レビューや考察等でそれが原因ではないかと予想されている。

*14 打越氏がかつて企画・監修を手掛けたリアル脱出ゲーム。

*15 過去に放送された打越氏原案のアニメ『あかねさす少女』でも主演を務めた。

*16 当初は伊達とみずきのダブル主人公も考案されていたが、伊達が続投するとどうしても本作のイメージが強くなってしまうため、新キャラが据えられている。その代わり、伊達もしっかり活躍させるように作ったと言う。