熱闘サムライスピリッツ 斬紅郎無双剣
【ねっとうさむらいすぴりっつ ざんくろうむそうけん】
| ジャンル | 対戦型格闘ゲーム |  
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| 対応機種 | ゲームボーイ | 
| 発売元 | タカラ | 
| 開発元 | ビィトップ(BETOP) | 
| 発売日 | 1996年8月23日 | 
| 定価 | 4,500円(税抜) | 
| プレイ人数 | 1~2人 | 
| 周辺機器 | 通信ケーブル(通信対戦) スーパーゲームボーイ/同2対応
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| 判定 | なし | 
| ポイント | ゲームボーイなのに音声付き ゲームボーイとは思えないロード時間(悪い意味で)
 意外と再現できているゲーム性
 まさかのゲストキャラクター登場
 キャラ崩壊気味なパロディギャグシナリオ
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| 備考 | スーパーゲームボーイを使用した場合のみカートリッジ1本で対戦プレイ可能 通信ケーブルでの対戦プレイ時はカートリッジ2本必要
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| サムライスピリッツシリーズ | 
| 熱闘シリーズ | 
 
概要
スーパーファミコンやメガドライブなどへのSNK格闘ゲームシリーズ移植作を発売しているタカラ(現:タカラトミー)がゲームボーイ用に発売した、『サムライスピリッツ 斬紅郎無双剣』(以下『斬サム』)の移植作品。
GBの性能に合わせて、さまざまなところがアレンジされており、作品の立ち位置としては『熱闘サムライスピリッツ』の続編にあたる形となる。
ハードの容量の都合と言う事もあってか、花諷院骸羅と千両狂死郎の2人が削除された。
その代わりに、なぜか原作では『斬サム』に参戦できなかった柳生十兵衛が隠しキャラクターとして追加されている。
評価点
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今まで通り、可能な限り原作の雰囲気を出そうという努力が見られる。
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さすがに完全移植とはいかなかったが、キャラクターのモーションなどはできる限り再現している。
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元ゲームにあったシステムである「修羅」「羅刹」のシステムも、参戦キャラクター全員に搭載されている。
 特に『斬サム』未参戦であった十兵衛は「羅刹」がほぼ本作オリジナルの仕様であり、武器を置いてわざと素手になり、衝撃波やら回し蹴りで攻撃するという原作シリーズでは恐らく見られないであろう思い切った技も搭載されている。
 
 
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GBの性能に合わせキャラクターは小さくなっていてグラフィックも劣化はしているが、大きなデフォルメは加えられておらず「モータルコンバット」のGB移植版をキャラクターを小さくして実現したようなものになっている。
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武器飛ばし技は一律で「キャラクター毎の技コマンド+AB同時押し」で出す形となっている。
 
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なんとキャラクターボイスが収録されており、戦闘に勝利するごとに聞く事ができる。
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キャラクター一人につき一種類のみだが、初代GBでボイスが収録されている点は特筆に値する。
 
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元ゲームに無かった演出の追加。各キャラクターのオープニングやエピローグが追加されており、バックストーリーが分かりやすくなった。
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原作どころか移植版でも各キャラクターのオープニングシーンやエンディングのキャラクターが映る一枚絵などは搭載されていなかった。
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全員どころか斬紅郎にまで搭載されていると言う徹底ぶり。
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覇王丸に鬼の討伐を依頼した少女・詩織や斬紅郎の妻・美鈴のビジュアルが描かれたのは本作が初めてである。
 
 
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オープニングシーンや幕間のデモも、原作ほどテンポ良くはいかないがしっかり搭載。
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また、途中に「斬紅郎をまだ発見しきっていないプレイヤーが、意気込みの一言を言う」という本作オリジナルの演出も追加されている。
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もちろん、こう言ったデモは気に入らないのならスキップする事もできる。
 
 
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エンディング後のお楽しみ要素。
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エンディングまでたどり着くと、ナコルルとリムルルが二人が隠し要素について解説してくれる。
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難易度によって4パターンもあり、無駄に充実している(GBということを考えれば)。
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難易度最低だと隠し要素を一切教えてくれないが、その際リムルルに「ズルしたんだー」とからかわれる。しかし後述のCPUの強さからしてズルもへったくれもないのに…。
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ついでに開始時にナコルルの、終了時にリムルルの、それぞれのボイスが収録されている。
 
 
賛否両論点
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『リアルバウト餓狼』並のキャラクター大崩壊。
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本作のオープニングやエンディングシーンは、ほぼ全て原作での展開を踏まえたギャグアレンジとなっている。
 そのため、原作を知っているプレイヤーには原作のぶっ飛んだパロディとして楽しめる一方、一部キャラクターはヘタに本作から入ると間違ったキャラクター観を植え付けられるかも知れないほどに従来のイメージが崩壊している。
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具体的に言えば、ノリノリで夫に現世満喫を提案する妻&その話をまったく聞かない狂った夫という関係になっている首斬り破沙羅夫妻、妙にナヨナヨした天草、周りからホモ呼ばわりされる幻十郎…などってなんだそれ。
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一応ゲーム本編でそういったキャラクターにはなっていないので、安心といえば安心…なのかも知れないが。
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ちなみに幻十郎が「男も女もいけるバイセクシャル」なのは「公式設定」である。なのでホモ呼ばわりされるのは当たり前といえば当たり前。
 
 
    
    
        | + | エンディングのネタバレ | 
エンディングの数々もかなりぶっ飛んでいる。
覇王丸のエンディングは、詩織に斬紅郎討伐の顛末を報告、という一見真っ当な展開かと思いきや、突如現れたお静(許嫁)に「こんな小さい子に手を出しているなんて!」とロリコン扱いされるというオチがつく。更にはナレーションまで「彼の鬼畜……いや、修羅道は始まったばかりである」と追い討ちをかける始末。
首斬り破沙羅のエンディングは「自分の話を聞いてくれない狂った破沙羅にキレた篝火が破沙羅に影舞(本来は破沙羅の武器飛ばし必殺技)を叩き込み、狂っていた間の記憶を失った破沙羅は記憶を取り戻すこともないままあの世で篝火と幸せに添い遂げる」というイカれたハッピーエンド。『零』のエンディングの展開を踏まえるとある意味本当にハッピーエンドである。
リムルルのエンディングは、「『大自然のおしおき』の快感に目覚めて目を輝かせるリムルルと、木の影からそれを見守り『侮れないわ! 私の立場がなくなっちゃう!』と別の意味の危機感を覚えるナコルル」というもの。
ただし、緋雨閑丸のエンディングは「水溜まりに映った閑丸の影が斬紅郎になっている」という意味深なものになっており話のタネとなる事もある。オープニングはやはりぶっ飛んでいるのだが。 | 
問題点
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長すぎるロード時間。
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ゲームボーイなのにCDメディアなのではないかと思ってしまうほどにロードが長大。
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具体的に言うなら、戦闘前の対戦相手との対峙デモ→ロード→戦闘開始、終了→ロード→戦闘開始、終了→ロード→キャラクターボイス→ロード→戦闘勝利演出→ロード→次の試合、と言った感じ。
 
 
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相変わらず強いコンピュータ。
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前回から言われていたことだが、本作でもやはりコンピュータは強い。
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難易度最低にしていても『ストII』のレベル4位のAIレベルで襲いかかってくる。にも拘らず前述の通りお楽しみ要素にて隠し要素を教えてくれないならまだしも、リムルルの「ズルしたんだー」は明らかにおかしすぎる。
 
 
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キャラクターが原作より減っている。
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上記の通り容量の都合で骸羅と狂死郎が削除。代わりに十兵衛がいるのだが…どちらにせよ元ゲームに比べて一人足りない。
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骸羅は次に発売された携帯機作品NGP『サムライスピリッツ!』でもリストラされてしまっている。彼は携帯機作品に対しての運に恵まれないと言わざるを得ない。
 
 
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一度キャラクターを選ぶと、ゲームクリアするかリセットするまでキャラクターが変更できない。
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そのため、「このキャラはこいつが苦手だからこいつに変えよう」と言う事が不可能。
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これについては『アルカナハート』シリーズ(『LOVE MAX!!!!!』以降除く)も同じなのだが、後に『サムライスピリッツ零』~『天下一剣客伝』を開発した悠紀エンタープライズが初代『アルカナハート』も開発した事から、皮肉にも『アルカナハート』シリーズに影響を与えたものと思われる。
 
総評
携帯機だから仕方がない、と思えば元ゲームになかったストーリー性やおまけを楽しむ事ができ、まさしく『斬紅郎無双剣』の完全版ともいえる内容に仕上がっている。
だが、やはり容量の都合で本当の意味での「完全再現」にたどり着けなかったのは、本当に惜しいところである。
その後の展開
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ゲームボーイで発売された侍魂シリーズは今作で最後となり、次作『天草降臨』の携帯機版となる作品はNGP『サムライスピリッツ!』となった。
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今作発売から2年後に発売された『ポケットモンスター ピカチュウ』はゲームボーイにもかかわらずキャラクターボイスが存在するという点が有名なのだが、同作が有名になった事により2年前にボイス付きで発売された今作は忘れられがちなのが否めず。「ポケモンのピカチュウバージョンがゲームボーイで初めてボイスが付いたゲーム」と誤解しているゲーマーも非常に多いと思われる。
最終更新:2022年07月16日 10:32