三國志曹操伝
【さんごくしそうそうでん】
ジャンル
|
シミュレーションRPG(英傑伝シリーズ)
|
 通常版
|
 コーエー定番シリーズ
|
対応機種
|
Windows 95~XP
|
発売・開発元
|
コーエー
|
発売日
|
1998年12月11日
|
定価
|
9,800円(税別)
|
廉価版
|
コーエー定番シリーズ:2002年11月8日/1,980円(税別)
|
判定
|
バカゲー
|
ポイント
|
IFルートは特に蜀漢ファンにとっては衝撃
|
英傑伝シリーズ 三國志英傑伝 / 三國志孔明伝 / 毛利元就 誓いの三矢 / 織田信長伝 / 三國志曹操伝
|
三國志シリーズリンク
|
概要
『三国志演義』や日本の戦国時代を題材にしたコーエーの『英傑伝シリーズ』の5作目(事実上の最終作)であり、『演義』の敵役である曹操(孟徳)を主人公としたマップクリア型シミュレーションRPGである。
-
物語の途中には主に曹操のセリフで選択肢がある。原典に近いものを選んでいくと『演義』ベースの赤黄ルート(赤と黄はエピローグの展開が異なる)、原典に反する選択肢を選んでいくと架空のシナリオである青ルートに分岐する。
評価点
-
マップ上を動き回るキャラのシンボルは非常に細かく作られており滑らかに動く。
-
演出も凝っており、今作ではマップ上のシンボルが台詞とともに動いたり城門が開閉したりする。
-
これまで『演義』を原典としていた三國志ものとしては珍しく曹操を主人公にしており、彼に従った魏の武将達が活躍する話を見ることができる。
-
特に三国志上重要な戦いでありながら、これまで蜀側の主観だった為に軽く流されてしまっていた「官渡の戦い」や「赤壁の戦い」が、しっかりと1ステージ使ってプレイできるのは魅力である。陣容的にもまさに「決戦」といった趣になり、なかなか盛り上がる。
-
当時でもかの名作『蒼天航路』などで曹操再評価の動きが見られたためだろうか。尤も曹操も何度か命の危機に陥った戦い(董卓征討の折や濮陽の戦いでの敗戦、宛城の戦いなど)が多く、そうしたステージは大抵難易度が高め。
-
第1作『三國志英傑伝』の「妖術使い」、第2作『三國志孔明伝』の「軍師」といったこれまで異常に強かった部隊属性(いわゆるクラス)が「策士」「道士」「風水士」などに分けられているなどバランスが調整されており、極端に強いユニットが存在しない。
-
歩兵・騎兵・弓兵の三すくみに関しては『英傑伝』の仕様に近くなった。つまり『孔明伝』で猛威を奮った騎兵は弓兵に弱くなり、あまりに弱かった歩兵は弓兵に強くなっただけでなく、策略がない代わりに防御力が大幅に上昇して盾役が務まるようになっている。
-
その一環で自軍の属性配分も調整されており、全く出番のない武将はほぼないと言ってよい。徐晃が弓兵、龐徳が歩兵など微妙にイメージに合わない属性に充てられている場合もある。
-
『織田信長伝』と同じく「敵軍のレベルが自軍のレベルに合わさる」仕様もあり、PC-98版『英傑伝』の異様に高い難易度や『孔明伝』の低すぎる難易度と比べると、かなりバランスが取れた難易度になっている。「シリーズ最強の英傑伝!」と銘打たれていたこともあり、人によっては「シリーズ最高傑作」の呼び声も。
-
後に『決戦』『スーパーマリオギャラクシー』のBGMを手掛けることになる、横田真人氏によるBGMはなかなかの良曲揃い。特に対呂布戦で多く流れる「急襲」や呉軍戦で流れたりする「互角」は雰囲気を盛り上げてくれる。
賛否両論点
-
『英傑伝』『孔明伝』と異なり、自軍に加わる武将が演義の有名どころに絞られているため、確かに弱い武将(曹洪など)もいるが、『英傑伝』の耿武や『孔明伝』の高定などといった使い物にならないくらい弱い武将はおらず、仲間にして後は放置される武将が大量発生することは比較的少なくなった。
-
一方で自軍に加わる武将を絞っているため、本来曹操の配下になるはずの武将(臧覇・高覧ら)が敵のまま戦死したり、友軍として登場してもやられるとそのまま死亡(辛毗・文聘ら)したりすることが多い。
-
『孔明伝』では魏軍の強敵として出現した名将・郭淮は凛々しかった顔グラを情けない表情に変えられており、作中でも戦いを嫌う気弱な性格の武将として描かれている。
-
『孔明伝』に登場した曹真や韓浩、鍾繇に夏侯覇といった魏将や文官などは登場すらしなかった。
-
登場する多くの武将の性格が、良くも悪くも相当に個性的。
-
格言を引用しまくる呂蒙、不真面目な馬謖、「日本語でおk」状態な周瑜、腹ペコ天然ボケな孟優など、これまでの英傑伝シリーズの雰囲気からすると異彩を放っているキャラの尖り様。ただ、意外と史実に合わせたものになっていたりするなどよく作られている。
-
曹操や司馬懿らを除くほとんどの顔グラは『英傑伝』のものを描き直したり、『孔明伝』からの使い回しであり、問題はあまりないが、袁譚の顔グラが王平の色違い、新しく描き起こされた辛評の顔グラ構図が郭図とほぼ同じ、何故か自軍に加わる貂蝉は『孔明伝』のモブ女官の顔が使い回しされているなどやや手抜きが目立つ面も。
-
今作にも一騎討ちイベントは用意されており、それぞれに個性的な台詞が用意されるなど見てて楽しい。バリエーションも大幅に増えているが、弓兵・弓騎兵は必ず弓で戦うためかなり不自然さがある。特に夏侯淵VS龔都はツッコミどころ。
-
インターミッションパートの簡略化
-
『毛利元就 誓いの三矢』までは戦闘前に主人公を操作して各施設で様々なイベントを起こせたが、今作では『織田信長伝』と同じく本陣で武将と会話するのみ。過去作プレイヤーにとっては「能動的にイベントを起こす手段の一つが消えて残念」という声も。
-
アイテム「実」による成長システム
-
部隊属性の能力評価と対応した武将自身の能力により、ユニットの成長性が決定される。成長性を伸ばすためには、アイテムである「実」を使用して武将の能力を一定値まで上げ、レベルアップ時のパラメータ増を1多くすること。
-
これを最大活用するためには、戦いを長引かせ、より多く攻撃して武器のレベルを、またはより多く攻撃を受けて防具のレベルを最大まで上げ、その装備を売ることで特典として入手できる「実」を増やす必要がある。
-
加えて、強化した成長力を生かすためには、適用対象武将の加入レベルを抑える、すなわち部隊全体のレベルを抑える工夫も要る。
-
幸い本作は難易度がそこまで高くなく、以上のテクニックを駆使しなくてもクリアや宝物図鑑全収集ができるので、遊び方の一つとして留めておくとよいか。
問題点
-
死亡イベントを回避した武将の出番がない、厳密な意味での完全史実エンドや自軍以外のエンディングでの描写など、描写不足が前作までより大きい。
-
夏侯淵・典韋ら一部の武将には原典通りの死亡イベントが用意されているが、回避して生存させたとしても以降の物語にはほとんど関わらず、以降のイベントに台詞も無ければ顔も出さない。よって、苦労して生き残らせてもストーリー上では変化がない場合が殆ど。
-
赤黄ルート後半「成都の戦い」では曹・夏侯一族が強制出撃になるが、夏侯淵だけは定軍山で生き残らせていてもフラグ管理が面倒だったせいか一人だけ強制出撃に入っていない。彼もれっきとした夏侯一族のはずだが…。
-
ただし郭嘉についてだけは、曹操が「奉孝(郭嘉の字)が生きていれば、このような敗戦はなかっただろう」と赤壁の戦い後に嘆いたように、彼を生存させておくと赤壁戦を曹操軍に多少有利な展開にすることができる。
-
生き残らせておくと戦闘では活躍の場も存在するし、戦死組を含めた全武将に最終ステージに出撃させたときの台詞が用意されている。
-
本来曹操は樊城の戦いの後に病死するが、本作ではたとえ赤黄ルートで樊城の戦いをクリアしても(劉備の死後も)生き続け、天下統一までの半IFストーリーとしてゲームは続くことになる。
-
『孔明伝』のように、一定条件によって樊城の戦いで分岐するバッドエンドの扱いとしてでも見たかったという声もある。
-
一部強力すぎる戦術の存在
-
「奮起」「練兵」など能力アップの策略
-
一時的だがステータスが二割増するので、ステータスが高まる高レベル帯では利用するかしないかで攻略難易度が天地の差にもなる。
-
なお能力ダウン策略は三割減だが、敵ユニットの数が味方よりはるかに多いゲームなので、効果が低い。
-
策略「砂嵐」
-
森林・建物以外の地形にいる敵の全員にダメージを与える風策略。他属性の策略に比べると威力は高くないが、範囲がほぼ無限大なので連発させるだけで敵軍を壊滅させられる。ただし、後半の難関ステージがほとんど城内戦なので、出番がなくなっていく。
-
策略「幻惑」「津波」
-
どちらも成功率は低いが、一撃で対象を退却されられる策略。要はザラキなどに相当するコマンドだが、本作は戦闘中でも何度もセーブ・ロードできるというわけで…
-
少数精鋭による無双
-
敵のレベルは味方出撃部隊の平均値により決定する。したがって経験値を2、3名の主力に集中させ、残りをレベルを抑えたユニットで出撃枠に揃えれば、敵のレベルは自軍の主力に比べて極端に低くなり、容易く捻り潰すことが可能。ユニット退却による目立ったデメリットもなく、割と気軽に実行できる。
-
尤もこれはゲームシステムの裏をかいたランクゲー的な攻略であり、味方の平均レベルで敵の強さが調整されるSRPGにはよく使われやすいテクニックではある。
-
また、ゲーム開始から仕込みに手間がかかることや一周がかなり長いので詰みかけた場合の救済措置と言えなくもないが、ゲーム開始直後のチュートリアルでは「部隊のレベルは満遍なく上げるように」と助言されるためやはり正攻法とは言えないだろう。
バカゲー要素
-
人外の敵が出てくる。
-
後半に入ると、木でできた人形「木人」と戦うことになる。木人は毒を付加する攻撃を与えてくるので極めて厄介である上に、召喚してくる術者を退却させない限り無限に出てくる。
-
青ルートでは、木人に加えて混乱を付加する攻撃を与えてくる土人形「土偶」が出てくる。
だが、本作が後の無双シリーズにも比肩しうるトンデモゲーとして知られているのは概要に記した「青ルート」の存在が大きい。
-
青ルートに突入すると、突如諸葛亮が豹変。龐統や劉備・張飛らを謀殺し、趙雲らを騙して劉備軍を乗っ取ってしまう。しかもその瞬間、顔グラまで如何にもな悪党面に変更される。
-
ちなみにこのルートでは生き残った関羽が曹操配下に加わるなど小憎い点も。『英傑伝』の張遼や『孔明伝』の夏侯覇に通じるものを感じる。
+
|
最終戦と真相
|
-
最終ステージでは諸葛亮の秘術によって蘇らされ、土偶に加え自我を失いかけた劉備・張飛・孫親子・周瑜ら(有体に言ってしまうとゾンビ)と戦うという、『無双OROCHI』シリーズですらなかった前代未聞の展開となる。
-
実は諸葛亮が豹変したのは伝説の魔王に憑依されたため。本来は劉備がその標的だったが、諸葛亮は主君に憑依させまいと自身を犠牲にした。その後曹操達が魔王の完全復活を阻止したことで、諸葛亮は最後の力を振り絞って魔王を道連れにするのであった。
-
「反三国志」に匹敵するトンデモなストーリーとはいえ、話は中々上手くまとまっており、絶妙な難易度・分岐後の熱い展開とも合わさって評判自体は上々。
-
赤黄ルートでほとんど目立たない貂蝉と徐庶は、この青ルートで重要な鍵を握ることになる。
-
実は青ルートのみならず赤黄ルートでも、劉備の遺志を継がんと最期まで戦い続けるが力及ばず戦死していく蜀将達は悲哀を感じさせるものがある。
|
総評
青ルートの奇抜さが真っ先に特徴に挙げられる作品だが、これまでの英傑伝シリーズの特徴を引き継ぎながらも改良し遊び易く仕上がっており、シリーズのトリを飾るにふさわしい作品である。
ゲーム単体で見ても動作が快適でシステムもシンプルかつゲームバランスも全体的に見れば良く、シナリオも曹操軍をたどる物語としての王道的な仕上がりになっており、万人にお勧めできるSRPGであった。
余談
-
パッケージイラストの一部(中央の曹操以外)は『三國志 ゲームボーイ版』(関羽、諸葛亮、女官)や『三國志II』(赤兎馬)から流用されている。
-
諸葛亮ファンや蜀漢ファンの批判を浴びたのか、はたまたコーエー側が自粛したのか、コンシューマー移植はおろか公式ハンドブックの出版すらされないというコーエーの歴史ゲームとしては異例の事態となった。
-
それまでの英傑伝シリーズ4作がコンシューマー移植されているのにもかかわらず何故か本作だけ移植されなかった。
-
公式サイト内のページこそリンク切れになったものの、現在でもGAMECITYのサイト内に製品紹介ページが残っているため、黒歴史扱いされているわけではない模様。
-
SRPGとしてはシリーズの中でも出来が良く固定ファンがいるのも事実であり、有志による同人攻略本や攻略サイト、ファンサイトも作られている。同人攻略本(曹操伝ハンドブック)は現在では入手は困難。
その後の展開
-
『無双OROCHI』の蜀伝では諸葛亮が敵の遠呂智軍として登場するため、ごく一部で「魔王孔明再来か」と話題になった。
-
iOS・Android向けアプリとして『三國志曹操伝Online』(後述、※本Wikiでは単独記事作成禁止)が2013年8月22日に発表。ネクソン・コリアの子会社であるThingSoftが開発を担当し、2016年10月6日に韓国でサービス開始。香港と台湾では2017年3月16日から、日本では8月31日から配信開始した。近年のAndroidエミュは再現性が高く、PCからでも一応問題なくアプリをプレイできたようだ(2019年8月現在)。
三國志曹操伝Online
【さんごくしそうそうでんオンライン】
ジャンル
|
シミュレーションRPG
|
対応機種
|
Windows 7~10
|
発売元
|
ネクソン・コリア
|
開発元
|
ThingSoft
|
配信日
|
【Steam】2019年5月25日
|
定価
|
基本無料
|
ポイント
|
現在は配信終了
|
-
2019年5月25日からSteam版が配信されPCでもプレイできるようになった…と思いきや、ボイスを含めて日本語版を実装しているにもかかわらずまさかのおま国状態となった。
-
『曹操伝』とはゲームシステムが若干異なるが、SRPGとしての基本はほとんど同じ。本作の策略名・BGMなどがアレンジしながら使われている。
「あの」ネクソンと「あの」コーエーなのにひたすらにストイックなゲームとなっており、過去作ファンからの評価は高い。
-
最大の評価点としては、武将入手にガチャ要素が絡まない点だろう。
「SSR曹操」を出す為に数万円つぎ込んだり、期間限定の「水着貂蝉」が実装されたりといった近年のアプリゲーにありがちな要素はなく、全武将がゲーム内資金で入手可能。
-
藩宮や李明といった『英傑伝』のオリジナル武将を登用したり、魔王孔明を自軍に入れることも可能。貂蝉の顔グラもモブ女官ではなくなった。
-
もちろん欠点がないわけではなく、例えば下記の「曹操伝」目的でプレイすると、武将の気力(行動力に相当)や兵糧(同)の仕様で連続プレイに支障をきたすのは大きなマイナス要素になる。
-
オンライン戦闘を楽しむ「戦略編」の他に、「演義編」では、リメイク「曹操伝」が丸ごと収録されている上、「袁紹伝」「関羽伝」などといった特定武将を主人公としたシナリオが用意されており、事実上、英傑伝シリーズの集大成になっていた。中でも「劉備伝」「呂布伝」の評価が高い。
-
「徐庶伝」に関しては魔王が完全復活に成功した場合のIFシナリオも収録されるなど青ルートの補完になっており悪くない。
-
各シナリオをアンロックするための課金は(プレイを急がなければ)必要ない仕様なので、シリーズのファンならプレイしてみる価値はあっただろう。
-
『曹操伝』のリメイクとして『Online』を見ると、原作表現をそのまま持ってきたせいで突っ込みどころがいくつかある。
-
例えば汜水関の戦い前に李典が『曹操伝』同様に「夏侯淵殿は我が軍で唯一の遠距離攻撃部隊」という趣旨のセリフを言うが、『Online』の李典は弩兵(『曹操伝』では歩兵)。遠距離攻撃できる本人が発言するのはかなりシュール。というか、別のオリジナル武将が弓兵として先に参戦しているので……
-
ちなみに初期の配下として曼基・姜甫・劉宮といった3人のオリジナル武将が存在しているが、曹操が北部尉だった頃からの部下であることがゲーム内で語られており、『蒼天航路』を彷彿とさせる。
-
何故『三國志英傑伝Online』ではなく『三國志曹操伝Online』だったのかというと、台湾や韓国で『三國志姜維伝』などといった『曹操伝』の非公式な改造が人気であり、それに便乗したが故だと言われている。
-
2020年6月11日にサービス終了。Steam版は1年強の配信であった。
最終更新:2023年07月16日 13:15