ルーンファクトリー -新牧場物語-
【るーんふぁくとりー しんぼくじょうものがたり】
ジャンル
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ファンタジー生活ゲーム
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対応機種
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ニンテンドーDS
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メディア
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1024MbitDSカード
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発売元
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マーベラスエンターテイメント
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開発元
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ネバーランドカンパニー
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発売日
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2006年8月24日
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定価
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4,800円(税別)
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レーティング
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CERO:A(全年齢対象)
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判定
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クソゲー
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ポイント
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夥しいバグ 牧場経営の存在の希薄さ キャラクターデザインは秀逸
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ルーンファクトリーシリーズリンク
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牧場物語シリーズリンク
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概要
マーベラスエンターテイメントの看板作品『牧場物語』シリーズの10周年を記念し、派生として企画された『新牧場物語』シリーズのひとつ。
従来の「牧物」にはない独特な世界観、有名イラストレーターの起用などが特徴で、SFの『イノセントライフ ~新牧場物語』と、ファンタジーの『ルーンファクトリー -新牧場物語-』の二作が発表された。
が、前哨戦のはずの『イノセントライフ』が見事撃沈されてしまう。出来は決して悪いものではなかったが、ほのぼのした雰囲気が売りのシリーズにSF色は合わなかったこと、イラストが微妙だったこと、複数のバグ、既にお馴染みとなっていた幾つかのシステムが削られていたことなどが失敗の要因だったようである。
展開早々、苦境に立たされた「新牧場物語」シリーズは、その復活を賭け、2ヵ月後の8月末本作を発売した。開発は数多くの名作を輩出しているネバーランドカンパニー。
まさに本命とも言えたのだが、いざ蓋を開けてみると…。
特徴
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一言で説明すれば、牧場物語にアクションRPGの要素が入ったもの。『ゼルダの伝説』や『イース』に牧場物語の要素が加わったとも言えるかも知れない。
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牧場で農作物を収穫してお金を稼ぎ、町の人たちと交流して友情や愛情を育んでいく…までは本家牧場物語と一緒だが、
モンスターの出るダンジョンを攻略
してストーリーを進めていくのが特徴。
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家畜の代わりにモンスターを飼える。卵、牛乳といったお馴染みの畜産物が収穫できるほか、仲間にしたモンスターをダンジョンに連れて行ったり、農作業を手伝ってもらったりできる。
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倒したモンスターから毛皮などの素材を入手でき、自宅で武器やアクセサリーを作ることも出来る。本作の魅力のひとつ。
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HPとは別に「
ルーンポイント
」(RP)というゲージがある。いわゆるMPやバイタリティのようなもので、剣を振る、じょうろで水をまく、魔法を使うなどあらゆる行動で減ってゆく。
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RPがなくなると、それらの行動でRPのかわりにHPを消費していく。当然HPまで0になったらぶっ倒れて病院送りになる。ダンジョン内ならゲームオーバー。
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これに関連して、主人公には「剣技レベル」「農具レベル」といった『スキルレベル』というステータスが存在する。これらのレベルは戦闘や農作業といった対応する行動を繰り返すことで上がり、消費するRPの量が減っていく。
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スキルレベルが上がるとステータスも上がっていくため、農作業や釣り、料理をしているだけでも少しずつダンジョン攻略が楽になっていく設計になっている。
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RPを回復するには一晩寝るか、料理などを食べる、作物が実ったときに出るルーンを取るなどすればよい。
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2014年5月20日に任天堂がWi-Fiコネクションサービスを終了したため、現在Wi-Fi機能は使用不可能。
問題点
「牧場+冒険」という新しい試みのためか、
荒削りで調整や練りこみが不足している部分が多く見られる。
また、宿命なのか
バグが多い。
バグ
軽いものから、フリーズするもの、ひどいものになると
データが破壊され復帰不可能
になるものまで存在する。
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重篤なバグの例
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ダンジョン内のセーブポイントでセーブした後ゲームオーバーになり、ロードしてやり直すとフリーズやデータ破壊などの不具合が発生することがある。
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セーブポイントに触れただけでもバグが発生したという例も。セーブポイントに近づかなければ回避できる。
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一時的にMAXHPが増える料理を食べ、その状態でセーブして再起動する、風呂に入る、寝るなどの行動をするとフリーズ発生。
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どうやらHPの値がうまく計算できていないらしい。発生率はかなり高いので、MAXHPが増えている間の行動には注意。
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各月30日の深夜0時(=毎月1日の午前0時)過ぎにセーブしたデータをロードするとフリーズ。
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季節の変わり目の処理がうまく行っていない様子。30日の深夜0時過ぎにさえセーブしなければ回避できる。
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これ以外にも月(季節)の変わり目に処理がうまくいかないことがある。こちらは発生しても危険度は低い。
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PM06:00にイベントを起こそうとするとフリーズ。
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Wi-Fi通信中に切断が発生するとデータが破壊される可能性があるので、通信が気軽にできない。なお、通信は行わなくてもゲームクリアが難しくなることはないのだが、使わないと結婚する条件を満たすことが不可能に近いキャラクターがいる。
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壊れたセーブデータがあると、別のセーブデータでもフリーズ。
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その他色やセリフが少し変になる程度のものからフリーズするものまで、再現性の低いものから高いものまで多数。
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致命的なバグもあるが、上記の通り
条件や対処方法が分かっているものがほとんど
ではある。そしてそれらは「ゲーム内での行動が大きく制限されるようなものではない」のが救いである。
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例えば「季節限定のダンジョンの中で季節を越さない」「Wi-Fi通信中に電源を切らない」など。
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このため、バグ情報が出回った後に遊んだプレイヤーはクソゲーと感じない場合もある。
とはいえ何も知らずにバグの犠牲者となった方々(特にデータを破壊された人)はご愁傷様としか言えない。
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また特定のモンスターで自由にマップを移動できるようになる有用なバグも存在している。
ゲームバランス
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牧場物語では、「野菜を育てて出荷、そのお金で農具や小屋を強化し、また野菜を植えて…」と繰り返すのが基本であり、のんびり牧場生活を楽しむという一番の醍醐味でもあるのだが…。
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収穫物の値段のバランスがとれていない。
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例えば、カブは「種200G、成長日数4日、出荷価格540G」。
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これに対して、
イチゴは「種400G、成長日数8日、出荷価格1800G、2日ごとに再収穫可能」。
ぶっちゃけイチゴ以外作る必要がないレベル。
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これだけかと思いきや、次点のサツマイモも
「種330G、成長日数5日、出荷価格1080G、2日ごとに再収穫可能」。
しかも季節が秋のダンジョンは
家のすぐ隣にある上、入ってすぐに6×6の畑が二つある。
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もちろん、すべての野菜が同じ値段ではつまらないだろう。しかし、いくら何でもコストパフォーマンスに差がありすぎる。
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ダンジョン内の畑が便利すぎる。
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ダンジョン内の畑は
一年中季節が変わらないうえ、台風でダメージを受けることがない。
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春のダンジョンに先ほどのイチゴを植えれば、枯れることなく収穫し続けることが可能。以降はもうお金に困らない。
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また、生育期間が長い収穫物もあり、それらは季節の変わる牧場の畑では収穫できない。
これだけでも酷いが、これらさえもかすんで見える稼ぎ方が存在する。裏技や隠し要素といった類の特別な方法ではなく、何の制限なしに行える方法である。
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それは、ダンジョン内で採掘を行うこと。
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レベルアップさせたハンマーで、ダンジョンのあちこちに点在している岩を砕くと鉱物や宝石が手に入るのだが、これが今までの作業は何だったんだ、と言いたくなるほど高く売れる。
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1つあたりの値段は
だいたい数千から数万G。大量に手に入るうえ、制限は一切ない。
しかもかなりの序盤から可能。
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とはいえ農業と探索が両立できないわけではないため、収入面で完全に存在意義がないわけではない。
新システム「鍛冶」「装飾」「調合」について
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本作の新要素のひとつで、収穫物やモンスターから手に入る素材で工作をおこない、それぞれ「武器の作成・農具の強化」「アクセサリーの作成」「薬(回復アイテム)の作成」ができる。
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これらにもそれぞれレベルがあり、低いうちは簡単なものしか作れないが、作るごとに経験値がたまってレベルが上がっていき、強力なものも作れるようになっていく。
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問題は、手に入る素材がちぐはぐなことである。
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つまり簡単に作れるものの素材が手に入るのが終盤だったりするため、思うように作れないことが多い。
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もちろん最初からなんでも作れてしまうのは味気ないし、新しい素材を見つけたときの喜びも大きいが、もどかしい思いをすることも少なくない。
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なお、これらはすべて自宅の増築を行わないと不可能である。が、そのために必要な物が多く(20万G,木材2000本)、かなり時間が掛かる。
ダンジョン
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最大の特徴であるダンジョン探索も、システムのせいで超面倒になっている。
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ダンジョンに入るためには許可証を発行してもらわなければならないのだが、大抵発行してもらう条件は前のダンジョンのクリアだけでなく、
ダンジョン内の畑を規定回数(概ね100回以上)耕す
必要がある。ただでさえ畑の岩や草木を取り除くのが面倒なのに、さらに面倒になっている。
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これだけならまだしも、作物をダンジョン内で複数作らねば先に進めない、モンスターを複数仲間にしなければ入れない、冬にならないと入ることすらできないダンジョンすらある。牧場物語は大抵のびのびとプレイするものではあるが、最短クリアを目指す人に取ってはとにかく手間。
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余談だが、冬限定のダンジョンでは冬の月最後の日に寝袋を使って時間を進めると
データが破損するバグがある
。
女の子との交流・結婚について
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牧場物語シリーズの大きな魅力のひとつに、異性とのデートや結婚がある。本作でも、気になる相手にプレゼントを渡したりお祭りの日にデートしたりできる。もちろん結婚・出産も。
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特に結婚候補の一人であるミストはその言動からプレイヤーに人気が高く、続編の『ルーンファクトリー フロンティア』にも再登場したり、ドラマCDでは主役を務めたりしている。
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しかしそれらのイベントが今までのシリーズと比べてかなり少なめ。
キャラ固有のものは全員分でも数えるほどで、あとはプロポーズとお祭りのときの会話くらいしかイベントと呼べそうなものがない。
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結婚は盛大に式を挙げるが、結婚後は毎日お弁当をくれるだけで出産以外特にイベントなし。その出産も、
ある日突然赤ちゃんを抱えて「子供が生まれたよ!」といわれるのみ。
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子供が成長して…といった要素もなし。こどもの誕生日祝いや結婚記念日などもなし。それ以前に産まれた子供は出産をした日に登場して以降はどこにもおらず、会話することもできない。
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開発途中は結婚・出産の要素を入れる予定はなかったらしい(ニンテンドードリームより)が、ユーザーの要望が多かったため実現はしたようだ。しかし従来と比べて少ないイベントや、子育て関連は出産イベントただ一つしかないというあまりの適当ぶりに、こういった要素を重視していたシリーズファンからは特に批判された。
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なお確かに批判はあるが、時間帯、場所、好感度やストーリーの進行度によって会話の内容は変化するし、お祭り中のみのセリフや、キャラによく合ったボイスもある。女の子にもそれぞれ違ったプロポーズ条件があり個性を強くしている、など決していい加減な作りというわけではない。
RPについて
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上記の特徴にて説明してあるRPだが、上限値が固定されている上に回復手段が乏しく、その割に行動すればするほどガンガンなくなっていく。
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ダンジョンを深部まで進むためには途中にある畑で農作物をしっかり育て、RPの補給地点を作りながら攻略していく必要があるのだが、当然ながら手間と時間がかかる。
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…と、賛否はさておき一応はこのゲームの独自要素のひとつではあるのだが、RPが無い状態での行動によるHPの減少量が大したことがないため、HPを減らしながらも回復薬を飲みつつ進行ができてしまう。
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RPを回復する手段を用意するより、HPを回復するアイテムを用意するほうが簡単なことも、RP管理に気を遣う必要性の薄さに拍車をかけている。レベルアップでもHPは全快するため、多少ゴリ押しでも問題がなかったりする。
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ちなみに続編では重要性や制限が見直されていたりする。
武器について
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鍛冶により作れる武器の数は豊富で、威力だけでなく属性や特殊効果などに違いがある。様々な武器を使う楽しみがある…はずだが、出の速さや手数の多さで片手剣の使い勝手の良さが頭一つ抜けており、使う武器は固定されがち。
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余談だが、前述のスキルレベルのうち武器の扱いに関するものは何故か「武器レベル」ではなく「剣技レベル」。制作側も片手剣を使って攻略することを前提としていたのだろうか…?
魔法について
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図書館で魔法書を買って装備すると、RPを消費して魔法を使える。
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しかし攻撃魔法は消費RPの多さとエフェクトの派手さに見合わない効果のものばかりで、有用なものはダンジョンからの脱出魔法と家への帰還魔法(これら2つはRPを消費しない)、状態異常の治療+HPを少し回復させる魔法、HPを多く回復させる魔法の4つぐらいしかない。
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単に使い物にならないだけならばまだ良かったのだが、魔法書は捨てたり売却したりすることはできないので、考えずに買うと荷物や棚を圧迫するハメになる。
タッチによる操作について
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畑などの作業をタッチで行えるモードがある。
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ボタンを押す必要がないので一見楽に見えるが、チャージ(ボタンの長押しで威力や効果を高めること)が使えないという致命的な欠点がある。
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本作の農具はレベルを上げるとチャージの上限が上がり、じょうろで水を撒ける範囲が広がったり、斧で切り株を伐採する際の手数が短縮できたりといったメリットを得られるシステムなので、農作業でチャージが使えないというのはお話にならない。
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タッチで位置を指定して移動もできるが、トロトロと歩いて向かうため時間がかかる上に、障害物に引っ掛かると結局は自分で十字ボタンを操作して抜け出す必要があるため使いづらい。
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タッチ操作モードが強制されていないのが救いである。
その他
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なぜか名前入力画面に「ー」「ヴ」の文字が無く、それらの文字を使った名前を主人公やモンスターの名前にできない。
評価点
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キャラクターデザインは岩崎美奈子。ファンタジーな世界観にマッチしたデザインは人気が高く、続編のキャラクターも全て彼女が手掛けている。
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キャラクターボイスも、数は少ないがキャラクターと合っていてかわいいと評判である。
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「武器や魔法でモンスターと戦う」といったRPG的な要素と牧場物語の組み合わせで、
様々な新しい魅力を生み出した
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モンスターは機械によって召喚されており、主人公は魔法がかかった剣を当てることでモンスターが元いた世界へ返せる、という設定。武器を使いはするものの、暴力的な表現は抑えられている。
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簡単なアクションでの戦闘や、ダンジョンの探索、鍛冶・装飾・調合でのアイテム作りなど、新要素が多く入っている。
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武器や魔法を変えて戦ってみたり、洞窟をうろうろしてみたりするなど、特に目的がなくてもできることが増えており長く遊べる。アイテムの数も豊富。クリア後に登場するアイテム・隠れキャラもいる。
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単純に要素を足したのではなく、ルーンポイントやスキルレベルによって牧場生活とダンジョン攻略を結びつけ、独自のシステムとなっていることにも注目。
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前述したようにバランスは荒削りではあるが、この「牧場生活とダンジョン攻略が相互に作用する」というデザインについてはシリーズ初代である本作の時点で意識されており、新たな派生シリーズとしての方向性を示したのは評価できる点である。
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OPがフルアニメーション。
ニンテンドーDSが発売されてからまだ2年と経っていなかった当時、未だGBAから脱却し切れていないソフトが多かった中で、ボーカル曲+フルアニメーションのOPであった本作は貴重かつ斬新だった。「DSでもアニメはできる」と知らしめた作品であると言える。
総評
"新"牧場物語と冠したとおり、従来のシリーズにアクションRPGという大きな変化を加えた作品である。いままでの作品との違いに混乱したファンも多かったが、牧場物語の新たな面白さを作り出し、新規のファンも多く獲得した。
しかし上記のようなシステムの甘さや練りこみ不足の部分なども目立ち、一作目とはいえとても惜しい作品でもある。データを破壊する致命的なものを含めた、多数のバグを内包しているのも事実。それらさえなければ、と残念がる声も多かった。
とはいえ、後に独立したシリーズとなり、本家の牧場物語と共存していることは、このゲームが秘めた確かな魅力の証明と言える。
余談
その後の展開
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後に『ルーンファクトリー2』が発売。本作サブタイトルの"新牧場物語"が外され、独立してシリーズ化した。ナンバリングの本流以外に、派生タイトルも制作されている。
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『2』では初代作の問題点改善や新要素追加などの意欲的な姿勢が見られたものの、相変わらずバグが多かった。
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しかしシリーズを重ねるごとに問題点は少しずつ改善され、特にDS『ルーンファクトリー3』は、様々な新要素や
バグのなさ
から評判が良く、名作の呼び声も聞こえるほどとなった。
最終更新:2024年11月28日 21:42