本項では、ファミリーコンピュータ ディスクシステム『ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女 前編/後編』のスーパーファミコンにおけるリメイク版について解説する。
リメイク元についてはファミコン探偵倶楽部 PartII うしろに立つ少女を参照。
Nintendo Switch版については『ファミコン探偵倶楽部 うしろに立つ少女』を参照。
ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女
【ふぁみこんたんていくらぶ ぱーとつー うしろにたつしょうじょ】
ジャンル
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アドベンチャー
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対応機種
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スーパーファミコン(ニンテンドウパワー専用)
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メディア
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SFメモリカセット Fブロック×6 (24Mbit)+Bブロック×4(64Kbit)
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発売元
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任天堂
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開発元
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任天堂 トーセ
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発売日
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1998年4月1日(書き換え開始日)
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価格
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税込2,100円 |
レーティング
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CERO:C(15歳以上対象、VC)
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配信
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バーチャルコンソール 【Wii】2008年4月30日/800Wiiポイント 【Wii U】2013年7月31日/800円 【New3DS】2017年8月23日/823円(税8%込)
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判定
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良作
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ポイント
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全体的に快適になったリメイク作品 多くの小ネタとおまけ要素で周回プレイの楽しみが増えた 販売形式が特殊だったのが玉に瑕
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ファミコン探偵倶楽部シリーズ
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概要
ディスクシステムで発売された『ファミコン探偵倶楽部 PartII うしろに立つ少女』のリメイク版。
ニンテンドウパワーの書き換えサービス向けに制作された。ストーリー及びゲーム全般の特徴は上のリンク先を参照。
本稿ではFC版からの変更点を中心に記載する。
FC版からの変更点
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シナリオ
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シナリオの各節目を軸に全11章の章仕立てに再構成された。各章ごとにサブタイトルが挿入される。
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シナリオ内容自体に一切変更はないが、発売当時の時代に合わせテキストの一部に変更や補足が加えられている。
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また、行動の要所要所で「主人公が考え込む」という独自要素が発生する。
これは特定の行動を選択した際に発生するもので、『行動を行う前に主人公が考え込み、その後の行動のとり方で相手の反応が変化する』というもの。
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例(ネタバレ込みの説明)
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再序盤でヒロインのあゆみに事情聴取するシーンでアリバイを尋ねると「自分を犯人と疑っている」という誤解から怒らせてしまう。
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FC版におけるこのシーンは選択肢の流れ上不可避だが、SFC版では質問を始める前の段階で主人公が「ショックを受けているのだから質問の仕方に気を使わなければ」と考えこむ。その後、質問の内容についての選択肢を特定の手順で選ぶことによって相手を怒らせずに穏便に事情聴取を終えることができる、という流れになる。
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これは後述のおまけ要素「性格診断」及び「あゆみちゃんとのラブラブチェック」の結果に関わる要素であり、ゲーム展開自体には影響しない。
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FC版に存在しなかった追加シーンがある。
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序盤でモブとして登場する人物が中盤以降で再登場したり、FC版での登場人物とのやり取りにちょっとした変化が生じる要素があったりと、普通にプレイしているだけではわかり難いお遊び的な要素も増えている。
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テキストに80年代当時の時事ネタが絡んでいた部分が90年代当時の時事ネタに改められた。
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具体的には用務員室のテレビを調べた際の「みぽりんのドラマ」が「エミリのコマーシャル」に、ひとみちゃんとの初顔わせの際に名乗った際の「ガキの探偵はファミコンだけだ!」が、「ガキの探偵はマンガとニンテンドーパワーだ!」になる等。
一番わかりやすい部分では、繁華街のキャバレーの呼び込みが口にするホステスの源氏名が「レイちゃん・アスカちゃん」という、当時の時点で大流行していたテレビアニメの女性キャラの名前に差し替えられている点だろう。
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グラフィック
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同じ場所でも時間経過により日が暮れるなど、描写が細かく臨場感たっぷり。
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オープニングの回想シーンや背景で一部アニメーションが取り入れられており、さらに臨場感が増している。
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話の展開に合わせてグラフィック画面がスクロールするといったカメラの動きも取り入れられた。
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キャラクターデザインもリファインされ、絵柄が変更された他、背景も一部3DCGを用いた写実的な描写となり、サスペンスドラマ的な雰囲気が強まった。
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キャラクターの表情や立ち絵のパターンも非常に豊富になり、真正面向きのみならず後ろを向いたり体を斜めに向けたりなど多彩になった。
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原作では会話テキストのみだったモブキャラにも全て立ち絵が用意された。
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BGM
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BGMがSFC音源向けにアレンジされ、またFC版にはないBGMも複数新規に追加された。
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演出
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プレタイトル画面の演出が追加された。初期状態(セーブデータがない状態)で起動させると「ディスクシステムの起動画面を模した画面」から始まり、何らかのボタンを押すことで「ディスクカード読み込みを模した動作」を挟んだ後「ファミコン時代のタイトル画面(入りの部分のみ)」を一瞬見せて「ホワイトアウトして進化したSFC版タイトル画面」に移行する。
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ディスクシステム時代の懐かしさを感じさせて始まり、スーパーファミコンへの進化をうまく表現している。
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プレイアビリティ
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あらすじ機能、メモ機能の追加。
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ゲーム再開時にあらすじを見て、各章ごとの展開を振り返ることが可能。内容を思い出しやすくなった。
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メモ機能は聞き込みなどで新しい情報が入るごとに更新され、いつでも見ることができる。
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聞き込み中に出現した新しい選択肢は文字が黄色で表示されるようになり、選択肢の増加に気づき易くなった。
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ボタンでメッセージ送りが出来るようになり、ゲームテンポがスムーズになった。
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おまけ要素「性格診断」と「あゆみちゃんとのラブラブチェック」
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「性格診断」はゲームの進め方によってプレイヤーの性格を診断するというもの。性格診断に繋がる行動や選択肢が随所に挿入されており、結果次第で様々な診断が下るようになっている。
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「ラブラブチェック」はゲーム中でとった行動によってあゆみちゃんに設定された好感度が大きく変化し、ゲーム終了後、好感度の高さに応じたキャラクターが1人現れ、プレイヤーに対してコメントをくれるというもの。
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あゆみちゃんからのお言葉をもらうにはハートマークをほぼコンプリートに近い個数(全20個)まで集めるという条件を達成しなくてはならないのだが、とにかくその難易度が高い。攻略のヒントとしては、うかつに好感度の下がるような行動を取ってはいけない。
評価点
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グラフィック、サウンドがFC版からよりいっそう洗練された。
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恐怖演出の一環としてサンプリングボイスも密かに使用されており、それに気づくとより恐怖も盛り上がる。
よりホラーな雰囲気を味わいたいのであれば、音量高めでヘッドフォン使用を推奨(いや、止めた方がいいかも……)。
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名前の文字数が苗字、名前とも5文字まで、そしてカタカナも入力可能になった。
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FC版でのプレイアビリティ面の欠点を解消し、更に快適に遊べるようにするための配慮が施された。
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ROM媒体なのでセーブに煩わしさがなく、複数個所セーブ可能。画面の切り替え時の読み込みもなくなりテンポがよくなった。
賛否両論点
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ビジュアル面・演出面が強化され洗練されたが、それにより恐怖感が薄れたと指摘されることもある。
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これはホラー系のゲームリメイクでは必ずと言っていいほど指摘されるポイントでもある。最終盤のあるシーンはFC版の方が怖いという人も多い。
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確かにFC版のシンプルが故に想像力を掻き立てられるシーン描写もなかなかだが、SFC版の容量を生かしたスチルやアニメーションの進化による演出強化も、時代の進化として評価されている点でもある。また、オリジナル版のプレイ経験がない人の中にも純粋に怖かったという意見は決して少なくない。
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3D迷路シーンがカットされたことについてはゲーム進行がスムーズになった一方で、緊迫した状況下での人探しというシチュエーションもストーリー進行の一端を担っていたためやや物足りなくなった感もある。
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とはいえ、コマンド選択式ADVゲームにおける3D迷路自体が前時代的なところが否めない要素なので、良し悪しであろう。苦手な人が多いことも考えれば妥当と言える。
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ラブラブチェックは再プレイを促す要素として機能している一方、ゲーム開始からエンディングまで長丁場となるため繰り返しプレイするには時間効率が悪い、下位の結果ほどギャク的展開になってしまうことも相まってエンディングの余韻を壊してしまうという欠点もある。
問題点
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前編パートの終了後はインターバルを挟まずにそのまま後編パートへ突入するが、後編開始冒頭に挿入される前編のあらましのナレーションがそのままであるため、若干、不自然になっている。
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多少仕方ないところもあるが主人公の名前に漢字が使えない。登場人物の名前が漢字で表記されるようになったので主人公のみ姓名とも平仮名表記で浮いてしまっている(一応仲間の「あゆみ」と「ひとみ」も名前が平仮名なので多少は紛れているが)。
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冒頭の「今から3年前」という下りがそのままになっている。
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FC版では前作『消えた後継者』の翌年発売され、説明書などでも前作との繋がりが明記されていたことで成り立っていたものであり、『消えた後継者』に先駆けてのリメイク版であることもあって意味のない表現になっている。
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ラブラブチェックのポイントにフラグ設定ミスがあり、20点満点が絶対に取れない。
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表示上の通り満点は20点なのだが、加点フラグ設定にミスがあり実際は18点が限界になっている。そのため普通にプレイしていては見ることができない。
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後のSwitch版では修正され20点満点が出るようになった。
総評
過去作のリメイクとしては、旧作のファンも納得の出来栄え。あらゆる点で洗練され、過去作のよい点、持ち味を見事に昇華させた良リメイクと言えるだろう。
余談
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販売形態について
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ニンテンドウパワー(Loppi)による書き換え専売という販売形態により、知名度が低く、プレイが困難だった。
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一時期は新規購入する手段が絶たれた上に中古市場でも残存する本数自体が少なかったため、プレイするハードルが高かった。
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Wii U/New3DSのバーチャルコンソールで配信されていたが、こちらも配信終了している。
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FC版では放映されなかったCMが制作された。
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ただ、ローソン主導でLoppiそのものの宣伝といった向きが強く、本作はほんの数秒のオープニング画面と共にタイトル名をコールする程度である。
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FC版にはなかった正真正銘のゲームオーバーが存在する。
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もっとも、意図的にくり返しフラグを立てる必要があるため、普通にプレイする分にはまず気づかない、一種のお遊び要素のようなものである。
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詳細
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旧校舎にあゆみと2人きりになるタイミングで彼女の胸をカーソルで調べるとあゆみが激怒し、しつこく繰り返すと田崎がいきなり現れてつかまってしまう。
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さらに事件関係者に延々と罵られた挙句、空木事務所を追い出されて独り寂しく放浪の旅を再開するはめに・・・という、手の込んだとんでも展開が発生する。
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条件を満たせば「
実は主人公の妄想だった
」というオチでそのままゲーム続行(ただし相性チェックの評価はガッツリ減点される)となるが、満たしていない場合は本当にゲームオーバーになってしまう。
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FC版では駒田哲治の読みは「こまだ てつぢ」だったが、このリメイクでは「てつじ」又は「てつはる」と改められており、この時点では双方が入り混じって使われおり不定だったが、どちらにせよ「てつぢ」はさすがにふざけていると判断して変更されたものと思われた。
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だが後のSwitch版では「てつぢ」に戻っていた。そのため、本作の2つが誤記と思われる。
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『平成 新・鬼ヶ島』では収録されていたオリジナル版の収録が今回はない。
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ただ、前後編に分けた分コストは高くついてしまう上に、前後編どちらからでも遊べる『平成』と違って1本道のストーリーであるため、ディスクのように完全に前後編で分割販売するのには無理があるので仕方ないところである。
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オリジナル版にあったお遊びの部分は、ほぼそのまま持ち越されており(上記の通り時事ネタで一部改変あり)前作『消えた後継者』にまつわる「神田弁当(*16)」もそのまま入っている(用務員室での「あっ!畳に焦げが…ない」はカットされている)。またエンディングの「ファミコン探偵クラブ『消えた後継者』へ続く…」という流れもそのまま。
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このため『消えた後継者』のリメイク発売も期待され、多くのファンに望まれていたにもかかわらずニンテンドウパワーで実現することはなかった。その実現までには23年(オリジナル発売からは33年)という長い年月を要することになる。またシリーズの新作を期待する声もあったが、その実現は26年も先の話となる。
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製作者が「80年代当時のあの頃だからこそ作れた作品であり、今の時代的に受け入れられるものではないと考えているから」だとインタビューで回答している。
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「消えた後継者」および「うしろに立つ少女」のFC版が2004年8月10日にGBAで復刻販売されている。
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2019年にNintendo Switchにて『ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者』『ファミコン探偵倶楽部 うしろに立つ少女』のリメイク制作が発表され2021年5月14日に発売された。特に「消えた後継者」は待望の初リメイクとなる。
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それから3年を経た2024年7月17日に本作の35年ぶりの続編『ファミコン探偵倶楽部 笑み男』が8月29日にNintendo Switchで発売予定と発表された。先んじて『笑み男』としてティザー公開され、様々な考察がされていた。
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本作の発売はシリーズ初代作である「消えた後継者」の発売から10周年という節目だったこともあり、ニンテンドーパワー作品紹介ページの本作のページでは、『ファミ探生誕10周年記念』と銘打って過去作の紹介やちらし広告の掲載ページなどのコーナーが存在した。
中でも『ファミコン探偵倶楽部10年のあゆみ』のコーナーにはある意味騙された人も多かっただろう。
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詳細
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『ファミ探発売から今に至るまでの10年間の軌跡を紹介する』……と見せかけて、シリーズのヒロインであるあゆみちゃんの出演作品をゲーム中の彼女のグラフィックと共に振り返るというもの。つまり「歩み」と「あゆみ」をかけたダジャレである。
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更にこのコーナーの中に水着姿で恥じらうあゆみの公式絵画像が隠されており、特定の手順で画面内の画像をクリックすることで見ることが可能。
スタッフ何やってんの。
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ちなみにこの公式絵は、ファミマガ市場で行われたファミコン美少女コンテストの挿絵用に開発チームが書き下ろしつつ未使用になったものの1つで、その他には、袴を身に着けて模擬薙刀を振るうあゆみや、アイドル風のおしゃれな洋服を身に着けたあゆみのイラストが描かれている。
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後にSwitch版コレクターズエディション付属のブックレット「ファミコン探偵倶楽部 調査ファイル」の原作資料ページにて、これらのイラストが全て収録されている。
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ニンテンドウパワーのページはトップページが消滅しているが、ソフトの紹介ページは20年経った今でも残っているので検索すれば閲覧は可能。
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冷静に考えてみると本筋とは全く関係の無い所で謎が残っている。
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怪談がテーマなので以下のような怪奇現象が演出として取り入れられている。
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肖像画の目が動いた(ような気がする)。
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誰かに見られていた(ような気がする)。
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とある場所でじっとしているとすすり泣く声が聞こえる。
基本的にはテキスト中で主人公の主観で語られるためプレイヤーがそれを知覚することはない。あくまで物語の恐怖面を引き締めるためのエッセンスである。
だから「気のせい」で片づけられる。
だが、最後は違う。音の面から直接アプローチをかけてくる為プレイヤーはそれを否定できない。1度目こそ気のせいと思うかもしれないが、2度目以降はそうはいかない。
そして何よりプレイヤーを焦らせるのは、このことについて登場人物が一切言及しないことであろう。
…で、普通にプレイしている分だと気づきにくいが、あらためて整理してみるとこれらの現象は美術室に集中していることがわかる。
物語終盤に美術教諭の駒田は「ここには得体のしれない何かがいる」という台詞を残すが、通常ならこれは『うしろの少女』を示すものとプレイヤーは受け取るだろう。
しかし、前述の事実を確認した上で考えてみるとどうだろうか?
本編の真相と合わせて見ても(美術室は事件とは関係ないので)『うしろの少女』とは直接繋がらない。
(一応、ここに飾られている肖像画がある事件関係者と関わっているが……)
美術室には『うしろの少女』とは異なるナニかが潜んでいる……?
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最終更新:2025年04月11日 11:34