聖剣伝説 HEROES of MANA
【せいけんでんせつ ひーろーずおぶまな】
ジャンル
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ストラテジーRPG
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対応機種
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ニンテンドーDS
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メディア
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1024MbitDSカード
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発売元
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スクウェア・エニックス
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開発元
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ブラウニーブラウン
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発売日
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2007年3月8日
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定価
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5,040円(税込)
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判定
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なし
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ポイント
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シリーズ初のRTS-RPG 不便な仕様とアホAIの合わせ技 聖剣伝説である意味が薄い
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聖剣伝説シリーズ
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概要
聖剣伝説シリーズの一作で、『聖剣伝説3』の19年前を舞台とした作品。
聖剣伝説シリーズは基本的にA(アクション)RPGだが、本作はストラテジーRPG。
加えて、ターン制ストラテジーではなくRTS(リアルタイムストラテジーシステム)を採用している。
このため、シリーズとしても日本の携帯機用ゲームとしても異色と言える。
本作の遊び方
プレイヤーは、各章のステージに設定された勝利条件を満たすのが目的となる。
大抵は敵を倒すことだが、特殊な条件である場合もある。
そのために、ステージマップの探索、資源の収集、MOBの生産、自軍ユニットの配置、敵との戦闘などの、
自軍ユニットへの指示を全てリアルタイムで並行して行うことになる。
ステージパートの前後にオート会話のイベントパートがあり、それらが一段落したところで次の章へと進む形式になっている。
評価点
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音楽やビジュアル面の評価は高い。
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イベントパートの立ち絵は絵本のような画風。ステージパートは3Dのマップや戦艦と、ドット絵のキャラを組み合わせている。
ドット絵や3Dのマップは開発元の作品『新約 聖剣伝説』や『マジカルバケーション』などのテイストを加えつつも『3』の雰囲気を再現出来ている。
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ただし、OPやムービーシーンはポピュラーなアニメ調なので、特に立ち絵とのギャップが大きい。
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音楽担当は『聖剣伝説 LEGEND OF MANA』でもお馴染みの下村陽子氏である。
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ステージパートで神獣(全8体)を召喚できる。
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ユニットではなく高燃費・高威力の全体攻撃という立ち位置だが、『3』の印象深いボスキャラを味方にできるのはファンサービスとして評価できる。
『3』ではステージに隠れて見えなかった部分もしっかり描写されている。
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大きなバグは無い。そういう点では安心してプレイ出来る。
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Wi-Fiスコアランキングや周回プレイ、シナリオハードモード、フリーバトルモードなどがあり、やりこみ要素が豊富である。
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クリアすることでレアな装備品が手に入ったりする。ただし、高難易度プレイが前提なので、ライトユーザー向けの要素ではない。
賛否両論点
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RTSゲーという異質さ
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カリスマユニットは戦闘不能時の蘇生コストが高い反面、周辺MOBの性能を底上げするスキルを持つため、前線から一歩引くことが重要。
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MOBは地上←重装←飛翔←弓←地上…という4すくみがあるため、相性の悪い敵にはすぐ倒されてしまう。代わりに召喚コストが幅広く、数と強さのバランスを取りやすい。
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本作はレベルの概念がなく、装備品による性能強化(カリスマユニット限定)も限度がある。また、シリーズ恒例の回復アイテムが廃止されており、HPを素早く回復する方法はヒールライトくらいしかない。
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上記の仕様上、カリスマユニットのみで敵を殲滅するようなプレイはほぼ不可能。「地道に資源を集め、有利なMOBを増やして先頭に立たせる」という作業の繰り返しになるだろう。
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従来の聖剣シリーズの作風とまったく異なる反面、RTSゲーの性質はそこそこ表現できている。
問題点
聖剣伝説の名を冠する必要性が薄い
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聖剣伝説シリーズの土台は、「誰でも遊びやすいARPG」という点にある。
ジャンルごと挿げ変えてユーザーを選ぶRTSにしてしまっては、根本的に聖剣伝説らしくない。
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「誰でも遊びやすいRTS」なら違う評価だったかもしれないが、本作はユニット操作に関してプレーヤーに要求されるものが多く、手軽に遊べるレベルではない。詳細は後述。
『3』との関連性の乏しさ
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シナリオ的には『聖剣伝説3』の前日譚という位置付けだが、これも関連付ける意義が薄いと評されることが多い。
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『3』は主人公キャラ6人の人気が高い一方、親世代のキャラ人気は地味で、後述する時代以外の前日譚が望まれていたわけではない。
しかし、本作の時系列は『3』の19年前である。後述する時代とは異なり、当然『3』の主人公たちもまだ生まれてすらいない。
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『3』の時に回収されていない重要な伏線があり、過去を描いた本作でそれが日の目を見た…ということも特にない。
せいぜい、『3』で終盤に訪れる「古の都ペダン」がどんな都市だったか判明するぐらいで、後は小ネタレベルである。
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ペダンの設定を活かすなら、本作の時代より後の「竜帝大戦」の話にした方が良かったのではないか、という声も多い。
勿論上記と供に『3』のペダンで語られた他主人公関連のエピソードがある訳でもない。仮面の導師は小ネタレベルでは存在するが。
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要するに「せっかくの『3』関連作なのに『3』の人気にあやかれてない」ということである。
ただし関連付けが強ければ強いほど『3』プレイ済みが前提になってしまうため、それはそれで新規のゲームとしては問題が出てくる。
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また「戦争から逃げ延びた獣人を聖都ウェンデルが匿う」「ナバールの首領にローラントの族長が殺される」など、『3』の国際情勢に合致するとは言い難い後付けも見られる。
最終盤のテキストも『3』で実際に起こった事と微妙に一致しない。
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公式サイト(現在は削除済み)にてスタッフが、「『HoM』で新たな謎を生むかもしれないが、機会があれば語りたい」と記載していたが現在まで語られた事は無い。
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キャラクターデザインも原作『3』とあまりに毛色が違っており、同一世界観の作品に全く見えない。
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伊藤龍馬氏のデザインは単品では悪くないのだが、氏の作風は『タクティクスオウガ』『ファイナルファンタジータクティクス』等で知られる吉田明彦氏の系譜であり、シックで落ち着いた雰囲気である。
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『3』の結城信輝氏の華やかで迫力のある雰囲気とはどうにも合っておらず、キャラクターデザインイラストを見ても派手なポーズを取っていた『3』の絵に対して本作のものは単なる直立の立ち姿だったりと、印象を継承しようとする意識は殆ど感じられない。
ステージパートの問題点
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自軍ユニットの仕様が曲者すぎる。この作品に対する批判で一番多いのは、シリーズ云々よりも寧ろこの部分である。
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ユニットは基本的にAI制御で、プレイヤーは移動指示しか出せない。
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指示はDS恒例のタッチペン操作となるのだが、タッチ判定がどこにあるのかわかり辛く誤タッチを起こしやすい。
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DSの下画面が本作のマップサイズに比べ小さいことや、移動可能な場所とそうでない場所の境目が曖昧なせいでもある。
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ユニットが縦横にしか移動できない。
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本作のキャラは4方向の移動しか出来ないため、目的地に向かってまっすぐ進まない案件がしょっちゅう発生する。
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せめて8方向に移動できたら、という声も多い。
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AIが馬鹿すぎる。
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ちょっと味方と接触しただけで勝手に進路を変更して遠回りしたり、移動中に会敵しても攻撃優先か移動優先かはっきりしなかったりと、思い通りに動いてくれないのは日常茶飯事。
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近接攻撃型ユニットは、放っておくと勝手に近くの敵を追いかけて敵の集団に突撃して返り討ち、なんてことがざらにある。
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遠距離攻撃型ユニットは、移動指示中は一切攻撃しない。移動指示を与えておいて、ちょっと他のユニットに指示を与えていたら道中で一方的にボコられていた、という事態が頻発する。
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集団行動が出来ない。
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本作ではキャラアイコンをタッチしたり下画面のマップ範囲を囲んだりして複数のユニットを選択し、目標の場所にタッチすることで移動させることができる。
が、タッチした場所の一点めがけて全員が移動する仕様なので、味方同士ぶつかるは絡まるはでマトモな集団行動にならない。
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5体前後のグループを例に挙げると、細道を進むよう指示したら数体が逆方向に歩き出す、エリア外周で資源と戦艦を往復させるうちに敵陣へ突っ込む個体が出てくる等。
そして、あぶれた個体をタッチしようとして全体の目的地が書き換わってしまう等々。
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整然と集団を移動させるには、結局ユニット一体一体に個別の移動指示を出さねばならない。つまるところ、このゲームの難点は阿呆な味方ユニットをコントロールするために、細かいタッチ指示を連発しなければならない点にある。
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中盤以降の章では数十ユニットからなる大部隊を運営しないと戦力的に厳しいため、尚更手間のかかるプレイを要求される。
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インタフェースに粗が目立つ
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刻一刻と状況が変わるRTSゲーかつタッチペン必須でありながら、右手側のボタン(B・X)に代替不可の機能が割り振られている一方、A・Yボタンは余っている。
また、決定・キャンセルボタン(A・B)やキーコンフィグが実装されていない、スクリーンの上下切替アイコンをタッチしないと一部項目を確認できない、ステージパート以外で十字キーが使えないなど、洗練されているとは言い難い。
総評
極めて人を選ぶ作品だが、ハマれる人には十分なやりこみ要素があり、ボリューム不足とは感じない出来ではある。
インタフェースの悪さを受け入れて、むしろ乗り越えて馬鹿な自軍を上手く統率できるようになれば、本作独特の達成感は得られると思われる。
しかし、そんなゲームを聖剣伝説シリーズとして出す必要があったのかは甚だ疑問である。
シナリオ自体は総合的に可もなく不可もなく普通の出来で、シリーズの裾野を広げるほどではないし、
本作を以て聖剣伝説シリーズが昔の隆盛を取り戻したわけでもない。
そもそもこのソフト自体が、出荷数に比べて初動売り上げがかなり少なかったために、早々にワゴンマスターになってしまった。
たらればの話になるが、ARPGだったら、あるいは聖剣伝説でなければ、違う評価を受けていたのかもしれない。
余談
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売上に関しては、今までの3作(『新約』、『COM』、そして特に『4』)が期待はずれだったことも影響していると思われる。
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『3』と『LoM』は各作品の発売当時に世界観の繋がりを示すものは一切なかったが、本作『HoM』にてこの世界の名称は(『LoM』の舞台と同名の)「ファ・ディール」であり、MOB召喚にはガイアの石とトレントの実が必要と語られる。なお、他に『LoM』とのつながりを示す要素はない。
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ちなみに『3』の攻略本によると、『3』の舞台には「ファ・ザード大陸」という名称が設定されているが、世界そのものの名称は特に語られていなかった。
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後に発売された『3』の3Dリメイク作品『聖剣伝説3 TRIALS of MANA』にて探索要素として『LoM』にも登場したサボテン君が登場しているため、明言されているわけではないが、現在の公式設定ではこれらの作品に何かしらの繋がりがある可能性はある。
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なお、その『3 ToM』では本作『HoM』との繋がりはほとんど描かれていないものの、親世代のキャラたちのデザインが本作を意識したものにリデザインされており、関連性を強化しようという動きは一応ある。
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この作品が出て以降、ゲーム機での聖剣伝説新作は『聖剣伝説 RISE of MANA』のVita版が出るまで8年という長くに渡り発売されなかった。
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この作品が出た前後に『聖剣伝説 FRIENDS of MANA』という携帯アプリが出ているが、2011年2月をもってサービスを終了している。ゲーム内容としてはMMO的要素を携帯電話向けに簡略化したもの。
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2013年3月5日にリリースされた『聖剣伝説 CIRCLE of MANA』はGREEのソーシャルカードゲームである。こちらも2015年9月30日でサービス終了。
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2014年3月6日にはiOS/Android向けにアクションRPG路線の基本プレイ無料の完全新作として前述の『聖剣伝説 RISE of MANA』がリリース。
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この『RoM』は2015年にPS Vita向けにも移植され、基本無料ではあるものの久々の「ゲーム機で出た新作」とはなったものの、こちらもネットゲームの宿命か2016年3月31日をもってサービス終了。
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以上により「現在もプレイ可能なゲーム機での聖剣伝説完全新作」としては、2024年8月29日に『聖剣伝説 VISIONS of MANA』が発売するまで、本作から実に17年もの間、長らく登場していなかった事になる。
最終更新:2025年03月07日 07:20