聖剣伝説4

【せいけんでんせつふぉー】

ジャンル アクションアドベンチャー
対応機種 プレイステーション2
メディア DVD-ROM 1枚
発売・開発元 スクウェア・エニックス
発売日 2006年12月21日
定価 7,140円(税込)
プレイ人数 1人
レーティング CERO:A(全年齢対象)
判定 クソゲー
ポイント 2006年クソゲーオブザイヤー次点
クソゲーすぎる、どうなってんだ…?
従来作を無視した不親切で高難易度のシステム
薄い・電波・超展開という三重苦のシナリオ
凄まじい3D酔い
ひたすら報われない主人公
悪役の極悪非道ばかりが目立つ胸糞展開
グラフィックやBGM、ムービーシーンは好評
クソゲーオブザイヤー関連作品一覧
聖剣伝説シリーズ


概要

『聖剣伝説』ナンバリングタイトルの4作目。ナンバリングタイトルとしては前作『聖剣伝説3』から実に11年ぶりの新作であり、同時に完全版・アップデート版・マルチプラットフォームを除くと本作がスクウェア・エニックスから発売されたPS2最後のタイトルとなる。
ストーリーテーマは「原点回帰」。公式曰く『聖剣伝説のはじまりを描いた物語』であり、シリーズ初の3D化・ボイス付き作品でもある。

シリーズの生み親で知られる石井浩一氏がディレクターを務め、『聖剣伝説 LEGEND OF MANA』のキャラクターデザインに携わった池田奈緒氏や同作の背景美術に携わった高橋一彦氏と、『クロノ・クロス』や『ファイナルファンタジーXI』に携わった当時の『スクウェア・エニックス第3開発スタジオ』の開発陣が中心となっている。

それまでSFC時代のドット絵の印象が強かったシリーズだったが、突如PS2末期の高レベルグラフィック&フルボイス化という変貌を遂げ、懐古色の強かったシリーズのイメージを大きく変える事になる。
「PS2最高水準のグラフィック」と「Havok社の物理計算エンジンによるオブジェクト『MONO』のなめらかな挙動」がセールスポイントとして前面に打ち出されていたが、本作は結果として聖剣伝説シリーズの商品展開に多大な影響を及ぼす事になってしまった。


ゲームシステムの特徴

  • 過去作にあったマップ間を跨いだ移動が廃止され、序章含む全9章の本編と、全32ステージのチャレンジアリーナ(実質上のフリーバトル)で構成される。本編の章立てが過去作で言うメインシナリオに該当し、幕間に挿入されるムービーを見ながらアクションステージを攻略する事となる。
  • 主人公エルディは、序章から1章の前半までは特殊な能力等は一切持たない村人として扱われ、武器も序章の森で拾った木の棒のみ。
    • しかし1章中盤で右手に謎の種子が寄生すると、ツタから発生した剣、ツタで敵・MONO(後述)を拘束するムチ、まんまる石(弾数無限の通常弾)を撃つパチンコの3つが攻撃手段として追加される。
    • ステータスは過去作と同じくHP・MP・攻撃力・防御力の4種類。このうちHP・MP・攻撃力については、主にパニック状態(RPGで言うスタンに該当)の敵を攻撃する事で出現する「メダル」により強化できる。また、攻撃力・MPが一定の値に達すると「ツタレベル」と「フィーレベル」がそれぞれ上昇する。
      • ツタレベルは剣の連撃数・ムチで拘束できる敵の種類・パチンコの連射数に加え、ムチで拘束した敵を気絶させる、拘束したまま振り回すという拡張アクションにも影響する。
        フィーレベルは使える魔法の種類に直結する。
    • 上記に加え、ステージの至る所に隠されている「精霊の魂」を入手する事で、特殊効果を持ったパチンコ弾を撃つことができる。
  • 本作には、物理演算を活用した「MONO」システムが実装されている。
    • 「MONO」とはタルや岩のような掴んで投げられる設置物、いわゆる「物」。これをムチで掴み、敵にぶつけてパニック状態にすることが攻略の基本となる。
  • 1つの章につき、高低差に富んだ3Dマップを突破しながら章のボスを倒す事が目的となる。
    • 各章は5つ程のエリアで区分されており、エリア間には必ず途中経過を保存するセーブポイント「マナの苗」が配置されている。
  • 次の章に進む際にステータスは全てリセットされ、一から育成し直しとなる。ただし、後述の「エンブレム」による底上げは可能。
    • エンブレムは特定条件を満たすか各難易度クリア後に通常メニューから開ける「ショップ」で段階的に入荷され、前者は高額な料金を払わずに入手できるメリットがある。
    • ただし条件を達成するのは非常に困難。後者は高額であるが、地道にルク(お金)を貯れば入手可能である。入手できる金額は難易度ごとによって異なる。

問題点

シナリオ関連

  • シナリオの絶対量の少なさ
    • 壮大なストーリーにしようとした節はあるのだが、シナリオの展開が全体的に雑で、必要最低限のあらすじと大雑把な状況しか明かされないため、プレイヤーが置いてけぼりになってしまう。
      特に感情移入を誘うための「主人公達の村からの旅立ち」「赤の他人だった人物と交流を経て仲間として引き入れる展開」「知らない土地にたどり着く達成感」などの描写は皆無
    • その元凶は、ストーリーの大半を各ステージ終了時で流れるムービーのみで描写していることにある。ムービーで省略した部分や用語説明は一枚絵とナレーションだけで手短に済ますという構成であり*1、モブキャラとの会話も基本的に存在しない*2
      そのため壮大な物語をダイジェストで見せられている感じがあり、旅の目的がよく分からないまま超展開を見続けるはめになる。たとえば『ゼノギアス』のノベルパートが全編に渡り展開されていると言えば分かりやすいだろうか。
    • ストーリー自体はオリジナリティに溢れているものの、俗に言う「後味の悪いイベント」が山ほどある。中盤では大災厄により大量の民間人が死亡するという鬱展開もあり、死者の数はシリーズでも屈指の多さである。また、プレイヤー自身が物語を繋ぎ合わせていかないとストーリーの全体像を把握できない。
      そのため本作のシナリオを「馴染めない、理解が追いつかない」など低評価を下す人、更には『電波*3と酷評する声も少なくはない。
      • もう少し補足すると、カタルシスを得られるような王道的なストーリーではなく、互いの歪んだ信念をぶつけ合ってかつての友と殺しあう『LOM』のエスカデ編や、本作の前年に発売された『テイルズ オブ ジ アビス*4に近いと言える。
+ ストーリーのあらすじと問題点(ネタバレおよび倫理的な問題があるため格納)
  • 本作の悪役「ストラウド」は氷の国ロリマーの王であり、突如イルージャ島への侵略を開始する。その目的は「大樹の巫女リチアと聖剣の力を利用することで、大樹に封印された魔界の扉を解放し、邪精霊タナトスを現世に拡散させて世界を支配する」というもの。
    これに対し、大樹の種子を右手に宿したエルディは故郷を護るべく奮戦するも、扉の解放を止められずに敗走。それから1年間、エルディはタナトスがもたらした惨状の中で各大陸の残存勢力を募りつつ、行方不明になったリチアを助け出すため奔走していた。
    • この路線自体は『初代』、つまり「主人公とヒロインのジュブナイル物」への回帰である事には間違いない。しかし、丁寧な描写でプレイヤーの涙腺を崩壊させ、絶望的であっても希望を捨てずに最後まで諦めずに突き進んだ『初代』に対し、本作は主人公サイドが現状を打破できずに終始情けなく狼狽え跪くため、原点回帰を履き違えている感が強い。
    • ただでさえ、全編に渡って予測不可能な重く救われないストーリーが展開されるうえに、主人公サイドの活躍は所々ダイジェストで済まされる。その結果、エルディとリチアは「悪役の所業に押し潰される悲劇の主人公とヒロイン」という、極端に言えば見せ場の乏しい脇役のような印象になってしまう。
    • 悪役ストラウドについては、まるで主人公サイドよりも贔屓されているように見える。しかし『FF7』のセフィロスのような濃い人間性があるわけでもなく、彼のやることは無慈悲な民間人の殺戮でしかないために、胸糞展開が続くばかりで全く好感が持てない。
      • ストラウドがなぜそのような残虐非道な王になってしまったのか、作中では一切説明されない。また「魔界の冥王となりすべてを跪かせる」という目的を持つに至った経緯も語られず、ストーリー上の必要性が感じられない。
        一応、ダークファンタジー色が強かった過去作の流れを継いだ展開とも言えるが、本作の場合はただ不快感を煽るものでしかない。
  • ストラウドが欲する邪精霊タナトスは、大樹の地下深くに眠る「滅びのこだま」から生まれ、憑依した生き物を不老の魔物「妖魔」に変貌させる。
    • 魔界の扉の解放に居合わせた村人たちが妖魔と化すシーンは、まるでゾンビ映画のようで気分が悪くなってしまう。しかも妖魔から元の姿に戻る方法はなく、殺す以外の解決策は存在しない
    • ゲーム中では妖魔化した者を『タナトス○○(犠牲者の名前)』と表記している。ラビやマイコニドなどの定番モンスターも例外なく醜い姿と化すため、シリーズのファンであるほど心を抉られてしまう*5どうあがいたって絶望しかないのだ。
  • 物語後半、現世と魔界が一体化した事により多くの人間が殺され世界が地獄の惨状と化す中、エルディはようやくリチアと再会する。しかし、リチアは「ストラウドを倒して真の冥王となり、自分とともに世界を統べましょう」と提案する。
    これに対しエルディは真っ向から拒否するのだが、以降リチアとは敵対関係になってしまう。
    • 実はこの時点で、リチアの意識は千年前の大樹の巫女であるアニスに支配されており、上記の提案も彼女の本心からのものではない。だが主人公とヒロインが完全に敵対してしまうというのは、プレイヤー置いてけぼりの超展開でしかないだろう。
  • 最終章では、エルディがやっとの思いでリチアとストラウドの元へたどり着くも、リチアは突如ストラウドに聖剣で刺され、抱き留めたエルディの腕の中で消えてしまう。
    「貴様を新たな冥王に仕立てるという目論見など既に知っていた。俺こそが万物の王だ」と嘲笑うストラウドに激昂したエルディは、遂に決着を付ける事になるのだが…。
    • ストラウドが息絶えた直後、唐突にリチア(の心身を完全に乗っ取ったアニス)が復活し、「闇や光に染まった聖剣だけでは私を殺せない。それにリチアはもういない」と軽く流される。その後、エルディは妖魔化したプック(リチアのペットであるラビ)と再会しつつ、再度アニスの元へとたどり着く。そこでアニスの「種子と邪精霊化させたフィーの力により、滅びのこだまを完全に開放する」という真の目的が明かされ、彼女を倒すとエンディングに突入。
  • エンディングでは、アニスから分離したリチアをエルディが救い出そうとするのだが、リチアとフィーに「自分たちと種子がひとつになってマナの女神を生み出し、世界を元の状態に戻す」という永遠の別れを告げられる。そして、フィーから種子の代わりにリチアの花を託されたエルディと、元の姿に戻ったプックを残してマナの女神が誕生。さらに女神がマナの剣を生み出す
    • エンディングムービー自体は屈指の表現力だが、今まで散々残酷な展開をやっておきながら愛と自己犠牲の力で全部解決したという強引さは否めず、美麗ムービーでマナの女神が誕生するシーンを見せられても感動を覚えるのは難しい
    • ちなみに、スタッフロールは精霊たちが元に戻った世界を駆け巡るフェルトアニメーションという力の入れようである。
      制作したのは本作のモンスターデザインを担当した吉岡愛理氏。彼女曰く『物語の少しもの悲しい結末を和らげたいという理由で発案しました』とのこと。 実際、本編の陰鬱さがどうでも良くなるくらいの穏やかさである。
  • スタッフロールが終わると後日談のムービーが始まる。プックを村の前まで送り届けたエルディは、世界が元に戻った事を知るとともにこれまでの記憶を振り返り、村には帰らず独りでどこかへ旅立つという結末を迎える。これでは後味の悪いバッドエンドに見えてしまう。
    • 魔界の扉の解放に居合わせた村人たちが元の姿で登場する事から、おそらくプック同様にすべての妖魔が浄化され、滅びのこだまとタナトスは消滅したのだろう。
    • 最後に挿入されるムービーでは、エルディとリチアの思い出がある樹の下にリチアの花が供えられており、「マナの中に愛あり 愛の中にマナあり」と締め括られる。そのため「エルディは、リチアとフィーが救った世界を見て回ることにした」という前向きな解釈もできなくはない。
      しかしながら『大樹の意思によって否応なく戦争に駆り出された少年が壮絶な殺し合いを経験し、戦争が終結した時には全てを失った』という結末はあまりにも報われない上に、彼のその後の行方を補完する資料が何処にも載っていないのは残酷極まりないものである。
      • なお、石井氏は後年に出版された設定資料集のインタビューにて『リチアとフィーを失った喪失感からダークサイドに堕ちた……かもしれません』と、あまりにも投げやりな回答を下している。 やはり兄貴似なのか
  • 人物・世界観の描写不足
    • シナリオの短さゆえに各キャラクターの登場機会が少なく、村要素がないため自由に会話することもできない。各々の細かい心理描写や魅力のあるシーンが少ないため、非常に感情移入しづらい上、ほとんどのキャラクターは 愛着が湧く前に何らかの理由で死亡してしまう
      • キャラクター造形についても、シンプルかつ分かりやすい『2』や『3』ではなく、愛憎入り混じる複雑怪奇な『LOM』に近いため、各キャラクターの動向を理解するためのハードルが高く、人を選ぶものとなっている。
      • 仮面の導師の設定やラスボスの目的は、戦闘前後のムービーパートで一気に語られてしまうため、唐突なストーリー展開に拍車を掛けている。
    • 『2』や『3』では苦労しながら仲間に加えた8大精霊は、今作では基本的にオープニングやダイジェストシーンで語り部を担うのみ。ゲームパートでもエルディが道を進んでいると唐突に現れ、パチンコの弾になるアイテム「精霊の魂」をくれるだけという、なんとも投げやりな扱いを受けている。
    • フラミー、トレント、ガイア、ワッツといったシリーズ過去作のキャラクターも登場するが、活躍してすぐに去る「ファンサービス」的なシーンが多い上に一部キャラクターは死亡してしまうため、扱いがぞんざいな印象は拭いきれない。
    • 公式のアートワークを見ると、本作は『LOM』同様に人間だけでなく獣人や奇妙な生き物も共存する世界だと分かるのだが、彼らの姿を確認できるのは5章のみ。舞台となる6大大陸もイルージャとジャドの一部分しか探索できず、他の4大陸は全くと言って良いほど触れられない
      • 「世界規模の災厄により各国の主要都市が壊滅的な被害を受ける」というストーリー上、わざわざ出す必要がなかったとも取れるが、やはり6大陸中2大陸のみの実装は不自然。さらに言うと、ストラウドとワッツを除く各国の王3名(レディ・ルサ・ルカ、ブラザー・モティ、ミリオネア・ニキータ)は、ダイジェストシーンに一瞬登場するだけで台詞すらない。幾ら3Dが美麗でもこれでは手抜きと思われても仕方がなく、どうにも未完成感が漂う。
      • 解体新書に書かれている設定資料を読むと、トップルは水源に溢れた国、ロリマーはストラウドが治める極寒の国、ウェンデルはニキータの王が治める富裕国、イシュは鍛冶技術が発達した工業国だという事が分かる。しかし設定だけ見るとどれもこれもRPGのテンプレでしかないうえ、ゲーム中ではほとんど描写されないため世界観の全容を窺い知ることはできない。
+ 登場人物についての詳細(ネタバレ注意につき格納)
  • エルディについて
    • 2』の主人公ランディや『3』の6人の主人公に代わる新たな主人公。ヒロインであるリチアと友達以上恋人未満の関係を持つ樹の民の少年であり、声を演じる柿原氏の演技あってハキハキと喋る明るい性格である事が分かる。
      物語の序盤でロリマー軍が村へ乗り込んできた際、守護聖獣の力を借りるためにリチアと2人で大樹の洞へ向かうのだが、気紛れで拾った大樹の種子が右手に寄生したことで、剣・ムチ・パチンコの3形態を持つ不思議なツタを得る。
      • このシーンの実態は「大樹が自分を悪用せんとする軍隊を退けるために、村の少年を合意なく戦士に仕立て上げる」という人権ガン無視のトンデモ展開である。そのため、主人公に抜擢される理由付けの薄さが否めない*6
      • ちなみに、種子に寄生された際『どうなってるんだ いったい…?』と、(予想し得ない事態だったとはいえ)無責任な発言をするのはあまりにも有名であり、聖剣ファンの間で度々話題になる「クソゲーすぎる、どうなってんだ…?」の元ネタとなっている。
    • その後、大樹から生み出された精霊の子フィーと偶然出会い、彼女に懐かれたおかげで間接的に魔法が使えるようになる。ご都合主義とも取れる羨ましい展開であるが、その代償が『否応なく戦争に参加させられる事になる』というのはあまりに釣り合わなさ過ぎる。そして彼もまた望まぬ殺し合いの現実に苦悩しながらも戦士として、人間として成長していく事になる。
    • 彼の目的の大前提として行方不明になったリチアを助け出す事は明確だが、戦争を終わらせ魔界化した世界を元に戻したいという願望も併せ持つ。動機が二重になったまま物語が進むので、目的意識が薄く何がやりたいのか分からないまま戦争に参加しているようにも見えてしまう。
    • 言動も主人公にしてはあまりはっきりしないところが多く、2章のラストではリチアが自身を囮にしてエルディを逃がそうとする際『リチア… どうして… わけがわからないよ… リチア!』と嘆く等、突発的な言動が多く感情移入しにくい。 「滅びのこだま」だの「魔界の扉」だの「真の聖剣」だの、訳が分からないと叫びたいのはプレイヤーの方です。
      • ただし、前述のとおり中盤以降は別人の様に理知的に成長し、戦乱の中で経験を積むことで大局観も備えるようになる。しかし、依然として殺し合いの現実に苦悩している事には変わりなく、彼の一人の人間としての苦悩は非常に重い物となっている。
        行方不明となったリチアを助け出す事が目的だが、彼女に対しての感情は人一倍強いものとなっており、また、フィーに対しても妹を思いやるかのような優しさを見せる事から、根は誠実だという事が分かる。
      • 上記の通り作中通して彼の成長は描けているが、主人公に抜擢される理由付けが今一つ薄く目的意識の描写の不充分さが祟り、突発的な失言が悪目立ちし愛着の湧きづらい事が問題点と言える。
  • リチアについて
    • 本作のヒロインの一人。漁や収穫の祈願を行う「大樹の巫女」であり、エルディの幼馴染でもある少女。作中では強い霊感を持ち、あの世の者の声が聞こえるという特殊能力を持つ。
      1章のラストで魔界に捕らわれたアニスの声を聞いてしまい、中盤で彼女に憑依されてからは正気を失ったような言動・振る舞いになり、最終的に心身を乗っ取られてしまうという残酷な運命をたどる。また、魔界の扉を開く力をストラウドに利用されるだけでなく、ロリマー軍の捕虜としてふしぎの森を案内させられたり船に監禁されたりするなど、作中の扱いは散々たるもの。
    • 1章と4章後半のステージではエルディに同行するが、会話があるだけで従来作のように戦闘に参加したり、何か攻略に役立つ事をしてくれるわけではない。
    • そもそも彼女は霊感がある以外は一般人に近く、公式でメインキャラと銘打たれていながら出番が少ないという不自然な扱いを受けている。前述のアニスに憑依される中盤以降は、分かりにくい立ち位置かつ電波状態な発言が目立つことも相まって人気がない
      また、4章のラストでは急に意識を取り戻したと思えば、船の砲撃でエルディを爆殺しようとするストラウドに対して『だめ! やめて! お願い! お願いします!!』と縋って泣き崩れるという、主役としては情けない一面を見せる。そういった点では『LOM』の真珠姫に近く、おそらく「特殊な能力を持った故の悲劇のヒロイン」という位置付けだと思われる。
    • 上記の事から扱いが散々なヒロインだと思われがちだが、「お淑やかな少女が悪霊に憑依されて心身を乗っ取られ、悪行に利用されてしまう」という不運な末路をたどっただけで、彼女自身に罪はないと言える。また、ヒロインらしく可愛らしい容姿については高評である。
      • さらに補足すると、エルディとアニスの決戦時において、リチアが「滅びのこだまを蓄積した大樹を再生するためには、一度魔界の扉を開くしかない」と悟っていたこと、そして扉を開いた際「自分がエルディの聖剣に刺されることで、巫女と種子をひとつにせねばならない」と知り、それを望んでいるのだと語られる。すなわち、リチアは『初代』同様、己の残酷な運命を受け入れる優しき心を持ったヒロインであることが分かる。
  • フィーについて
    • 大樹から生み出された精霊の子であり、リチアと並ぶ本作の第二のヒロイン。
      作中では誕生した際にエルディに懐き、そのおかげでエルディが間接的に魔法を使えるようになるため、ゲームパートでの出番は多い。一方で、類稀な能力で敵を倒したり、悪役サイドの陰謀で攫われる(そして救出される)といった分かりやすい見せ場はなく、言わば脇役のような存在である。
    • 本作の凄惨たるストーリー展開に大きく関わらないゆえか、作中では数少ない「明るい」と言える性格をしており、それが問題視されるようなシーンも特にない。
      エルディとの関係性についても、出会ってから1年以上に渡ってそばに寄り添い続け、時には窮地を救い、戦争により心身を疲弊させていく彼を慰め、エンディングでは彼の悲壮な覚悟を優しく後押しするなど、終始良好である。そのため、同行期間が非常に短く電波状態なども悪目立ちするリチアよりも、ヒロインらしい役割を果たしていると言える。
  • ストラウドについて
    • ロリマー国の若き王にして本作の最大の胸糞要員
      強大な軍事力でイルージャを侵略し、石化した大樹の封印を解いてタナトスの力で天下を統一するのが目的。そのためには戦争を勃発させる事も厭わないという、ある意味豪快な性格。
    • 命の重さに重点を置いた聖剣シリーズの登場人物にしては類を見ないほどの人格破綻者ぶりを誇る。ポジション的には『初代』のシャドウナイトを思わせるが、最終的に純粋な悪役ではなかった事が判明した彼とは違い、ストラウドは最初から最後までドス黒い悪役である。しかし悪役ながら作中で唯一自らの意思を貫き通した人物であり、人々の憎悪に押しつぶされて心身共に疲弊していったエルディとは対照的に、どれだけの人間を殺しても意に介さない狂人であることが分かる。
    • 作中の活躍としては、まずは序盤で千年前の勇者が振るっていたとされる聖剣を入手し、強大な力を得る。そこから中盤の大規模鬱イベントを経て魔界の扉を開く事に成功し、聖剣を持つ不死の妖魔「冥王」に成るという、本人にとっては絶好の展開を迎える事になる。
      しかし、そこから一気に出番がなくなり、最終章の中盤でやっと再登場したかと思えば、唐突にエルディと決着を付ける事になり、第二形態では羽を生やし巨大化するという中ボスのような扱いを受ける。そして、エルディに討たれても一切の心境の変化を見せず高笑いとともに消滅するため、苦労して撃破しても特に達成感は得られず、それ以降は存在を完全に忘れ去られる
      • 挙げ句、消滅する直前に『結局貴様がすくいたいのは 世界ではない あの娘だ しかし あの娘は俺が殺した この後 貴様はどうする? 目的もなく 目のまえに立ちはだかる者を ただ たたきふせるのか?』などと一方的に詰る始末である。今まで戦争を終わらせたいがために多くの辛い現実を乗り越え、苦心の果に聖剣の使い手となったエルディを、この期に及んで身勝手な野望のためだけに数多の命を蹂躙してきた自身と同列視するのは筋違い&胸糞も甚だしい。
      • この手の最期を迎える敵は少なからずいるが、それらは主人公側の思想との交錯や対比、人物としての深掘りを充分に行った上で「主人公達とは相容れない思想を貫き通した」という表明を行う事でカタルシスを煽るものである。
        しかし、ストラウドはやりたい放題悪行三昧で、人物としての魅力も掘り下げもほぼ皆無なのに、全く報いを感じる事なく退場するため、むしろ「醜悪な悪役に本懐を遂げさせてしまった」という不快感しか残らない。ここまで人の醜さを体現しただけの悪役は中々いないであろう。
    • 序盤において、エルディとの関係を示唆するシーンがあり、終盤ではエルディの実兄という事が明かされる。しかし、当のストラウドは「おまえをどうして海にすてたか とうにわすれてしまったが やはり赤ん坊のときにこの手で殺しておくべきだったな」と呟く程度。エルディ側についても、実兄と戦わざるを得ない事や自らの手で殺めてしまった事に対する心境が語られず、完全に投げっ放しで終わっている。
      • 一応、本作の攻略本である解体新書では、彼の少年時代と兄弟の関係性について明かされている。
        ストラウドは謎の変死を遂げた先代ロリマー王に代わり7歳で即位し、15歳の成人式で民衆に披露した舞台劇では、演技を通り越して実際に兵士を殺害するなど、筋金入りのサイコパスであった模様。
        兄弟の関係性についても「エルディは先代ロリマー王と第二夫人の間に生まれた腹違いの弟で、自身は生後すぐに実母を失っている事から嫉妬に駆られ、赤子の彼を海に投げ捨てた」という、これまた身勝手なものである。
  • レキウスについて
    • エルディとリチアの幼馴染であるイルージャの防衛隊「守人」の若き隊長。容姿の格好良さだけ見るとエルディとリチアに並ぶ3人目の主人公に見えなくもないが、彼の姿が確認できるのはアクションパートではなく序盤のムービーのみ
      作中ではロリマー軍と交戦する際、守人として先陣を切る。16歳にして隊長に就任しただけあって実力は伊達ではなく、回転する矢でゴーレム兵の1体目を貫き2体目に当てるという 面白 技も披露する。しかし、防衛隊が村の奥まで圧されたのをきっかけに、ストラウドが魔界の扉を開くことを許してしまい、レキウスの安否が分からないまま物語は先に進んでしまう。
      • そして5章のラストで「タナトスに憑依された妖魔の姿で、ストラウド率いる冥王軍の配下に寝返っている」というあまりにも残酷な事実が判明。そしてエルディは「今からでもタナトスを受け入れ、一緒にリチアの元へ行こう」との誘いを断った結果、闇堕ちした親友と殺し合うという鬱展開を味わう事になる。
        この描写に関しては非常に賛否両論であり、「元々出番も見せ場も『親友』という描写もあまりないキャラだったので悲しみが湧かない」言う意見も多く見られる。しかし、少なくとも序盤のムービーで「彼がエルディと同じくイルージャを守りたかった」という動機はしっかり描写されている。
      • 戦闘に勝利しても、妖魔の姿のまま死にゆくレキウスに「滅びのこだまが解放された時、おまえはきっと、友達の忠告を聞かなかったことを後悔する」と恨み節を吐かれるという胸糞展開が待っている。
        「かつて同じ志をもっていた友が敵軍に寝返ってしまう」という人間関係を木っ端微塵にする展開が、王道とかけ離れた展開である事は確かである。そう言った意味では『初代』のメデューサ殺害の結末を思わせるかもしれない。
      • 一応、死亡した途端に存在を忘れ去られるストラウドと違い、ラスボス前に霊体として声のみの状態で語り掛けてエルディを励ますという見せ場もある。
  • トレントについて
    • 『LOM』『新約』にも登場した顔の付いた老木。千年前の勇者が振るっていたとされる聖剣を長きに渡って体内に封じ込めており、作中では2章で初登場する。
      • リチアがロリマー軍の捕虜としてふしぎの森の道案内をさせられる事になり、それを追跡してきたエルディは(なぜか1人でいる)リチアとともにトレントと出会う。しかし、少し話をしたところで聖剣の穢れた力が目覚め、トレントはタナトスに憑依されてしまう。戦闘後は聖剣を吐き出し元の姿に戻るが、エルディに守護聖獣の情報と世界の命運を託して息絶える
      • つまり、『LOM』で果物の栽培を行ってくれた心優しい老木が、本作ではタナトスに憑依されたショッキングな姿で襲い掛かってくるため、過去作ファンに強い不快感を味わわせた。
        なお、トレントが封じていた聖剣は仮面の導師に奪われ、エルディをトレントの元へ案内したポロン族のチットは仮面の導師に怯えて叫びながら逃げ出し、エルディもとっさに囮役を買って出たリチアを置き去りにせざるを得なかった…と、章の締めとしても非常に後味が悪い。過去作で登場したトレントとはおそらく別人(木)なので、パラレルだと割り切れば溜飲が下がるものの、過去作軽視とも取れる酷い扱いであることは間違いない。
  • ガイアについて
    • 『LOM』『新約』にも登場した顔の付いた巨大な岩。作中では死の山の頂に住む山の主として登場し、千年前の戦争で深く傷付いたフラミーを匿い、彼を地中で療養させていた。
      • 扱いが酷かったトレントとは違い、3章のボスであるロリマー軍から放たれた刺客「ワイバーン」とエルディが戦う時に回復アイテムを供給してくれるなど、頼もしい存在となっている。
        ボス戦後にロリマー軍の砲撃が激化すると、ガイアはフラミーを地中から呼び起こし、エルディはフラミーに乗って死の山から脱出する。しかし、その代償でガイアは砲撃を受けて崩れ落ちてしまうという、やはり後味の悪い最期を迎える。
  • 仮面の導師について
    • ストラウドの側近であり、ロリマー軍の参謀を務める奇妙な衣装を纏った仮面の男。軍のトップでありストラウドの右腕であるはずなのだが、作中ではストラウドとの絡みが殆どなく、彼が起こす凶行をひたすら傍観しているのかと思えば、エルディに謎の助言を残して去ったりと、極めて中途半端な立ち位置となっている。
    • その正体は千年前に聖剣を携え、恋人である巫女アニスと共に大樹を石化させた勇者「グランス」。その際に力を使い果たしたことで千年の眠りにつき、赤子のエルディがイルージャへ導かれた時に目覚めた。
      彼の目的は『たとえ別人同然であっても、魔界に捕らわれたアニスともう一度会う事』だけで、それをストラウドが間接的に達成してくれたため、中盤までは全く存在感がない。しかし、6章でエルディがイルージャに存在するタナトス抑制装置を起動させる際、唐突に行く手を阻むボスとして出現する。
      • この先の道のりが険しいであろう事から、エルディの実力と覚悟を試し、そして自己犠牲によりエルディの剣を聖剣へと目覚めさせる意図があったのは分かる。しかし、中盤でアニスと再会してからエルディの前に立ち塞がるまでの間、彼に何があったのかは一切語られない。
      • かつて聖剣を振るっていた勇者であるせいか、彼とのボス戦は作中屈指の高難易度となっており、撃破すれば案の定、斬り殺す展開となる。そして『人のおろかさもみにくさも なにも変わってはいませんでした ですが 本当におろかなのは いったいだれなのでしょうね…』*7と呟きながら消滅するので、これもまた後味が悪い結末である。
  • アニスについて
    • 本作のトリを務めるラスボス。千年前、恋人である聖剣の勇者グランス(仮面の導師)と共に魔界の扉を封印した巫女。その代償で魔界に閉じ込められて肉体そのものを失い、故人となってしまう。
      それから千年後、1章ラストで今代の巫女リチアを唆して憑依。その後、物語中盤で魔界の扉が解放されたことにより復活を遂げる。
      彼女の目的は『タナトスの根源である滅びのこだまを覚醒させ、世界を滅亡させる』というものだが、何故そのような破滅願望を持っていたのかは作中では一切説明されず、いわゆるぽっと出の超展開ラスボスとなっている。
      • ラストバトルでは下半身が巨大な双蛇と化した『メデューサ』という直球過ぎる姿に変貌するが、ストラウド同様の投げやりな第二形態にしか見えない。撃破するとアニスの魂がリチアから分離し、グランスの声に導かれ消えていくという、感動的だがプレイヤー置いてけぼりな結末を迎える。
      • ゲーム中で語られない千年前の顛末は「巫女であるアニスは滅びのこだまに心身を乗っ取られ魔界の扉を開き、恋人であるグランスにすら襲い掛かるも、ギリギリの所で正気を取り戻し、彼とともに扉を封印。しかし千年の間に魂がタナトスに飲み込まれ、本来の心優しい性格とは程遠い邪悪な存在に変わってしまった」とのこと。
  • 省略され過ぎたゲームパート
    • 開発側の都合で実装を見送られたと思わしき部分が数多く存在する。
      たとえば、島に侵略してきたロリマー軍を撃退するために「守護聖獣(フラミー)」の助けを借りに行く章において、道中はアクションゲームとして操作する。しかし、フラミーがロリマー軍を海岸まで追い払うシーン、エルディたちが歓声とともに村に迎え入れられるシーン、村民たちが次の手を考えるシーン、エルディとフィーだけでリチアを探しに海岸へ向かうシーンは、1枚絵とナレーションであっさり済まされてしまう。
    • ストーリー全体としては、多くのキャラクターが登場しながら変化していく世界の情勢を見守るつくりなのだが、主人公サイドはエルディとフィーの2人で延々とステージを攻略するだけで、彼らと接点がない蚊帳の外状態で最後まで戦うはめになる。
    • PS~PS2時代のスクエニ(スクウェア)はムービーに注力した『FF7』や『FF8』などの商業的成功を受けて、ゲーム内ムービーを最大のセールスポイントとしてムービー製作に大量の予算と時間をかける傾向があった。本作はその悪い面が最もよく表れたゲームの一つと言える。
  • 本作のストーリーは「原点回帰」をテーマとしているが、これまでに列挙した多数の問題点により完全に破綻してしまっている。そのせいで旧来のファンからさしてつかめず「どこが原点回帰?」と疑問を抱く者もいた。
    • シナリオの原案を勤めた加藤正人氏は後にブログで「自分のシナリオとは別物」と語っており、スタッフが原案からかなりの描写を削り取ったことを暗に示している。加藤氏の言葉が真実ならあまりにも不憫である。

システム関連

  • ステージ(章)をクリアするたびに成長要素がリセットされる
    • 本作では、敵を攻撃したりMONOを壊すことでメダルを集め、「HP」「MP」「攻撃力」、ひいては「ツタレベル」「フィーレベル」をアップさせていく。特に2種類のレベルは攻略のしやすさに直結する。
      • 上記の通りメダルは3種類のみで、 何故か防御力のメダルは存在しない 。そのため、防御力の強化は後述のエンブレムでしか行えず、ゲームバランスの劣悪さを引き起こしている。
    • 問題は、その集めたメダル(と精霊の魂)がステージをクリアするたびにリセットされるという点。当然、レベルもリセットされ上げ直しとなる。
    • ディレクターの石井氏によると、「プレイヤー自身のスキルアップを促す」という目的ゆえにレベルリセットシステムになったらしい。
      • 確かに、アクション系の作品では高難易度においてはスキルアップも必要になる。だがRPGはそういった腕によるスキルアップを廃して成立しているため、聖剣伝説をRPGとして楽しんできたユーザーのニーズとは噛み合わなかった。
    • ステージごとにS~Cランクでクリア評価されることから察するに、オールドタイプの面クリア型アクションゲームのようなものをイメージして制作したのだろうという推測はできる。
      レベルを上げてゴリ押せば簡単にSランクが取れるような構成ではなく、何度もプレイしてプレイヤー自身のスキルを上げなければSランクが取れないようにしたかったのだろう。
      • だが、仮にそうだとしても、本作のような明確な章立てのストーリーやキャラクター性のあるゲームとは全く噛み合わない仕様であり、ましてや『聖剣伝説』シリーズのナンバリング作品でやることではない。
        たとえば『真・三國無双』や『がんばれゴエモン』といった、ある程度ストーリー性を持ったアクションゲームは、総じてリセットされない成長要素を採用している*8
  • 成長要素が強制リセットされるにもかかわらず、ステージが進むにつれて強敵が増える
    • ゲーム進行に合わせて敵が強くなること自体はRPGの一般的な仕様であり、その理由は「主人公側がレベルアップし続けるから」である。しかし、本作には先述のレベルリセットがあるため「敵が強くなっていくのに主人公は度々弱体化する」という(悪い意味で)ステキなことになる。
      • 誤解のないように言っておくと、各ステージの序盤にはこちらのレベルリセットに合わせて弱めの敵が配置されており、詰んでしまう可能性自体は少ない。ただし、このステージ序盤の敵でメダルを稼いでおかないと中盤以降の苦戦は必至。
        プレイヤー自身がよほどスキルアップしていない限り、結局はメダル稼ぎを強制されるうえ、敵が無限湧きではないので限界があり、FFシリーズの「サボテンダー」のような稼ぎ向きの敵もいないなど、これではレベルリセットの意味がない。
      • 一応、ステージ開始時に「エンブレム」という強化アイテムを最大5個まで装備できる。しかし入手困難なものが多く、ほとんど救済策になっていない(後述)。
    • おまけに回復アイテムはボス前などの僅かな例を除き、敵・MONOからのランダムドロップに限定されており*9、ストックすることも位置を動かすこともできない。
    • 総じて、本作はRPGとアクションゲームの要素を乱雑に組み合わせて台無しにするという結果を招いてしまった。
  • 盛り上がりに乏しいアクション
    • まず、機動力全般に問題あり。移動速度が遅めで、短時間の全力ダッシュなどは実装されていない。ジャンプは二段込みでも距離・高度ともに物足りず、方向修正もほとんど利かない。
      • これらの難点を解消する方法はなく、地味ながらも終始プレイヤーを苛立たせる要素となり得る。
    • 攻撃手段は大きく「剣」「ムチ」「パチンコ」の3種類に分かれるが、ムチやパチンコを使うモーションはどれも地味。
      • 途中で精霊が仲間になるとシリーズ伝統の8属性の魔法(精霊の魂)も使えるようになるが、これが弾数制限ありの「パチンコ弾」扱いで、しかも1属性につき1種類のみ。魔法…?
      • 8種類ある精霊の魂の性能差も極端。サラマンダーとウンディーネは炎上/凍結効果により扱いやすく、ボス戦でパズルのように使い分ける場面も存在する。しかしジンは上に吹き飛ばすだけ、ドリアード・ルナ・ウィスプ・シェイドも足止め系の状態異常あるいは毒を付与するだけ*10。最も優秀なのはノームで、周囲の敵同士を引力で一斉に衝突させる事で大量にメダルを入手できるという高性能っぷり。
      • 剣の攻撃モーションについても、地上ではほとんど踏み込まない横振りの連撃、空中では斬り上げとかぶと割り(落下攻撃)のみとなっており、迫力や派手さに欠ける*11。また、パシンパシンという斬撃音からは爽快感を感じがたい。
    • 魔法についても性能バランスの悪さが目立つ。
      • フィーレベル3で覚える「ヒールライト」は、任意のタイミングでHPを一定量回復する唯一の手段であり、頭抜けた使いやすさを誇る。しかし、他の魔法は状態異常を治す「リフレッシュ」と、効果時間が非常に短い補助系しかなく、いまいち使い勝手が良くない。
      • 発動までのラグ(詠唱時間)や切り替えの手間、HPのみが減っている状態でMP回復アイテムが出現した場合の対処を考えると、初心者はヒールライトを常時選択しておくのが無難。
    • 序盤で地味なアクションしか使えないのは目を瞑るとしても、本作はストーリーが進んでも新しい技やアクションが増えない。どれだけ進んでも豪快な必殺技や爽快なアクションが存在せず、後述のMONO投げを繰り返すはめになる。
      • レベルが上がるとアクションが若干増えるが、リセット仕様によりステージ毎に覚え直しである。「(ステージ進行に伴って)多彩なアクションが可能」という、アクションゲームにあって当然の要素すら欠けている。
      • 多くの武器や魔法(楽器)を自由に使える『2』や『LOM』、武器こそ固定であるもののパーティー編成やクラスチェンジ(見た目・特技・必殺技などの変化)を楽しめる『3』と比較すると、窮屈に感じざるを得ないのは必然。リセットされるシステムであれば尚更である。
  • 看板倒れな「MONO」システム
    • 「駆使すると楽に進める」「アクションの幅を広げる」という前口上だったが、実際は明らかに「MONO」の使用を強制するバランスになっており、「駆使しなければ攻略はほぼ不可能」である。
      • MONOなしで普通に(=正面から剣やパチンコの通常弾で)攻撃しても、途中でガードされたり微々たるダメージしか与えられない。特に後半の強力なザコ敵やボスは攻撃が激しいため「敵にMONOをぶつけ、パニック状態が解けるまで殴り続ける」という安全策を強いられる。
      • 上述のように、回復アイテムは(基本的に)敵を倒した時にランダムドロップするため、瀕死かつヒールライト習得前という状況に陥ると、弱い敵が相手であってもMONOに頼らざるを得ない。
      • おまけに、パニック状態の敵を攻撃しなければメダルが殆ど出ない(=成長できない)ので、その点からもMONOを使う事を余儀なくされる。
    • こんなバランスのため、敵を見つけるとまず敵にぶつけるMONOを探さなくてはならず、テンポが損なわれること甚だしい。
      • MONOは割とそこら中にあるものの、敵にぶつけるのを失敗すると今度はそれを取りに行くはめになる。さながらドッジボールで外野へ転がっていった球を拾わされるような面倒さである。また、MONOは基本的にツタで引きずって運ぶことになる(MONOと敵の間に自分が入りやすい)ため、位置調整を誤ると自分も巻き込まれてしまう。
        このような可能性がザコ戦含めて頻繁に付きまとうのだから堪ったものではない。
      • ツタレベルを上げていけば、掴んだ敵を気絶させる → 手放して数回攻撃 → 再度掴む…というループや、掴んだまま別の敵にぶつけることも可能となるが、ステージ毎にレベルリセットされる仕様のせいで魅力に乏しい。
      • MONOを動かせば敵をまとめて混乱させられる場所や、MONOでギミックを作動させれば回復アイテムが手に入る場所などもあるのだが、面倒な割にはリターンが微妙。
    • パニック状態となった敵は、解除されるまでのカウント(パニックレベル)を表す数字が頭上に出て、コロコロという可愛らしいピヨり音を鳴らしながらバタバタと暴れる。
      • 目視する上で分かりやすいのは確かではあるが、挙動がいかにも「ゲームの要素」といった感があり不自然さが否めない上に、演出・効果音がコメディタッチ過ぎてシリアスな場面では興が削がれる。
    • 「ステージのギミックを使って有利に戦う」という要素は大抵のアクションゲームなら楽しいものだが、本作はそれが強制されている上に「ムチで掴んだ敵・MONOをぶつける」というワンパターンしかなく、あまりにも単調。
    • 本作には物理演算ソフトである「Havok」が使われており、さかんにそれが喧伝されていたことから、なんとか物理演算をシステムに組み込もうとしてこのようなシステムになったと推測されている。
      • しかし、仮にそれが本当だとしても、そもそも物理演算機能はゲームの開発・製作サイドが重視するもので、殆どのプレイヤーにとってはどうでもいい要素である。プレイヤーが重視するのはそれを活かして生み出されるゲームの遊戯性であり、「MONO」がなめらかに動いたからといってゲームとしての面白味に直結していないのでは意味がない。
        まず物理計算エンジンの導入ありきで出来の悪い「MONO」システムを作ったのならば、それこそ手段と目的が逆転しており、主客転倒と言わざるを得ない。
+ Havok関連の補足
  • 本作の発売をさかのぼること2年、2004年に発売された『Half-Life 2』が「ほぼあらゆるオブジェクトに物理計算が適用され、周囲に転がっているものを投げつけられ、破壊できる」「死体からガラクタまで手近にあるものをなんでも自在に積み上げられ、実際に干渉できる」というコンセプトを高いレベルで実現し、旋風を巻き起こしていた。
    現在では「それで?」と思ってしまうほど当たり前になった要素なのだが、当時のマシンパワーでは「オブジェクトにダメージを与えると事前に設定されたアニメーション通りに壊れる」「押したり運んだりできるオブジェクトは設定されたものだけ」というものが当然だったため大きな衝撃を持って迎えられ、そこから数年の間「高度な物理計算を活かした○○」という要素をセールスポイントとして推すことが流行していた。本作はその流れを汲んだものと思われる。
    なお、Havokエンジンはその『Half-Life 2』に採用されたものであり、当時家庭用機のタイトルで採用されているものはまだ少なかった。
    • Havok社の物理演算プログラムは、その後『サイレントヒル5』や『大乱闘スマッシュブラザーズX』、『スタークラフト2』など別ジャンルでも利用され、現役で多くのタイトルで利用されているが*12、本作のように「Havok社の物理エンジンを採用」とそれ自体を宣伝しているのは珍しいケースだろう。
  • 「MONO」という名称はシリーズを通しての世界観の一つである自然エネルギーの概念「マナ(MANA)」を捩ったものであるが、それについても分かりづらい。
    • 本作の時点では「マナ」とカタカナ表記されることが殆どであった単語であり、シリーズのサブタイトルに「○○ of MANA」と付けられるのが定番化するのも本作以後であったため、言われなければ気付けない要素である。
  • 視点カメラが主人公を追従して左右にしょっちゅう動くため、3D酔いを起こしやすい
    • 慣れていなければ30分も画面の前にはいられないほど。長時間のプレイは本当に気分が悪くなる恐れがあるので、慣れていようがいまいがご注意を。ゲームは一日一時間とでもいいたいのだろうか。 ついでに、その一時間で他のゲームをやった方が有益であることも教えてくれる。
    • カメラの動きは壁に阻まれるので、狭い場所や部屋の角で戦っていると主人公が透過され、しまいには主人公にカメラが潜り込んでしまい、もう何が起きているのかさえわからなくなってしまう場合もある。
    • カメラを上下に動かしても主人公が移動すると水平に戻ってしまうため、戦闘中はほぼ水平方向しか見えない。一応、右スティックを傾け続ければカメラ方向を維持できるが、右手の親指が塞がる(≒攻撃とジャンプができなくなる)ため非現実的。
  • ターゲットロック機能が役に立たない
    • 説明書には主人公に一番近い対象物をロックすると書かれているが、主人公のすぐ目の前に物体があろうとも、それよりずっと遠くにある物体をロックしてしまうことがある。
      • あろうことか、壁などを挟んで完全に見えない状態でさえロックしてしまう。なんという千里眼。
    • ロックオン対象の切り替えとカメラ操作が同じ右スティックに割り当てられている。そのため右スティックでカメラ操作を行うとロック対象も勝手に切り替わる。MONOをロックしそれをぶつける相手の位置を把握しようと右スティックを動すと、別の物体にロックが切り替わってしまう。
    • 一応、L2で敵、R2でMONOを区別してロックできる機能は備わっているのだが、複数の物体が画面内に存在すると、やはり思った通りの対象をロックできない。
      • どうも画面中央付近の物体が優先的にロックされる模様。多数の物体が存在する中で、自分のすぐ目の前にある物体をロックしたい場合は、カメラをぐっと下に向けて他の物体を画面から外した上でL2・R2ボタンを押さなくてはならない。
    • そもそも「MONOを敵にぶつける」ことを強制される以上、たとえ敵が1体であろうとMONOが数個あれば正確にロックできなくなってしまう。よって、この役立たずなロックオン機能を使うよりも、MONOに近づいて手当たり次第にムチを出すほうが早い。しかし、その場合はロックオンターゲットが事前に表示されず、アクションを起こして初めて判明するという問題がある。
  • もっさり感満載かつ作業感に溢れるバトル
    • 酷いカメラワークに耐えつつ、対象の定まらないロックに翻弄されつつ、遠くからMONOをぶつけてチマチマ1体ずつザコ敵を潰すことを強いられる通常戦闘が楽しいはずもない。爽快さもやりがいもない。
    • 過去作では敵の行動パターンが非常に少なく、レベルさえ上げていればごり押しも通じる難易度だったが、本作では敵の行動パターンが増加し、状態異常*13などの搦め手も使ってくるため、中々の高難易度と化している。
  • 不便なナビゲート機能
    • 「○○を探そう」「○○へ向かおう」といった、いわゆる小目標を確認する方法がない。
    • 移動せずに少し待つと、目標地点の方向を示すアイコンが表示されるのだが、経路や地形を無視した直線方向なので、使い物にならない場面が多い。
    • 画面右上に表示されるレーダーが非常に使いにくい。
      • 東西南北の方角と敵・目標地点(ボスならボスの場所)の位置くらいしか表示されず、距離の目安となるべきグリッドラインが1本もないため「何階にいるか」「どれくらいの距離か」といった肝心の情報がわからない。
        しかも、フィールドには階層・高低差・壁が存在するのに、それらを無視した相対距離しか反映されない。
      • フライトシミュレーションならともかく、本作は建物や入り組んだ地形の多い3Dアクションゲームである。要するに、ほとんど役に立たない。
    • エリアの全体マップはポーズ画面を開かないと出ない。いっそレーダーではなくミニマップを採用したほうがよかったのではないかと思われる。
  • ステージが複雑な構成になっており迷いやすく、難易度が高い
    • どのステージにも起伏の激しい場所が存在し、アスレチック要素も多い。時には小さな足場に乗る必要もあったりと、レベルの高い3Dアクションスキルが求められる。ハシゴも真正面からでないと掴む事ができないうえ、ジャンプして空中で掴まらなければならない場所もある。
      • 特に仮面の導師との戦闘が象徴的である。螺旋状の塔での戦闘なのだが、レーダーの仕様上ボスが何階にいるのかわからず延々と探し回り、各階には当たり前のように敵がいるので足止めを食らい、やっと見つけ出し攻撃しようとした時に最下層に落とされると最初からやり直しである。
      • エルディの機動力全般(特にジャンプ関連)が低く、崖に掴まったりよじ登るといったアクションがないことも、難易度を上げる一因となっている。
    • 前述の役立たずなカメラとレーダーのせいで、マップストラクチャーを把握しづらいのもネック。
  • 主人公強化用の「エンブレム」が入手困難なものばかり
    • 倒した敵の総数Sランクやメダルの総数○○以上などは序の口で、王冠(パニックレベル99超え)になった敵の総数Sランク、複数の章や特定のチャレンジアリーナでの総合評価Sランク、さらにプレイ時の難易度を指定するケースも多く、テクニックと根気の両方を要求される。
      • チャレンジアリーナは事前にペットエッグからモンスターを入手しておき、最大3体と共闘して敵を倒すというゲームモードなのだが、そもそも敵が強すぎる。また、ペットのAIがおバカなので役立たずに終わるケースも間々あるなど、結局は合わない人には合わない内容である。
      • 条件達成の代わりにルクで購入できることも可能だが、価格がやたら高い事とルクが貯まりにくい事の二重苦により、ほとんど救済策になっていない。
      • 各ステージでレアな敵を討伐すると手に入るエンブレムもあるが、探し出すのが困難な上明らかにそのステージのボスよりも強く、後半のステージではとてもじゃないが探す気にはなれない。探し出したとしてもスキルアップができていなければ返り討ちにされる。
    • 一応、根気良くルクを貯め続ければ強力なエンブレムも入手可能になり、ステータスを上げるエンブレムを重点的に装備すればゲームバランスは僅かに安定する。しかし、複数のステータスをバランス良く上げるようなエンブレムは存在せず、装備枠も5枠しかない。つまり『一方向に尖った強化を行えるが他の部分は諦めるしかない』という、RPGとして見ても面白さが感じないシステムである。
    • エンブレムは種類こそ多いが微妙な性能、似たような水増しが多く、入手難度・価格と効果が釣り合わない物も多く存在する。
      中にはエルディを一般人の状態で戦わせるというネタ目的のエンブレムも存在し、防御力無視で攻撃を行う事もできるが、代償として他のアクションが一切できなくなるという、装備してもあまり恩恵の感じない物となっている。
    • ちなみに、ゲーム中に店のような施設があるわけでなく、チャレンジアリーナの準備画面から入る別モードなので、店に立ち寄って買い物しているという雰囲気はない。
      • ナビゲーションを担当するのは、テキストのみの登場となる『なぞのこえ』。姿を現さない割には性格が尊大で、料金を踏み倒して商品を買おうとすると『ルクがない! ほどこしが足らん!』と叱責する成金臭さを持つ。購入画面に緑に囲まれた派手な背景が表示されることから、声の主は某国の王という可能性もあるが、『CoM』における特徴的な語尾がないなど、結局は謎のままである。
  • 初の3D化の弊害のせいか、全体的にボタンを押してアクションが実行されるまでの処理が遅い
    • PS2互換機能を持つPS3や応答速度の早い液晶ディスプレイでプレイしても解決できない程に遅く、複数の敵に囲まれて乱戦状態になるとフレームレートが低下して一時的に画面がフリーズする不具合が生じる。
    • また、ロード時間の長さも顕著であり、ロード画面で『NOW LOADING』の表示が無くなっても画面が暗転したまま10秒以上の不自然な待機時間が発生する。ゲームを始められるのは画面明けの後であり、どちらにせよ非常にテンポが悪い。

賛否両論点

  • 非常に独自性が強い所謂『闇に堕ちる』類の救いのないシナリオ
    • 『初代』の戦いに身を投じてもヒロインやアマンダ等、何一つ救えなかった主人公の悲壮感や、『2』の聖剣を引き抜いてしまったランディを悪人呼ばわりして迫害する村人達など、胸糞の悪い展開は過去作にも存在した。本作の陰鬱さも概ね過去作を踏襲していると言える。
    • ゼノギアス』の脚本に携わった加藤正人氏が原案を務めているためだと思われ、氏の得意とする難解かつ救われない作風が本作でも発揮されている。
  • ナンバリングタイトルとの繋がりの曖昧さ
    • 『聖剣伝説始まりの物語』と公式でも公言されているが、明確に時系列を共有しているのは前作にあたる『CoM』のみであり、『2』や『3』との繋がりに関しては明かされていない。
    • 石井氏は設定資料集のインタビューにて「本作のストラウドは『3』の黒の貴公子の前世」という裏設定を明かしているが、単にキャラクター性を使い回した意味での比喩表現なのか、『3』が本作の未来の時系列なのかは確定していない。

評価点

  • 美麗なグラフィックと、大幅に進化したイベントシーン
    • グラフィックに定評のあるスクエニのナンバリングタイトルなだけあって、PVやOPの美しさはPS2ソフト全体から見ても非常に高く、PS3やXbox360と肩を並べても遜色ない程の造形力を持つ。
    • 高品質の3Dグラフィックは、キャラクターの手足をやや大きくデフォルメすることでドット時代のイメージに配慮しつつ、味方サイドの少年少女や老人は頭身低め、悪役サイドの大人は長身かつリアル寄りの体型という対比を図っている。
      また、リチアのペットであるプック(ラビ族)の愛らしさや、いわゆる妖精サイズであるフィーの細かいディテールもしっかり分かる。
      • モンスターのアニメーションも流用がなく、1体ずつこだわりのある作り込みがなされている(ドット時代の動きを彷彿させるゴブリンロードの詠唱など)。また、ヴァランサやリュケイオス等の巨大なモンスターも違和感なく躍動し、非常に迫力のあるものとなっている。
    • グラフィックの3D化に伴い、イベントシーンの表現力も大きく強化された。シリーズの持ち味である温かな自然だけでなく残酷な展開なども視覚化され、直接的な暴力シーンが非常に生々しいものとなった。
      • アニメ界の巨匠・金田伊功氏がフェイシャル・セッティングを担当したおかげで、眉・目元・視線などが自然かつなめらかに動き、複雑に入り混じった喜怒哀楽をしっかり表現できている。
  • 名曲揃いのBGM
    • 伊藤賢治氏、関戸剛氏らが作曲しているだけあって非常に高評価。苦労してラスボスまでたどり着いたプレイヤーをイトケン節全開の名曲群が迎えてくれるのは、プレイヤーにとって貴重な救いと言える。また、世界的音楽家である坂本龍一氏がメインテーマを手がけており、タイトル画面で癒しを与えてくれる。
    • 『初代』のタイトル画面、『2』のフラミーのテーマや「妖精族のこども」「子午線の祀り」、『3』のブースカブーやドラゴンズホールのテーマ、『LOM』の上位ボスやアーウィン戦など、過去作の曲が複数アレンジされているというファンサービスもある。
    • その結果、中古価格ではソフトよりサウンドトラックの方が値段が高いという事態になっている。4,000円以上することも少なくない。
  • 主要キャラを演じる当時新人だった柿原徹也氏や近藤隆氏をはじめとして、声優陣の演技は良好。多額の予算を費やしたためか全編に渡ってフルボイスであり、敵味方問わずステージ中に聞ける掛け合いも含めるとかなりの物量である。
    • 本作で出演した近藤隆氏はリメイク版『3』で黒の貴公子役で再演しており、本作のセルフオマージュが含まれている。 どうやら無かった事にされてないようだ
  • 序章開始時・フラミー登場時やチャレンジアリーナのBGM、フィーが使う魔法の名称(ハイパーオーラを除く)*14など、過去作のネタが複数仕込まれており、シリーズのファンをニヤリとさせてくれる。
  • 前作『CoM』のボリュームが極端に少なかったのに対し、ナンバリング相応と言えるほどボリュームが増加。難易度ごとに敵の攻撃パターンやステータスが異なってくるので、周回プレイに長けた仕様となっている。
    • 他にも「チャレンジアリーナに挑戦する」「ルクを払ってムービーの視聴機能を解禁し、怒涛の鬱展開を振り返る」「ひたすらルクを集めて強力なエンブレムを収集する」など幸いにもやれることが多い。
    • ただし、ゲームバランスが劣悪なせいでやり込むには「有料デバッグ」とでも言うべき苦行が求められる。本作の問題点に目を瞑って周回プレイできる人自体がそうそう居ないと思われるが……。
  • ストーリーや人物の描写に問題が多々あるせいで魅力を感じづらいが、聖剣らしい独特の世界観・設定やキャラクターデザインは好評。
    • また、独自性に富んだ先の読めない展開は別の意味で秀逸と言える。特に本作の悪意の総決算とも言える最終章の展開は必見。トリを務めるだけあって他の章よりも2倍以上のボリュームを誇り、最深部の展開は陰鬱ながらも何処か人間ゆえの儚さが感じられる。
    • ラスボス戦後のエンディングについては、過程はともかく美しいムービーとBGMが相まって切ない雰囲気を醸し出しており、この部分については感動したという声もある。
    • ちなみに、本作のムービーパートのボリュームは2時間18分38秒。過去作のあっさりとしたイベントシーンに比べれば比較にならない程の力の入れ具合であり、正に映画1本分である。(参照動画)
      これでシナリオの描写が伴っていれば…。
  • 本作の中でも特に批判されているMONOシステムだが、物理演算の技術力自体は相応に高い。特に6章の巨大ゴンドラに乗って高所を渡り歩くステージは、PS2の表現力の限界に挑戦したものとなっている。
    • ただし、技術力はあるもののゲームとしての快適性に結び付かなかったせいか、『2』と『3』の3Dリメイク版ではそれらが全面的に廃止され、ドット時代を踏襲した一本道のステージになってしまったのが惜しい所である。
  • 「成長要素のある3Dアクション」というプログラム構造的には複雑なジャンルであるが、フレームレート低下以外の目立った不具合は見当たらない。スタッフが丁寧なテストプレイをしたということなのだろう。
    • ……だからこそ、なぜこの出来で出荷したのかという疑問が浮かぶわけだが。

総評

『聖剣伝説』シリーズのナンバリングタイトルとして販売されたため、発売当初は多くの人々から期待を浴びていた。
しかし、ふたを開けてみれば、説明不足な上に悪人ばかりが目立つ電波なストーリー、成長要素の強制リセット、主人公の強さに反比例する敵の強さ、劣悪なカメラワークなど、シリーズどころかゲーム単体で見ても非常にお粗末な出来という有様だった。
後年の公式本で発覚した情報から判断するに、シリーズの岐路に立たされ3D化による刷新を試みたものの、システム移行に完全に失敗し、更に扱いきれないエンジンで作った結果として、過去作のノウハウが全く活かされず大失敗に終わってしまったと言える。(聖剣シリーズ外を含めても)以降のスクエニ作品で本作の後継と言えるような作品は出ておらず、本作での挑戦は何一つ継承される事が無かったという点からも、根本的な部分の出来が悪かったと言わざるを得ない。
一応、過去作の長所であった世界観の重厚さは概ね本作でも厳守されており、シリーズ伝統の「美しくも救われない物語」はこの作品も踏襲しており、次世代機に匹敵する程のグラフィックや音楽面など、見るべき部分もない訳ではない。何よりもシリーズの再起を図ろうとしたスタッフの技術と努力によって生み出されたであろう本作にしかない唯一無二の独自性は評価して然るべきである。

結果としてはスタッフの努力も虚しく、ユーザーや市場からは本作は商品失格レベルのクソゲーという残念だが至極真っ当な評価が下され、人気シリーズのブランドをも完全に失墜させてしまう結末に至ってしまう。


余談

  • 据え置き部門クソゲーオブザイヤー2006では次点を受賞した。
    • ただし、いわゆる「四八ショック」が起こる2007以前の受賞であり、現在のKOTYは選定基準が大幅に異なる点には注意。
  • 出来の悪さがゲームショップでの販売価格にも反映された結果、中古価格はおろか新品価格も光の速さで暴落していった。
  • ゲーマガの「期待外れだったゲームランキング」では、3位にランクインした。
  • 本作の他媒体展開については、多数の書籍とサントラが出ている程度。小説において支離滅裂な原作を改善する等といった、シナリオ面へのフォローは今の所存在していない。
    • 過去には『新約』の小説版が出版された前例があるので、本作にも何かしらのフォローがあれば…。
    • 一応、シナリオ原案を担当した加藤正人氏による原案は、本作の攻略本にあたる『聖剣伝説4 解体真書』で読む事ができる。但しあくまでも原案である他、ゲーム本編同様読後感は良くないので注意が必要である。

シリーズ関連

  • シリーズ25周年本『ART of MANA』で石井浩一氏と、生みの親の一人とも言える田中弘道氏のシリーズを振り返る対談が行われ、長年黙秘されていた本作についても言及された。
    • 開発スタッフの前作に当たる『FF11』の商業的成功を受けてPS2で『魔法やマナの世界を体感出来る新たな聖剣伝説』をコンセプトに従来作とは異なる方向性で水面下で開発が始まった。しかし新エンジンのHavokの導入により開発は難航し、ゲームとして成立させるための技術研究に時間と労力を費やし過ぎた事が原因で開発のスケジュールが大幅に遅れてしまい、結果本作が生まれたと言う。
    • 対談の中で石井氏は『今までの聖剣伝説とは違う作品にしようと思ったら物量的には膨らまざるを得なくて、一つ一つを固めて作って行ったら一ついじると全てをいじらなくてはならない。終いには世界自体がパラメーターで出来ているんじゃないかと思った。ゲームを作っているよりは実験している感じだった。』『ああいう作品を作るのなら田中さんと組んで作るべきだった』と本作が暗に未完成だと取れる発言をしている。一応、不祥事に関しては反省はしている様に見えるが、本作のファンからの心象を悪くした事に関しては一切触れていない。余程無かった事にして欲しいのだろうか……。
      • 氏の発言を受け取るのならば本作の失敗の原因は『シリーズ迷走の末に感性から生み出されるアイディアでは無く新エンジンを使った技術力で押し切って開発したが、どうにもならなかった』と言う事である。ある意味ゲームボーイと言う極限の制約上の中で生み出されて成功した『初代』とは真逆である。
  • 社内にノウハウがなく、海外製で言語の壁もあるHavokを安易に導入した結果扱いに苦慮した事が述べられている。本作の「単調で迫力に欠け、未発達な感が残る戦闘システムや演出」「宣伝でのHavok強調」などを考えると頷ける話ではある。
  • デザイン画で描かれているゲームシステムも、「人間のエルディを動かす『人間世界』と精霊のフィーを動かす『精霊世界』を切り替えて戦う」「ギミックでつり橋や船を動かす」といった初期仕様が描かれており、完成版の仕様は当初の構想よりだいぶ単純化されている(せざるを得なかった)ことがわかる。

海外版について

  • 2007年5月24日に本作の海外版『Dawn of Mana』が発売されている。
    • 海外版はボイスが全編英語に差し替えられている他、レベル2で回復技であるヒールライトが使えるようになる等ゲームバランスが若干調整されている。
      • ただし、レベルのリセットやカメラワーク、MONOシステムといった評判の悪いシステムの根底自体は相変わらずそのままである。
    • 欧米では日本国内で根強い人気のあったSFC版『3』が発売されていなかったことに加え、『聖剣伝説』全体が国内のナンバリング・外伝ひっくるめて全て『Mana』シリーズ扱いであったため、本作が「ナンバリング作品の正当続編」という前提が存在しなかったこともあってか、大手レビューサイトであるメタスコアでも100点満点中57点と、大手メーカーの作品としては低い値ではあるが凡作程度の評価に留まっている。

その後の展開

  • スクエニとしても商業的に失敗したという認識なのか、本作のゲームアーカイブスでの配信やリメイクや移植などは一切行われていない。ただし、この件に関してはPS2ソフト全体の問題でもあるので一概に本作だけの問題と言う事ではない。
    • 2017年6月1日にはNintendo Switch用ソフトの『聖剣伝説コレクション』が発売されたのだが、収録されているのは1~3であり、『4』は入っていない。一応インタビューでは「ゲームハードの関係上移植が困難」と言及されてはいる。
      • もっとも、仮に移植やリメイクの話があろうとも、本作の評価を考えると完全に「誰得」としか評し様がない状況なのは事実ではある。
    • 挙句に2021年6月24日に『LOM』のHDリマスター版が発売された際には、ナンバリングに含まれないはずの同作がシリーズ4作目として紹介された。
      • 確かに発売の時系列順で作品をカウントした場合は『LOM』の方が先であり、一応間違ってはいないのだが……。
  • 次作『聖剣伝説 HEROES of MANA』を以て元祖聖剣チームは解散し、スクエニを退社した。
    • 前述のシリーズ25周年本『ART of MANA』によると、本作が発売された後に若手スタッフによる新作の企画が多数社内で持ち上がったが、全て凍結となったとのこと。
  • その後の『聖剣伝説』シリーズ製作指揮を勤めているのは石井氏の後輩に当たる初代『FF外伝』~『LOM』のファンを自認する小山田将プロデューサー。氏の熱心な営業の甲斐あって多くのリメイク版やリマスター版が発売される事になったが、如何せん贔屓の弊害で『新約』以降の不祥事については触れていない。
  • 本作を手掛けた一部のスタッフは株式会社グレッゾに移籍し、任天堂の下で『ゼルダの伝説 時のオカリナ』や『ゼルダの伝説 夢をみる島』のリメイク版の開発を担当する事となるが、こちらは見事にファンも納得のクオリティに仕上がっている。
    • また、2017年に任天堂から発売された『Ever Oasis 精霊とタネビトの蜃気楼』は、グレッゾに移籍した本作スタッフが中心になって開発されている。
      • 本作で不出来だったりオミットされた「他種族との交流」や「旅をする感覚」や「様々な物体を動かす事で解ける仕掛け」等の反省点が生かされているとも思える部分が存在し、10年以上の時を越えて実質的なリベンジに成功したとも言えるかもしれない。ストーリーも「風魔法が使える主人公が能力を行使する事で自分の村を発展させ、未開の砂漠を冒険して様々な物資を村に持ち帰る」と言う本作のネガティブさから一転しアグレッシブな物に見直されている。
  • 長い間、公式では面立って取り上げられなかった本作だったが、発売から15年経った2021年12月21日にファミ通の公式サイト上で特集記事が組まれ、伊藤賢治氏が手掛けた楽曲20曲がストリーミング配信される事となった。
  • 2013年にサービス開始したアプリ『聖剣伝説 CIRCLE of MANA』内の人気投票で、本作の主人公であるエルディが男性キャラクター部門で1位を獲得している。
  • 2022年4月27日にサービス開始したスマートフォンアプリ『聖剣伝説 ECHOES of MANA』にて、本作から主人公のエルディと(便宜上の)相方であるレキウスがプレイアブルとして実装された。
    • 当アプリ内での本作の扱いは『新約』以降の作品群の中では比較的良い方である。アプリのセールスは(タイミングが良かったのもあるが)エルディ実装時が最高順位であった。
    • だが長続きはせず、同アプリは2023年5月15日でサービス終了。約1年という短い期間だった。
  • 以上の出来事から本作の素材そのものは決して悪くなかった事がうかがえる。

最終更新:2025年03月24日 22:44

*1 ナレーションの中には「(ある人物がある事を行ってから)一年の月日が過ぎた…」という、とんでもない一言すらある。

*2 一応、一部の章ではモブキャラ(友軍のNPC)との会話が存在する。

*3 登場人物の理解しがたい支離滅裂な言動や、グロテスクな精神崩壊などが含まれているため。

*4 奇しくも、異常なまでの主人公不遇や北欧神話がベースになっているなど、本作との共通点も多い。

*5 中でもタナトスポロンは、人間狩りを楽しんでいるかのような台詞や「痛いよ…」という苦しげな断末魔により、ひたすら後味が悪い。

*6 実際は、赤子の孤児であったエルディを大樹が「騎士」に選びイルージャ島へ導いたのだが、それが明かされるのはラスボス手前と、あまりにも遅すぎる。

*7 かつて世界を救った「千年前の自分と恋人の良心」を裏切り、世界と人々に悲劇をもたらしてでも『ただ逢いたい』という、愚直な願いを選んでしまった己自身、ということだろうか。

*8 前者は能力値や装備品、自己強化アイテム等。後者はまねき猫によるライフゲージ強化や特殊技など

*9 フィーレベルが上がると回復魔法「ヒールライト」を習得できるが、それには多くのメダルを稼ぐ必要があり、その間は回復アイテムのドロップ頼みになる。

*10 ルナは敵を混乱させるが、パニック状態でも攻撃するようになるため逆効果になりかねない。他の3種類については相手の耐性次第で活躍可能。

*11 一応、魔法「ハイパーオーラ」の発動中にいわゆる乱舞技を出すことは可能。しかし高消費かつ効果時間が短く、乱舞モーションも通常の連撃を無理やり早送りにしたように見える。

*12 『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』などでも利用されている。タイトル画面等で、使用ミドルウェアの一つとしてHavokと書かれた歯車のロゴが表示されていることを一度は目にしたことがあるだろう。

*13 魔法「リフレッシュ」を使わない限り、時間経過による自然治癒を待つしかない。また、移動方向の入力が反転する『混乱』と、ほとんど何も見えなくなる『暗闇』は特に厄介。

*14 いずれも『2』および『3』が由来と思われるが、攻撃力アップの「パワーアップ」は『3』、防御力アップの「プロテクト」は『2』という細かさ。