METAL GEAR AC!D

【めたるぎあ あしっど】

ジャンル タクティカルカードゲーム(戦略諜報カードゲーム)
対応機種 プレイステーション・ポータブル
発売元 コナミ
開発元 コナミコンピュータエンタテインメントジャパン
発売日 2004年12月16日
定価 5,040円(税込)
レーティング CERO:15歳以上対象
廉価版 PSP the Best: 2005年11月17日/2,160円(税込)
判定 良作
メタルギアシリーズ関連作品リンク


ストーリー

2016年、合衆国。

次期大統領候補ヴィゴ・ハッチ上院議員をはじめとした、乗員517名を乗せたジェット旅客機326便が何者かにハイジャックされた。機内には爆弾が仕掛けられるとともに、過剰吸引すると死に至る筋弛緩剤=臭化ベクロニウムが散布されてしまう。
犯人の要求は、「『ピュタゴラス』の譲渡」。
しかし合衆国政府は、『ピュタゴラス』がどこに存在するのか、そもそも『ピュタゴラス』とは何なのかすら把握していなかった。

調査の末、『ピュタゴラス』は南アフリカのモロニ共和国、ロビト島の研究所で開発されていることが明らかになるが、モロニ側は「内政不干渉」を盾に非協力姿勢を貫く。
痺れを切らした政府は特殊部隊HRTを派遣、『ピュタゴラス』の把握・奪取を試みるものの、島に展開していた傭兵部隊の逆撃によってHRTは壊滅してしまう。

政府は遂に、単独潜入のスペシャリストであり、今は現役を退いている伝説の傭兵に一縷の望みをかけた。
OUTER HEAVEN、そしてガルエードで戦った元FOXHOUND隊員、ソリッド・スネークである。

かつての上官キャンベルの盟友であるロジャー、SAI能力を持つ少女アリスのサポートのもと、ロビト理化学研究所に侵入するスネーク。
そこでスネークを待ち受けていたのは、研究員のゲリー、傭兵部隊の長レオーネ、HRT唯一の生き残りテリコ。
そして突如フラッシュバックする、「もう一人の自分」の記憶であった……


概要

PSP初のメタルギアだが、今までの「タクティカル・エスピオナージ・アクション」ではなく「戦略諜報カードゲーム」とされるまったく新しいジャンルで発売された。
監督はゲームボーイカラーの隠れた名作、『メタルギア ゴーストバベル』を担当した「小島プロダクションの鬼才」、野尻真太。
従来のメタルギアとはまったく異なるシステム、非小島監督作品であることに不安の声も多くあったが、発売後にはシステムや、良質のシナリオによってなかなかの好評を得ていった。

なお、今作は『メタルギア ソリッド(MGS)』シリーズとはパラレルワールドの、『ゴーストバベル(GB)』の続編となっている*1


特徴 ―AC!Dは脳で解け―

  • メタルギア伝統のステルス要素と、トレーディングカードゲームが融合した新しいシステムを採用している。
  • ゲームは「インターミッション」と「ミッション」の繰り返しで進行していく。

インターミッション

  • ミッションで使用する「デッキ」を作成するパート。デッキは30~40枚で構成され、同一カードは4枚まで入れることが出来る。
    • また、ミッションで入手した「ポイント」を使ってカードショップで「パック」を購入し、新カードを獲得することが可能。
      • パックは「MGS1」「MGS2」「クロニクル」「MGS3」の四種類。シナリオ進行とともに新パックが解放される。
        なおパックはミッション中に拾うことも可能。
    • セーブはこのパートで行える。

ミッション

  • 今作のミッションは、スネークとHRT隊員テリコのタッグで挑むこととなる。デッキはそれぞれ別だが、カードのストックは共有する。
  • 戦闘はターン制だが、敵味方共に「コスト」の概念がある。行動によってコストが蓄積し、コストが再びゼロになるまで再行動はできない
    例によって、基本的に強力なカードほど高コスト化する傾向にある(「有効」なカードが高コストというわけではない)。
    • コストは他のキャラクターが使用したコスト分だけ、順次減少していく(つまり相手が5コスト分の行動を行った場合、自分の累積コストは5下がる)。
      一回の行動でコストを溜めすぎると、自分の再行動までに敵に何度も行動されてしまうことになる。いかにコストを抑え、無駄のない行動をするかが重要
  • ミッション開始時にシャッフルされたデッキから6枚のカードがドローされ、手札となる。以後は自ターンの開始時に、手札が6枚を超えないように2枚以内のカードがドローされる(手札が5枚の時は1枚のみドロー)。
    デッキを使いきった場合、それまで使用したカードがデッキに戻り、再使用が可能となるが、その際10コストが加算される。
    • 一回のターンで使用できるカードの枚数は、スネークは2枚、テリコは3枚。
      ただし、テリコはスネークより最大LIFEが少ない。スネークはACTIONカード「ACTION+」を使用することで、10ターンの間1回、最大4回まで使用枚数を増やすことが出来る。
  • 各マップは正方形のマス目(ブロック)に区切られている。移動に使用不可な一部のカードを除き、各カードは共通で「MOVE」を行うことが出来る。
    • 基本的に1枚で3ブロックを移動できる。MOVEしか選択できないカードもあり、それらのカードは通常より多くのブロックを移動できる。
      移動後は自分の向きを決定した後、「立ち・ホフク状態の選択」を始め、「壁への張り付き」「ハシゴの昇降」「エルード(ぶら下がり)状態への移行」等の行動を状況に応じて選択する。
  • 敵兵も当然移動を行い、侵入者を索敵するほか、ステージによっては監視カメラや赤外線センサー、監視カメラを搭載したサイファーが配置されていることもある。
    敵兵には視覚・聴覚が設定されており、こちらを発見すると通信を開始、終了後に危険モードに移行し、増援部隊と共にこちらを攻撃してくる。
    • 「危険・警戒・回避」の3フェイズが存在している点は従来のメタルギアと同様である。これまでと同じように「遮蔽物をうまく利用して敵兵の視界を逃れ、作戦を遂行する」ことが求められる。
  • 「カードを使用しない行動」も存在する。
    • END・・・行動を終了する。1枚もカードを使用しないで実行した場合4コストが加算される。コストを抑えるため、あえて使用可能数を残してENDすることも重要な戦略である。
    • DISCARD・・・カードアクションを行わない場合のみ実行可能。手札を2枚破棄し、デッキから2枚ドローする。実行すると6コストが加算されターン終了。
    • その他、敵兵を殴って転倒させるPUNCH、 シリーズお馴染みの、壁を叩いて敵兵を誘導するKNOCKが存在。
  • 各ミッションごとのクリア条件を満たすとミッションクリア。敵兵の殺害数、クリアタイムをもとにランクが算出され、ランクに応じてポイントと最大3枚のカードが獲得できる。
  • 一度クリアしたミッションでは、そのステージを使用して、「敵全滅」「目標地点までの移動」といったミッションを行い、ポイント・カードを集めることが出来る。
  • シナリオクリア後の2周目では、高難易度「エクストリーム」を選択可能。

カード

  • 登場カードは約200種類。『MGS』、『MGS2 サンズ・オブ・リバティ』を中心に、小島プロダクション作品からフィーチャーした「クロニクル」、そして発売時期の近い『MGS3 スネークイーター』から出典されている。
  • カードには「USE型」と「EQUIP型」の二種が存在する。
    • USE型は使用すると手札から即発動する。消費型のアイテム(ライフ回復など)、一時的なステータス補正カードなどが該当する。
    • EQUIP型は「装備欄」(EQUIPMENT)に装着する(EQUIPする)ことで効果を発揮する。一部の武器やそれと組み合わせて使用するカード、規定のターン・コスト経過まで効果を発揮するアイテムが該当する。
  • カードはそれぞれ、WEAPON、ACTION、ITEM、SUPPORT、CHARACTERの5種類に分類される。
    • 「WEAPON」・・・主に敵を攻撃し、ダメージを与えるカード。「SOCOM」や「PSG-1」等の銃器、「グレネード」や「C4」等の時限式爆発物、「高周波ブレード」等の近接武器、「スティンガー」等のミサイルを始め、「M9」や「チャフグレネード」のような補助武器、更には「CQC」カードのような変則的なものまで多数。
      • EQUIP型WEAPONカードは、他の種類のEQUIP型カードと比べ、性質が若干異なる。例えばEQUIP型銃器を使用する場合、使用したい銃をEQUIPした後、その銃と同口径の弾丸を使用する武器のカードを、EQUIPした銃に重ねることで攻撃が可能となる。
        このため、EQUIP型WEAPONは最低でも2枚のカードが無いと使用できず、即応性・汎用性の点でUSE型WEAPONに劣るが、攻撃力では大幅に上回るものが多数を占める。また、中には攻撃を受けると自動的に反撃を行う(この際にEQUIPしたカードは失われる)機能を持ったカードも存在するため、両者の使い分けが重要となる。
    • 「ACTION」・・・様々な特種行動や能力補正を行うカード。装備欄を2つから4つへ拡張する(つまり同時装備可能数を増やす)「EQUIPMENT LV.2」、敵兵の背後で使うと敵兵を気絶させる「首絞め」、EQUIPしている武器に装着することで、命中率低下と引き換えに使用コストを-5する「腰だめ撃ち」など。
    • 「ITEM」・・・ライフを150回復する「レーション」などの回復アイテムや、EQUIPすることで50ポイント分のダメージを肩代わりする「ボディアーマー」等の補助アイテム、設置することで発見した敵兵の動きを止める「雑誌」などの様々な効果のカードが存在する。
    • 「SUPPORT」・・・攻撃のサポートや回避、状態異常回復、コストの回復を行うカード。
    • 「CHARACTER」・・・参戦作品に登場したキャラクターのカード。移動のみにしか使えないが一度に6ブロックを移動できる「山猫部隊」、隣接状態で敵兵の方向を向いている場合、強力な斬撃を行う「ソリダススネーク」、EQUIPしている武器に装着することで対装甲能力を付加する「オタコン」など、各種の効果を持ったカードが存在する。
      • 登場キャラクターのチョイスはファンサービス心に溢れている。「スネーク」はMGS1・2、MG1・2、そしてMGS3のネイキッドの計5種類が登場。FOXHOUND隊員や各種メタルギアはもちろん、ゲノラやゴルルゴン、アイデアスパイ2・5まで登場する。ただし、発売時期が近い「MGS3」のキャラクターの登場数は少ない。
    • 各カードは詳細な解説を見ることが可能。また特定のカードを使用すると、そのカードに関連した作中の場面が再生される演出あり。

キャラクター

  • 今作は『MGS』のパラレルワールドであるため、お馴染みのオタコンやオセロット、リキッド達はキャラクターとしては登場せず(そもそもシャドー・モセス事件が発生していない)、カードとして登場する。『MGGB』でも登場していたキャンベル大佐とメイ・リンも同じである。
  • キャラクターデザインは政尾翼氏が担当。繊細なタッチで描かれたイラストは、作品のミステリアスな雰囲気を盛り上げることに貢献している。

評価点

  • シナリオの完成度が非常に高い。
    • ミステリー色の濃いシナリオは、小島プロダクションのとちぼり木氏(放送作家のとちぼり元は氏の実兄)が担当。巧妙な謎・伏線を張り巡らせながら、スネークの過去・黒幕との意外な接点を徐々に明らかにしていく展開は歴代メタルギア作品でもトップクラスの完成度を誇る
      • 魅力あるキャラクター陣やトンデモボス、狙撃ミッションなどの歴代のツボもしっかり押さえている。
      • トップクラスの完成度と共にかなりの難解さも持ち合わせたシナリオであるため、二周目三周目で伏線に気がつくことも多く、この点も周回プレイの意欲向上につながっているといえる。
  • 非アクションゲームでありながらしっかりと"メタルギア"
    • 敵に見つからないように移動し、いざとなれば起点を利かせて敵を欺き、あるときは戦闘によって排除する、という歴代シリーズの特徴を余すところなく表現している。アクションゲームが苦手でこれまで敬遠していた人でも本作であればこれらの楽しさを十分に味わうことができるだろう。
    • 新しいエリアに侵入した、敵に発見されてしまった、など状況が変化した際の「さて、どうするかな……?」という思考パートを状況を確認しながら時間無制限で心ゆくまで続けられるという点は、メタルギア的でありながらどこかパズルゲームめいた楽しささえもたらし『―AC!Dは脳で解け―』のコピーに違わぬプレイ感を与えてくれる。
  • ステルスゲームとカードゲームの融合
    • メタルギアをただ非リアルタイムゲームにしただけではなく、デッキ構築やドローといったトレーディングカードゲームライクな要素を取り込むことで、カードゲームの持つ魅力を兼ね備えつつ、ゆっくり考えて確実に進んでゆくだけの単調なゲームになることをうまく回避している。
      • 従来シリーズのように、様々なアクションから最適なものを選んで状況を切り抜ける、ということはできない。取りうるはまさに手札の中にしかない。そしてその手札の内容を決めるのは、自分自身が構築したデッキと自分自身の運なのである。
        次のミッションを有利に進めるよう自分なりに考えてデッキを組む、前回のミッションで感じた弱点を解消するようにデッキを調整する、新しく手に入れた強そうなカードを使ってみる――そういった、自分の思い描く戦略を実現するための、デッキ構築における試行錯誤の楽しさというものが本作にも備わっている。
    • 迅速に行動したいのはやまやまだが、移動に必要なカードが出なければ何処かに身を潜めて敵をやり過ごす必要がある。ところが、ダンボールが出てこないと隠れる事もできない。さてどうするか。
      理想の戦術と現実の手札の間で身悶えする、ターン制なのに熱いミッションとなっている。

問題点

実験作という意味合いも強かったのか、無視できない問題点も幾つか存在する。

  • やや不自由な移動性
    • 本作の最大の欠点である。立ち/ホフクの切り替えは移動終了時にしかできない。つまり、まだ移動できるブロック数が残っていてもいちいち立ち止まらないと切り替えが出来ないので、「ダクト前まで移動、ホフクしてダクトを抜け、隣の部屋へ移動する」行動は、「ダクト前まで移動、しゃがむ」→「ダクトを抜け、立つ」という風に2分割される=2枚のカードを使わなければ実行できない。
    • ドアを開けて別の部屋に入るときはいちいちドアの前で立ち止まらないとドアが開かない。「ドア前まで移動」→(ドア開く)→「部屋に侵入」というふうに、やはり無駄にカードを消費しなければならない。
      • また、移動途中でイベントが発生すると移動指定距離が残っていても、その場で強制的に立ち止まってしまう*2。単純に損になる上、不意打ち的に発生するので行動回数が残っていない状態で発生すると発見されやすくなってしまう。
    • ステージ内に落ちているアイテムやカードパックを拾うにも、そのマスの上で行動を終了させないと入手できない。
  • 一部マップの構成がよく練られていない
    • 特に後半の火力発電所マップは片道約250ブロックの道のりを厄介なトラップをクリアしながら往復しなければならない。
  • デッキ・カードに関して
    • 「デッキは最低30枚、どのカードも最大4枚までデッキに投入できる仕様」により、優秀なカードが集まるとゲームバランスを容易に崩壊させられる(もちろん集めるには手間がかかるが)。
    • 特定カード使用時に発動するデモをOFFにできない。いちいち×ボタンを押して途中終了させる必要がある。
    • ネタばれ防止のためか、『MGS3』からの参戦カードが少なく、閲覧できる情報も薄い。
    • 参戦作品のキャラクターに、一部カード化されていない者が存在(MGS2のファットマン等)。
    • デッキレシピは複数保存できない。
      • 今作はデッキにより戦略が大幅に変わり、同じステージでもデッキによって全く違ったプレイが可能な自由度の高さが魅力だが、いちいちデッキを組みかえる必要が出てくる。

以上の問題点のほとんどは、続編の『メタルギアアシッド2』で解決されることになった。


総評

難点も多いが、高い完成度のシナリオによって、それらの欠点を差し引いても満足できるゲームになっている。
一般的なメタルギアとはまったく異なる作品であるため、手放しに全てのメタルギア(特にMGSの)ファンに勧められる作品ではないこともまた事実たが、他の「メタルギア」とは異なる、続編の『メタルギアアシッド2』とも異なる、独特の雰囲気が本作には漂っている。
興味がある方は是非本作を手に取り、ロビト島を訪れてみてほしい。


その他

  • 今作のスネークは長髪マッチョ。スニーキングスーツは『MGS1』のものを基調としている。
    パッケージイラストでは擲弾発射器付きのXM8を構えており、XM8は劇中にもパスワード型WEAPONとして登場、高性能で活躍が期待できる。
  • 公式サイトは米・日・仏・英・伊・独・西の7ヶ国語に対応。
  • ベスト版はコジプロお得意のリバーシブルジャケット。正直通常版のジャケットよりもかっこいい出来である

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