46億年物語 はるかなるエデンへ
【よんじゅうろくおくねんものがたり はるかなるえでんへ】
ジャンル
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アクションRPG
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対応機種
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スーパーファミコン
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メディア
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12MbitROMカートリッジ
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販売元
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エニックス
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発売元
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ゲームプラン21
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開発元
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アルマニック
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発売日
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1992年12月21日
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定価
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9,600円(税別)
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プレイ人数
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1人
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セーブデータ
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3個(バッテリーバックアップ)
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レーティング
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なし
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判定
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良作
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ポイント
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自由度の高い育成 進化の喜びをシンプルに感じられる逸品
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概要
PC-9801用であった前作『46億年物語 ―THE進化論―』の骨子を継承しつつ、全く新たな作品として制作されたゲーム。
「生物の進化過程の追従体験」という前作のコンセプトはそのままに、純粋なRPGであった前作から心機一転、
横スクロールアクションを主体としつつ育成要素を全面に打ち出したアクションRPGとなっている。
特徴
ストーリー
「父なる太陽」は、その子たる9人の惑星の3番目の子、ガイア(地球)に生命を宿すことを決めた。
ガイアのパートナーにふさわしい生き物は、安寧の約束された地「エデン」へ立ち入る資格が得られるという。
本作の主人公はそのガイアに生まれ、生命誕生の30億年後の原始の海に「魚」として降り立った1体の生命。
太陽が「ガイアの友」にふさわしいか見極めるべく与えた「弱肉強食の試練」を乗り越え、動物の進化の過程を辿る冒険が始まった。
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前作同様、地球における「弱肉強食」の動物の進化過程を辿るコンセプトとなっている。
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単細胞生物~多細胞生物~原生動物~魚類までの進化は「生命誕生から30億年の過程ですでに済ませた」ことになっており、本作での進化の過程は魚類の時代、現代より5億年前から始まる。
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よって本作で体験するのは、生命46億年の歴史の中で「脊椎動物」の進化の過程となる。
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初めは1匹の魚だが、物語を進め、進化の過程を妨げる存在を乗り越える過程で両生類、爬虫類…と進化していく。
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作品は全5章のパートに分かれている。
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第1章は「魚類」、それをクリアすると「両生類」に進化し第2章へ、といった具合だが、第3章で爬虫類になってからの進化プロセスは前作のように「1章ごとに1種類」という対応ではなくなった。
システム
育成要素を主軸に据えた、いわば「横スクロールアクションRPG」ともいうべきゲームシステムである。
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マップは『スーパーマリオワールド』のようなエリアごとのステージ選択式。
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各章のフィールドマップにエリアシンボルが配置されており、選択して各アクションステージへ入るという形式。
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各ステージは横スクロールで、移動、噛みつき、突進、ジャンプといった多彩なアクションを駆使して敵と戦いながらステージを攻略する。
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主人公は敵を倒し、その敵の肉を食べることで敵の強さに応じた「EVO.P」(進化ポイント)を獲得でき、このEVO.Pを消費することで「進化」し強くなる。
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ライフは残機性ではなくHP制。肉はHP回復アイテムも兼ねており、フィールド内にはHP回復専用のエサとなる植物や小動物も配置されている。
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HPが0になるとゲームオーバー(本作では「絶滅」と表現される)。EVO.Pが半分になった状態で同ステージからのコンティニューが可能。
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「進化」は「アゴ」「ツノ」「後頭部」「胴体」「手足」「尾」などに分かれた部位ごとに、どんなパーツに進化させるか選んで行う。
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「アゴ」なら噛みつきの攻撃力、「胴体」なら防御力やHP…といった具合に、進化させる部位ごとに強化される能力が異なる。
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進化の内容によっては、複数の能力が同時に上がったり、1つの能力が強化される代わりに別の能力が弱体化されてしまったり、といったものもある。たとえば、胴体を大きくすると体力が増える代わりにスピードは遅くなる…といった具合。
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そのためか、より能力が劣る下等なパーツへ「退化」させることも可能(一部条件下を除く)。
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進化させた生物は50パターンまで記録が可能。
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特定条件下では、記録済みの過去の生物へ一時的に戻ることもできる。
評価点
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進化過程の描き方の質の高さ。
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生物の進化の過程そのものは(当時の)ちゃんとした学説に比較的忠実に描かれており、大人目線でも十分に鑑賞に堪えうるもの。
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小学生の理科の学習教材としても十分活用可能なレベルである。当然フィクションの要素も大きいが。
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自由度が非常に高い進化システム。
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「サメのヒレにドリルの角」「肉食竜のアゴに翼竜の翼」といった具合に、実在しない動物への進化も自由自在。
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キャラグラフィックはかわいらしく、無数の進化パターンに応じて違和感のないよう細かく調整されており、ただ色々進化させてみるだけでも見た目にとても楽しいものとなっている。
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「ジニクチスのアゴ」など、パーツの特徴を名前から推測することが難しい場合も多いが、「高ポイントが必要なパーツほど高性能」という基本からは外れることがないため、謎のパーツでも安心して選択できる。
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むしろ何かわからないまま進化させてみたら予想もつかぬおかしな見た目の生物に仕上がることが多々あり、意外性のある外観に愛着を抱けるのも本作の醍醐味の一つである。
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一時的ながら「ドラゴン」
や「ポケモン」など空想の生物へ進化できる場面も用意されているなど、遊び心満点。
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とっつきやすい愛嬌あるキャラクターとコミカルな演出。
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登場するキャラクターは主人公、ガイア、各時代のボスや長老などを除けばモブキャラが大半だが、いずれもわかりやすい個性が与えられており印象深くなっている。敵たちもどこか憎めない、愛着の湧くキャラが多い。
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そんな敵でも主人公に食べられてしまうわけだが、食べるのが心底可哀想に感じるほどの思い入れまでは抱かないレベルにとどまっている。
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そんな中で、とある場面では弱肉強食による悲哀があえて明確に描かれプレイヤーが少し感情移入してしまうよう狙われているなど、演出のしかたが絶妙。
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なお主人公に味方する明らかに善良な動物も倒して食べてしまうことができるがそうするとキツいお仕置きを受ける、ボス敵に味方する選択肢を選ぶとバッドエンド的なオチを見られる…など小ネタも豊富に用意されている。
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扱うテーマが「弱肉強食」と言うと聞こえは物騒だが、会話、ビジュアル、戦いなどのすべてで血なまぐささを徹底的に排除したユーモラスな演出がされており、小学生くらいなら問題なく受け入れられるレベル。
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ちなみに今作のキャラクターデザインは漫画『ドラゴンクエスト列伝ロトの紋章』などで知られる藤原カムイ氏である。
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最終的な進化段階のゴールを自由に選択可能。
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爬虫類までの進化はストーリー上強制だが、鳥類や哺乳類への進化は任意となり、どの形態でラストを迎えるかは自由に選択できる。
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前作は人類への道を逸脱するとバッドエンドになりやすかったため、進め方の自由度は飛躍的に広がった。
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爬虫類を選んだ場合はそこまで積み重ねてきた進化とEVO.Pを無駄にしなくて済む、鳥類なら飛べる、哺乳類は進化の幅が広くスペックも高め…など、どの種族にもメリットがある。
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前作での「進化のポイントが各章末で強制的にリセットされ、ボスの戦利品が実質無意味になっている」という批判に部分的ながら応える形ともなっている。
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哺乳類を選んだ場合、条件を満たせば人類まで進化することも可能。ただし人類を選んだ場合、以後は進化も退化もできなくなる。
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進化による育成が進めやすさに直結するゲームバランス(終盤を除く)。
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新たなステージで登場する敵はそれまでに比べ明らかに強く、何も考えずに進めると雑魚敵相手でも苦戦するようになっており、かつその圧倒的な敵との格差をプレイスキルで埋めることはかなり難しく、一見すると「死にゲー」のよう。
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一方で、EVO.Pを着実に貯めて強化するとそういった強敵も簡単に倒せるようになる、というバランスになっており、ふつうにプレイするうえでの難易度は易しめ。
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このように進化を積極的に行うメリットが明確で、身をもって進化の喜びを体験できる絶妙な仕上がりとなっている。
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ただし終盤は趣向がやや異なる。後述。
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良質な音楽。
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楽曲提供はあのすぎやまこういち氏。言わずもがな質の高い楽曲の数々が壮大な冒険を引き立てる。
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『ドラクエV』も同じ時期に同じエニックスから発売されたが、あちらがクラシック風楽曲中心なのに対し、本作の音楽は環境音に近いものからノリノリのバトル音楽まで非常に多彩。
賛否両論点
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とにかくシンプルなゲーム進行。
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「育成+横スクロール」の非常にシンプルなシステムであり、題材の壮大さに反し子供にもとっつきやすい明快さである。
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一方、とにかく全編通して「敵を倒す」「食べる」「進化する」「進める」の繰り返しであり、全編通して変化に乏しいという声もある。
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ただし、ゲーム中最初のステージで初めて出会う自分以外の生き物が「そういうゲームである」ことをメタ的に発言する。シンプルさは制作者の意図したものであることは明白。
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クリアするだけなら、慣れた人なら数時間で可能なボリュームではある。
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とにかくシンプルなアクションステージ。
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穴やトラップといった苦戦する要素、謎解きのほとんどないシンプルな一本道に敵が配置されただけのステージが多く、また同画面内に登場する敵は多くの場合1種類のみで、いささか単調であるという意見がある。
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ギミックのあるダンジョンは、終盤になってようやく階層移動を伴う長めの迷路がいくつか登場する程度。それらも移動モーションなどが洗練されているとは言いがたい。
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逆に、余計なギミックを排し単刀直入に弱肉強食な世界観が表現されているとも捉えられ、難しいアクションを求められない単純作業の心地よさこそ本作の魅力であるという意見も根強い。
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とにかくシンプルなバトルアクション。
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攻撃アクションは基本的に噛みつき、突進、ジャンプに限られ、哺乳類になってようやく後ろ蹴りや殴りが追加される程度。進化による育成要素に重きが置かれたバランスとなっているが、下記のHP回復も相まってバトル自体は大味であるという声もある。
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進化により半ば無制限にHPを回復可能。
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進化はアクションステージでもボスバトル中でも関係なく行え、小さなものでもよいので進化または退化をすると、強制的にHPが変化後の最大値まで回復するという仕様がある。
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これにより、一撃死するのでもない限り、運用に支障なく必要EVO.Pが低いパーツの進化・退化・交換を繰り返すことでEVO.Pの許す限りHP回復がいくらでも可能であり、「少し敵が強くても進化すればよい」となりがちで、やや緊張感に欠ける。
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一方、後述の通り終盤のボスは割と強く、この技の使用をある程度前提としているバランスのようにも見える。
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なお人類へ進化するとパーツの進化・退化は一切できなくなり、この技を使うには必要EVO.Pの多めな「体のサイズ変化」をしなければならず、消費コストはかなり大きくなる。
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また強い敵には回復する余裕すらなく負けうるバランスのため、この手法があってもヌルすぎて話にならないということにはなっていない。
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第4章終盤~第5章の固有ボスの強さ。
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それまでのボス戦は「しっかり進化させていれば難なく勝てる」というバランスだったのが、進化が最終段階に達しつつある第4章終盤あたりから急に手強くなる。
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それまでがアクションへの習熟をそこまで要求しないゲームデザインだっただけに、急に敵の攻撃が避けづらくなって面食らったプレイヤーも少なくなかったと思われる。
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もっとも、何度か戦って行動パターンをしっかり把握すれば渡り合える程度のレベルではあり、このくらいは歯ごたえがないとさすがにヌルすぎるともいえる。
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また先述の「進化によるHP回復」を適切に使えばそうそう負けることはなく、そういう意味でも進化の活用を前提としたバランスを保っている、とも言える。
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倒した敵や食べた回復用食材が、一度画面外に出るとすぐ再出現する。
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少し画面外へ行って戻ってくるだけであっという間に復活しており、「弱肉強食」を描くにしてはやや軟弱な演出とも言え、またHPを回復しやすく難易度は低い。
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もっとも、敵シンボルの配置はそこまで密でないため、この復活がなかったら稼ぎに時間がかかり進化のテンポが悪くなっていたと思われ、良し悪しである。
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「爬虫類」と「鳥類」とで進化のバリエーションに差が少なく、かつどちらも実質「恐竜」カテゴリに近い。
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「爬虫類」「鳥類」に用意された進化パーツは「ティラノサウルスのアゴ」「トリケラトプスのかぶと」など大半が恐竜のもので、真の爬虫類や鳥類そのものを模したパーツは少ない。
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結果的に爬虫類と鳥類のパーツが似通ったものになってしまっているうえ、その割に爬虫類から鳥類に進化するとそれまでの進化過程とEVO.Pがリセットされてしまう。
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もっとも、純粋な爬虫類や鳥類のパーツだけではゲーム的に絵にならず、進化史を語る上で欠かせない恐竜がゲームの素材としてもうってつけなのは自明。かつ脊椎動物5分類の中で爬虫類と鳥類を除け者にするわけにはいかない事情も理解でき、苦肉の策だったのだろうという想像は容易につく。
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なお当時は恐竜が爬虫類と鳥類のどちらに近いか議論の最中であったが、2019年現在は「生物学的には、鳥類が恐竜類の一種である」というのが定説である。
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それまでの作風と異質な、終盤のSF要素。
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生物の進化史そのものは(当時の)学説に割と忠実に描かれているのに対し、第4章の途中から明確となるSF要素はかなりはっちゃけている。
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実は第1章の頃から伏線は少しずつ張られてはいるのだが、その一部は隠し要素となっておりどの程度気づけるかにも個人差がある。突如登場する超文明の描写についていけるかは好みが分かれるところ。
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超進化を遂げた生物は往々にして刀剣や銃で武装していたりするのだが、実在の生物は超文明の影響を受けている描写があるにもかかわらず岩や棍棒程度の武装しかしておらず、攻撃力設定も前者が特に高かったりするわけではない割に後者は喰らってはいけない重い攻撃扱いされていたりして、このあたりは違和感が大きすぎてやり玉に上がりやすい。
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なおこれは前作も同様であり、今作に限ったことというわけではない。
問題点
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魚類および4足歩行での噛みつき攻撃時、全身が大きく前進する。
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これにより、画面内で敵にジャストミートするように噛みつくと、自分の体が敵に接触して被ダメージするという事態が頻繁に起こる。
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接触を避けるには「敵に触れるか触れないか」レベルの先端で捉えることが要求される。慣れれば難しくはないが、実際にやるとグラフィック上は敵に命中していないように見えるくらいでちょうど良くなる。
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この仕様は、下記の肉の食べづらさにもつながる。
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倒した敵の肉を食べる動作がやや煩雑。
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先述の通り魚類と4足歩行動物の噛みつきは動作と同時に少し前進するため、倒した敵のドロップした肉の発生地点が自分の口の少し手前になる事態が起こりやすい。
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そうなった場合、その場で体を切り返しても同様に自分の口の反対側に来てしまうため、少し横移動を挟まないと肉を食べられないという事態が慣れるまでは頻繁に起こる。
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細かい点とは言え、序盤から頻繁に行う操作であるためストレスを感じやすい。
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また、ドロップされた肉は、発生後に自分の頭の高さまで浮上してから止まるという仕様がある。これは主に爬虫類以降、進化により頭部が地面から高い位置になると低い肉を食べることが不可能となることに対する救済措置なのだが、ドロップ時にジャンプしていると肉が自分より中途半端に高いところで止まってしまうことがよくある。
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高い位置の肉は、ジャンプの最中に頭と肉の高さがぴったり合った瞬間に食べなければならず、敵を攻撃するよりはるかに難易度が高い。
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複数の敵との空中戦の最中などにこれが起こると、多数の肉が非常に食べづらくなってしまい、ストレスがたまる。
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ボスを倒した際、肉の回収が不可能となることがある。
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ボスを倒すと4つの大きな肉が飛散するように発生するが、画面端で倒した際、一部の肉が画面外へ飛んで行ってしまい回収できなくなることがある。
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一応、軽く画面外へ出た程度なら画面内へ戻ってくるようになってはいるが、位置が画面端から余りに遠すぎるとそのまま消滅してしまう。
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ボスの肉はEVO.Pが特に多い非常に貴重な肉であり、これを回収できないのは(第3章以降では)大きな痛手となる。
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第5章で雑魚、ボス含め過去敵の焼き直しが多い。
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最終章である第5章の敵は、ボスの一部も含めて「~~時代の生き残り」として過去時代の敵を焼き直したものが多く、目新しさに欠ける。
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ボスでは行動パターンなどには変化が加えられているものもあるが、それでも新たな敵と戦っている感覚は薄い。
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ラスボスも「過去に登場した敵の強化版を次々と繰り出してくる」というもの。それぞれの敵は強化版と言っても多少HPが高い程度で、行動パターンの変化は乏しくそこまで強くない。またラスボス本体の行動パターンはかなり単調であり、ラストバトルの演出としてはやや物足りない。
総評
本作発売当時のエニックスといえば『ドラクエV』の大ヒット真っ只中であった。
そんな中、マイナータイトルであり売上本数自体も少ない本作は日陰に隠れがちだが、
丁寧に作り込まれたキャラ育成の楽しさと各時代の風情とを存分に味わいつつ、動物進化の歴史の一端を学習することもできる本作は隠れた名作と言えるだろう。
複雑なアクション要素こそないものの、だからこそシンプルに難しいことを考えず老若男女問わず気軽に楽しめる作品である。
機会があればぜひ一度は手に取ってプレイしてほしい。
余談
マイナータイトルながらその評価は高く、かつこれまで配信などもされていないため、2019年現在の市場では驚くようなプレミア価格となっている(中古品で6000~20000円、新品は4~9万円程度)。
最終更新:2024年07月16日 17:40