太鼓の達人 ドコどんRPGパック!

【たいこのたつじん どこどんあーるぴーじーぱっく】

ジャンル 和太鼓リズムゲーム
対応機種 Nintendo Switch
発売元 バンダイナムコエンターテインメント
開発元 ドキドキグルーヴワークス
発売日 2020年11月26日
定価 6,100円
プレイ人数 1人
レーティング CERO:A(全年齢対象)
判定 劣化ゲー
シリーズファンから不評
ポイント 移植度は全体的に低め
バグが多い上にアップデート対応も杜撰
太鼓の達人シリーズ

概要

ニンテンドー3DSで発売された『太鼓の達人 どんとかつの時空大冒険』と『太鼓の達人 ドコドン!ミステリーアドベンチャー』の2作品のカップリング移植版。
太鼓の達人シリーズで過去作をリメイク・移植したソフトが発売されるのは本作が初となる。

移植を担当したドキドキグルーヴワークスは同ハードの前作に当たる『Nintendo Switchば~じょん!』を開発した実績があるが、HDリマスターの制作は初となる。

評価点

移植元のソフトより通常楽曲が6曲追加されている

  • 追加された曲は「マリーゴールド」「シャルル」「ロキ」「Pretender」「紅蓮華」「命に嫌われている。」の6曲。うち、「Pretender」と「命に嫌われている。」の2曲は家庭用作品初収録であり、特に「Pretender」はACではサヨナラとなったためこの作品でのみ遊べる譜面となった。

一部の楽曲が本人音源化

  • 数は少ないが、移植元のソフトではカバーとして収録されていた曲が、本作で本人音源での収録になっているものがある。

リトライする際の時間は非常に早い

  • 「最初からやり直す」を選んだときの画面の切り替わりの速さは過去最高クラスである。リトライの手間がかからない点は特筆に値するだろう。

3DS版の問題点を改善した

  • 例えば『時空大冒険』ではボスに遭遇した時のフェードの高速化、編成する仲間のリストが12個から15個に増加、突撃ゲージの攻撃中に敵のHPが0になるとすぐに攻撃を止めるようになった、手動セーブの高速化、新規の時代に行く時のトビラの演出の削除によるスムーズ化など、多くの箇所が改善されている。
  • 『時空大冒険』の原作には実装されていなかった真打オプションが本作では使用可能になっている。
    • ただ、原作にない要素を実装することに失敗したためか後述のバグが発生してしまったのだが……

賛否両論点

ダウンロードコンテンツ非対応

  • 近年の太鼓の達人シリーズはダウンロードコンテンツも充実していたが、本作では珍しくダウンロードコンテンツに完全非対応である。移植元の『どんとかつの時空大冒険』と『ドコドン!ミステリーアドベンチャー』はダウンロードコンテンツの配信も活発に行っていただけに、移植元ではできた曲を追加できない点は従来のファンをメインに批判されやすい。
    • これはゲームを発売する前からきちんと公式から明言されていたので、理解した上で購入するのが望ましい。

一部の要素がオミットされている

  • 『時空大冒険』に収録されている「千本桜」「ふな ふな ふなっしー♪」「カールのうた秋」「買ってロック」の4曲は諸事情により再収録されず、曲がオミットされた。*1
  • ふなっしーの場合は曲だけでなく、ゲームを進めると入手できるふなっしーのきせかえ、ふなっしーの音色、ストーリーモードに登場するふなっしーのキャラクターなど、ふなっしーに関連する要素は全てオミットされている。*2

過去作との収録曲の被りが非常に多い

  • リメイク作であるが故、仕方ない点だが、毎作購入している層にとっては追加された6曲以外は全て過去作と同じ楽曲で構成されており、新鮮さが感じられない。
    • 過去に発売された『太鼓の達人 特盛り!』でも、収録曲が被っている点でシリーズファンから不評を買っていた前例があるにもかかわらず、収録曲が移植元と完全に丸被りで、新規に追加された楽曲はたったの6曲しかないため、毎作購入しているユーザーから不満の声が相次いでいる。
    • また、家庭用に初めて収録された曲に限れば新曲はたったの2曲しかない。それ以外の新規追加楽曲は、過去作のダウンロードコンテンツで配信されているため、それを目当てで買うなら、わざわざこの作品を買うよりダウンロードコンテンツとして追加した方が明らかに安く済む。
      • 家庭用として完全な新曲として収録された2曲は「Pretender」と「命に嫌われている。」の2曲だが、「命に嫌われている。」は後に発売された家庭用作品でデフォルト収録されているためますます本作を買う価値が低くなっている。
      • しかし「Pretender」はアーケードからは削除されており、現在は本作以外ではプレイすることができないため本作の価値は非常に高くなった。

問題点

全体的に移植度が低くバグも多い

  • 『時空大冒険』のラスボスは原作では体力が回復する演出があるが、本作ではその要素が無くなっている。
    • これは仕様なのかバグなのかは不明だが、原作の演出を完全に再現しきれておらず、体力を回復しない分、原作よりラスボス戦の難易度は低下している。
    • かといって、本家『時空大冒険』のラスボスの譜面には全く同じ場所に2個音符が重なっている箇所があるため普通にプレイしていると確実に音符を叩き損ねてしまうという明らかにバグと思わしき配置があるが、その部分だけは忠実に再現している。そんなところを再現してどうする。
  • 『ミステリーアドベンチャー』のラスボスは3DSの2画面構造を有効活用した妨害攻撃を行うが、Nintendo Switchでは当然再現ができないため妨害の方法がまるっきり別物となっている。
    • これにより原作と比べて本作のラスボスは明らかに難易度が高くなっている。苦肉の策だったと思われるが、本作の杜撰な完成度からすると無理に移植する必要があったのかは疑問。
      • ただ原作ではステータスが体力が多いだけで妨害が弱く歴代最弱のラスボスと評価を受けており、前座の方が強いとまで言われていたので、この変更でようやくラスボスらしくなったと言える。
  • 何故か全曲全譜面に0.95倍程度の低速オプションが付いている。原作ではそんな仕様は存在しておらず、同機種で発売されている『Nintendo Switchば~じょん!』でもそのような仕様は存在しない。据置機で発売された作品の中では本作特有の謎仕様である。
    • 画質や音質に関しても同ハードで発売された『Nintendo Switchば~じょん!』と比べ、悪くなっている。画面は妙にぎらぎらしており音質も移植元の3DSからそのまま引っ張ってきただけで据置機にしては低音質となっている。
  • 『時空大冒険』で、HPを回復する仲間をパーティに入れていると、時折味方を攻撃して味方のHPを逆に減らしてしまうバグが発覚している。
    • 後のアップデートで「一部不具合を修正した」と声明は出されたものの、明確にこのバグには触れていないため、現在このバグが修正されているかどうかは不明。
  • 難易度選択画面で特定操作を踏むと十字ボタンとスティックの操作とホームボタンしか受け付けないバグも発見されている。
    • こうなるとホームボタンを押してもう一度ゲームを再起動するしかない。
+ 後のアップデートで修正された点
  • 発売時はタッチの感度が非常に低く設定されており、触っても全く反応しない事例が相次いだ。タッチプレイでのフルコンボはほぼ不可能であり、商品失格レベルの不具合と言っても過言ではない。
  • 『時空大冒険』に収録されている裏譜面が存在する曲のほぼ全ての真打での配点がバグっており、本来の天井スコアから30万点近く下回っている曲や、逆に10万点近く上回る曲も存在した。
  • 太鼓の達人シリーズのゲームであるにもかかわらず、発売時はJoy-Conを使った「フリフリ演奏」や、公認ライセンス品の「太鼓とバチ for Nintendo Switch」がストーリーモードで一切使用できなかった。
  • 真打を使用してプレイしても100コンボごとに「+10000点」と表示されていた。真打を使用してプレイしている場合は実際は100コンボごとに10000点は加点されない。

アップデート対応が杜撰

  • 上記の、タッチプレイの際に全く反応しないバグは2回目のアップデートで感度が高くなるように設定が変更されたが、今度は逆に感度を高くしすぎたせいで多重反応が出るようになったり、連打中に画面上を撫でるだけで異常な打数が稼げるようになるなど、これはこれで不具合とも言えるような極端なアップデートを行った
  • 「太鼓とバチ for Nintendo Switch」、「フリフリ演奏」がストーリーモードでも使えるようにアップデートされたのは、ソフト発売から約3ヶ月後のことである。
    • 「太鼓を叩く」ことがコンセプトのゲームで、ボタン操作オンリーの状態で発売したことももちろん問題だが、対応するまでにあまりにも時間がかかりすぎである。
    • 実は、両方のストーリーモードでこれらが全く使えないと発売前から事前にアナウンスされていた。そのため、もともと対応させるつもりはなく、ユーザーからの不満の声が上がった結果改善された点だと考えられる。
      • おそらく、マップ移動や、『ミステリーアドベンチャー』で任意のタイミングで使うことができる「太鼓魔法」に割り当てるボタンの設定に困ったからだと思われる。
      • 現在、「太鼓とバチ for Nintendo Switch」でプレイする際はLRボタン同時押しで「太鼓魔法」が使えるようになっている。マップ移動は接続しているJoy-Conで操作し、演奏が始まった時は「太鼓とバチ for Nintendo Switch」で操作できるようになっている。
  • 真打の配点バグが起きていた曲や、撫でるだけで異常な打数を出せた時に記録した曲のスコアがアップデート後でもリセットされていない。
    • バグのせいで本来の真打の天井スコアを上回っている曲のスコアは状況次第でアップデート後に二度と自己ベストを更新できないスコアのまま残ることになってしまった。
    • 画面上を撫でるだけで異常な打数を稼げた不具合を利用して記録したスコアにもノータッチである。
      • つまり、不正に近かろうとハイスコアを狙う場合は現在のアップデートが適用される前にタッチ操作をやった者勝ちになってしまった。
      • 無論、このゲームは1人用なので気にならない人は気にならないが、SNSなどを通じてスコアを競うこともできるため、正攻法でハイスコアを狙って頑張っていたユーザーから怒りの声が上がっている。
    • バグ配点で出されたスコアを正常な配点から計算しなおして記録を上書きするようにしたり、天井点を上回っている記録や、不具合を利用して出したスコアだけをリセットする方が良かったのは明らかであり、これもベストな対応をしているとはとても言えない。もっとも、不具合を使用した記録かどうかの判断は不可能なため仕方ないかもしれないが…
  • 太鼓チームは、2007年に発売された『太鼓の達人DS』では、バグ発覚後にバグの存在しない修正版への交換や初期版のROM回収を迅速に行った実績や『太鼓の達人 ムラサキVer.』では批判が続出したアイドルマスター楽曲の旧譜面をちゃんとユーザーのニーズに応える形で復活させるなどバンダイナムコの中でも珍しくサポートが丁寧な方だと言われている。このこともあってユーザーから大きな信頼を得ていたが、今回の非常に杜撰な対応はその信用を大きく傷つけたことになるだろう。

1人プレイオンリー

  • 対人プレイもウリの一つである太鼓の達人シリーズで唯一、2人以上でプレイできない。完全に1人用のゲームである。
    • 移植元は通信プレイを使って2人以上のプレイも可能であるため劣化移植と言える。

総評

3DSで人気を博した作品をSwitchに移植するケースは少なくないが、『太鼓の達人』が移植された事や旧作の楽曲が再収録されたのは珍しいケースとなった。

しかし、タッチの感度が低かったり、元の音質が低かったり、DLCの曲が未収録であったりと、オリジナル版をプレイ済みのユーザーにとっては手放しでほめられない点が多い。
オリジナル版をプレイ済みで勝つ本作独自の欠点に目をつぶれるユーザーや、本作が初プレイの新規ユーザーであればそこまで気にせずプレイできるだろうが、そうでない人にはあまり勧められない出来になってしまっているのが惜しいところである。

余談

  • 海外展開は3DS版の『時空大冒険』は韓国でのみローカライズされたが、本作は『ミステリーアドベンチャー』を中心にアメリカや中国、欧州等向けに初めてローカライズされた。
    • 既に韓国にローカライズされた『時空大冒険』はそのままではなく1から翻訳し直している。
    • 海外版は日本の CERO:B に相当するレーティングであるESRB:T(13歳以上対象)PEGI:12歳以上対象に指定されている。楽曲の歌詞がレーティングに引っかかる等の理由である*3
    • 本作より前に発売された『グルーヴコースター ワイワイパーティー!!!!』の一部隠し曲ではCEROに合わない歌詞には規制音が掛けられていた。
  • 現在、2作品がまとめて収録されている本作とは別に『太鼓の達人 どんとかつの時空大冒険』と『太鼓の達人 ドコドン!ミステリーアドベンチャー』がダウンロード版ソフトとして個別販売されている。
    • しかし本作発売から、2作品が個別販売される約5ヶ月後までの間に、個別販売を行う旨のアナウンスが一切なかった。それまではどちらか片方の原作をプレイ済みでも、内容が被ることを承知で本作を買うしかなく、無駄な出費をする羽目となっていたため、対応が疑問視された。
最終更新:2025年01月19日 13:20

*1 「千本桜」は韓国ではタブー視される存在の楽曲とされており、現にゲームセンターのアーケードの筐体にも韓国国内で稼働しているものには収録されていない。「カールのうた秋」と「買ってロック」はタイアップ商品が一部地域限定、もしくは販売停止となっており収録するメリットがほとんど無くなったためだと言われている。

*2 「ふなっしー」は一応個人の著作物であるため再収録の際に使用する権利が下りなかったためだと思われる。

*3 海外のESRB/PEGIレーティングの場合、音楽の歌詞も審査の対象にされるからである。同様の理由で日本ではCERO:Aの音楽ゲーム「Lanota」はアメリカでは17歳以上対象であるESRB:Mに指定されている。