サムライソード
【さむらいそーど】
ジャンル
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アドベンチャー
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対応機種
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ファミリーコンピュータ ディスクシステム
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発売・開発元
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カプコン
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発売日 ()は書換開始日
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1988年11月15日(1988年12月23日)
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プレイ人数
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1人
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定価
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3,300円
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判定
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良作
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ポイント
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RPGのような世界観のファンタジー系アドベンチャー カプコンとしては非常に珍しいテキストアドベンチャー バトル仕立てでムダのない展開のストーリー
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概要
1988年カプコンによって発売されたテキストアドベンチャー。カプコンのディスクソフト第3弾でもある。
アドベンチャーなのでコマンド選択型だが、推理系ではなく当時のRPGの花形であるファンタジー系なストーリーになっている。
また、単なるファンタジーにとどまらず機械科学の一面もあり、このような科学と魔法の複合した世界観はゲームでは珍しいものだった。
当時の『魔界村』『ロックマン』をはじめ現在でもアクションゲームメーカーが色濃く、その後もRPG全盛期が続いた中でRPGにほとんど手を出さず『ストリートファイターシリーズ』のように、アクションゲーム主体のスタイルを貫いて人気を築き上げたカプコンとしては異色の作品と言えるだろう。
ストーリー
遠い昔か、はるか未来かもさだかではない時代、巨大な力で世界を闇に包もうと企む暗黒の司祭ソロンが世界を恐怖に陥れた。
闇の力に対抗した光の魔法使いたちも次々に敗れ、今やわずかに生き残る者のみという絶望な中で、ソロンに戦いを挑む一人の若者(主人公)が立ち上がった。
だが、ソロンの圧倒的な闇の力に敵うはずもなく、一方的にやられるばかりで死は目前であった。
そんな中で、謎の声を聞くこととなる。その声の主の力によりソロンの魔手から逃れられた若者は、見知らぬ森の中で目を覚ますことになる。
その声に導かれるように、やがて光の魔法使いの少女サリアと出会い、伝説の剣サムライソードのことを知ることになる。
そして再びソロンと戦うべく彼の旅が始まった。
特徴
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コマンド選択型アドベンチャーだが、このジャンルに多い推理ものではなく、RPGで使われるようなコマンドが併用されている。
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具体的には「移動」「見る」「調べる」「話す」「渡す」「使う」だけでなく「戦う」「逃げる」なども含まれる。
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他に本作独特なものとして「サリア」というものがあり、彼女が同行している時に実行し、彼女が得意とする魔法などを使わせたりできる。
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魔法の種類。
キアーラ(発光)
スウロリ(鈍化)
ライトボルト(稲妻)
スライパ(催眠)
ウインダ(風)
リライ(目覚め)
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判断を間違えるとバッドエンドとなる。
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冒険の最中で幾たびとなく現れるモンスターとの戦いがある。
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ストーリーに関しては完全に一本道のストーリーである。
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とはいえ、後述の通り非常に見ごたえのあるストーリーでBGM、グラフィックとも秀逸なのでそこが見どころではある。
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また上記の通り、1つ判断を間違えるとバッドエンドの危険を孕んでいるスリリングな展開が繰り返される。
評価点
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ストーリーそのものはかなり短めになっているが急展開の繰り返し。
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ストーリー自体は全4章構成だが急展開が続き、このようなアドベンチャーにありがちなダラダラするポイントがあまりない。
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また、時折発生するバトルも、やみくもに戦うだけではなくアドベンチャーとして細かい判断が要求されるのもRPGとは違った面白さ。
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各章の舞台も変化に富んでいる。
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コマンド自体もそこまで多くないので迷った時の総当りでも、そこまで煩わしさを感じにくい。また、メッセージ早送りも可能。
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このようなコマンド型アドベンチャーでありがちなコマンドを不要に繰り返してしまった場合などに、早送りすることができるのでムダなコマンドを実行してしまった場合のイライラを緩和できる。
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そもそもメッセージ自体も比較的速い。
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キャラクターの性格がそれぞれ短い中でも細かく表現されている。
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主人公は元々ソロンを倒すことを目指していたこともあり、気持ちのブレを感じさせない頑強な意思を感じられる。
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光の魔法使いでありながら、根は純粋な年ごろの少女のような気まぐれなサリア。
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グラフィックウィンドウのアクションも多く、演出も割と細かい。
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このようなゲームではテキスト主体になりがちで、最低限の動きしか見せないのが多いが本作では細かいことでもグラフィックの変化が多い。
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BGMも雰囲気にマッチしており、曲数も多く、場面場面で適したものが細かく割り振られている。
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ディスクシステムということもあり拡張音源を巧みに生かしている。
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使い回しているのはバトル時のBGMぐらいなので、作り込みが感じられる。
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秀逸なグラフィック。
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主人公やサリアの顔グラフィックが秀逸。
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コマンドウィンドウ下に出るのだが、どちらも劇画調で非常に本格的。
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グラフィックウインドウでのモンスターもその迫力は充分に感じられる。
問題点
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バッドエンドに絡む部分でもノーヒントな部分が多い。
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評価点と一部被るがバッドエンドの大部分はバトルに集約されており、今が戦うべき時なのかを判断しなければならず、それに関してはノーヒント。
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戦闘以外でノーヒントのバッドエンドは最終章のみだが、ここでも1つの選択ミスや判断の遅れがバッドエンドに繋がることが多い。
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しかも、再開ポイントが章のはじめかセーブしたポイントのみ。そのため最終章は多少なりとも保険的にセーブをしておかないと戻りが大きくなり同じポイントを何度もやり直すハメになる。
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またサリア呪文の効果に関しても、使ってみなければ効果がわからない。
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「見る」と「調べる」が線引きが曖昧。
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実際には「見る」は目に見た状況を伝え、「調べる」は気配などを感じたり手に取ったりするというニュアンスだが、このようなアドベンチャーの王道である推理系では同等に見られがちなので紛らわしい部分ではある。
総評
ストーリーはディスクカードの容量のせいもあって短めだが非常に見せ場が多く、RPGのような世界観の物語をアドベンチャーで体感できるのは非常に斬新なモノであった。
今では珍しくないが、剣や魔法で戦うファンタジーにSFの要素が融合し、当時としては非常に真新しい世界観を作り出しており、そういう意味での世界観の新鮮さも評価できる点ではある。
また常にバッドエンドの危険を孕んだバトル1つ取ってもその局面局面で同じ手が通用しないスリリングな展開が作り出されており、ストーリーの短さをゲーム的な要素で補えている。
RPGの世界観を物語化したファンタジー小説や漫画などが好きな人などは特に必見の1作と言えるだろう。
余談
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音楽を担当したのは後に『ストリートファイターII』等を手掛ける下村陽子氏。本作がゲームソフトにおける彼女のデビュー作である。
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なお、ゲームソフト以外ではメダルゲーム『ハイスクールカンちゃん』のBGMがカプコンでの初仕事となっている。
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いきなり敵になすすべなく殺されて始まる展開は1ヶ月後に発売された『ファイナルファンタジーII』が有名だが、本作はそれよりも先んじている(ザコかラスボスかの違いはあるが)。
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にもかかわらず、それが語られることはほとんどない。メーカーもカプコンという一流メーカーだというのに不憫な話である。
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本作はカプコンのディスクカードとしては最終作となった。
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結果的にカプコンのディスクソフトはわずか3本に終わった。
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カプコンは元々ディスクシステムは保険的な位置付けとしてカセットリリースを本道としていたことや、翌年にはディスクシステムの衰退が一層顕著化したこともあって撤退したのも無理もない話。
最終更新:2024年05月17日 22:05