パチパラ14 ~風と雲とスーパー海IN沖縄~

【ぱちぱらふぉーてぃーん かぜとくもとすーぱーうみいんおきなわ】

ジャンル ギャンブラーRPG+パチンコシミュレーター
対応機種 プレイステーション2
発売元 アイレムソフトウェアエンジニアリング
発売日 2007年7月26日
定価 4,800円(税抜)
レーティング CERO:C(15才以上対象)
判定 バカゲー
ポイント ギャンブラーRPG正統続編
自由度が増強
鬱展開も増強
パチパラシリーズ


概要

アイレムソフトウェアエンジニアリングと企業提携しているパチンコメーカー三洋物産のパチンコシリーズのナンバリング14作目。
『スーパー海物語 IN沖縄』と、前作に続いて登場のギャンブラーRPG第二弾『パチプロ風雲録6~情熱編~』を収録している。

前作『パチパラ13 ~スーパー海とパチプロ風雲録~』では旧作から飛躍的に進化した『パチプロ風雲録5~青春編~』で話題になったが、
本作はその路線を引き継ぎ、前作の長所を継承しつつ改良を加えた正統続編となっている。


ゲームモード

  • 「スーパー海 IN沖縄」
    • 提携先である三洋の機種をリアルに再現したお馴染みの通常モード。今回は「CRスーパー海物語 IN沖縄」であり、クギや台の寝かせなども調整しながら打つ事が可能なのも従来と同様。
  • 「風雲録」
    • シリーズの目玉のストーリーモード「パチプロ風雲録」の6作目*1であり、前作で打ち出したジャンル「ギャンブラーRPG」の2作目。前作『風雲録5』から直接繋がる物語なので前作プレイ済みなら一層楽しめるが、メインストーリー自体は独立しているので未プレイでも大きな支障は無い。
  • 「液晶ビュー」
    • スーパー海物語IN沖縄の演出だけを抜き出して見られるパート。ホールでは滅多に拝めないレア演出も見られる。
  • 「お楽しみ」
    • パンフレットやデモムービーの閲覧のほか、風雲録で戦ったパチプロとのフリーバトルも可能。

ストーリー(風雲録6)

八原高校の卒業式…。
就職も進学も決まっていなかった主人公は同級生の頼みを切っ掛けにパチプロの世界へと足を踏み入れた。

あの一連の出来事から4年。

数多の勝負を重ね、現在では名の知れたパチプロとなった主人公は、とある大きなパチンコ勝負で八百長の濡れ衣を着せられる。
追っ手が迫る中、4年前からの付き合いである「リリー松嶋」は主人公を咄嗟に川に突き落とし、意識を失った主人公は懐かしの「塚内町」に流れ着く。
川岸で「三浦千夏」という女の子に助けられた彼(彼女)はひとまず千夏の所属する劇団に身を寄せる事になった。
しかし千夏はパチプロを嫌悪しているらしく、主人公は素性が開かせないまま彼女らと関わっていくが…。


パチプロ風雲録6~情熱編~

  • ストーリーは前作『風雲録5』のエンディングから4年後(エンディング後のフリーパートの2年後)。同じ地域を舞台に同じ主人公による新たな物語が紡がれる。
    • 主人公は前作から続投の男主人公「椎名銀次」か、お馴染みの女主人公「村瀬杏子」から選択する。名前は変更可能。
      • 初期の髪型や女主人公のバストが設定可能なのは同じだが、前作にあった心理テスト的な選択肢は無くなった。また、男主人公は初期から髭を生やす事が可能になった。
    • 両者とも前作と同一人物だが、勝負の世界で4年も生きてきたためか、若々しく生き生きとしていた前作に比べて、今作はかなり陰を帯びた印象に様変わりしている。でも本編中はあまり変わってない。
  • 清潔度や腹具合などのパラメーター管理、玉が現金、食事やパチンコや釣りで時間が進む、と言ったシステムは前作とほぼ同じ。前作の記事も参照されたし。
    • パチンコ勝負も、一対一の他に多人数戦の「バトルロイヤル」がある点も前作と同じである。
    • パチンコ台は甘デジ台*2が追加された。
  • パチプロ必殺技は前作までと同様だが、一部性能が変わっており、利便性の上がったものや逆に使い辛くなったものもある。
    • 中盤の主力だった「皇帝の心眼」は目押しが難しくなった上に入手時期も遅くなり、実用性が激減。序盤から有用な「開花の万力」も必要ゲージと効果時間が増えたが、ゲージに対して効果時間の増え方がイマイチなので総合的にパワーダウンした。
    • 一方、「燃える魂」はゲージ増加量が増え、「恵みの泉」も必要ゲージが減って使いやすくなった。
  • 季節が夏に変わった事で、セーブポイントはタンポポからヒマワリに変わった。よってセーブポイントではヒマワリの種が食べられる。

バカゲー要素/評価点

『パチプロ風雲録6』では、前作で好評だった特徴がほぼ全て受け継がれている。

  • 自由度の高さ、カスタマイズの幅、恋愛要素の豊富さはいずれも据え置き。
    • パチンコに没頭しても良し、釣りキチになっても良し、ファッションやグルメに走るも良し、恋に生きるも良し。ストーリーを進める以外の過ごし方はプレイヤー次第である。
    • 服装やインテリアなどのカスタマイズアイテムは前作のものはほぼ全て*3引き継がれている上に新規アイテムも追加されており、元々広かった幅が更に広がった。
      • 制服などは前作の冬服仕様から季節に合わせて夏服になっている。主人公は高校卒業から4年も経っているが、高校近くの洋品店で普通に学生服やセーラー服が買える。
      • 化粧や髭、立ち振る舞いのカスタマイズも前作同様。住居も勿論、弄り放題である。
  • 恋愛要素
    • 前作と同じく主人公の性別毎に多彩な恋愛対象キャラが登場する。やはり恋愛イベントもデートも作り込まれており、勿論、最後は同棲可能。
      • 屋外プールや夏祭りと言った季節に合わせた新デートスポットも登場する。どちらもストーリー上でも1回ずつ体験できる。
    • 合コンイベントも健在。誘ってくるのは前作同様に同期の吉川(宏or宏美)で、今作でもストーリー中は嫌味な奴なのに合コン時は急に気のいい友人となる。
    • 前作と舞台は同じだが、4年も経過している事もあって恋愛対象キャラは総入れ替えとなっている。
      • メインキャラのリリーや乾は今回も登場するが恋愛不可となっている。サブキャラは登場する場合もあるがいずれにせよ恋愛には発展しない。
      • 但し、前作ヒロインの桜子だけは恋愛対象キャラとして続投している*4。メインストーリーにこそ絡まないものの再び恋愛が可能であり、同棲もできる。前作ではED後まで合コンにも参加しなかったが、今作ではヒロインから降ろされたためか精神的・経済的余裕があるのか早々に参加する。
    • 今回の恋愛対象キャラは新ヒロインの千夏を始めとする劇団員達や、街で出会う新キャラが対象となる。
      • 今回も場合によっては同性との恋愛が可能。ヒロインの千夏は案の定両刀使いだが、前作の桜子同様クリア後まで交際できない*5
  • 主人公が男女選択制なのも同様且つ、今回も性別に応じた楽しみ方が用意されている。
    • 後述のように男主人公前提の空気こそ否めないが、ゲーム中ではしっかり男女で差別化が図られている。恋愛対象キャラは今回は女主人公の方が多い。
    • 前作のキャバクラに潜入するシーンでは、男主人公は客、女主人公はキャバ嬢として店に入っていたが、今作では逆にホストクラブに入るシーンがある。無論、男主人公はホスト、女主人公は客と、配役も前作の逆になっており、正反対の立場でイベントが楽しめる。
    • 序盤でヒロインに付けてもらう仮名も男女毎に3パターン存在し、本編中の呼び名もそれに応じて変わる凝りようである(勿論、ボイス付き)。
  • 前作の直接の続編であり、前作プレイヤーはニヤリとできる要素が多い
    • 舞台は前作と同じだが、ところどころ時の流れを感じさせる変化が存在する。また、春先だった前作から真夏に移ったことで季節の違いも感じられる。前作をやり込んだプレイヤーでも相応の新鮮さはあるだろう。
      • 主人公の母校である八原高校は夏休み中ということで校舎に入れなくなった*6が、新造されたプールと前作で入れなかった体育館は一般開放しているために出入りできる。夏休み中じゃなくても校舎に簡単に入れてはいけないような…。
    • 登場人物も何人か続投しており、メインキャラは勿論、サブキャラとの再会イベントも一部存在する。
  • やはりアイレム節全開のイベント
    • もはや言うまでも無いが、今回も選択肢がとにかく豊富。初対面のヒロインにいきなり抱きついたり(男主人公だと引っ叩かれる)、お礼も言わず「そんなことよりおなかがすいたよ」と宣えるのは当然として、恰好付けて颯爽と参上しておきながら情けなく周囲に助けを求めたり、怪我をしたヒロインをラブホテルや南の島に連れて行こうとするなど。これらは序盤のイベントだが、既にこの自由ぶりである。
    • 主人公が演劇に参加するシーンでは実際に台詞を選べる。正しい演技をするには台本を予め読んでいる必要がある。
      • …のだが、勿論ここでトンデモ演技を選ぶ事も可能。しかもどんなアホな演技をしても、他の劇団員がちゃんと話が繋がるようにアドリブで補ってくれる。
      • 貴族に屋敷を奪われた青年の話で、主人と引き離された馬を主人公が演じるのだが、「そっぽを向く」が正しいのに「貴族を蹴る」→貴族「何をする!この駄馬め!(迫真)」など、流石のプロ根性を見せつけられる。
    • 上述したホストクラブのイベントでも、男主人公なら樽酒を丸ごと飲まされる、女主人公なら泣き落としてホスト2人に男同士のキスさせるなど、これまたぶっ飛んだイベントが仕込まれている。
    • 前作での問題選択肢「ハイヒールで踏みつけてほしい」の選択肢&イベントも続投。前作と違ってCERO:Cなんですが…。
    • 前作のフリーパートで多くのプレイヤーを衝撃(笑撃)の渦に叩き込んだ次元戦闘機はなんと(超高額だが)本編クリア前から所持が可能になっている。
      • 前作では特注品だったが、今作では一般人がこの次元戦闘機を購入・所持が可能になっているらしい。どんな世界観だよ!
      • また、条件を満たすと開発可能なver.2は加速することによって(走行に影響は無いが)低空飛行が可能になっており、それで街中や高速道路をかっ飛ばす事もできる。どんな世(ry
      • 性能が悪かったからかイベントの関係か、残念ながら歩行自動車は無くなった。
  • ミニゲームも新規のものを含めて複数用意されている。
    • 前作の釣りに加え、高校野球に演劇と、新たな遊びが提供されている。
      • カーレースはごく僅かになったが、なんと今回は次元戦闘機同士のレースがある。
      • 釣りは魚も3Dモデルで作られており、釣り上げた際に画面一杯に映る演出が追加されている。
    • なんとパチンコゲームでありながら「チンチロリン」に「競馬」と、パチンコ以外のギャンブルも出来てしまう。
  • パチンコ関連の改善
    • 今回は珍しく説明書にパチンコの基本ルールが書かれている。知らない人でも問題無くプレイが始められるようになった。
    • 前作、前々作と違って風雲録中に実戦攻略に挑戦しても所持金(玉)が減らなくなった。玉は無限に借りられるので、稼ごうとして逆にすっからかんになってしまう現実のような事態にはならない。前作同様、必殺技も使用可能なので玉稼ぎの実戦攻略がやりやすくなり、無一文になって草や水で飢えをしのいだり、生活のためにひたすら釣った魚を卸す必要も無い。
    • 負けてもゲームオーバーにならない勝負が多いのは前作と同様だが、ラストバトルはすぐに中断された前作やラストバトルすら無かった前々作と異なり、『風雲録3』以来の正真正銘の実力勝負となっている。勿論、負ければゲームオーバー。
      • ラストバトルでは、主人公が大当たりを出す毎にラスボスが事件の動機や真相を語るという、パチンコ勝負とストーリーを上手くリンクさせた演出が用意されている。
    • 甘デジの登場により、通常とは違った戦略も求められるようになった。
      • 例えば任意で大当たりを出す必殺技は甘デジでは通常ほどの効果は望めない、逆に大当たりと組み合わせると効果的な必殺技は活用するチャンスが多い、など。
  • その他の改善
    • 前作のような高速道路を通らなければ行けないエリアは無くなり、クリアのために車購入の大金(玉)稼ぎ作業を強要されることはなくなった。
    • そうでなくとも、簡単なサブイベントをこなせば無料でバイクが入手可能。勿論、高速道路も利用可能になる。
      • 但し、主人公が更新を忘れていたため、前作で取った免許は失効してしまっている。乗るためにはまた改めて免許を取らなければならない。

賛否両論点

  • 更に高まった鬱要素
    • ストーリーは前作に以上に鬱要素がてんこ盛り。序盤こそ明るいエピソードが多いが、中盤のとあるイベントから一気に暗い話になっていく。
    • 劇団のお姉さん的存在である「望月沙弥香」は序盤でただ1人主人公の正体に気付くも、事情を察してそれまでと変わらず接してくれる。交際も男女問わず可能なのだが…。
      + ネタバレ
    • ストーリーが進むと何者かに殺害されてしまう。前作のように「サブイベントで死亡する恋愛対象キャラ」は存在しないが、今回はサブイベントどころかメインイベントにこのような展開が盛り込まれているのである。彼女と知り合う事も死に直面することも不可避。
      • よりによって、交際&同棲可能になるタイミングは彼女が殺される直前である*7。時期が短いという問題もあるが、逆に何も知らず恋愛イベントに夢中になって同棲に漕ぎ着けたプレイヤーは、ただでさえ大きいショックを何倍も強烈に喰らう羽目になる。
  • ヒロインの千夏も前作の桜子に劣らぬ不幸ぶり。下手をするとシリーズ最悪の薄幸ヒロインである。
    • 序盤では弟が大嫌いなパチプロになるという程度で、以降は主人公と一緒に夏祭りに行ったり、プールで泳いだり、アパートで飲み会をしたりと楽しい日々を過ごすのだが…。
+ ネタバレ
  • 沙弥香が殺害されたあと、その容疑者として逮捕されてしまう。千夏は沙弥香を姉のように慕っており、彼女と主人公の3人で楽しく飲み明かした矢先の出来事である。
    • そしてその後、沙弥香の死を悲しむ暇もなく連行され、住民達に「人殺し」と罵られつつ石を投げられる。
      • この際にかばう事は勿論可能だが、案の定というか、「一緒に石を投げる」という畜生選択肢が混ざるのもアイレムクオリティ。『絶体絶命都市4』の片鱗か。
    • 後に釈放されたのも束の間、次は弟の圭介が集団暴行で植物状態になる悲劇に見舞われる。そしてこの際に主人公の正体を知り、それまでとは一転して主人公を拒絶するようになる。
      • パチプロ嫌いという事で言い出せなかったのもあるが、主人公自身がヒロインを裏切り、失望させる結果となり、しばらくヒロインに罵られる展開が続くのも精神的に来る。
  • そしてラスボス戦の後、命の危機に晒された千夏を救うために主人公は駆け出す。スタッフロールが終わり、ラストシーンで千夏の元にたどり着くのだが…。
    + ネタバレ
    • 操作可能になったら千夏に駆け寄らないと、本当に千夏は殺されてしまう。最後の最後で「死」という最悪の不幸に見舞われてしまうのである。勿論、死亡してしまえばエンディング後の交際は不可能。
    • 千夏が死亡した場合、植物状態だった圭介が目を覚ます。女主人公なら彼と交際可能だが、男主人公ではメリットは皆無も同然。
      • 逆に言えば圭介が目を覚ますためには千夏が死ななければならない。千夏が生きて、圭介も目を覚ますような大団円は存在しない。
    • また、生存した場合でも一連の事件の所為で劇団は休業状態となり、いつか再び舞台に立つ日を夢見ながら、パン屋のバイトと演劇の稽古を続けつつ圭介の目覚めを待つ。という、どこか報われない結末となる。
      • ラストバトルを放棄して堅気に戻るエンディングは今回もあるが、そちらでも結局劇団は存続できない。事件を引き起こした黒幕との決着も有耶無耶に終わるので尚更スッキリせず終わってしまう。
  • 黒幕もその正体、事件を起こした背景、その末路と、やりきれないエピソードで埋め尽くされている。
    • 前作の黒幕*8に比べてもかなりの外道行為を行なっているため同情するには非があり過ぎるが、彼が悪に堕ちてしまったのも様々な不幸が重なった結果であり、打ち倒すカタルシスよりも虚しさが大きい。
      • 元々は善良な人間だったのだが、ある悪党の所為で両親を失い、更にその後も不幸が重なり、肉親のためにやむなくパチプロの世界に足を踏み入れたという背景を持つ。この時点でもまだ悪人ではなかったのだが、ストーリー中にある事実を知ったことと、その際に犯した罪によって後に引けなくなり、どんどん悪に堕ちていく。しかし元凶の悪党は既に故人のため、報いを受けることは無い。
      • 最期は必ず生死不明で終わり、前作の黒幕のように選択次第で警察に出頭させることもできない。
    • 前作の悪役の1人で報いを受けないままだった藤原は、最後は黒幕に道連れにされて炎の中に消えていく。前作ではヒロインの実家を奪い取った挙句放火まで行い、今作でもまた下衆ぶりを見せつけるので、これに関しては溜飲の下がる点である。
  • 本編だけではなくサブイベントも暗いものが幾つかあり、しかも前作に関わるものばかりである。
    • 前作に登場した長谷部商事の買収を防ぐイベントが存在するのだが、防いだところで依頼人は逮捕されて謝礼の約束は反故にされ、買収された方が良かった空気が漂う。かと言ってスルーすると外国のトンデモ企業*9に買収される。どっちに転んでもスッキリしないという現実主義…というよりアイレム主義全開のイベントとなっている。
      • 挙句、買収阻止のためにはパチンコ勝負を数回こなさなければならない面倒な条件がある。その結果がこれではあまりに苦労が報われない。
    • 前作で船で暮らしていた親子は今作でようやく父親が戻ってきたのだが、家族は既に離散して船を離れており*10、無人の船で父親が家族の行方を案じている。
      • その後、イベントを進めると家族を再会させることができるのだが、主人公がその息子のスリの被害に何度も遭っていたということで父親は責任を取ろうとし、何を血迷ったのかその後は親子揃って下水道で暮らし始める。スリの常習犯だった息子はともかく、善良に暮らしていた母親と娘は不憫でならない。
    • 前作で恋愛対象キャラの兄妹が営み、主人公が援助することもできた養護施設は廃屋と化している。住人も、運営していた兄妹の兄の方が僅かに登場するのみ。
      • 余談だが、後の『絶体絶命都市4Plus -Summer Memories-』では同じく若い兄妹が営む養護施設が露骨に酷い扱いを受ける展開がある*11。スタッフは養護施設に恨みでもあるのだろうか。
    • また、序盤から度々訪れる劇団の練習場は、前作で火事に見舞われ、主人公の行動次第で再建できた養鶏場のあった建物である。当然のように再建などされておらず、経営者の青年ももちろん行方知れずのまま。
  • 前二作より男主人公前提の雰囲気が漂い、女主人公だと一部違和感が生じている
    • ゲーム外(説明書、パッケージ裏、公式サイトなど)のプロローグが男主人公として書かれていたり、OPムービーは男性役者が川に転落して水死体のように流れていく実写映像だったり、パッケージ裏の集合絵やタイトル画面に男主人公しか描かれていなかったりと、男主人公前提のような雰囲気が前作、前々作より強まっている。
      • 前二作はプロローグでは性別が伏せられていたし、タイトル画面やパッケージ裏に女主人公も描かれていた。しかし今回はプロローグでは「椎名銀次」と断定されており、イラストも男主人公ばかりで女主人公の絵など登場人物紹介ぐらいにしか描かれていない。
    • OPの実写映像が男主人公ベースなのは前二作も同じだが、今作では主人公が突き落とされたシーンから繋がる形になっているため、違和感が強まっている。しかも今回は役者の「うわぁー!」という声も入っているので尚の事。
    • 主人公の性別に関わらずストーリー上の「ヒロイン」が存在するのはこの製作陣の作品では毎度のことだが、今回の千夏とのやり取りの一部は明らかに男主人公を意識しており、百合プレイ中でなければ女主人公だと違和感があるものがいくつか見受けられる。
      • また、冒頭で汚れたデフォルト服を洗濯する間、代わりの服を貸して貰えるのだが、それは千夏の弟である圭介が着ているものと同じアロハシャツで固定。つまり女主人公だと早々に男物を着せられる羽目になる。というか女物は無いのに何で同じアロハシャツは二着もあるのか。
    • それでも製作陣の後の作品に比べれば女性ならではのイベントや要素は沢山存在するので、ゲーム中の扱いが不遇という訳ではないのが救いと言えば救い。
  • 恋愛関連
    • 仕方ない話ではあるが、恋愛対象キャラが総入れ替えとなった関係上、前作での恋愛は続投の桜子を除いて全て白紙となっている。
      • 上述した通り、前作の恋愛対象キャラは登場しても恋愛は不可能で、中には「他の相手とくっついて町を去った」などという時の流れの無情さを思い知らされるケース*12すらもあり、前作で交際したキャラへの思い入れが深い人ほど喪失感が大きい。思い出として諦め、新たな恋に生きよう。
      • 再会イベントがあるキャラはまだ優遇されている方で、名前すら出ないモブと化しているキャラもいる。例えば旧シリーズからの唯一の再登場ヒロインだった「春日みさき」も本作ではただのおみくじ売りの巫女さん*13である。登場するだけマシとも言えるが…。
      • あるキャラに至っては詐欺師にモデルが流用されている。
    • 新規恋愛対象キャラの数も前作より少ない。前作は男女共通が5人、男のみが12人、女のみが11人。対して本作は男女共通が4人、男のみが5人、女のみが8人と、決して不足している訳では無いのだが、破格の多さだった前作よりも減っている。
      • 性別で分けると、前作は女性キャラ15人、男性キャラ13人。今作は女性キャラ9人、男性キャラ8人。前作の3分の2以下である。
      • 風雲録1』は3人。『風雲録2』は5人。『風雲録3』はそれまでの8人を含めて11人で全員女性。『風雲録4』は男女3人ずつの6人。つまり少ないどころかシリーズでは多い方であり、多過ぎた前作から適正な人数まで減らしたと捉えることもできる。しかし前作を知っているプレイヤーからすれば、相対的に少なく感じてしまうのもまた然り。
      • これらは交際するだけではなく、そこに至るまでの個別イベントも用意されている。つまり人数が減ったということは、単純にキャライベントが減ったという事でもある(イベント数自体が少なくなったという訳ではない)。
    • また、男女共通キャラ4人は全員女性であり、ガチホモもいなくなったので、女同士はできても男同士はできなくなった。ちなみにガチレズは今回もいない。
      • ただ、女性陣の中に1人「女と思いきや実は…」というキャラはいる。上述した男女比率も実は違う。
    • 前作では現役中高生から主人公の親ぐらいの大人までと、幅広い年齢層と交際可能だったが、今作は主人公(22~23歳)とさほど離れていないキャラが大半で前作よりも幅が狭まった。前作が広過ぎたとも言えるが。

問題点

  • パチンコ部分について
    • シリーズ全体の問題だが、やはり収録が一機だけなのはやはり寂しく、実機と違ってハンドルを固定してしまえるためプレイヤーは見ているだけの時間が多いのは今回も同じ。甘デジが追加されたとは言え、機種自体は同じなので飽きは割と早く来る。
    • バトルロイヤルの退屈さも変わっていない。しかも今回は早い時期から早速8人戦があり、これが終わらないと天釘町に行く事もできない。
  • 舞台はほぼ前作の流用
    • マップを一から作っていた前作、前々作に対し、本作は舞台が同じなので町の構造もほとんど一緒。4年の年月の経過を感じさせる小さな変化はあるものの、基本は前作のマップのマイナーチェンジである。前作プレイヤーは懐かしみながら変化を楽しむことはできるが、新鮮味自体は薄め。
    • 高速道路を使わないと行けなかった「山乃上旅館」はマップデータ自体が無くなっており、行く必要が無くなったどころか行くことができない。
      • 本作の新マップとして豪華客船「シルバームーン号」が登場するが行けるようになるのはラストバトル直前であり、しかも実際に探索できるのはエンディング後のみなので、ストーリー後半から行けた山乃上旅館と比べると楽しみは弱い。船上なのでマップ自体も狭め。
  • 歌も前作の使い回し
    • BGMやモデルの多くが前作から流用されているが、主題歌も前作に続いて使用されている。オープニングムービーもスタッフロールも前作と同じ「花」が流れ、新規の歌は無い。
    • 曲の良さは言わずもがなではあるが、代わり映えしないと言えばそれまでである。また、「花」は今回のストーリー的にも流れるシチュエーションを見ても前作ほど合っているとは言い難い。
      • 初々しさの残る少年少女の成長を描く「青春編」であった前作に対し、厳しい世界を生き抜いてきた勝負師の物語である「情熱編」の本作ではこの「花」の優しいメロディはややミスマッチ感があり、強引に使い回している印象が否めない。
      • オープニングからして、前作では卒業シーズンの雰囲気で制服姿の少年が歩く様子だったので「花」によくマッチしていたのだが、今回は同じ曲の中を上述した土左衛門映像が流れるというシュールなもので、ほとんどギャグになってしまっている。
    • 前作にもあった「合コンで同期の吉川ばかり持て囃され、パチプロの自分は惨めさに苛まれる」というイベントがほぼそのまま*14あるのだが、前作では別の挿入歌が流れたのに対し、今作で流れるのはいつもの「花」でシーンにもいまいち合っていない。いくら曲が良くても乱用されてはネタっぽさが出てしまうというものである。
  • 演劇システムは公式サイトやパッケ裏で「新システム」と紹介されている割に僅か2回しか無い
    • メインストーリー中に発生するイベントのみであり、しかもかなり早い段階で終わってしまう。勿論、サブイベントで演じる事も無い。内容が面白いだけに、もう少し数が欲しかった所である。
    • また、正しい演技をしたところで拍手を受けて劇団員から褒められるだけでメリットは無く、変な演技だと逆にブーイングを浴びて劇団員に苦言を呈されるだけでこれまたデメリットは無い。
      • やるべき事をやっても見返りが無く、失敗したりふざけても損をしないのでは真面目にやることの意義が無くなってしまっている。自由度を重視した、好きに遊べる、とも言えるがやはり新要素としてはそっけない。
  • DQN野郎・三浦圭介
    • 千夏の弟の圭介はとにかく態度が不快で、見ている人を苛立たせる。立場も弁えず幼稚な身勝手を繰り返し、姉や周囲の人間に散々迷惑を掛けた挙句に劇団を飛び出して悪趣味な恰好のパチプロになる。その後は前作にも登場した「ヤス」を負かすなどで更に態度がでかくなるのでプレイヤーの苛立ちも膨れ上がる。その分、後のパチンコ勝負で思い切りボコボコにしてやれる訳だが。
    • 「劇団に所属しているが演劇に興味は無く、亡き父のようなパチプロに憧れている」という設定だが、まず劇団に入ったのは高校卒業後の進路が決まらなかったからであり、到底でかい態度を取れる立場ではない。そして憧れている父は実はやり口が汚く、家族にも苦労を掛けていた悪辣なパチプロで千夏のパチプロ嫌いの原因なのだが、圭介は幼かったために父の本当の姿を知らず幻想を抱き続けている(姉が父の所為でパチプロ嫌いだとはしっかり認識している)というのが本当の所である。
      • そのパチプロに憧れる理由も「(パチンコの腕ひとつで生きていく事が)なんかカッコいいから」というだけ。
    • 序盤で無責任に大金を賭けてパチプロとの勝負に応じて負けた挙句に「どうせ払えねえし、土下座までしてるんだから十分だろ」などと甘ったれたことを平然と宣う。しかも自分の為に必死に頭を下げて庇った結果、足を痛めてしまった千夏に「姉ちゃんもバカだな」と言い放つ。DQNここに極まれりである。
      • そして、いくら演劇に興味が無かったとはいえ、公演寸前に捨て台詞と共に飛び出していくという自分勝手ぶりで、作中でも「非常識」「なんてヤツだ」と言われる。この様子では進路が決まらなかったのも大いに納得できる。
    • 登場早々このような傍若無人ぶりを見せつけるのだが、上述した通りその直前には圭介と同じアロハシャツを着せられる。これらのイベントの多くを当事者とおそろいの格好の状態で見せられるので一刻も早く着替えたくなること請け合いである。
    • 一応、後に千夏と話し合う意思は見せたり、姉が危機に陥った際には必死に助けようとするなど全く救いのないクズではなく、終盤以降は自身もひたすら災難と不幸に見舞われ、どのエンディングでも結局幸せにはなれない。しかし全体的な態度が悪過ぎるので印象を覆せるほどとは言い難い。
    • あるシーンでは「自分が一流のパチプロを蹴散らせば師匠の潔白の証明になる」という両者の関連性が微塵も無い、全く意味不明な理論を展開する。パチンコ脳も過ぎるのではないか。
  • クリア後のフリーパートがやや地味
    • 新たなパチプロと対戦したり大掛かりなイベントが用意されていたりはするが、前作ほどインパクトのあるイベントは無く、少々地味になった印象が否めない。前作がぶっ飛び過ぎていたとも言えるが。
    • ヒロインの千夏ともあるエンディングを除いてクリア後は無条件に交際可能。その為の特別なイベントは無く、やり取りもかなりあっさり済まされる。むしろ、本筋に関わるとある恋愛対象キャラの方がクリア後のイベントが充実している。
      • 前作ヒロインの桜子はエンディング後に衝撃(笑撃)の個別イベントでド肝を抜いてくれたが、今作の千夏にそう言った要素は無い。逆に桜子はそのイベントの続きがあるので今作もインパクトは強い。
    • 前作の神谷のような、上位ランカー達に勝って初めて挑戦権が得られる最強のパチプロも存在しないので、クリア後の目標も抱きにくい。
      • 前作でランキング2位だった乾が今作では1位となっているが、神谷と違って本編を進めれば普通に対戦可能になる。それどころか2位の銀玉の狼(旧三部作の主人公)共々、本編中のバトルロイヤルで普通に勝つ事もできる。

総評

前作で確立したパチプロRPGとしての自由度の高さを更に発展させた続編。
反面、鬱要素が更に増大したことで前作以上に「やりきれなさ」「無念さ」*15の漂うストーリーとなっており、短所もいくつか残っている。
そのため人を選ぶ部分が前作より強まった面は否めず、軽々しく誰にでも勧められる作品とは言い難いが、
前作の長所はそのまま受け継いでいるため、本作もまたぶっ飛んだ自由度で大いに遊べるパチンコシミュレーターである事は確かである。
前作が気に入ったプレイヤーなら間違いなく楽しめるだろう。


余談

  • ハードをPS3に移した『パチパラ15』以降は風雲録は収録されていない。前作が「春」、今作が「夏」の物語であったために「秋」「冬」の物語を待ち望んでいたユーザーもいたのだが……*16
    • ニンテンドー3DSにハードを移してからは恋愛要素に特化した外伝『らぶ・エクスチェンジ』やその世界観を受け継いだ『パチプロ風雲録・花』シリーズとして一応の復活を果たしたが、旧6作の主要スタッフは『絶体絶命都市4』や『バンピートロット2』の発売中止と言った経緯を経て既にアイレムを退社しており、全く別の作品と化している。
    • 『花』のタイトル通り新ヒロインを主役に据えているが、プレイヤーがヒロインを教育する内容だったり、逆にヒロイン自身を主人公にして逃亡ものやデスゲームものをやるなど、作風が一定していない。
    • そもそもジャンルがアドベンチャーに変更され、旧シリーズの要素はほぼ廃されてしまった。
    • 『花』シリーズ第三弾『パチプロ風雲録・花 ~孤島の勝負師たち~』が収録された『パチパラ3D デラックス海物語』以降、パチパラシリーズの新作も出ていない。
  • 本作に登場する刑事の「秋本」は『絶体絶命都市2 -凍てついた記憶たち-』からのゲスト出演である。
    • ヒロインに殺人容疑を掛けて逮捕する役目もそのままだが、行動が狂気を帯びていたあちらに比べてかなりまともな人物になっている。
  • 上述した通り、本作は男主人公前提の空気が漂っているが、アイレム公式サイトで連載していた「ふるさと4コマ小唄」の前作・今作のパロディネタでは女主人公が登場していた(その1その2その3)。担当者もせめてこちらで目立たせたいと思ったのだろうか。
    • 別人が担当した前作ネタでも女主人公が描かれている。スタッフ内で人気が無かった訳ではない模様。

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最終更新:2022年09月28日 23:14

*1 『三洋パチンコパラダイス10』収録の「外伝」を含めると7作目。

*2 大当たりが出やすい代わりに、大当たり時に獲得できる出玉が少ない。

*3 イラストでの衣装である「普段着」は今作のものに変わっているため、前作のイラストの姿にはなれなくなった。

*4 容姿は変わっていないが私服は一見同じに見えて半袖になっている。地味に他のキャラには無い変更点である。

*5 ちなみに好みの性格は「情熱」。流石に「鬼畜」好きのドMヒロインが連続することはなかった。

*6 日数が進んでも夏休みが終わるという事は無い。

*7 最速で電話番号を入手すれば若干の期間が確保されるが、特定の時期に任意で劇団に戻って沙弥香と会話しなければならないため、気付かずストーリーを進めてしまう可能性も高い。

*8 確かに様々な事件を起こしたが、意図したものではなかったり、復讐相手以外は手を掛けていなかったりと、今作ほどの悪逆さは無い。

*9 買収阻止した場合は「紳士的だった」と語られるが、買収された場合は"英会話が出来ない社員を全員クビにする"という暴挙を働く。どこが紳士的なのか。

*10 本作での理由は定かではないが、前作ではこの親子のイベントを進めると、船を買い取ったりパチンコ勝負の担保にするなどで、’’主人公が’’親子を追い出す結末になっていた。

*11 妹の方は名前まで同じ。

*12 前作では八原町のレストランに主人公の同期の少女とコック見習いの青年が居り、男女それぞれの主人公で交際可能だったが、本作ではこの2人がくっついた事になっている。

*13 父親の方はパチプロだった事もあってサブストーリーに関わってくるが、みさきは名前すら出ない。

*14 吉川がカモにされていたというオチまでそのまま。

*15 これらは九条Pが当時「描きたい」と言っていたテーマである。

*16 前々作も「夏」で、それ以前は特に季節設定は無かった。他の九条作品まで広げれば、『絶体絶命都市2』と開発中止になった『バンピートロット2』は「冬」の物語だが他は大抵「春」か「夏」であり、「秋」は基本的に無い…。