お絵かきを飼うソフト CahiEr 飼い絵 水そうバージョン

【おえかきをかうそふと かいえ すいそうばーじょん】

ジャンル お絵かき飼育ソフト
対応機種 ニンテンドー3DS
発売・開発元
発売日 2016年9月28日
定価 500円(税込)
プレイ人数 1人
レーティング CERO: 教育・データベース
判定 クソゲー
ポイント 機能不足なお絵描きとエサやりだけの飼育要素
そして理不尽極まりないコイン周りの仕様
アイデア次第で楽しめなくはないが…


概要

医療現場やデイサービスで使われる医療用ゲームソフトを中心に開発していた札幌の小規模ゲーム会社、株式会社想(そう)の一般向け自社パブリッシングソフト第一弾。
自分で描いたイラストをペットにして飼育できるという触れ込みで、概要だけ聞くと『ラクガキ王国』や『クリエイトーイ』に代表される自分でキャラクターを描いて楽しむことのできるソフトのように思われるが…。


特徴及び問題点

  • 本作では最初から所持しているスケッチブックに「さかな」を描いて上画面の「水そう」に入れることができる他、ゲーム内コインで対応する追加のスケッチブックを購入することで「はいけい」「小さなさかな」と大小の「おきもの」を描いて水そうに配置したり、写真背景用アルバムを購入すれば3DS本体のカメラで撮影した写真も背景に設定できるようになる。
    • しかし本作はスケッチブックを使って絵を描くこと、描いた絵を管理すること、描いたさかなを飼育すること全てに大小さまざまな問題をはらんでいる

絵を描くときの問題点

  • 下画面に大小2種類の太さがある15色のペンと消しゴムを使って絵を描き、選んだスケッチブックに絵を保存することですいそうに配置することができるようになる。
    • まず、ペンの太さがこの2種類固定なのがかなり辛い。細い方のペンも約5ドットほどの太さがあり、消しゴムの太さも同様のため、繊細な表現をしようとすると困難が伴う。
    • 太いペンはクレヨンのためかすれた質感があるが、細い方のペンで描いている時にも1ドットほどの欠けが発生する。手書きのかすれを表現したかったのだろうが、塗りつぶす際に不自然に欠けているようにしか見えない。
  • あくまで手描き感を重視したかったのだろうが、取り消しややり直し、塗りつぶしツール、全消去、レイヤー機能といった今日のデジタルペイントソフトに備わっていて当たり前の機能が備わっていない。
    • 同じように手描き感を重視して取り消しなど便利な機能を意図的に非搭載にしたペイントソフトに『絵心教室』シリーズなどがあるが、あちらは多彩な画材が備わっているのに対して本作は大小15色のペンだけで表現しなくてはならない。
  • さかなは向かって左を頭にして進むのだが、その説明がゲーム中のどこにもないため、誤って尻尾から進み、頭からコインを生む魚を描いてしまう可能性がある。
    • さかなの見本が1つ用意されているのでそれを見て描けばいいのだが、見本はさかな、大きなおきもの、背景にそれぞれ一種類しか用意されていない。つまり小さなさかなと小さなおきものには見本が存在しない。この見本自体もゲーム中では絶対に実現できない細い線やグラデーション表現などを使っているのも腹立たしいところ(上の画像のやたらリアルな魚がそれである)。
  • 透過されるキャンバスの背景色と描画色の白の見分けがつかない。
    • かの名作『マリオペイント』でも透明色と白の見分けがしにくいという問題を抱えていたが、本作ではその比ではなく、「微妙に明るさが違う白」レベルのため、見分けるのは非常に困難。
    • 背景との組み合わせによっては非常に不恰好なことになってしまうため、かなり厄介な問題。対策として、あらかじめ白以外の適当な色でキャンバスを塗りつぶしておき、後で消しゴムで消せばいいのだが、やはり細かい部分を消すのは消しゴムの太さ上困難である。

絵の挙動及び管理の問題点

  • 苦労して描いたさかなだが、現実の魚らしい動きはしない。通常サイズのさかなは左右移動を繰り返し、たまにほんの少しだけ上下に動く程度。
    • 一度に上下に動く範囲は狭いためじっくり観察しないと左右移動を繰り返しているだけに見える。また、エサを食べに行く時以外斜め移動等は一切しない。エサを食べたあとは元の位置に戻る。
    • 小さなさかなは大きく上下や斜め移動もするのでまだ元気そうに見えるが、スケッチブックの説明によると「むれになる小さなさかな」という触れ込みなのにたくさん入れても魚群らしい行動は一切せず、バラバラに泳いでいる。
    • 長時間放置していると、今度はさかなが上に行きすぎて画面外に出てしまうバグが発生する。エサをあげれば画面内に戻ってくるが、食べ終わるとまた画面外に行ってしまう上、この状態でコインを産むとコインが水そうの底まで到達せず引っかかるという別の問題も発生する。
  • さらにさかな、おきもの、イラスト背景に共通する仕様として、透過処理やアンチエイリアスがうまく行っていないのか、イラストの外周に 緑色のフチ がついたような状態になる。
    • 前述の「画面全体を適当な色で塗りつぶした後に、外周の透過したい部分を消しゴムで消す」という方法を取ることで緑色のフチはつかなくなる。
  • おきものを配置できる位置は大小それぞれ固定。拡大されるため、多少ぼやけて緑色のフチがかなり目立つ状態になる。
    • 背景もさかなと共通のサイズのキャンバスを使っているイラスト背景はもちろん、写真背景も3DSのカメラ本来の画質より遥かにぼやけた低画質になってしまう上に、イラスト背景で透過している箇所があるとやはり緑色のフチがつく。
  • さかなは種類ごとにワンボタンで全て水そうから取り出すことができるが、逆に言えば1匹ずつ水そうから出す、ということはできない。さかなの数を少し減らしたい、という時にも一旦全て出してからもう一度1匹ずつ入れる、という操作を強いられる。
  • はいけいとおきものはすでに入っている同種のものを一旦出さないと別のものに変えられないのだが、イラスト背景から写真背景に変えたい場合、わざわざイラスト背景の設定画面で今入っている背景を取り出してから写真背景の設定画面に行き、写真背景を入れる必要がある。逆もまた然り。
    • つまり、はいけい用スケッチブックがないとデフォルトのイラスト背景を取り出せないので、先にはいけい用カメラアルバムを購入してもイラストはいけい用スケッチブックとがないと背景を変えることができないという罠が潜んでいる。

餌やり、コイン、ショップの問題点

  • 描いて水そうに入れたさかなに「コイン」を使って買える「エサ」をあげることでさかながお礼にコインを産んでくれる。そのコインを使ってさらにエサや追加のスケッチブックを買うことができるのだが、これが本作最大の問題点と言っていいほど理不尽な仕様による問題を抱えている。
  • エサを食べたさかなは、基本1度に3枚までコインを産んでくれる。さかなのお腹がいっぱいだとふつうのエサを食べてくれないため、しばらく待つ必要がある。
    • コインは必ずしも3枚産んでくれるというわけではなく、2枚や1枚しか産まないことや、そもそもエサを食べたのにコインを1枚も産まないということも起こり得る。
    • たまにさかなのお腹の空き具合に関わらずさかながエサをスルーすることがある。もう一度エサをあげれば食べてくれることが多いのだが、高いエサをあげると損しがちな原因になっている。
  • 産まれたコインはエサやり画面で水そうに登場する小型の潜水艦を操作して触れることで回収する必要があるのだが、この潜水艦の操作性が劣悪。
    • 操作はタッチパネルに表示されるボタンのみで行えるが、「左右のボタンを押すと停止ボタンを押すか画面端に到達するまで左右移動」「上下に動かせるレバー操作で上下移動」という統一感の無さに加え、潜水艦の左右スピードは早く、上下スピードは遅いため、慣れないうちは狙った場所に移動させることすら困難である。そもそもメニュー画面はボタン操作に対応しているのに、潜水艦の操作はタッチ操作を強要するのも理解に苦しむ。
      • というか、上述のコインが途中で引っ掛かるバグ発生時を除きコインは水そうの底に(一瞬)貯まるので、1番下に留まって左右移動でコインを回収した方が効率的、というか後述のコインの仕様上こうしない限り全回収は難しい。つまり、上下移動させる必要性がない。
    • この劣悪な操作性だけならまだしも、水そうの底に落ちたコインは 素早く回収しないとすぐに消えてしまう という嫌がらせのような仕様を搭載。この二つが相まって、慣れないうちはコインを稼ぐどころかエサ代のコインも回収できず損してしまいやすい。
      • どれくらい猶予が短いかと言うと、潜水艦が水そうの右端にある場合、左端に落ちたコインを回収しようと大急ぎで左に移動しても間に合わないレベル。さかながなかなかコインを産まない時は潜水艦を画面端ではなく中央で待機させることをお勧めする。
      • 加えて潜水艦を進行中の方向とは逆に進ませようとすると、いちいちその場で停止してから方向転換するため、余計コインの消失に間に合わなくなってしまいがち。
      • 上記の仕様が相まって、左右のさかなが同時にコインを産み落とした場合、片方は諦めなくてはならないという状況も起こる。
      • さかながコインを産むタイミングもバラバラであり、もう産まなくなった、と思い餌やり画面から出たら忘れた頃にコインを産み、急いで回収しようとエサやり画面に入っても潜水艦が登場する演出とコイン回収の猶予の短さのせいで回収できずに消えてしまう、ということも頻発する。
  • 溜まったコインではさかなのエサや補助アイテム、各10コインのスケッチブックを買うことができるのだが、スケッチブック以外のアイテム4種のうち、2種が損をする可能性が高い地雷アイテム
    • ふつうのエサ」…1コイン。さかなのお腹が空いている時に食べてくれるエサ。エサは基本的にこれで十分である。
    • おいしいエサ」…3コイン。さかなのお腹が空いていなくても食べてもらえる…はずのエサだが上述のエサスルーはこのエサでも発生する。また、おそうじバクテリアと組み合わせない限り1回の餌やりで回収できるコインは3枚が基本*1なので、損をしてしまいやすい。
    • 元気ドリンク」…3コイン。「さかなを元気にしてエサをよく食べるようにするドリンク」という触れ込みだが、これを使ってもエサスルー関係なくさかながエサを食べない場合も多い他、一度餌やり画面から出ると効果が消えてしまう、完全な地雷アイテム
    • おそうじバクテリア」…3コイン。水をきれいにしてコインを産みやすい水にする。一度使えば安いエサでも一度に6コインも稼ぐことが可能になる上、効果は餌やり画面を出てもしばらく持続するため、その費用対効果は大きい。効果時間中はおそうじバクテリアを使用できなくなるため無駄撃ちして損する心配もない。
      • こう書くと水質パラメータがあるように聞こえるが、水が濁ったりきれいになったりと見た目の変化は一切存在しない。
      • なお、ゲーム開始時に一度もエサをあげずにいきなりバクテリアを使うと、さかなが一切コインを産まなくなる、コインを生む場合も産むコインが増えなかったり効果時間内のはずなのにバクテリアをもう一度使えてしまうなど、効果が反映されなくなるバグが発生するので要注意。
    • 結局、おそうじバクテリアとふつうのエサ以外は買っても損をする可能性が高いため不要。
  • さかなのお腹の空き具合によってさかなの挙動が変化するわけでもなく、さかなの状態やパラメータを見られる画面などもない。一回エサをあげ終わったら、再びエサを食べてくれるようになるのをひたすら待つか、ソフトを再起動すればもう一度食べるようになるためいちいち再起動することになる。
  • エサをあげた後、アイテム使用以外の一切のタッチ、ボタン操作を受け付けなくなってしまうバグが存在する。
    • 詳細は不明だが、潜水艦を一度も左右に動かさずにエサをあげると高い頻度で発生する。こうなったらコイン回収のための潜水艦の操作もできないどころか、ソフトを終了するしかなくなってしまう。所持しているアイテムだけは無駄に使えるのがたちが悪い。
  • そして最大の問題点として、さかなからコインを回収し損ねたり先にスケッチブックを買ったりして エサとコインを使い果たした場合、すれちがい通信以外でコインを入手できる手段が完全になくなってしまう。
    • こうなると極めてマイナーな本作のすれちがい通信に頼るかデータを消さない限り二度と買い物もできなくなってしまう。詰みである。
      • ゲーム開始時に持っているのが「スケッチブックを1つ買えるだけのギリギリのコイン(10コイン)とふつうのエサ3個」というのも厳しいところ。「最初から買えるから」といきなりスケッチブックを買ってしまうとエサ3個でコインを増やせない限り詰むことになる。
    • 逆に苦労して合計50コイン稼いで全てのスケッチブックを購入したあとは、わざわざさかなにエサをあげてコインを稼ぐ目的を見出せなくなってしまう極端な作り。本作のさかなには寿命や健康といった飼育要素は存在しないため、コインがいらなければさかなにエサをあげる意味もないのである。
      • ソフトの再起動を駆使して最短でエサをあげ続け、かつ本作のバグや仕様を理解し回避して、コインをほぼ漏らさず回収できれば(絵を描く時間を除けば)2〜3時間で50コインは稼げるという、あまりにも底の浅いゲームでもある。もっとも、ネット上の攻略情報に乏しい本作で初見でそれらのバグを回避するのはほぼ不可能な上、本作で作品作りをする場合はスケッチブックを全て揃えることは通過点でしかないのだが…

その他の問題点

  • 起動するたびに「本体設定から本作の追加データを削除すると絵が全て消えてしまう」ということを警告するウィンドウが出るが、いちいちOKボタンを押さないと先に進まない。前述のバグのためにソフトを再起動しなくてはいけない機会が多い中でこれは煩わしい。
    • ちなみにわざわざこのように警告する理由はというと、本作ではコインやアイテムの所持数などのソフト側に記録されるセーブデータとは別に、絵のデータは追加データ*2としてセーブされるため。
      そのため、前述のようにコインを使い果たして詰んでしまった場合は追加データを消さずにソフトのセーブデータのみを消せば描いた絵はそのままでコインは初期状態に戻せるが、追加データは3DS本体機能のバックアップに対応していないため、追加データの削除には注意が必要。
  • すれちがい通信による「すれちがい展示室」も、本作のためにわざわざ貴重なすれちがい枠を割く意味が見出せないレベルで虚無感漂う作り。
    • すれちがいに成功すると1人につき1枚コインがもらえ、下画面の展示室にすれちがった人数に応じた棒人間がやってきて「きたよ〜」「きれいだね〜」といったソフト側で用意されている当たり障りのないコメントを発する、それだけ
    • 確かにコインを使い切ってしまった場合唯一のコイン入手手段となるが、飼いた絵や水そうを見せあったり絵を交換できたりといった機能がないどころか、すれちがった相手の名前すらわからない

評価点

  • アイデア次第で魚や水槽に囚われず、さまざまな使い方ができること。
    さかなが実物の魚らしい動きを一切しないことが逆に功を奏し、魚以外のキャラクターや物を描いてもそれほど動きに違和感がない。背景も自由に設定できるので、アイデア次第では「魚」や「水槽」に囚われない自由な発想を実現することができる。
    • 実際に、紹介動画中の例では蝶々やネズミなどをさかなとして描いている。ニンテンドーeショップのソフトの紹介文にも「さかなや水そうにこだわらず自由気ままに描きたしているうちに、「水そう」という枠を超える素敵な世界が作り出せるかもしれません。」という一文があるため、魚以外を描くという使い方は開発側も意識していたのだろう。
    • 単純に、自分で描いたオリジナルのキャラクターが画面で動くのはかわいいし楽しい。ゆったりとさかなが動いている様は見ていて癒される。
    • Miiverseでは「メモを書いて電子コルクボード代わりにする」「本作に対する怒りの言葉を書き水槽に浮かべる」といった遊び方も提案されており、アイデアや絵心があればそれなりに楽しむことはできる。
      • もっとも、更に凝ろうと新たなスケッチブックを買うためにコインを集めようとすると前述の理不尽仕様が襲いかかるのだが…

総評

作り手の技術力のなさと理不尽で理解に苦しむ仕様とバグの数々が牙をむく3DSダウンロードソフトの中でもワーストの部類に入るお絵描き飼育ソフト。
お絵かきソフトとしてもペット育成ゲームとしても機能不足で不十分どころか、コイン周りの仕様をはじめ少しテストプレイすればおかしいと気づくような仕様がそのままになっている、とんでもない問題作である。
しかし評価点に挙げた通り、絵心があればそれなりに楽しむことはできなくもないが、それにはスケッチブックや絵の管理、餌やりとコイン回収と全方位につきまとうさまざまな問題点を乗り越える必要があり、『セクレ』ほどではないが作品作りには非常に根気のいる一作でもある。
これら不便なUIや操作性も味と捉え、魚に囚われないアイデアや絵心を持ち、かつ収支を踏まえた計画的な買い物ができる方なら自分の絵を動かして楽しむことはできるかもしれない。


余談

  • タイトルに『水そうバージョン』と他のバージョンを出すかのようなバージョン名がつけられているが、本作の悪評が祟ってか、結局他のバージョンが発売されることはなかった。
  • 撮影した写真を使える都合上、Miiverseコミュニティは画面写真の貼り付けに対応していなかった。
    • このため、ただでさえ共有手段に乏しい本作で描いた作品を共有するためには外部SNSを頼るしかなくなってしまった。
  • 公式サイトによると、本作の収益の一部は動物愛護団体に寄付されるらしく、実際に発売後の2017年4月29日には「ソフト売上の一部 38,010円を、NPO法人へ寄付いたしました。」という一文が公式サイトに掲載された。
    • しかし、どこのどのようなNPO法人に寄付したのかという寄付先が一切書かれておらず、誠実さに欠けるという批判も一部では上がった。
      • 当Wikiの登録作でも、例えば『Aabs Animals』や『Fractured Minds』は寄付額に加え寄付先も公式サイトやSNS等で公表している。本作ではそのような公表はなかったため、批判が上がるのもやむなしだろう。
+ 公式紹介動画。1分32秒頃のチーズのおきものを見ると緑色のフチがついていることがわかりやすい。
最終更新:2025年03月30日 08:47
添付ファイル

*1 2枚以下しか産まない時もある上、潜水艦の仕様上必ずしも全部回収できるとは限らない点に注意。

*2 他のソフトでは主にすれちがい通信やいつの間に通信の保存用に用いられる、本体設定から管理できる追加データ。『モンスターハンターダブルクロス』のように、ゲーム進行のセーブデータそのものを追加データとして保存するゲームも一部存在する。