BONELAB

【ぼーんらぼ】

ジャンル VRFPS
対応機種 Windows (SteamVR, Oculus)
Meta Quest*1
対応VRヘッドセット Oculus Rift/Quest
Valve Index
発売・開発元 Stress Level Zero
発売日 2022年9月30日
備考 「The Game Awards 2022」
 BEST VR/AR ノミネート作品
定価 3,990円
プレイ人数 1人*2
レーティング IARC:16+ (16歳以上推奨)
判定 シリーズファンから不評
ポイント 発売前はVRゲーム最大の期待作
蓋を開ければVR業界最大のガッカリゲー
不親切で短く、出来の悪いキャンペーン
Stress Level Zeroシリーズ
Duck Season - BONEWORKS - BONELAB

概要

正式発表前は『Project 4』という名前で噂されていたStress Level Zeroの『BONEWORKS』の続編である第4作目。
世界観としては『Duck Season』、そして前作の『BONEWORKS』と共有していて、時系列としては『BONEWORKS』の続きにあたる。
元々はMeta社が高い評価を受けた『BONEWORKS』を見て、それに近いものをQuest 2にも出して欲しいというところから本作の開発は始まった。

Half-Life: Alyx』に双璧をなすほど極めて高い評価を受けた『BONEWORKS』の続編ということ、Quest 2にネイティブ動作対応したこと、Marrow1 Interaction Engineの発表、アバターシステム、Modの正式対応などにより、Redditなど掲示板で大いに期待を寄せられた。
……が、本作のクオリティは『BONEWORKS』の正当進化を求めてたプレーヤー、しっかりとしたキャンペーンを求めていたプレーヤー、サンドボックスで遊びたいプレーヤー……どれにもとてもそういった期待に応えられるものではなかった。

あらすじ

死刑を宣告されて、絞首刑にかけられかけた「あなた」は、MythOSの隠された研究所を発見する。
そこで「あなた」は世界の真実に直面するのであった……。

前作からの変更点

ゲームモードの追加

  • 本作には全3つのゲームモードから、本作はMod除いてハブからアクセスできるものとして6つに増えており、「Campaign」「Sandbox」「Arena」に加え「Experimental」「Tac Trial」「Parkour」が追加された。
    • Tac Trialは時間内にどれだけ早くの敵を倒せるかのモード。
    • Parkourは名前の通りパルクールモード。
    • Experimentalは鏡……巨大ボウリング……など、"その他"に類されるモードだろう。

アバタースワップ機能の追加

  • アバターをプレイ中にBodylogを引っ張ってアバターを変化させられる機能。
    • 変化したアバターでプレーヤーに働く物理演算も変わっていくのが特徴。

問題点

案内が不親切

  • 一部パッチで改善したところはあるが、それでも本作の案内はかなり雑で分かりづらい。
    • 前作ではカプセルをゴミ箱に放り投げてアイテムゲットのはずが、本作はガチャガチャのカプセルのように引っ張って獲得なのだが、その誘導は軽く矢印が出るだけで、アップデートでその方法を解説するポスターが追加されたが、それでも分からずアバター面でキャンペーンの先を進めず詰んだ人も多かった。
  • 中でも最も批判を浴びたのがイントロ後のBONELAB Hubで、ミニゲームをすべてプレイし、クレーンゲームのギミックを動作させないとキャンペーンの先が開放されないという仕様。
    • その誘導を示すテキストも殆どなく、仮にわかったとしても、すぐにキャンペーンを遊びたいプレーヤーには批判され、問題視された。

内容が詰まってない上に短いキャンペーン

  • 本作のキャンペーンは4-6時間程度でクリア可能で、8-10時間必要だった前作『BONEWORKS』と比べると半分程度に。
    • それでいてキャンペーンのマップの一つ一つの中身も前作『BONEWORKS』ほど詰まっていないため、ただ目的地に歩くだけでクリア出来るMoonBase*3、やってることはただの射的コーナーのMine Diveなど、最低限の労力でクリア出来るマップが一定数あるため、キャンペーンの充実感はかなり無い。
      • それでいて本作は前作の30ドルの価格設定から40ドルへ増加。これでは不満も出る。
      • Quest 2の性能が下がったせいでマップが小さくなった……というわけでもなく、実際にQuest 2で本作のModとして前作の巨大なマップを動かすことは出来るため、ただの開発のやる気不足である。 前作の巨大なマップはQuest2ではまともに動かないしMod開発者もパフォーマンスの問題が予想されるとしている。

特定のフラストレーションが溜まるキャンペーンマップ

  • パッチが当てられるまで相当ひどいざまだったが、背の高いアバターの性能を示すためのPiller Climbで、高いタワーを登るのだが、背の高いアバターから頻繁にアバターが変わったり、敵の攻撃もほとんど避ける方法も無いため、何も出来ずに死亡と問題も多くあった。
    • ここはパッチが当たったため多少ストレスは解消されるが、ストレスが減っただけで、面白みも挑戦性も無くなったMoonBase同様虚無ステージになってしまったのだが……
  • 他にも、『マリオカート』のようなカートを運転するMonogon Mortarway頻繁にカートが引っかかったり、転覆してそのまま起き上がれなかったりと、そうなったらゲームを再起動するなり、レースを一からやり直さないと再開できないため、かなりストレスが溜まる。その上、SteamVRで1000時間以上過ごしたVRにかなり慣れてるプレーヤーでも酔いやすい。
    • 挙句の果てに、実はカートを運転する必要もなく、時間はかかるが最初から徒歩でコースを周回すればクリアできる。何のためのカートだ。

動作不安定なPC版

  • こうした家庭用ゲーム機版に合わせてPC版の移植クオリティが下がり、動作不安定になる。ということは、『Dead Space』『Medal of Honor(2010)』、『Wolfenstein: The New Order』などPS3/Xbox360世代のタイトルでよく起こったことがあったが、2022年にもなって、しかも最先端技術の筈のVRゲームで、本作はその10年近く前のゲームのようにQuestのためにPC版の移植クオリティが下がってしまっている。
    • HDDだとローディングが永遠に終わらない、SSDに保存していても5分以上かかると前作以上に長かったり、Pimaxヘッドセット環境によってはそもそも起動すらしない、正式対応してるはずのValve Indexコントローラーだとものの掴みの挙動が不安定、そのくせ微妙に重い……と、かなり動作が不安定。
      • ちなみに、こうした問題の多くはSteamVR版で発生しており、Meta社が出資したこともあってかOculusのPC版ではこうしたバグは比較的少ない。

やる気のないMod対応

  • 発売日からMod対応を掲げていた本作だが、本作のMarrow1 Interaction Engineで出来ることも公式のSDKでは大して無い。
    • 「アバターの追加」「マップの追加」のみ。他の「武器・重火器の追加」「NPCの追加」など、こうした『Garry's Mod』フォロワーのサンドボックスゲームの機能として標準的なものは大した情報のない非公式のExtended SDKでやりくりしなければいけない。
      • SDKに機能の追加が予定されていたが、2022年12月30日現在、全く追加されていない。
      • (追記) 2023年8月20日現在、10か月前を最後に昨日の追加無しでSDKのアップデートが完全に途絶えている。開発を放棄したとみられる。
  • その上、Modを前提としたゲームデザインとするとゲーム内からModのダウンロード・インストールが出来ない。
    • SteamWorkshop非対応、ゲーム内からBonelabのMod.ioへのアクセス不可という難点。
      • 導入にはPCではそのままファイルをBonelabのmodフォルダにドラッグ&ドロップ、Quest版では更に面倒くさいことにファイルマネージャーをSideQuestからインストールする必要がある……と、正式にはMod非対応だった前作の導入の面倒くささから対して変わってない。

増えた物理演算に関するバグ(一部アップデートによって改善あり。)

  • 「前作より精錬された物理演算!」と宣伝されてた本作だが、どういう訳かバグが増え、物理演算のインタラクトの質は低下。
    • 崖をつかんだらどう言うわけか体が明後日の方向に飛んでいく。ゴミ箱の端をつかんだと思ったら底をつかんでいた。など、物理演算による不具合が増えて、不安定になってしまっている。

しゃがみに関する問題

  • VRプレーヤーの中で、現実でしゃがむプレーヤーとゲーム内のボタンでしゃがむプレーヤーが居るだろうが、本作では実際に現実でしゃがもうとすると、本作のOFFに出来ない「自動 立ち/座り 識別機能」によって実際にしゃがもうとしてもゲーム内ではしゃがめないので非常に没入感を削がれる上、操作性の悪さに繋がっている。

前作からの使い回しが多い上にやり込み甲斐のないミニゲーム

  • 大半のマップが前作の使い回しな上にチャレンジや、武器ショップのリストらなど、やる甲斐がごっそり減らされやることの減った「Arena」
  • 内容がほとんどかぶっている上にほとんど一本道、ショートカット無しで周回する面白みのない「Parkour」と「Tac Trial」
  • よくわからない上にやることもなく、実のところ内容も「Sandbox」に被ってる「Experimental」……など被りが多い上に、使いまわし、水増しのおおいミニゲーム要素は、お世辞にもいいとは言えない。
    • しかもどのマップの出来も決して良くなく、マップの分技も、別のクリアの仕方も無く、一部のマップの難易度調整も大きくマップの構造が変化するものではないためどれもリプレイ性に乏しい。

進化に乏しい敵NPC

  • 殆どの敵が前作からの使いまわし、追加があってもただ見た目・パラメータを前作の敵から変えたものなだけの敵が多い上に、敵AIにも進歩がない。
    • 一応死亡時のアニメーションが特殊な「ガイコツ」、攻撃方法が違う「ファイアメージ」など、多少の追加敵はあるものの、それらの登場機会は極めて少ない。

賛否両論点

バラエティが広すぎるマップ

  • 前作も少し世界観がごちゃまぜな感じではあったが、本作のそのナンセンスは良くも悪くも加速。
    • アバター面に躊躇ではあるが、全体的に一つ一つのマップの整合性、トーンが均一化されておらず、一つのゲームとしてはかなりとっ散らかっている。
  • 全体的にキャンペーンとしてはPortal/Half-Life/BONEWORKSの延長線上ではある……が、キャンペーンのアバター面以降からやや妙な感じに。
    • 姿がだいたい『Hotline Miami 2: Wrong Number』のマスクを外した「トニー」のようなアバターで、大体「Le Perv」のパクリ……とは言わなくとも雰囲気がだいたいそんな感じの曲、「Fist Fight Fugre」がかかる……というだれがどう見ても『Hotline Miami』を完全にテーマにしたステージのStreet Puncher、
    • Half-Life 2』の「Highway 17」でみえる橋の下である、「Bridge Point」まんまのマップで、どこか『Mirror's Edge』を連想させる女性忍者のアバターで走るSprint Bridge、
    • DOOM (2016)』風味な地獄をテーマにし、アバターが『DARK SOULS』の雰囲気が感じられるアバターのMagma Gate、
    • 本作のValve風味な世界観から浮いてる アニメ柄のメイドのアバターを着て(?????)、『頭文字D』を彷彿とするサウンドトラックがかかるなか『マリオカート』のようなカートとコースを運転するMonogon Motorway。
    • 『Metro 2033』っぽいサウンドトラックがかかりながらアメリカの田舎町のようなところで市民を撃ち殺す最終マップ……などとかなりテーマはごちゃまぜ。
      • 好きとなるかは個人の感覚か。

一層地味となったストーリー

  • 前作『BONEWORKS』はストーリー要素は控えめだったが、一応フォードの独特なキャラクター性やスケールの大きさ、ストーリーに進展があった。
    • 一方本作は、それと比べるとストーリーの進展が少なく、衝撃的なラストを迎えた前作と比べると、本作はかなりこぢんまりしている。
      • とはいえ、こういうアクションゲームをプレイする層は大してこういう点に期待していないのだろうが……。

評価点

良質なサウンドトラック

  • 本作のサウンドトラックはMichael Wyckoff氏が前作に引き続き担当。
    • 不条理な世界観ではあるが、その世界観に合わせて一つ一つのサウンドトラックの質は高く、カッコいい。
      • 前作のサウンドトラックとは曲調がやや異なっており、全体的に『Hotline Miami 2: Wrong Number』や、『PAYDAY 2』『Katana ZERO』などのようなシンセウェーブ調になっている。

イベント要素の増加

  • 前作と比べて目の前でストーリー展開が起こるという展開が多くなった。
    • プリレンダリングシーンが大半だった前作と比べると、リアルタイムレンダリングのゲーム内で発生するため没入感は上がった。

よく出来たQuestバージョン

  • パフォーマンスの低下、90fpsを割ることもたまにあるが、本作のPC版とQuest版の移植の差の体験に大きな差はあまり無く、よく出来ており、時にはその性能差を忘れるほど。
    • グラフィックのリアルタイムシャドウ、スクリーンスペースリフレクションなどは削られているが、ゲームの要素が制限されていると言う事はModなしのゲームプレイに限ればだがない。

増えた武器

  • 前作ではトレーラーに出てきたものの、リストラされてしまったショットガン、そしてアサルトライフル・サブマシンガン共に増えた武器……と、扱える武器は多く増えた。
    • 武器の取り扱いも微妙に改善されており、前作のModからマガジンのイジェクトボタンが逆輸入された、マガジンが入りやすくなった。と微妙ではあるが改善されている。

改善されたグラフィック

  • PC版に限ればだが、改善されたスクリーンスペースリフレクション、より精錬されたエフェクトなど、前作と比べるとグラフィックはだいぶ綺麗になっている。
    • とはいえ、『The Order: 1886』のようにマップにかかる霧に不満を持つプレーヤーも居るのだが……

追加されたアバターシステム

  • ゲームプレイの中に合わせて自分の姿を替えることが出来るシステム。
    • 腕の大きいアバターであれば打撃力が上がり、足の長いアバターであれば素早く動ける、軽いアバターであればジャンプ力が上がる……など、それぞれに個性が使える。
      • とはいえ、この機能の開放が終盤であり、それをあまり活かす場面が無いのが残念だが……
      • ちなみに、おっぱいのある女性アバターであれば、それを揺らせたり触ることができるという点もあるが、正直それはそっち方面に適した別のVRゲームで十分である。

前作から受け継いだ物理エンジン

  • 色々と難点の多い本作だが、腐っても元は『BONEWORKS』。
    • 前作よりバグは多いが、物理演算とインタラクト出来るアイテムの数は多いため、そのゲームの世界に入り込んだ感覚は良い。

総評

シングルプレイヤーシューターとしても、ミニゲーム集としても、サンドボックスゲームとしてもどれをとっても微妙な本作。
どれをとっても前作のクオリティには及ぶものではなく、それでいて定価が前作より高め。
Quest2単体では『COMPOUND』『バイオハザード4』などの良質なシングルプレイヤーシューターは存在するし、PCVRではなおさら前作の『BONEWORKS』や『Half-Life: Alyx』『Half-Life 2: VR Mod』など、尚更である。
Modも本作の出来の悪さを埋めるほどでもなく、「Quest 2でBONEWORKSを遊びたいが、ゲーミングPCを持ってない」という、特定のユーザーにしか勧められないという、残念なゲームになってしまった。
ただ、一つのゲームとして破綻している訳ではなく、そう言う意味ではガッカリゲー以上でも以下でもない事は確かだろう。


余談

  • 本作のイントロシークエンスで首を引っ掛けるシーンがあったことにより、物議を醸した。
    • 本作のリリース以前にも『SUPERHOT VR』というゲームで、ラストの自分に銃を向けて自殺することで自らを電子世界から解放するシーンがカットされたこともある。
      • 本作とその前作『BONEWORKS』はIARCレーティングとは別で、ESRB: Mature(17歳未満のプレイは保護者の同意が必要)レーティング指定を受けていて、当然ESRB: M指定のタイトルで自殺をプレーヤーに誘導させるシーンが存在する一般的なゲームが数多くあるため、VRゲームでこうした自殺をイメージする行為は避けられやすいことかもしれない。
  • 前述したショットガンなどの前作からリストラされた要素が多く復活しているが、登場キャラクターの一人、Jimmy Wongも例外でない。

タグ:

VR FPS
最終更新:2023年11月03日 21:54

*1 初代Questは非対応。PC接続必須。

*2 非公式ながらマルチプレーヤーModは存在する

*3 パッチが当てられるまで目的地までの道筋はキチンと示されていなかった