このページでは、『Grand Theft Auto: Vice City Stories(原語版)』と、同作の日本語版について取り扱っています。
判定は前者が 良作 、後者が 劣化・不安定 です。
また、シリーズの各作品を以下のように略しています。



Grand Theft Auto: Vice City Stories

【ぐらんど せふと おーと ばいすしてぃすとーりーず】

ジャンル クライムアクション

対応機種 プレイステーション・ポータブル
プレイステーション2
発売元 Rockstar Games
開発元 Rockstar Leeds
Rockstar North
発売日 【PSP】2006年10月31日
【PS2】2007年3月6日
レーティング ESRB:M(17歳以上対象)
判定 良作
ポイント 携帯機と思えぬ脅威のボリューム
「3D Universe」の集大成
異質ながらも質の高いストーリー
実在のミュージシャンが登場
Grand Theft Autoシリーズ

概要

世界中で大ヒットしているアクションゲームの金字塔『Grand Theft Auto』シリーズ、通算第8作目。 『LCS』の約1年後に発売されたPSP向け作品であり、『III』をベースに作られた通称「3D Universe」と呼ばれるシリーズの最終作でもある。


ストーリー

1984年のバイスシティ。生まれ変わりつつあるこの街には、チャンスが溢れている。麻薬売買を巡る裏社会の激しい勢力争いは、この街の成長をむしろ加速させていた。街のいたる所で開発が始まり、今ここに犯罪と汚職がはびこる一大都市が誕生しようとしていたのだ。

ヴィクター・ヴァンスは、陸軍兵として自分の国と、機能不全に陥った家族を守ってきた。だがたった1つの選択ミスが、それを不能とさせてしまった。彼は除隊処分となり、刺激と欲望の渦巻く街に、1人放り出されたのだ。残されたのは、極限の選択。この街での「成功」か「野たれ死に」だ。
(ロックスター・ゲームス公式サイトより)


特徴・評価点

  • バイスシティをPSPでほぼ完全に再現。
    • 本作では『VC』後半の舞台であった西側の島からスタートする。ストーリー中盤以降になると東の島が開放される。
    • ストーリー上『VC』の2年前に相当するため、マップの一部が異なる。
    • 入れる店が大幅に増えている。これは後述のエンパイアビルディングの物件ミッションのために入れるようになっており、買い物などはできない。
  • 概ねの特徴は『LCS』に準じているが、以下の要素が『SA』から復活した。
    • 泳ぐことができる。ただし出現するゲージがなくなると溺れてしまう。
      • 特定のサブミッションクリアで無限に泳げるようになる。ちなみに『VC』では泳げなかった。
    • ヘリコプターが復活。ゲーム後半では様々なミッションで乗ることになり、『VC』では隠しアイテムコンプリートの報酬だった軍用ヘリ「Hunter」もストーリーで印象深い役どころを務めている。
    • 自転車、ホバークラフト、小型飛行機などの乗り物も『SA』から再登場。
    • 汎用フォントで表示されていた地名・車名表示は『VC』同様の筆記体フォント表示になった。
  • 『GTA』としてはやや異質ながらも完成度の高いストーリー
    • 主人公のヴィクター・ヴァンスは陸軍出身ということもあり終始犯罪行為には不本意な様子を見せ、特に薬物取引は強く嫌悪している。
      • 悪徳上官にハメられて軍を不名誉除隊に追い込まれ、やむなく犯罪に身を落とすことになったヴィクターだが、決して芯を失わずバイスシティに立つ姿はこれまでの『GTA』シリーズの主人公とは違った味があり、魅力的である。
    • 明確なヒロインと言える子持ち女性のルイーズがいるのも『GTA』としては異質。しかしその展開は……。
    • 一方で周囲を固めるサブキャラクターたちは味方・敵含めて極めて個性の強い面子ばかりなのは相変わらず。
      • ヴィクターを嵌めて除隊に追い込んだ悪徳軍人のジェリー、ルイーズの夫でどうしようもないDV男であるマーティー、男らしさを求めるキューバ系ギャングのボスだが自身はとんでもなくヘタレなウンベルト、性転換を三回も繰り返した元女の映画監督レニなど、良くも悪くもGTAらしく一筋縄ではいかないキャラクターばかりである。
      • 『VC』に登場したキャラも多く登場しており、フィル・キャシディやランス・ヴァンス、リカルド・ディアスなどの過去の姿が見られる。
    • 細かいところだが、1984年当時に携帯電話はあまり普及していなかったからか、『III』以来久々にポケベルが登場している。
  • 実在のイギリスのミュージシャン「フィル・コリンズ*1」が登場し、声も本人が演じている。
    • 借金を抱えたマネージャーのせいで命を狙われるという役回りで、主人公は彼を守るために奔走することになる。
    • 楽曲『In The Air Tonight』がゲーム内に収録されており、ライブ映像をベースにゲーム内グラフィックで再現されている。ゲーム内で何度でも視聴可能。チケットは有料だが安価なので問題ないだろう。
  • 新要素「エンパイアビルディング」
    • 「帝国建設」の名であり、『VC』の「物件ミッション」と『SA』の「縄張り争い」を合わせて更に強化した内容になっている。
    • 街の各地にはビジネスの拠点となる建物が30か所配置されている。プレイヤーを含め4種のギャングが所有しており、襲撃したりされたりで所有が変遷する。
      • プレイヤー側は敵ギャングのビジネスに駐車されている車両を破壊することで敵ギャングを怒らせ、これを全滅させることでギャングを撃退することができる。
      • 敵ギャングもプレイヤーのビジネスを襲撃してくることがある。プレイヤーが急行して防衛するとノーダメージだが、防衛に失敗するか放置すると物件にダメージが入ってしまい、耐久力がゼロになるとその物件を失う。
      • プレイヤー以外のギャングも相互に襲撃を行っており、たびたび所有が変わっていることがある。
    • ギャングが撃退された物件は一旦所有者なしとなり、物件を購入しビジネスを建設することで所有することができる。なお、購入しないまま放置していると他ギャングに取られてしまう。
    • ビジネスを決定すると一旦建設中になるが、時間経過ではなく距離を取って建物をアンロードすると建設が終了する。これはマップアイコンでも確認可能。
      • ビジネスの種類は「警備」「金融」「派遣」「砂糖」「密輸」「強奪」(名称は日本語版に準拠)。
        それぞれ建設費用が異なり、右に行くほど高額になる。後ろの3つは東の島解放後、敵から該当ビジネスを奪取することで建設可能になる。
        なお、「派遣」は売春、「砂糖」とは麻薬取引のことである。
      • ビジネスは大きさを小・中・大から選ぶことができる。当然大きいほど高額。
      • 6種のビジネスは固有のミッションを持っており、1つでもクリアすれば収入が2倍に、最大レベルまでクリアすれば3倍になる。
      • ビジネスごとに建物の外見は固有になっている。収入を重視して高額ビジネスで固めてもいいが、周囲の景観と比べて違和感がないように配慮するのもプレイヤーの自由。
    • 建設したビジネスの建物内にはセーブポイントがあり、ガレージはないものの各ビジネスごとに固有の車両が配置される。なお、30か所の物件を全て所有すると固有車両が防弾仕様になる。
    • ビジネスを建設すると毎日16時に収入が得られる。過去作とは異なり自分で取りに行く必要はなく、自動で所持金に振り込まれる。
      • ミッション中は振り込みは後回しになる。またセーブによる時間経過でスキップしても受け取れる。
      • 充分にビジネスを建設し運営すれば、毎日数万ドル単位の大量の収入が入るため、バイスシティに「帝国」を築き上げることができる。
      • 『SA』の縄張り同様、最低でも5件のビジネスを所持していないとストーリーが進まない場面がある。
  • システムの変更・改善も多数見られる。
    • 死亡・逮捕された場合に失った武器を2000ドルを支払うことで取り返せるようになった。そのためミッション失敗後の立て直しが非常に楽になっている。
    • 各種職業ミッションはレベル5ごとにチェックポイントがあり、そこで中断しても続きから再開可能になった。
      • 職業ミッション自体も救命ヘリや消防ヘリを使うものが追加されている。
      • エンパイアビルディングの物件ミッションは1レベルごとに再開可能。
    • 過去作では軍隊から奪うか100%クリア特典で、自分で使うにはおまけ的要素が強かった戦車Rhinoは、本作ではストーリークリアのみで搭乗可能になり、サブミッション攻略などに使えるようになっている。
    • マップ内の発見済みの隠し要素を確認可能になった。マップ画面で◯ボタン長押しで表示を切り替えられる。
    • 隠しアイテムは「レッドバルーン探し」になった。建物や植物の見つけづらい場所にも配置されており、銃で撃ち抜くことで回収したことになる。
      存在自体がやや気づきにくいが、ラストミッションの攻略中にほぼ間違いなく1つは破壊でき、気づけるようになっている。
      • 非常に見つけづらかったり、スナイパーライフルやヘリコプターが必須のものもあるが、過去作のようにアクションゲーム的に難しい操作を強いられるものはなくなった。
    • 殺戮ミッションは1度クリアしたものも再プレイ可能になった(報酬は得られない)。クリア済みのものはアイコンのドクロが青に変わる。
    • 100%クリア達成後、ストーリーミッションのムービーシーンを見ることができるようになった。このような取り組みはシリーズ初だった。
      • 後の『GTA:CW』以降ではミッションをリプレイ可能にするという形に替えて登場している。
  • ゲームに詰め込まれたとんでもない物量
    • 様々な要素が詰め込まれた結果、100%クリアに必要な要素の数は非常に多い。ストーリークリア時点では達成度は5割にも満たないことすらあるほど。
    • シリーズで見ると決して広い方ではないバイスシティに、とんでもない密度で要素が詰め込まれている。
    • 特にレースの数は半端ではなく、車・バイク・水上に大量のレースが用意されている。
    • 殺戮ミッションやユニークスタントも他作品と比べるとかなり数が多い。
    • 後述の通りストーリーミッションは難しめだが、サブミッションに関しては『LCS』よりも難易度が緩和されているものが多い。長い道のりではあるが、100%クリアは決して困難ではない。
  • PSP版はマルチプレイ対応。10種類のミッションが楽しめる。
  • PS2版はマルチプレイ非対応だが、殺戮ミッションが5種追加されている。また隠れ家で購入可能な乗り物がいくつか増えており、防弾車が気軽に入手可能になった。

賛否両論点

  • 一部ミッションの難易度がやたらと高い。
    • 特に最序盤のフィル・キャシディのミッション「Boomshine Blowout」が悪名高い。
      • フィルの酒「ブームシャイン」を炎上する工場から持ち出すというものだが、操作性のクセが強いフォークリフトで、爆破ゲージによる制限時間がただでさえ短く、酒を炎に近づけたら爆破ゲージが急速に貯まるという極悪仕様。
      • ミッション内容が内容だけに工夫のしようがなく、ゲーム最序盤にあるまじき壁として知られることになってしまった。
    • 一部の銃撃戦のミッションでは敵が無限湧きする。
      • しかも出現した敵は物陰またはプレイヤーの後ろに湧くため、見えないところから撃たれまくるというキツい事態になりがち。
    • 一応、本作でも『VC』『LCS』同様死亡や逮捕によるミッション失敗直後には開始地点に運んでくれるタクシーが登場する。
      上記の通り本作では失った武器を取り返せるようになったため、上記2作よりは実用的になっている。ただ防弾チョッキだけは戻ってこないのがネック。
      • また、一部のミッションではミッション失敗後の再プレイ時に途中の移動パートをスキップできるようになっている。
        しかしスキップできる・できないミッションの判別が不明瞭であり、救済策として有効活用できる域とまでは言えない。
    • 本作は敵も味方もNPCのドライブバイがやたらと強い。ストーリーミッション上では味方がいるため有利に働く場面が多いが、サブミッションやエンパイアビルディングの攻略では不利になる場面が多い。
  • エンパイアビルディング関連の仕様
    • 敵対ギャングの物件への襲撃は通常プレイをしている間はあまり発生しないのだが、一方でこちらが敵の物件を襲撃するとその後は急激に発生率が上昇する。この状態はセーブ&ロードされることで解消される。
      • 実際に街中のギャングも通常時より更に敵対的になり、乗り物に乗ってドライブバイで襲撃してくることすらあるため意図的なものと思われる。
      • しかし、防衛に失敗しても3回程度は耐えることができ、あとでその物件で安価な修復費用を支払えばもとに戻すことができる。
        しかも敵ギャングが選ぶ襲撃対象の物件はランダムなので、よほど運が悪く特定の物件を集中攻撃されない限り奪われる心配はなく、わざわざ防衛に向かう必要性があまりない。
      • なお、『SA』の縄張り争いと異なりセーブやミッション開始などでキャンセルした場合は必ず防衛を失敗した扱いになる。
    • 敵の襲撃が発生している状態では既に画面内に出ているものを除き敵物件の乗り物が出てこなくなる。
      • これは縄張りを広げている時に問題になりやすく、上記の通り防衛失敗がある程度許容できるバランスであるため、とりあえず物件を手に入れたらセーブ&ロードが安定択になってしまう。
      • ちなみに、既に画面に出ている敵物件の乗り物を破壊した場合は通常通り物件奪取が始まる。この場合は上記の通り防衛は失敗扱いになる。
    • また、エンパイアビルディングで破格の収入が得られる分ミッション報酬は他作品より少なく、10000ドル以上を得られるミッションは1つもない。
      • 終盤は激しい銃撃戦で弾薬を消費しやすいため、ストーリーだけを追いかけようとすると金欠になりやすい。

問題点

  • PSPというハードに限界まで詰め込んでいるためか、種々のバグが多いとされている。Wikipediaにバグの内容が列挙されているほどである。
    • トラックを護衛するミッションで、運転が荒い*2のか地形に引っかかってトラックが進行不能になることがある。ミッションを失敗するかセーブをロードするしかなくなる。
    • ヘリコプターから飛び降りる際に地面を突き抜けて画面外に落ちることがある。しばらくすると近くの地面に自動で復帰するが……。
  • ヴィクターの弟、ランス・ヴァンスの扱い
    • 『VC』にも登場し印象深い役回りであった彼だが、過去にあたる本作では全く救いようがない完全無欠のクソ野郎であり、ストーリー中盤以降でヴィクターが巻き込まれるトラブルのほとんどは元を辿れば彼が原因なものばかり。
      • 『VC』では若く青さが目立ち、トミーに軽んじられて裏切った男と取れる描写であったが、本作の描写を見るに根っこがそもそもダメな男だったという扱いになってしまっており、後付け設定にしても扱いの悪さが目立つ。
      • とはいえ、リカルド・ディアスと偽名で既に関係を築いていた点や、人間を見る目の鋭さなども『VC』への伏線としてちゃんと描写はされている。
    • なお、ランスの厄介者ぶりはゲーム部分にも反映されている。
      彼が登場するミッションの多くでは率先して銃撃戦の前線に出ようとするため、プレイヤーが積極的にカバーしに行かないとすぐに殺られてミッション失敗になってしまう。
      • ゲーム内のミッション指示でも「ランスを守れ!」とよく言われるあたり、やはり意図的に設定されているようだ。
    • 総じて、未熟さの表現としてはいささか過剰すぎた感が否めない。

総評

総じてこれがPSPで出たこと自体が驚異的といえるほどの詰め込み具合。
ほぼ『VC』のアッパーバージョンと言っていい仕上がりであり、遊べる内容の多さは凄まじい。
ストーリーミッションの難易度バランスにはやや難があるものの、無規制の原語版に関しては良作として充分許容できる範囲であろう。

『III』から長く続いた3D Universeの締めくくりとしては申し分のない完成度であり、有終の美を飾ることができたと言える。


余談

  • 他の3D Universe作品と異なり、現時点ではiOS/Androidなどの他機種への移植はされていない。
    • スピンオフながら高い完成度を誇り期待する向きは多いが、やはり実在のミュージシャンを出したことによる権利問題が影響していると見られる。
    • 2013年4月からPlayStation Networkで配信されていたとのことだが、2017年7月24日を持って配信停止されている。
  • 本作の主人公のヴィクター・ヴァンスは『VC』の冒頭にも登場しているが、トミーとの薬物取引中に殺害されてしまう。なぜか嫌っていたはずの薬物取引を嬉々として行うなど、本作での硬派な側面は全く見られない。
    • ある意味出世して変わってしまったとも言えるが、当然ながら後付設定とはいえ本作での薬物取引を嫌悪する姿とあまりにも違うので違和感を感じるプレイヤーも多い。
      • 逆の視点から見ても、本作の麻薬取引ビジネスが『VC』の冒頭への伏線として扱われていない。
  • 本作のアサルトライフル系武器はゲーム内の呼称では「AK」と「Assault Rifle」となっており、それぞれAK47とM16がモデルとなっている。
    • ……のだが、とあるミッションでランスがM16を持ち出すときのセリフが「Hello, Mr.M4! M for(four) motherfucker!」*3となっている。
      • 一般的にはセリフのミスと言われているが、上記の通り「for」と「four」の言葉遊びになっており、意図的なものとも考えられる。
        このセリフ自体は異様なハイテンションで放たれており、本作のランスを代表するセリフとして印象に残りやすい。
    • デザインは『VC』『SA』『LCS』のM4とは異なっており、やはりモデル自体はM16と考えられる。
      史実的にもM4の制式採用は1994年で、それどころか米軍からの開発要求が行われたのが本作の舞台設定と同年の1984年。もちろん本作の時代に存在しているはずがない。
      • もっとも、これ自体は当然『VC』(1986年)や『SA』(1992年)にも言えることなので、シリーズのお約束に近いものではあるが。
    • ちなみにAK47はほとんどのシリーズに登場しているが、M16が登場するのは『III』以来。
      ただし異常な連射性能を誇っていたあちらと比べると至って普通である。AKの上位武器なので高性能なのは間違いないのだが。
      • 本作でもちゃんと軍人が持っており、ゲーム開始直後の陸軍基地でも兵士が持っているのが見られる。
    • なお、後の『GTA Online』の2022年アップデートにて久々にM16が登場を果たした。
      名義は「サービスカービン」だが……M16はカービンとして扱われることは基本的にはないのでこれはこれで変な名称になっている。
  • 本作を最後に長らくバイスシティが舞台の『GTA』シリーズはリリースされていなかったが、2026年発売予定の『VI』では約20年ぶりにバイスシティが舞台となり、ファンが待ち望んだ現代のバイスシティが描かれることとなる。

Grand Theft Auto: Vice City Stories(日本語版)

ジャンル クライムアクション
対応機種 プレイステーション・ポータブル
プレイステーション2
発売元 カプコン
開発元 Rockstar Leeds
Rockstar North
発売日 【PSP/PS2】2007年12月6日
定価 【PSP】5,229円(税込)
【PS2】4,179円(税込)
レーティング CERO:Z(18才以上のみ対象)
判定 劣化ゲー
ゲームバランスが不安定
ポイント ホットコーヒー被害者第3号
ゲームバランスがかなり難化している
Grand Theft Autoシリーズ

概要(日本語版)

『SA』『LCS』と同じく遅れて発売された日本語版は規制を施された状態で発売されている。


問題点(日本語版)

基本的に日本語版『SA』『LCS』と同一の箇所は簡潔に記述する。

  • 人(敵)に対して1発でも武器を使用するだけで手配される。
    • 本作ではこれが強烈で、銃撃戦のミッションで原語版だとせいぜい手配度★2程度で済むところがあっという間に手配度が★3以上になってしまう。上記の通り本作は元々難易度が高い傾向にあり、それに大きく拍車をかけてしまっている。
    • エンパイアビルディングでも、物件襲撃・防衛の際にあっという間に手配度が上がり、ひどいと手配度が非常に高い状態でギャングとの三つ巴を演じることになる。
    • 同様に殺戮ミッションも非常に厳しいことになっている。なお、本作では元々一般人が対象のものは存在しないため、削除されたものはない。
    • PS2版に関しては隠れ家での車両購入で容易に防弾車が入手できるので、それでなんとか対応はできる。PSP版はそれすらないのでかなり厳しい。
  • 死体に対する追い討ち攻撃が出来ない。
    • 坂道や銃器による追い打ちは可能。
  • 人を殺しても金を落とさない。
  • 残酷描写表現の削除。血の表現も若干規制されている。
  • エンパイアビルディングでは、上記の通り売春は「派遣」、薬物取引は「砂糖」となっている。
    • 「砂糖」の物件ミッションでは「勘違いした警察」のせいで手配度★3に追われることになる。皮肉が効いているとも言える。
    • ちなみに物件のアイコンはそのまま。つまり薬剤カプセル型の「砂糖」ということである。薬物の隠語であることを全く隠していない。
      • なお、物件ミッション名も「Drug Running」から「Sweet Empire」に変更されている。

評価点(日本語版)

  • 『LCS』同様、ストーリー面での規制は全くない。ローカライズの質も相変わらず高い。
  • 地名表示は『LCS』同様の日本語表示、車名やミッション名表示は原語版同様の筆記体フォント表示。地名を覚えやすく雰囲気も乱しにくい、両方の折衷になっている。
  • 『SA』で削除されていた、格闘戦での追い打ち攻撃や上述の「派遣」ミッションの存在は規制されていない。

総評(日本語版)

『SA』『LCS』同様の規制により、終始警察の手配に悩まされながらプレイすることになる。
元々難易度が高いミッションが多く、また主要コンテンツであるエンパイアビルディングなどの攻略にも悪影響をきたすなど、残念ながらオリジナル版と比べるとゲームバランスが大幅に悪化している。

ローカライズそのものの質は従来作通り非常に高く、つくづく「規制さえなければ」と惜しまれる出来であると言わざるを得ない。
本作は元々ストーリー上過激な表現がほとんどなく、そもそも規制の必要性や方向性という点でも疑問符が付く。


余談(日本語版)

  • 『LCS』同様、本作日本語版の規制はプログラム的には簡単な処理で切り替えているらしく、ほんの2行ほどの改造コードでオフにできる。
  • 本作までホットコーヒー問題と有害図書の弊害が大きかった『GTA』シリーズのローカライズだが、ナンバリング次回作『IV』ではほぼ規制なしのローカライズが行われている。

最終更新:2025年10月06日 11:28

*1 1980年代から90年代にかけて大ヒット曲を連発した世界的なシンガーソングライター。プログレバンド「ジェネシス」のドラマーとしても有名であり、本作のライブでもその腕前を遺憾なく発揮している。

*2 運転者はアル中のフィルなので意図的なものかもしれないが……。

*3 日本語では「こーんにちはミスターM4。MはマザーファッカーのMさ」となる。