サムライスピリッツ!2
【さむらいすぴりっつ つー】
| ジャンル | 対戦格闘アクション |  | 
| 対応機種 | ネオジオポケット(カラー/モノクロ対応) | 
| メディア | 16MbitROMカートリッジ | 
| 発売・開発元 | SNK | 
| 発売日 | 1999年6月10日 | 
| 定価 | 3,800円(税別) | 
| プレイ人数 | 1~2人 | 
| 廉価版 | ベストセレクション:2000年7月20日/2,625円(税込) | 
| 移植 | 【Switch】2020年8月6日/800円(税込・DL専売) | 
| 判定 | なし | 
| ポイント | 事実上の家庭版『アスラ斬魔伝』 斬サムの再来
 壊帝ユガが操作可能な唯一のサムスピ
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| サムライスピリッツシリーズ | 
| NEOGEO POCKET COLOR SELECTIONシリーズ | 
 
概要
ネオジオポケット向けに発売された『サムライスピリッツ』シリーズの第二作目。前作と異なりカラーにも対応。
前作『サムライスピリッツ!』は『サムライスピリッツ 天草降臨』をベースにしていたが、今作ではポリサムの二作目『SAMURAI SPIRITS 2 アスラ斬魔伝』(以下、アスラ)をベースに、いくつかのオリジナル要素が加えられている。
原作は3D格闘ゲームだが、本作はデフォルメドット絵の2D格闘ゲームとなっているため、技性能等も2Dにアレンジされている。
登場キャラクター
登場キャラは『アスラ』のほぼ全キャラに加え、過去シリーズから柳生十兵衛・シャルロット・黒子が復活。
……と言いたいところなのだが、容量の都合かはたまた別の理由か『アスラ』からは
柳生磐馬(やぎゅうはんま)1人だけがリストラの憂き目に遭っている
。同じ柳生繋がりで十兵衛に出番を譲ったのかもしれない。
加えて黒子についても単独のキャラクターではなく、修羅は単なるランダムセレクト(修羅・羅刹問わずランダムに変身し、最初のキャラから変化しない)、羅刹は同じくランダムスタートだが直前に倒したキャラに変身(『ヴァンパイアセイヴァー』でいうシャドウ)という扱いになっている。
評価点
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キャラの作り込み
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黒子も含めると16キャラ×修羅・羅刹で合計32キャラ。現代から見ても結構なボリュームである。
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各キャラクターのアニメーションも原典を見事に踏襲しており、完成度が高い。
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『アスラ』準拠のため修羅・羅刹で持ち技が大きく異なり、剣質を変えると戦法も変化する。羅刹半蔵のあの複雑な投げコンボが、幾分簡略化されているとはいえ再現されているのは見事。
 
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快適な操作性
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弱斬り・強斬りの使い分けはボタンを押す長さで調節するタイプだが、この辺りの調整はさすがSNKと言うべきか、まったく違和感がない。
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ボタン一つで空中受身が取れたり、レバー入力で簡単に移動起き上がりができるなど、操作性については非常に良好。
 
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ストーリーモード完備
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原作『アスラ』に準じたストーリーモードが存在し、戦うごとにデモ画面が挿入される。
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演出は全キャラでほぼ共通だが、エンディングはきちんと固有。今となっては拝むのが困難な『アスラ』のエンディングが丸々収録されている上、追加キャラのエンディングもある。
 
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前作からの改善点
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前作『サムライスピリッツ!』の勝利時には台詞が一切無く、かつての『熱闘シリーズ』を彷彿とさせる勝利ポーズだけ取る構成になっていたが、本作の勝利場面では『キング・オブ・ファイターズR-1』同様に原作の勝利台詞が書かれたテロップが表示されるようになった。
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これにより、前作では実現できなかったナコルルの「大自然のおしおきです!」といったお馴染みの名台詞が、ようやくネオポケでも見られるようになったと言える。
 
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前作のCPU戦では対戦相手の剣質が何故か全て修羅に固定されていた関係で羅刹は実質プレイヤー専用だったが、本作では敵側にも羅刹が登場する様にもなった。
 
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カード収集によるカスタマイズ要素
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キャラごとに八枚(修羅・羅刹で四枚)ずつの「グラフィックカード」が存在し、特定の条件を満たすことで入手できる。
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「攻撃力上昇」「防御力上昇」「追加必殺技1」「追加必殺技2」という構成になっており、このうち好きな二枚を選んでキャラセレ画面で装備できる。
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追加必殺技の中には原作『アスラ』で使用できなかった過去作の技も存在する。
 
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今作はモードこそ前作と同様ではあるものの、カード収集という要素が新たに加わった事により、水増し気味ではあるがゲームのボリューム自体も前作以上になっていると言える。
 
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壊帝ユガが操作できる
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サムスピシリーズにおいて現段階で唯一、ポリサムシリーズのラスボスである「壊帝ユガ」が操作可能。キャラセレ画面で黒子にカーソルを合わせ、Bボタンを押したままスティックを3回転させると出現する。
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さすがに性能は大分アレンジされている(原作での使用技の一部のみを修羅・羅刹に割り振っている)が、飛び道具を中心にした派手で豊富な技の数々はまさしく壊帝ユガそのもの。むしろレバー入れ攻撃が全面的に「相手の座標を直接攻撃」するものになっているため見様によっては凶悪さが増している。エンディングもきっちり作られている。
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同じくポリサム出身キャラである「八角泰山」(もろすみたいざん)が操作できる家庭用作品も本作のみ。ついでに彼と壊帝ユガの2Dモデルが見られる作品もこれだけだったりする。
 ちなみに、PS2『ネオジオバトルコロシアム』が出るまでは、アスラもこの作品でしか操作できなかった。
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なお、アーケードでユガと同様にCPU専用だった「巖陀羅」(後述)は本作でも中ボスとして登場するものの残念ながらCPU専用のまま。
 
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強化された演出面
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今作で秘奥義や一閃を相手にヒットさせた際に使用したキャラのカットイン演出が挿入される様になった。ネオポケ格ゲーでの超必殺技類の演出はというと、良くも悪くも暗転演出が中心なのだが、カットインの演出が加わる事によって、より派手な戦いが繰り広げられる様になったと言えなくもない。
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また、今作はカラー専用で発売された影響なのか、当時のアーケードにおけるネオジオ格ゲー同様に試合中にラウンドが進むとステージ内の時刻が変化するギミックが追加されている。今作以降に発売されたネオポケ格ゲーでは場所自体は同じだが時刻が異なる程度のステージが存在する『SNK GALS' FIGHTERS』もあるが、今作ではアーケード同様に戦闘中に時刻の変化が行われる。
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残念ながら今作以降にリリースされたネオポケの格ゲー作品にはこのギミックは採用されていない。従って、ネオポケ格ゲーでは今作で唯一となった。
 
 
賛否両論点
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喰らいモーションからコミカル要素がカット
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前作『サムライスピリッツ!』における喰らいモーションは、残虐気味だった原作『天草降臨』から一転してコミカルな演出となっており、「吹き飛ばされてグルグル巻きになる」「空中から押しつぶされてペシャンコ」「燃やされて真っ黒」といったようにアレンジされていた。
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しかし、本作では前作で印象的だったこれらの喰らいモーションは全てカットされてしまい、普通の格ゲーの様な無難なモーションに差し替えられてしまった。
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ただ、前作の喰らいモーションの中には「羅刹右京が乱舞系の技を当てると一定確率で男女関係なく服がバラバラに刻まれて一瞬裸になる」というコミカルというよりは変態的過激な物が存在している点から、次回作である本作ではやむを得ず差し替えたのかも知れない。
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勿論これはネオポケサムスピの続編として見た場合の話であり、原作『アスラ』の移植として本作を見るならコミカル要素の削除は妥当ではある。
 
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攻撃力が高め
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本作は全体的に攻撃力が高く設定されており、特に「攻撃力上昇」カード装備で怒りMAXカウンター強斬りを当てようものなら相手の体力ゲージが丸々一本吹き飛ぶこともザラ。
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そのためやや大味ではあるが、ある意味初代『サムライスピリッツ』の爽快感が戻っているともいえる。
 
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ボスキャラのせいで難易度が高いCPU戦
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今作のCPU戦における対戦相手ついてはそれほど強くないので、携帯機らしくサクサクと進む事ができる。
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しかし、中ボスとして現れる「巖陀羅」は例外で、その場から全く動かないデカキャラのだが、原作譲りのハイパーアーマー持ちで攻撃を喰らっても一切のけぞらない上に攻撃力も非常に高い、しかもこの戦いに限って試合形式が3ラウンド2本先取から1ラウンド1本先取に変更されてしまうので、1回やられただけでゲームオーバー送りになってしまう。
 加えて、条件を満たして出現する乱入キャラだった原作から一転して中ボスに格上げされた事から、ゲームを進行する際には必ず戦わなければならなくなってしまった。
 そしてトドメと言わんばかりに、一番簡単な難易度の「やさしい」ですらほぼ通常と同じ内容で戦わなければならない。
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攻撃パターン自体は定まっているため、何度も挑戦するうちに撃破出来る様になっているのが幸いだが、原作から一転して理不尽な仕様が施された事により、かえってCPU戦の難易度を上昇させる結果になってしまったのは否めない。ネオポケの格ゲーでデカキャラを動かす発想自体は良かったのだが…
 
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また、ラスボスの壊帝ユガもCPUの行動こそは難易度設定で左右されるものの、修羅→羅刹と二連戦になるにもかかわらず、直前の巖陀羅同様に1ラウンド1本先取形式が継続している関係上、やはり1回やられた時点でゲームオーバー送りになってしまう。特にノーコンティニューで進めてきた場合は1回やられただけで苦労が水の泡になってしまう事も。
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今作のCPU戦はこの2体のボスが存在している関係上、ネオポケ格ゲーの中でも上位に位置する難易度と言えよう。
 
問題点
全体的に携帯ゲームハード故の制約が目立つ。
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グラフィックが地味
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これは前作と同様だが、元々派手なグラフィックで押すシリーズではないのだが、これより前にネオポケ向けに発売された『THE KING OF FIGHTERS』や『餓狼伝説』シリーズに比べてキャラのサイズが一回り小さく、地味な印象は拭いきれない。
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後にネオポケにおける剣劇格ゲーの次回作にして最後のネオポケ格ゲーである『幕末浪漫特別編 月華の剣士 ~月に咲く華、散りゆく花~』が発売されたものの、やはりキャラのサイズについては改善されておらず。結局キャラサイズの問題は解決されないままネオポケの歴史に幕を下ろしてしまうのであった。
 
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ステージの背景もラウンド進行に伴う時刻変化こそ存在するものの、すべて一枚絵のため、戦っていて寂しさを感じることがしばしば。
 
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前作からのグラフィック流用に加え、修羅と羅刹がほぼ同デザイン
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本作のキャラグラフィックの大半は、容量や制作上の都合もあってか前作の物を数多く流用している。
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もちろん前述のようにシリアス寄りに変更が加わってはいるが、前作の元になったタイトルは『天草降臨』であり、それが『アスラ』ベースの本作に流用されたことで、原作再現として見るとやや物足りない箇所もある。
 
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原作のウリの一つであった、剣質によってキャラの衣装が大胆に変化するギミックも再現されず、基本的に修羅側のデザイン(一部のみ羅刹)に統合されてしまっている。
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そのため、羅刹ナコルルのヘアースタイルや修羅リムルルの衣装の違い等が再現されていない。
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加えて、羅刹版にあたる中ボスの反面アスラ&反面色も修羅側のグラフィックに統合された事で台詞の説得力が下がってしまい、登場時に違和感を抱きやすい。
 反面アスラと色は原作では悪の組織における幹部ポジションという事もあり、いかにもな「悪い奴」の雰囲気を醸し出すデザインとなっていたのだが、今作でそれらが未登場になった挙句、普通の修羅版と全く同じキャラデザインで台詞を吐いている様子は、原作経験者からの突っ込みどころが多い場面になってしまった。
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一応、剣質でキャラクターが色分けされているため、違いが全く無いと言う訳でもない。また、火月は修羅か羅刹かでアニメーションが全く異なっている。
 加えて、カードの説明文で剣質の設定について触れられていたり、一部のキャラに限っては体力ゲージ横の顔アイコンが原作の剣質を踏襲した物が描かれてはいる。だが、後者についてはあくまで顔アイコンのみなので、どうしてもツッコまざるを得ない。今作が初サムスピのプレイヤーは「何故違う?」と思ってしまいがち。
 
 
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迫力の無いBGM・前作からのBGM流用多数
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BGMは各キャラのテーマが元になっているが、どれもこれも全体的に寂しく迫力が無い。
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ナコルルはおなじみの「自然の宴」が収録されているが、音がのっぺりしていて残念なアレンジ。メリハリの利いた『頂上決戦最強ファイターズ』版と聴き比べると差は歴然。
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また、前作からの続投組のテーマ曲の大半は前作『サムライスピリッツ!』から丸々流用。
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つまり原作の『アスラ斬魔伝』ではなく『天草降臨』がベースの楽曲構成となっているため、原作のファンが違和感を感じてしまうのは致し方ない。『アスラ』にて折角新規で書き下ろされたリムルルのテーマも本作では未収録であり、家庭用ハードで聴けないのが残念である。
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もっとも、同じくネオポケで発売された『キングオブファイターズ R-2』『リアルバウト餓狼伝説 ファーストコンタクト』『最強ファイターズ』では『R-1』のBGMを流用しており、本作だけの問題では無いのだが。
 
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前作のラウンド毎にBGMが途切れる問題点も続投。
 
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前作とほぼ同様のモード数・飽きやすい
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今作のモードは新たに入手したカードを確認できたり通信交換が出来る「COLLECTION」が加わったのみで殆ど前作と変わっていない。その様な事なのか、この時期の格闘ゲームとしてはほぼ標準装備となっていたトレーニング(プラクティス)モードが、本作には何故か存在しない。
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幸い基本的にCPUはそれほど強くないので、技の練習ができないということは無いのだが。
 
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今作で新たに加わったカード収集について。よく言えば「前作からボリュームが増加した」だが、悪く言えば「水増し気味」という事でもある。今作のカードは基本的にCPU戦を通じて入手していくのだが、CPU戦を繰り返しプレーしていく関係で単純作業になりやすく、結果的に飽きが来やすくなっている。
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カード自体も、4種類のうち2枚までしか装備できない。カスタマイズ性があると言えば聞こえはいいが、カードによる追加必殺技を優先すれば性能向上が犠牲になるという形であり、結果的に一部の有用な追加技以外は趣味の範疇を出ない。
 
 
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お手軽な永久コンボの存在
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打ち上げ式S・C・Sで相手を打ち上げた後背後に回り、ダウン寸前でニュートラル強斬りを当てると
地上引き込み効果+引き寄せ効果+通常の倍近いのけぞり時間
が得られ、そこから必殺技やS・C・S、キャラによっては
もう一回強斬りが入ったりする
。当然その強斬りにも引き寄せ効果と長過ぎるのけぞりがあり、最終的には
強斬りだけで永久
に。これがかなりの数のキャラに装備されているというから笑えない。
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背後に回られると死が待っているというこの構図はまさに斬サムそのもの。他の要素が斬サムほど突き抜けていないのが唯一の救いか……。
 
総評
見た目の地味さと寂しさ、そして中身を見ると
お手軽永久が多数のキャラに装備
と踏んだり蹴ったりな作品だが、キャラの作り込みや操作性などは高水準で、携帯機格ゲーとしての及第点は満たしている。
対戦ツールとしてはハードのマイナーさもあって恐らく機能しないが、それほど強くないCPU相手にコンボや強斬りを叩き込み、キャラごとのカードを集めつつエンディングなどの演出を楽しむと割り切れば、なかなか悪くない作品である。
余談
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携帯機における単独作品としての侍魂シリーズは本作で最後になった。
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一応、侍魂シリーズは以降の世代における携帯機種でも発売しているが、いずれもオムニバス作品としての一作として収録されたり、作品自体が既存作をまとめたオムニバス作品だったりと新規作品では無い。
 
移植
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2019年12月12日発売のNintendo Switch版『SAMURAI SPIRITS』の早期購入特典として移植版DLコードが付属した(ダウンロード版では同時に取得)。Switchの画面の中にネオジオポケットカラーが表示され、その画面にゲームが表示される形式で遊べる。
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2020年8月6日には一般配信された。一般配信日の前後関係により、ネオジオポケット作品復刻シリーズ「NEOGEO POCKET COLOR SELECTION」の中では第2弾となっている(第1弾は『SNK GALS' FIGHTERS』)。
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2021年3月18日より、これまでにリリースされた6本に4本を追加した『NEOGEO POCKET COLOR SELECTION Vol.1』がダウンロード版先行で発売。
 
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内容については本体をエミュレーションしているレベルであり再現度は高い。相違点は以下のとおりで、エミュレーションのエンジン部分については以後の作品でも同様のものとなっている。
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対戦プレーはコントローラー2つ、もしくは携帯モードでの向かい合わせ。
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携帯モードでは
画面上のネオジオポケットのボタン部分がタッチ操作に対応している
ためJoy-Con無しでも遊ぶことが可能。
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通信でのカード交換は非対応。
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壊帝ユガの使用コマンドが「黒子にカーソルを合わせてBボタンを押しながら選択」のみに簡略化されている。
 ネオポケ版だとBを押し続けたままスティックを「正確に」3回転させる必要があり、ここで手間取りやすかった。
 「黒子にカーソルを合わせてBボタンを押す」というところまでは同じなので原作プレイヤーにも配慮されている。
 
 
最終更新:2025年10月31日 07:21