アテナ
【あてな】
ジャンル
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ACT
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対応機種
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アーケード
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発売・開発元
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SNK
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稼働開始日
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1986年7月
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プレイ人数
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1~2人(交互プレイ)
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判定
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良作
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ポイント
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元祖SNKヒロインはビキニアーマーではなくビキニ+フルアーマー 防御力がアップするほど違う意味でガッカリ
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概要
ビクトリー王国の王女アテナ姫を操作し、森、洞窟、海、空、氷、地獄、迷宮の7つの世界を巡って戦うアクションゲーム。
システム的にはアイテム取得による成長要素を含んだアクションRPGに分類され、アイテムを取ってキャラクターを強化しつつ進んでいく。
当時の水準としてはかなり美麗な色遣いで描かれたカラフルでポップな世界観と、「一国の王女がビキニ一丁で武器を振り回す」という、
インパクト抜群のキャラクタービジュアルで人気を博し、80年代におけるSNKの代表作のひとつとなった。
ストーリー
ビクトリー王国の王女アテナ姫は、冒険を愛し退屈を誰よりも嫌うオテンバ娘。
退屈な日々に飽き飽きしていた彼女は、お城の開かずの間に隠された扉に飛び込み、
不思議な異世界・幻想界へと冒険の旅に出かけてしまった。
目的は幻想界の支配者である帝王ダンテ撲滅!
得意の武術で迫り来るダンテの手下を叩き潰しながら、
目的を達成して元の世界に帰還すべく、アテナ姫は果敢に突き進んでいくのであった。
ゲームシステム
レバー及びバトル(攻撃)・ジャンプボタンを駆使してアテナ姫を操作し、武器・防具等のアイテムを手に入れて強化しつつ、フィールドの最後に待ち受けるボスを倒すことで次のステージへ進んでいく。
各ステージには制限時間が設けられており、時間内にクリアしなくてはならない。
全8面(7面+ラスボス面)構成。残機制。二人交互プレイ可能。
なお、本作ではコンテニュープレイは、プレイ中に任意にクレジット投入して残機を増やすという形で行う。
プレイ中にクレジットを投入してスタートボタンを押すことで1回につき3つずつ残機が増えていき、最大30人分まで増加可能。
アイテム取得による成長要素
ゲーム開始直後のアテナ姫は見た目通り全くの丸腰状態で、初期状態ではリーチの短いキック攻撃しか出せず防御力も最低な上、ジャンプ性能が低いことも相まって非常に弱い。
そのため、破壊可能なブロックの中に隠されている装備アイテムを探し出し、装備のランクを上げてキャラクターを強化していかなくてはならない。
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装備強化は上位ランクの装備及び強化用のアイテムを取ることによって行う。
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各種装備の保持・任意変更はできず、装備済みの武器・防具は新しく取得した装備に上書きされて消滅する。また、装備中のものより低ランクの武器防具をとった場合も同様に上書きされる。
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装備アイテムの他、マイナスの効果をもたらす罠アイテムや、ゲーム進行上取得必須のアイテムもあるので、
各アイテムの効果と入手場所・取得方法を頭に入れた上で、マイナスアイテムを避けつつ制限時間内に効率よくアイテムを探す必要がある。
数段ジャンプ(ホップステップジャンプ)
初期状態のアテナはジャンプ力がとにかく貧弱で高所への移動や敵の回避もままならない程だが、アイテム「イカルスの靴」を取得することで数段ジャンプができるようになり、移動性能が強化される。
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ジャンプ後、着地の瞬間を狙ってジャンプボタンを繰り返し入れることで、ジャンプの高さと飛距離が伸びるようになり、レバーの横方向と組み合わせると放物線を描いて長距離をジャンプできる。
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ジャンプの間隔はホップ(小)ステップ(中)ジャンプ(大)の3段階で、アイテム取得後のジャンプはこのローテーションで繰り返す。
高い位置から下に落ちた場合や、地上から地下に落ちた場合等はジャンプの間隔はリセットされ小ジャンプからの入力に戻る。
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着地後、次のジャンプのボタン入力受け付け時間には若干の猶予があり、1度めのジャンプを出した後に地面を少しだけ歩いてから次のジャンプを出すことも可能。
ゲージ類
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LIFE(ライフ)
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体力を示すゲージ。画面右側で赤のメモリで示される。アイテム取得により最大値を強化できる。
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STR(ストリングス)
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手に入れた武器の攻撃力を示すゲージ。高ランクの装備や強化アイテムの取得により増加する。
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HIT(ヒットポイント)
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手に入れた防具の耐久力を示すゲージ。STRと同じ条件で増加する。各防具に設定された耐久回数分のダメージを受けると防具が壊れ、その分のゲージ値が減る。
マップ構成
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本作のステージマップは全て広大な1枚絵によって形成された地続きのフィールドとなっており、マップの隅々に存在する破壊可能な岩壁のブロックに各種装備やアイテムが隠されている。
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落下穴は存在しないため落下死という概念は存在しないが、落ちてもミス扱いにはならないものの強制的にステージ冒頭に戻された上、全ての取得済みアイテム・装備を没収されてしまう罠の地形穴が存在する。
アイテム一覧
+
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武器
こん棒
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球状のヘッドが突いた木製のこん棒。威力は最も低い。
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ハンマー
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かなづち。こん棒よりは強く、ブロックを1発で壊せる
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鉄球棒
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鎖で棒につながれた鉄球。 4ブロック分のリーチがあり、群がった敵、連なったブロックを一度に破壊できる。その分、隙は大きく大物の敵相手には不利。 また、剣と異なって攻撃判定が前方にしか発生しないため、足元のブロックや頭上のブロックを砕くことは出来ない。
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弓矢
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(ノーマル時)
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矢を放つ武器。連射可能だが、ブロックは砕けない。
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強化アイテム「矢」取得時
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連射力を失うが、ブロックを壊せるようになる
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強化アイテム「火の矢」取得時
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連射とブロック破壊を同時に行えるようになる
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魔法の杖
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(ノーマル時)
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杖先から魔法の衝撃波を飛ばす。岩は砕けない。
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強化アイテム「巻物」取得時
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衝撃波が弾に変化。岩を砕けるようになり、 直線上の敵とブロックを一度に吹き飛ばせる。
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強化アイテム「魔術書」取得時
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旋回しながら飛ぶ弾を発射できる。敵に命中もしくは一定距離を進んだ後に炸裂し、 そこから8方向の敵とブロックを一度に吹き飛ばせる。
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青の剣
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剣を振って攻撃する。威力は弱くブロックは破壊できない。
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黄色の剣
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青の剣より威力が高い。ブロックを2発で破壊可能。
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赤い剣
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剣系統の中では最も威力が強く、ブロックを1発で破壊可能。 また、剣先からのビームで遠距離攻撃が可能になる。
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炎の剣
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真紅の炎をまとった長剣。取得時にライフが最大まで回復する。攻撃する度に刀身が如意棒のように伸びて凄まじくリーチが増す。 連なった複数のブロックを一撃で砕き、ラスボスですらものの数秒で屠ってしまう最強武装。 ただし、一振りする度にライフゲージを1ポイント消費し、ライフが5メモリ以下になると ランクが落ちて赤い剣になってしまう。 その後にライフを回復しても武装はそのままで、もう一度取得しないと使えない。
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防具
いずれもダメージを軽減するのみで、ダメージを0にするわけではない。上述の通り、耐久力が0になると壊れてしまう。
兜
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鉄の兜
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頭部へのダメージを防ぐ。 ジャンプ2回で頭上のブロックを砕ける。
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青銅の兜
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ジャンプ1回で頭上のブロックを砕ける。
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龍の兜
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最強武装の1つ。防御力最高ランクで、頭上のブロックをジャンプ1回で破壊できる。
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盾
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鉄の盾
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正面からの攻撃を防ぐ。
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青銅の盾
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獅子の盾
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最強武装の1つ。防御力最高ランクで、最大12発分の耐久力を持つ。 更にマイナスアイテムによる毒、敵からの魔法による装備ランク低下を防げる
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アイテム
強化用
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戦士の指輪(青)
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武器のランクを1段階上げる。
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戦士の指輪(赤)
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武器の攻撃力を1段階上げる。
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智恵の冠(青)
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防具のランクを1段階上げる。
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智恵の冠(赤)
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総合防御力を4段階上げる。
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シバの鏡
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防具の耐久力を高める。
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イデの鏡
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黄色っぽい鏡で、シバの鏡よりも強力。
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レダの鏡
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赤い鏡。イデの鏡よりも更に強力。
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矢
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弓矢の攻撃力を1段階上げる。
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火の矢
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弓矢の攻撃力を2段階上げる。
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巻物
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杖の攻撃力を1段階上げる。
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魔術書
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杖の攻撃力を2段階上げる。
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青い水晶
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ブロックの中にあるアイテムを透視できる。
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取得必須
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赤い水晶
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見えない敵が見える。また特定のアイテム取得のために必要。
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貝殻のネックレス
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人魚に変身し、水中エリア内でも通常通りのスピードで動ける。
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ペガサスの翼
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空を飛べるようになる。 進行上、取得必須の面がある。
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パンドラの箱
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不死の敵にもダメージを与えられる。特定ステージのボスを倒すための必須アイテム
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メシアの鍵
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特定ステージに進行するための必須アイテム
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守護の竪琴
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Kの石版と同等の効果で、ゲームオーバーになるまで効果が持続する。
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イカルスの靴
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ジャンプ力が強化されホップステップジャンプが使用可能になる。 初期ジャンプ力が貧弱な為、取得は必須。
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その他
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Kの石板
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通称「キープ」。ミスした時に持っていた全てのアイテムをリトライ時に持ち越せる。効果は1度きり。 ただし、罠の地形穴に落下した場合、効力を発揮しないまま消えてしまう。
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導きのランプ
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隠し通路である
導きの扉
に入った際、必ず現在の面の次面へワープする。 これがない場合、飛ばされる面はランダムに変化する。
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お金袋
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スコアが増加する。
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青の砂時計
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タイムが1分加算される。
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赤の砂時計
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画面上の敵を一掃する。
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回復アイテム
ライフフラワー
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特定地点を通過すると自動的に咲く赤い花。 アタックボタンで実を潰すとハートが手に入る。茎が長いもの、短いものの2種類がある
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クリスタルハート
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ライフの最大値が2つ分増加。
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ライフハート
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1つに付き1メモリ分ライフが回復する。 ライフフラワー破壊時及び特定の敵・ボス撃破後に複数個まとまって出てくる。 出すと同時に宙に舞い散っていき、放っておくと消えてしまう。
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生命の壷
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マイナスアイテム「毒薬」や敵の攻撃による毒ダメージを回復する。
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マイナスアイテム
毒薬
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どくろマークの描かれた壷。時間経過と共にライフが減っていく。
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壊れた砂時計
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タイムが1分間減少する。
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魔物の手
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武器のランクが1段階下がる。
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どくろの盾
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防具のランクが1段階下がる。
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魔王の竪琴
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全ての装備・アイテムが剥奪される。
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その他フィーチャー
パワーストーン
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フィールド上の特定地点に隠されたスイッチのような物体。 踏むと装備中の武器・防具が最強武装に変化し、更にアテナ姫が巨大化してパワーアップする。 炎の剣の特性上、ライフが5メモリ以上ない場合は踏めない。 また、巨大化後にライフが5メモリ以下になるとパワーアップ効果が解除されて元の装備に戻る。
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導きの扉
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ステージのどこかに隠されている隠し通路。ボス戦を回避し、ランダムで別のステージにワープする。 (「導きのランプ」取得時は、必ず現在のステージの次面へワープする。)
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評価点
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明るくポップなファンタジー世界と個性的なキャラクターたち。
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赤ビキニ一丁のオテンバ姫というアテナ姫のビジュアルとキャラクター性は、当時のゲーマー少年たちの度肝を抜いた。
片手の肘で杖代わりに剣をつき、口を半開きにして正面手前を向いているメインビジュアルが象徴的。このイラストはAC版ポスターを初めとして、攻略本やFC版のパッケージなど様々な媒体に使われており、キャラクターのビジュアルと共に作品そのもののイメージも大きく決定付けた。
また、ゲーム開始直後のオープニングシーンにて、開かずの間の扉に飛び込んだアテナ姫のドレスが落下中にスポーンと脱げ落ちてしまう演出もある意味、本作を象徴する名(?)シーンである。
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アテナ姫のデザインに関しては、デザイナー曰くビキニアーマーのつもりではなく、「装備を得て強くなっていく姿を表現するには露出度の高い格好の方が視覚的に分かりやすいから」という考え方からだという。
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ギリシャ神話を想起させるデザインやネーミングが多く見受けられ、王道的なファンタジー世界ながら独特且つ個性的なテイストで彩られている。
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グラフィックは当時の水準から見てもかなりの美しさで描かれており、綺麗で見やすい。
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BGMもコミカルなファンタジー世界にマッチした曲で彩られており、各ステージの雰囲気に良くあっている。
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豊富なやりこみ度
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普通にプレイしていても十分難しい本作だが、装備の組み合わせ方によっても難易度が変化する。
装備の組み合わせ方も様々なタイプがあるため、やりこみ派のプレイヤーにとってはやり応えは抜群。
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中には装備取得による露出度の低下を惜しみ、防具を一切取らずにビキニ姿のままエンディングに到達した強者もいるとか。
問題点
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全体的な操作が難しい。基本の操作性自体は悪くないのだが、邪魔な地形の多さやジャンプ動作の制限のせいで思い通りに進行するにはかなりの慣れが必要。
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素のジャンプ性能自体が極めて貧弱。きわめて低い高さのジャンプしか出せず横方向への飛距離もかなり短いため、敵の突進や攻撃を回避し難い。
ジャンプ力を強化しないと移動や攻撃も満足にままならないため、強化アイテム「イカルスの靴」は必須。
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強化しても数段ジャンプの挙動が独特で、高いジャンプを出すためには2回以上跳躍しないといけないため、敵の攻撃が来ると分かっていてもとっさに避け難い。
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数段ジャンプは常にふんわりとした挙動で落下スピードも遅いため、高い位置にいるモンスターやフィールド上を機敏に動き回って襲い掛かってくる敵に狙いを定めるのが難しく、ジャンプ中の隙も大きい。(落下中の軌道制御は可能。)
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敵の動き
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敵はフィールド上をうろついており、アテナを見つけると早足で近づいてくるのだが、敵を倒してもすぐフィールドの端々から湧いて出てくるようになっている。更に、攻撃に移行して近づいてくる際の動きが機敏で、移動性能も圧倒的に敵の方が高い。
近距離攻撃を行う敵はハシゴなどの移動地点をジャンプひとつですり抜けるようにして移動してくる。また、遠距離攻撃を使う敵は画面外からも攻撃を連発してくるという厄介な性能を持つ。
中でも、地形を無視して縦横無尽に飛び回りながら飛び道具を連射してくる飛行タイプの敵は厄介千万。姿を自在に消しつつダメージを与えた上に装備のランクを下げてくる魔法を放つ敵もいる。
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敵の機動性に対して自機の機動性能は上述の通りなので対処が難しく、多数の敵が群がる状況だとどうしてもダメージを受け易くなってしまう。
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ダメージを受けて後ろに弾かれた際の無敵時間がないため、連続ヒットを食らい易い。
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装備を満足に整えてない段階だとすぐにやられてしまう。
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各種武器の攻撃判定は全体的に狭く、またリーチの短い近接武器が大半を占めることもあって、多数の敵を一度に相手にするのは厳しい。
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ハシゴや蔓などの移動用オブジェの真上でジャンプすると、そのまますり抜けて下の地面に落下してしまう。頭上のブロック壊しに夢中になっているとうっかり下に落ちて隙を晒すことも。
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また、周囲がブロックに囲まれた地点のつるやハシゴを上り下りする際に地形に引っかかってしまい、スムーズに動けなくなることがある。
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はしごは破壊可能なオブジェ扱いのため、進行途中にあるはしごを誤って破壊してしまった場合に、それ以上先へ進めなくなり詰んでしまう地点が存在する。
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下方向のブロックを破壊できる装備でないと進行が極めて困難になる箇所がある。
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そのため多様な武器があっても結局は剣以外を使って進むこと自体が難しい調整になっている。
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装備中の武器防具よりもランクが低い武器防具でも取得できるので、罠アイテム以外でも装備が弱体化するミスが起きやすい。特に最弱武器の棍棒がいやがらせまがいに出てくる箇所が結構ある。
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特に兜による頭突きでブロックを壊した時などは否応なく取らされることもしばしば。
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画面スクロールの仕様。
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本作は右側に進んだ後、左側に戻ることが可能となっているが、右側へ進む際は画面中央を中心にスクロールするのに対し、左スクロールさせるには画面左側の端にピッタリキャラクターを寄せないとスクロールしない。このため、敵と不意に接触しやすい。
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また、約3画面分ほど右にスクロールさせると、それよりも前の画面には戻れなくなる。
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最大パワーアップの罠
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全てのゲージが同時にMAXになると、アテナが巨大化するのだが、障害物が多いこのゲームでは逆に進行が難しくなってしまう。
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身長が3ブロック分になり歩行速度は上がるものの、炎の剣で壊せる縦幅は巨大化しても変わらず2ブロック分なので、逆に繊細な操作でちまちま壊していかないと動けない場面が多発する。更に梯子が使えなくなる。
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パワーストーンを踏む以外でこれを満たす要件は金の装備+炎の剣+金の冠+赤い指輪を取った時のみ。炎の剣が「一振りごとに体力消費」という扱いにくい武器なので、最初から避けている人も多いだろう。
総評
アイテム取得によりキャラクターを強化していくRPG要素を持ったアクションゲームは、84年度の『ドルアーガの塔』や本作と同年の2月にファミコンで発売された『ゼルダの伝説』など、前例は既にある。
本作はそれらの要素を取り入れつつも横スクロールアクションを基調としていることと、主人公が露出度の高いビキニ姿のヒロインというインパクトあるキャラクター性や、明るくポップな雰囲気の世界観を特徴として、それらの先行作とはまた異なるテイストを打ち出している。
ゲーム性の面では、キャラクター強化の仕様や癖のある操作性により、やや理不尽な方向に難度が高まっており、その点で人を選んでしまう一面があるのは否めないが、武器・防具の選択によるやりこみ要素があり、難易度が高い分、腕に覚えのあるゲーマーにとっては非常にやり応えのある作品に仕上がっている。
『T.A.N.K.』『ASO』『怒』を立て続けにヒットさせ波に乗っていたSNKだからこそできた挑戦的な作品、且つ同社の80年代を支えた代表作として十分な要素を秘めた良作であると評して差し支えはないだろう。
移植
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『SNK ARCADE CLASSICS 0』(2011年 PSP)
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SNKのレトロアーケードゲームを集めたオムニバスソフトシリーズの1つ。続編『サイコソルジャー』と共に移植された。
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ロード時間が多い(本作以外の作品も同様)、難易度調整が出来ない、本作のオープニングシーンのBGMと映像が微妙にズレているといった難点があるが、
それ以外に移植に起因するバグ等の目立った不備はなく、ほぼ問題なく再現されている。家庭用の完全移植は本作が初。
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AC版の稼動当時にゲームセンターで配布されていた公式攻略冊子の復刻版が特典として攻略本の巻末に収録されている。
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『ATHENA』(PC ※海外のみ)
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海外製ホビーパソコン向けの移植。コモドール64、ZXスペクトラム、アムストラッドCPCの3機種にリリースされた。
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2018年12月13日、アーケードアーカイブスでSwitchとPS4に配信された。税込823円、CERO:A(全年齢対象)。
続編
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『サイコソルジャー』(1987年 AC)
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カプコンの『ソンソン』と同一のシステムを採用した多段フィールド形式の横スクロールシューティングゲーム。
後に『KOF』シリーズの常連キャラとなるアテナ姫の子孫・麻宮アテナとそのパートナー・椎拳崇のデビュー作である。
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ファンタジー世界が舞台の『アテナ』と異なり、魔性の怪物・屍愚魔に滅ぼされた現代世界を舞台とした退廃的な世界観が特徴で、BGMに生の歌声によるボーカル曲を用いた業界初の「歌うゲーム」として有名。システム上の共通点から「歌うソンソン」の異名も持つ。
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2人同時プレイが可能だが難易度は本作同様、かなり高め。
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『アテナ フルスロットル シリーズ』(2006年/2007年 携帯アプリ)
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AC版の後日談的位置づけの続編として携帯アプリ向けに制作された20数年ぶりの新作。
第1作『アテナ フルスロットル』及び『アテナ フルスロットル ウィニング魔女学園騒動記』の2作が配信されている。
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アテナ姫と、新キャラであるお目付け役の魔法使いヘレネのどちらかを選んで進めていく。
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携帯アプリということで原作のゲーム性は簡略化されており難易度は低めだが、コンボ攻撃システムなどの新アクションや、
手に入れたコスチュームをキャラクターに着せて鑑賞するコスプレモードなど、今の時代に合わせたアレンジが加わっている。
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キャラクターデザイナーは『どきどき魔女神判!』の藤ノ宮深森氏。
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本作のリリース時にも攻略マニュアルが配布されているが、表紙のデザインや本文中のキャッチコピーなどはAC版のマニュアルを意識したものになっている。
2006年に発売された音楽CD『アテナ・ザ・ミュージック』のブックレットに再録された。
余談
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近い時期に出ていたPC『夢幻戦士ヴァリス』やFC『マドゥーラの翼』『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』と並んでビキニアーマーを流行させた立役者であり、女の子を前面に押し出した作風から、前年にACで出た「ギャルゲーの始祖」とも評される『タイムギャル』を発端とし、『奇々怪界』『ワンダーモモ』などとも併せ、以後連綿と続くギャルゲーの潮流の基礎を築いた一つと言われている。
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現在でこそ「ビキニ王女」は彼女の代名詞となり「防御力が上がる(鎧や兜を取る)と露出が減ってガッカリ」などと言われているが、当時はフル装備のアテナも意外と人気で雑誌の投稿イラストではそのようなアテナも多々見られた。
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ファミコン版の発売前には、ゲームフリークの田尻智氏が当時のファミコン通信のレビューコラムにて本作に対する所感を寄せている。
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主人公のアテナ姫はその人気ぶりから後年に他ゲームへの客演も果たしている。
アテナ(FC)
【あてな】
ジャンル
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ACT
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対応機種
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ファミリーコンピュータ
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メディア
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1MbitROMカートリッジ
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プレイ人数
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1人専用
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発売元
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SNK
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開発元
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マイクロニクス
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発売日
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1987年6月5日
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定価
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5,800円
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判定
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劣化ゲー
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ポイント
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どうにも不完全燃焼なエンディング
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概要(FC)
上記「アテナ」のファミコン移植版。当初はディスクシステムでの発売を予定されていたが、後にROMカートリッジでの発売に変更された。
移植はマイクロニクスが担当した。
ゲーム内容・変更点
ゲーム内容はAC版と同一だが、以下の変更点が存在する。
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一部アイテムの削除・取得効果の変更
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新規の敵キャラの追加。
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ボスの攻撃パターン・攻略パターンの変更
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マップ構成の変更
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BGMの一部削除
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エンディングの変更
問題点(FC)
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移植の質が非常に悪い
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ファミコンへの移植作品の質の悪さで有名であったマイクロニクスの担当ということで、移植の質はやはり相変わらずの有様。
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マイクロニクス担当の他の移植作同様、キャラクターの動きが非常にトロくもっさりしている。
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操作性やゲームバランスは原作の時点でシビアだったが、ファミコン版では動きのトロさもあいまって余計に難易度が高まっている。
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BGMも原曲からキーが変わっていたり、ファミコン音源の3チャンネルをきちんと使っていないなどして原曲をしっかり再現できておらず、キンキンとした響きになっている。
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変更点が多くAC版での攻略方法は通用しない。この点は、容量の限られたファミコンへの移植の常として、止むを得ない面でもあるが。
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ボスに攻撃した際のヒットエフェクトと効果音がないのでダメージを与えられているのかわかり難い
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生命の壷を取得すると導きのランプ取得済みフラグも解除される。
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コンテニューの仕様
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アイテム「Kの石版」を取得していないとゲームオーバー後のコンテニューができない。
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「Kの石版」は隠されているものを見つけ出さないといけないため、実質、タイトル画面のコンテニュー項目はあってなきがごとしのようなもの。
未所持でのゲームオーバー後は最初からやり直しになるため、不親切である。
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エンディングが味気なくなった。
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全クリア時のエンディングメッセージとBGMが削られており、1面のBGMをバックに背景の1枚絵が変わるだけ。この際はキャラクターの動きが停止して動かすことはできずあとはそのまま電源を切るだけという味気なさ。
評価点(FC)
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原作のグラフィックの明るい色使いはきちんと踏襲されている。
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キャラクターもファミコンの解像度でしっかりと再現されており、背景含めそれなりにきれいに描かれている。
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動きのトロさやバランスの悪さに目を瞑ればそこそこ遊べる範囲に落ち着いてはいる。
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特定装備の組み合わせで生じる不具合が解消された。
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純粋に最強装備を得るだけになり使い勝手が抜群によくなった。
総評(FC)
やはりというべきか、移植担当の技術的な問題で質の悪さが目立ち、ACの人気作の移植作品ということで非常に残念な出来ばえになってしまった。
余談(FC)
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本作に発売時に稼働中であった続編『サイコソルジャー』の主題歌を収録したカセットテープが付属しており、コレクターズアイテムとしての価値から完品のものが現在もそれなりの価格で取引されている。
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ちなみに、カセットはパッケージの中にソフトと共に封入されているためパッケージ自体が非常にでかい上に、ポスターのデザインをそのままパッケージに流用しているため、外箱の色がショッキングピンク一色という非常に目立つ代物。ビキニ姿のアテナ姫の絵がデカデカと描かれているのも相まってレジに持っていくのに難儀した男性プレイヤーも多かったそうな。
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なお、このカセットテープに収録された『サイコソルジャー』の主題歌は後に『アテナフルスロットル』のサントラCDにも収録されたが、当のSNKプレイモアには既にオリジナルの音源が残っておらず、製品版のカセットテープから直接の収録となっており、音質が悪くなっている。
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CMの方はセルアニメで動くアテナ姫とゲーム映像を組み合わせたものになっており、サイコソルジャーのテーマソングがBGMとして使用されている。
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お宝ゲーという観点では1990年代の格ゲーブームの頃『THE KING OF FIGHTERS '94』の大ヒットによりアテナが再び脚光を浴びた影響から本作もアテナのルーツとなるゲームだったことで注目され1990年代後期には中古市場で急激に値上がりしたこともあった。
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当時はSFCやPSが主役の時代で、FCはレトロゲームと呼ぶにも中途半端で見向きもされない存在ということから軒並み値崩れ状態だったが本作はカセット単品でも数千円と破格の待遇で扱われていた。
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逆にそれ以前の1990年代中期までは現在からすれば破格の安さで中古入手が可能だった。
最終更新:2024年10月20日 09:37