NG
【えぬじー】
ジャンル
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裏御伽・心霊ホラーアドベンチャー
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対応機種
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プレイステーション・ヴィータ プレイステーション4 Windows 7/8.1/10(Steam) Nintendo Switch
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発売元
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【PSV/PS4/Switch】エクスペリエンス 【Win】Aksys Games
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開発元
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【PSV/PS4/Switch】エクスペリエンス 【Win】エクスペリエンス / Ghostlight
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発売日
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【PSV】2018年9月13日 【PS4】2019年2月21日 【Win】2019年10月10日 【Switch】2020年5月21日
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定価
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通常版:6,284円
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レーティング
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CERO:D(17才以上対象)
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判定
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なし
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ポイント
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おとぎ話+猟奇サスペンス
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心霊ホラーシリーズ 死印 / NG / 死噛~シビトマギレ~
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概要
同社の『死印』と世界観を共有する、心霊系ADV。
心霊ホラーシリーズの二作目として展開されているが、シナリオ上での重要な接点はほぼなく単品でもプレイは楽しめる。
システム的にも同様の部分が多いが、新しく入ったものもいくつか存在する。
追加/改定システム
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ジャッジシステム
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特定の会話中に、主人公が五段階で感情表現を行う。
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ストーリーに影響せず表面上は直後のNPCの反応が変化するだけのものだが、内部的に各キャラクターの好感度に影響しており、物語終盤のある地点で好感度が一定値を超えていると、人物ファイルの追加情報がアンロックされる。
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ブラッドメトリー
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主人公が序盤に習得する能力で、右手で血痕に触れることで残留思念を読み解くことが可能。
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クライシスチョイス
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『死印』で言うデッドリーチョイス。御札による回復要素は無くなり、毎回固定値(1000)からスタートする。
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サバイバルエスケープ
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『死印』でのボス戦に近い、怪異との対決パート。アプローチするスポットを選んでからアイテムを使用するという流れ。
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同行者とのアイテム連携はないが、稀に主人公が手を離せない状況において同行者視点でのコマンド選択がある。
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最初のボス戦時点で説明される通り、ボスを物理的アプローチまたは無念を突き付けることによって破壊するデストロイエンドと、その情念を解決することで成仏させるキュアエンドの2種の討伐方法がある。
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心霊要素の追加
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攻略には関係ない霊的な声や映像が現れることがあり、突発的に襲い来る恐怖を高める要素となっている。
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発売時に公開された無料アップデートにより、頻度を変更可能。
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Dメール/Dカード
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突然届くメールの指示に従って該当ポイントを調べると、都市伝説などの情報が書かれたカードを入手できる。こちらも攻略及び本編には関係のない要素。
評価点
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ジワジワと襲い来る恐怖
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探索要素は『死印』からの継続だが、恐怖を盛り上げる心霊要素の追加もあってホラーとしての完成度は上がっている。
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オプションメニューを開いた時、突然ヒトの手が覆いかぶさってきたりする事もある。
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ターン制で怪異が徐々に近づいてくる要素はオミットされたものの、1ターンごとに画角やシチュエーションが大きく変わるようになり、恐怖感を維持しつつもスピーディな展開となっている。
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恐怖を高めるビジュアル力
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『死印』以上にビジュアル面も強化されており、その凄まじい描写力は必見。あるシーンでキャラクターの顔が醜く変化する演出などは、知っていても驚愕するほど。
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またデストロイエンドで描かれる同行者の最期も、絵的なインパクトと共に「誤った選択をしてしまった」という後悔を抱くこと受け合いな演出になっている。
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『死印』でも進行によって同行者は悲惨な死を遂げていたが、それでも血だまりや体の一部であった。本作では多くの場合、「死体」としてしっかり描かれる。またこれも前作とは違い、女性キャラであっても容赦なし。
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失敗を苦にしにくい難度
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ホラー系作品では一度詰まると「同じ恐怖演出を見続けてしまって飽きが来る」という状態になりがちだが、本作では所謂ボスバトルであるサバイバルエスケープでもパートナーが「今それやる意味あるの?」と言って来たり主人公自身が「この距離じゃ……」と躊躇う等詰まりにくくなるように配慮がされている。
問題点
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ボリューム面、ユーザビリティ面共に、『死印』の問題点があまり解決していない
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シナリオ自体は長くなった(『死印』と比較し約2倍~程度)が、大きなルートの分岐は無い。
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一応シナリオ上は章分けされているものの、「これまでの同行者が動けない状況になったので、別のメンバーと探索する」というだけ。
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とはいえ途中で重大な取捨選択をする必要のある場面があり、『死印』と比較すればテコ入れがなされた方だが、何が変わるかといえば途中途中の会話に数行の差分が生じる程度であり、やはり物語の大筋に変化はない。
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エンディングは一人も死亡していなければグッドエンド、誰かが死亡すればノーマルエンド、特定のキャラクター二名が死亡しているとバッドエンドの3種。
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と言ってもチャプターセレクトや「選択肢までスキップ」が無いため、むしろ現状でも回収にはまとまった時間が必要となる。ルート分岐を入れるには現システムでは難アリだと言えるだろう。
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なお1周のプレイ時間はおおよそ15~20時間程度。エンディング分岐やこまごました差分についてテキスト量だけなら1時間かかるかどうかという程度だが、それら事情により、複数セーブデータを駆使したとしても実際の読破には10時間以上かかると思われる。これをボリュームと取るか水増しととるかは…。
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主人公のビジュアルなどに関しても同様で、DRPG風ステータスもフレーバーテキストとして残っている。というか、好感度を上げてアンロックされるのはほぼその情報だけである。
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同行者の死の原因を作ってから実際に死亡するまで長い
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同行者が死亡した場合は凄惨な専用CGが用意されており、前述の通り本作の一種の評価ポイントとなっているが、ルート確定後実際にその死体が出てくるまでが『死印』と比較して長く、かなりの文章量が生還ルートと重複している。
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『死印』ではその章の怪異撃退後に即時変化が生じており差分確認も簡単であったが、本作では特に長いパターンで次章の探索パートにまで入ってやっとCG回収ができる。
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そのため「とにかくCGコンプをしたいだけ」という場合も10分程度テキスト手動スキップを行う必要がありかなりダレる。
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繰り返しになるが、本作に未読スキップやチャプターセレクトはない。
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結局謎は次回作以降へと丸投げ
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Dカードで思わせぶりにいろいろな情報が出てくるが、これも殆どフレーバーでしかない。結局何もかもモヤモヤしたまま「黒幕を封じ込めて皆日常へ戻っていった」というだけ。
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しかも…(以下エンディングの内容を含むネタバレ)
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本作の最終盤で施した「かぐや人形」の封印はそもそも間に合わせによる手段であったうえ、たとえ正当な手順によって行われたとしても10年しかもたないという設定である。
加えて、作中で封印の儀式に用いたキーアイテムの人形はかぐやと共に失われたが、人形製作者の死亡&技術未継承の状況から複製を作ることもできない。
「おたけび作家」の惨劇も、本来の儀式の実行者であった弥勒が能力を失ったために「人間の死体を使用する外法」で急場を凌いだ事がきっかけなので、結局主人公たちは10年以内に正規の封印手段を構築しなければならず、問題を先送りしただけに過ぎない。
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死の刻限が迫っている割に時間の浪費が多い主人公
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主人公は怪異によって呪いを植え付けられており、その日のうちに死を迎えることになっている。これも怪異の仕組んだ「遊び」の一種であり、劇中の時間経過によってその呪いは進行、残りの刻限を不吉に伝えるという演出なのだが…。
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『死印』は探索パートが大部分であったため、呪いが発動後、重要な手がかりを見つけていく毎にフラグが立ち、その呪いの度合が進行するという表現だった。つまり、プレイヤーが能動的に真相に迫っていくことと呪いの進行がリンクしており、怪異との対決が迫っていることを暗示する仕掛けになっていた。
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一方本作ではドラマパートや他キャラの活躍シーンが増えたためか、呪いが発動した後も「今は待つしかない、夜になるまで時間を潰そう」のようなシチュエーションが多く、結果的に「呪いが発動後、みんなでご飯を食べていたら呪いが進行した」という間抜けな状況になっている場面がある。
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主人公にとっては意味のある時間経過であっても、プレイヤーにとっては数回テキスト送りをしただけで呪いが一段階進むため、呪いが進行していく緊張感や攻略への高揚感はほぼ得られない。
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また、ただでさえ家族が怪異に囚われた状況下にも拘わらず、「何もせずに1日過ごす」日がちらほら生じている。
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一応、怪現象や怪異との対決によって寝不足だった・ひどく疲労していた、或いは怪異サイドの出方待ちであった、果てにはウォーミングアップをして過ごしていたなどの補足はなされるが、もっと何かできなかったのだろうか。
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微妙な設定ミス
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探索中は常時手袋をしている主人公に「指紋がつかないように気を付けて」とアドバイスするNPC、「(怪異が)出てきたら呼べ」と指示しておいていざとなったら「出てくる気か!?」と驚く主人公、といった些細なミスがある。
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相変わらず妙に多いテキストミス
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あまりに多いわけではないが少ないわけでもない程度の誤字・脱字がある。状況が解らなくなるレベルの派手な誤変換はないが、バイクの「ダンデムシート」のような濁点ミスもあるのがやや不可解。
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「~してみたが……」⇒「(セリフ)」⇒「だが、~だった。」のような逆接の重複がちらほら存在している。
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地の文の末尾に句点がない箇所も散見している。校正の予算と時間は無かったのかもしれない。
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恐怖演出の見せ方の失敗
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『死印』同様、探索中は本筋に関係ない霊的なものが見える演出が仕込まれているのだが、『死印』では懐中電灯を当てて初めて表示されたのに対し、本作ではマップ遷移後「最初から」出ているようになってしまった。
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このため「視界に突然怪異が映り込む恐怖」が薄れてしまっただけでなく、マップ遷移直後の会話イベントが発生した時に「プレイヤーにはしっかり霊が見えているのに無視して別件で盛り上がる主人公一行」というシュールな状況が発生してしまっている。
賛否両論点
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一部シナリオの唐突さや設定のブレ
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特に主人公の性格や頭脳に関してはかなり状況で変わってくる。ある場面では「ひもじい」という言葉を爺さんの名前だと思っていたりするバカっぷりだが、他の場面では鋭い一面を見せたり。
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とは言え「知識や社会情勢に関する教養はないが直感は優れている」という意味では一貫している。
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シナリオに関しても、「怪異によって時間をゆがめられた空間」に何故かDカードが普通に置かれていたり、瞬間移動出来るはずの怪異が長々と時間をかけて通路を追ってきたりと、噛み合わない部分が幾つかある(前者に関しては主人公もツッコミを入れている)。
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終盤のある場面では、主人公が突然(以下ネタバレのため要反転)「黒幕の怪異に深くかかわっていたとある作家の息子である」と気づき、ならば自分にも黒幕を封じ込める力があるはずだと反転攻勢に出る。
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作中で仕込まれていた伏線として「主人公の母親がその作家の追っかけであった」「作家(の家系)の手には特殊な能力が授けられていた」「主人公が狙われた理由がそもそも怪異に近い血筋だったから」「黒幕が主人公を一貫して「お兄ちゃん」と呼び続けており、作家のことは「ととさま」と呼び慕っていた」などの点はあるが、主人公の重大な事実が最終決戦の最中に判明する仕掛けであるため、ちょっとご都合主義と思われても仕方ない面はある。
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少々直接的過ぎるヒント
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『死印』同様、探索においては特定の仲間でないと切り抜けられない仕掛けが存在する。『死印』においてそういった場面は現地の僅かなヒントとトライ&エラー頼りだったため、若干詰まりやすいポイントとなっていたが、本作ではバッチリ「現在の同行者では攻略できません」とアナウンスされる。
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親切設計ではあるが、もう少しボカしてもよかったのでは…?
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サービス精神旺盛な怪異
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特に後半のシナリオにおいて、怪異そのものが実際に姿を現す頻度がやや高い。きちんと「主人公にとっての脅威」として現れてはいるものの、「いそうでいない」「何も起こらないことが一番怖い」というタイプの怖さが好きな人には興ざめかもしれない。
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関連して、視覚的にも展開的にもグロ寄りであるため、ホラー好きの中でも合わない人はいるかもしれない。
総評
シリーズ2作目とはなったもののシナリオ的には「中編」或いは「番外編」という感じである。
『死印』ラストで語られた「百鬼夜行」について本編では殆ど触れられていない。
とはいえ単品のホラーADVとしては決して悪い出来ではない。
おとぎ話をベースにした独特の黒い都市伝説シナリオに触れてみたら、きっと恐怖の世界へ入り込んでしまうことだろう。
これでもう少しボリュームがあれば…。
その後の展開
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「心霊ホラー」シリーズ新作『死噛(シニガミ)〜シビトマギレ〜』がSwitch/PS4で2022年12月1日に発売された。
最終更新:2023年05月08日 13:43