Project Wingman

【ぷろじぇくと・うぃんぐまん】

ジャンル フライトシューティング
対応機種 Windows 7/8/10 64-bit (Steam)
Xbox Series X/S
プレイステーション5
発売元 Sector D2
Humble Games
開発元 Sector D2
発売日 【Win】2020年12月2日
【XSX】2021年7月29日
【PS5】2023年10月4日
定価 【Win】2,570円
【XSX】2,900円
【PS5】2,970円
判定 良作


概要

RB-D2(Abi Rahmani)氏によって制作されたインディーゲーム。
内容は、『エースコンバットシリーズ』のフォロワーゲームと言えるフライトSTG。同シリーズの影響を強く受けつつも、独自の世界観で展開されるストーリーや、意欲的なゲームモードが導入されているのが特徴。音声は英語のみだが、字幕や一部UIは日本語表記に対応している。 HOTAS*1式のフライトコントローラーに完全対応。VRデバイスにも対応している。

2015年11月に開発が開始。2017年5月にはKickstarterでクラウドファンディングが行われ、目標額35,000豪ドルの3倍以上となる114,544豪ドル(約900万円)が集まった。
その後、体験版の配布を挟み、2020年12月にSteamで販売開始。
2023年10月には新モード「第59戦線キャンペーンモード」が追加されたPS5版『Project Wingman: Frontline 59』が発売。同時に、Steam版では新モード以外をPS5版準拠にする大型アップデート版がリリースされた。
Steam版における新モードは2024年12月2日にDLCとして580円で発売、これに対応したバージョンアップも行われた。


特徴

キャンペーンモード

  • 全21ミッションで構成される、本作のメインモード。ブリーフィング、機体選択(売買含む)、ミッション、デブリーフィングの順でゲームが進行する。
  • 難易度
    • イージー、ノーマル、ハード、マーセナリー(日本語では「傭兵」と表記)の計4段階。最高難易度のマーセナリーはゲームクリア後に選択可能。
    • クリアすると難易度調整オプションが追加される。「被与ダメージ増加」「機銃縛り」「レーダー性能低下」「敵機が架空兵器搭載」「敵機出現数2倍」などの効果を任意で設定できる。
  • 機体入手は購入制で、ミッションで稼いだクレジットを消費して入手する。ゲームを進めていくと購入可能機体が増えていき、売却も可能。機体は本作オリジナルの架空機を除き実在の機体をモチーフとしているが、ライセンスの関係か架空の名称が与えられている。
  • ミッションは基本的にターゲットの全滅でクリア。獲得スコアがそのままクレジットとなるため、破壊した敵が多いほど多くのクレジットが支給される。なお、友軍機が敵を撃破した場合はプレイヤーが撃破した場合のスコアの4割が加算される。
  • ゲーム内の用語を集めた「ファイル・アーカイブ」を閲覧可能。ゲームが進むと項目が増えていく。
  • ストーリー・世界観
    • 地球規模の地殻変動で一度文明が崩壊し、数百年が経過してからの現実世界が舞台。水没によって世界の地理が大きく変わっている他、存在する国家は全て架空のものとなっている。『サイドワインダーF』『V』に近いポストアポカリプス的世界観が特徴。
    • 本作の世界では、未知のエネルギー物質「コルディアム(コルディウム、コルジウムとも)」が鍵を握っている。これを確保してエネルギー産出国になった裕福な国家とそうでない国家に分けられている。
    • 資源を独占する複合国家組織「連邦」が本作の敵となる勢力。連邦が、エネルギー産出国である先進国「カスカディア」への侵攻を開始した所からストーリーが開始される。
    • プレイヤーは、カスカディアと契約を結んだ傭兵団「シカリオ」のパイロット、「ヒットマン」チームリーダーの「モナーク」となり、連邦との戦いに介入していく。

コンクエストモード

  • ローグライク制のゲームモード。全43エリアに分けられたカスカディアが舞台。各エリアで指定されたミッションを達成し、エリア制圧していくことが目的。ストーリー要素はなし。
  • 新しいゲームを開始するたびに、各エリアのミッション内容が変化する。一度ミッションを開始してメニューに戻った場合、ミッション内容は変わらないが、敵の配置やマップは変化する。
  • ミッションをクリアすると、報酬としてプレステージ(日本語では「威信」と表記)、クレジット、コルディアムエンジンが手に入る。
  • 機体の入手状況はキャンペーンとは独立している。本モードではプレステージを消費して入手する他、ここにしか登場しない既存機の派生型や専用兵装を使用可能。
  • 本モードでは雇用によって自軍を強化し、ミッション中に同行させることが可能。戦闘機や巨大航空機エアシップが味方ユニットとして出現する。
    • 戦闘機パイロットはクレジット消費で雇用する。優秀なパイロットほど必要なクレジットが増える。
    • エアシップは計4機種存在。購入やアップグレードには、クレジットと特定エリアでしか手に入らないコルディアムエンジンが必要になる。
    • 味方エアシップは猛攻を受けすぎると撃墜されるが、それによって同行部隊からロスすることはない。
  • ミッション内容
    • ミッションの目的には主に「一定スコア以上の獲得」「指定ターゲットの全滅」が存在。これを達成すると、ボスとしてエース部隊や空中艦隊が出現し、これらを全滅させてクリアとなる。
    • 制限時間はなし。また、敵を一定数破壊すると増援が出現し、常に敵戦力が無制限に投入される。
    • アラートレベル
      • 本モード専用の指標システム。0から開始され、時間経過や一定数以上のスコア獲得でゲージが上昇していき、これが最大になるとレベルが上がる。最大値は30。
      • レベルが高いほど敵が増加し、より強力な機種が出現する。また、攻撃頻度も高くなり、段階的にゲームが難しくなっていく。
      • クリアやゲームオーバーでリセットされるまで、レベルはそのゲーム中に下がることはない。
  • 難易度はキャンペーンと同様に4段階かつ調整オプションを設定可能。また、アラートレベルの増加倍率の設定も行える。
  • 本モードでは被撃墜や墜落でゲームオーバー。入手した機体とプレステージのみを引き継ぎ、進行状況は強制リセットされる。

第59戦線キャンペーンモード

  • PS5版及びSteam版DLCで追加された新モード。全6ミッション。
  • ストーリー
    • 本編ミッション11以降の、マガダンにおける連邦軍予備役航空団「K-9」の活躍を描いた番外編。
    • カスカディア独立軍の「ファウスト将軍」が連邦本土攻撃を目的に、マガダン上陸作戦を開始する。
    • K-9の隊長を務める「ドライバー」が番外編プレイヤーであり、カスカディア独立軍による上陸作戦阻止に参加する。
  • 本編とのシステム上の違いは以下の通り。
    • 機体は支給制。ミッションが進むと機体が増えるのと同時に使用可能となる。使用できる機体は本編と比べて限られている。
    • 機体購入はないので、クレジットの概念もなし。
    • PS5版はこのモードのみPSVR2に対応。本編はVRに非対応。

自機システム

  • プレイヤー機は極一部の機種を除き、基本武装として機銃と統合攻撃用途の通常ミサイルを固定武装として装備。
  • SPウェポン
    • いわゆる特殊兵装に相当する強力な武器。対空/対地ミサイル、爆弾、ロケット、ガンポッドなどがある。
    • スロット
      • SPウェポンが割り当てられるハードポイントのまとまり。各機種に1~3スロット存在し、それぞれにSPウェポンを設定する。
      • 各SPウェポンの1スロット当たり総弾数は全機体共通。複数スロットに搭載させることで総弾数を増やせる。
      • 複数スロットに同じSPウェポンを搭載すると、1箇所のスロットに統合される。
      • 各スロットに搭載可能なSPウェポンの種類は、各機種で大きく異なる。
      • ミッション中は通常ミサイル専用スロットも合わせて、最大4種類の兵装を使用可能。
    • ハードポイント
      • 各スロットに設定されている兵装装填部位。ハードポイントの数は機種やスロットごとに異なる。
      • SPウェポンの同時装填数に影響する。例として、ハードポイント数がスロット1で2個、スロット2で4個の場合、同じSPウェポンでもスロット1のみで2連射、スロット2のみで4連射、スロット1,2に同時搭載で6連射となる。
      • ハードポイント数はSPウェポンの総弾数には影響しない。
      • SPウェポンによっては、ハードポイント数に影響されず、常に決められた連射数で固定のものも存在する。
  • 専用ボタン押下でSPモジュールを使用する。2種類存在し、どちら1種類のみを選択する。
    • フレアは全機体共通。接近してくる敵ミサイルの誘導を無効化する。使用から一定時間経過後に再使用可能となり、無制限に発射できる。
    • 迎角リミッターは一部の機体のみ選択可能。発動すると機動性が一時的に上昇し、急減速と引き換えに急旋回を行える。一度急旋回するとしばらくは使えなくなる。エースコンバットで言うところの、ハイGターンの感覚で使えるPSMのようなもの。
  • 視点はHUD、コクピット、機体後部の3種類。

評価点

本作の評価点や魅力を一文に集約するならば「エースコンバット(それもPS2三部作)に限りなく近い感覚でプレイできる」である。
他のフライトSTGの場合、エースコンバットとの差別化によって独自の面白さを持つ一方で、自由度や快適性などを犠牲にしているものが多く存在した。
本作ではシステムや作風が似通っているだけでなく、それらを構成する素材のクオリティが高い。そして、ゲーム面で明確に負けている要素がほぼ見られないほどの内容に仕上がっている。

グラフィック(評価点)

  • リアル志向のグラフィックとしては、少なくとも据置機で言う第8世代相応の出来栄え。インディーゲームとしては破格のクオリティの高さ。
  • 機体については、実際の軍用機の外見を違和感なく再現している。表面の細かい凹凸や汚れなどの表現にも抜かりはない。
  • コクピット
    • 一部簡略化されているものの、概ね計器類のレイアウトは実物に近付けられている。戦闘機に知識がある人間が見れば、あの機体のコクピットであると分かるくらいの再現はされている。
    • レーダーモニターはお飾りではなく、ゲーム用のレーダーとして機能する。あえてHUD上のレーダー表示を消してこちらのレーダーを使い、臨場感を高めることもできる。
    • キャノピー上の水滴演出もあり。雨のフィールドや雲に入った時は、本物の水のように流れていく。
  • ACE7』と同じく、リアルタイム天候生成システム「TrueSky」を使用しているだけあって景色(特に雲)の表現は見事。光源処理も巧みであり、地形や大都市と合わせて見ると実物のように見えるほど。
  • 本作独特かつ世界観を分かりやすく表したグラフィック演出としては、地表の炎やマグマが挙げられる。フィールドによっては、世界の終わりのような恐ろしくも美しい光景を見ることができる。特殊な条件下で発生する落雷についても同様。
  • 優れたグラフィックと高fpsを両立している。Steam版の場合、fpsを無制限にすれば非常に滑らかに動く。60や144設定でも滑らかさは十分。
  • Steam版は全編VR対応。『ACE7』が専用モードのみだったことや本作がインディーゲームであることを考えれば特筆に値する。

ストーリー(評価点)

  • 現実世界をベースにしつつも、厄災で文明がリセットされた独自の世界観。
    • 存在する国家が現実とは全く別のものになっているので、実質架空世界のストーリーとして見ることができ、新鮮味がある。また、現実との整合性を気にする必要がない。
    • ミッションによっては、コルディアムが原因となって気候に大規模な悪影響を及ぼし、異常な天災を発生させているものがある。これも、本作の設定を活かした演出と言える。
    • キャンペーンを進めると項目が追加されていく用語集では、勢力、地域、人物の詳細を知ることができ、より本作の世界観を楽しめる。
  • メインキャラクターは少なめでビジュアルもないが、会話だけでも魅力が伝わる存在となっていて、ストーリーに華を添えている。
    • いがみ合いながらも互いを信頼している僚機のディプロマットとコミック、司令官とパイロット兼任の頼れるリーダーであるカイザー、傭兵を嫌いつつも彼らの実力を認めて最大限のサポートを行うカスカディア将校のスターダスト、指揮官らしからぬハイテンション振りを見せることがあるAWACSギャラクシーなど。
    • 複座機を選択した場合、無線会話にWSOのプレジデント(通称プレズ)が加わる。WSOは他のフライトSTGだと全く台詞がないか、あっても機械的な無線にしかならないものがほとんどだが、本作ではストーリーに関わる台詞が割り当てられている。特定条件下でしか登場しないこともあり、隠れた人気を博している。
      + ネタバレ
      • 最終ミッションのみ途中から一切の言葉を発しなくなるが、あまりに激しいドッグファイト故に意識を飛ばした形であり、戦闘中に後ろを確認すると気絶した状態のプレズが映る。
  • ライバルとなる敵エースキャラクターも登場。その内、クリムゾン1はトップエースの肩書を持つため、強敵として印象に残りやすい。冷徹な性格だが、ストーリーが進むにつれて彼の本性が見え隠れするようになる。
  • 第59戦線のキャラも本編とは異なる魅力がある。
    • K-9の面々は予備パイロットとは別に本職を持っており、それに因んだTACネームを持つ。本編では敵である連邦の兵士にもそれぞれの生活・人生・正義があり、それらのために戦っていることが描写されている。
    • こちらでも複座機を選択するとWSOが付く。ミッション4におけるリアクションが特に印象的。
    • ファウストは本編の味方陣営所属の人物とは思えない過激思想持ち。指揮官として有能かつカリスマに溢れた女傑である一方で、倒すべき敵として強調されたキャラ。
    • 本編の一部キャラもゲスト出演のような形でこちらにも登場する。
  • 良い意味でエースコンバットを踏襲した無線演出
    • 味方の無線は勿論、傍受した敵の無線も流れる。敵機の追尾や撃墜、ミサイルで攻撃されるなど、状況に応じた無線が流れて臨場感を高めているのも同様。
    • 本作の世界観を間接的に表現したものもあれば、何気ないジョークなども流れ、無線会話をより面白いものにしている。
    • モナークはエースコンバットの歴代主人公達と同様、敵味方にその存在が認知され、畏怖と敬意の対象となる。二つ名が与えられるのも同様で、彼の場合は「王冠」。無線会話が豊富なこともあり、プレイ中も十分にエース気分を味わえる。
    • ドライバーは予備役らしからぬ大戦果を挙げることで、K-9内で一目置かれるだけでなく、上層部に見込まれて無茶な作戦に投入されることになる。
  • エースコンバットのオマージュ要素がかなり豊富。シリーズの中でも特に『ACE0』、次いで『AC04』や『ACE6』あたりの影響が強く、知っていれば嬉しい要素となる。
    • 『AC04』のオマージュ
      • ミッション6はエネルギー施設破壊→ライバル部隊からの逃走という、『AC04』のミッション5を彷彿とさせる流れをしている。
      • クリムゾン中隊がゲーム終盤になるにつれて落ちぶれる様は、黄色中隊にも通ずる部分が多い。また、中隊に一人女性パイロットがいる点も黄色中隊と同じである。
      • 開発者が意図しているかは不明だが、「Die you SOB!*2」など、本家を彷彿とさせる汎用無線台詞が流れることがある。
    • 『ACE0』のオマージュ
      • 本作のメニュー画面は赤を基調にした画面に加えて一部のフォントが黄色であり、『ACE0』のそれを想起させるものとなっている。
      • 主人公のモナークは傭兵であること、中盤あたりに二つ名が確立すること、また傭兵ということで一部のモブパイロットから妬まれる点など、『ACE0』の主人公サイファーを思い起こさせる。
      • ミッション7では、クリア後に高級酒を別の友軍からプレゼントされる展開がある。ちなみに、あちらはカベルネだったのに対し、本作ではウィスキー。
      • 敵エース部隊の登場演出はカットシーンこそないが、部隊章や所属組織が画面いっぱいに表示されるのは『ACE0』の作風に近い。
      • 後半~終盤のストーリー展開はかなり似ているが、本作の設定を活かすことで極力パクリにはならないよう工夫されている。
    • 『ACE6』のオマージュ
      • ミッション20はそれまで救った味方が次々と現れ、敵を圧倒するというグレースメリア解放戦を彷彿とさせる内容。音楽の雰囲気も似ている。
      • 隠し機体の架空機は、後述するように明らかに『ACE6』初出の架空機「CFA-44」に影響されている武装を持っている。
      • 味方艦艇や陸軍のネームド部隊がストーリーを通して複数回登場するのも『ACE6』に酷似している。
    • 『ACE7』のオマージュ(第59戦線関連)
      • 第59戦線は「本来所属の軍から独断行動している事実上のテロリスト集団をプレイヤー部隊が討伐する」という、アリコーン関連DLCに近いストーリー。
      • 一部キャラの言動が『ACE7』のキャラと似ている。特にファウストは女版マティアス・トーレスとでも言うべき存在。
      • 最終ミッションは対エース戦ではなく対超大型兵器戦になるのも同じ。

ミッション(評価点)

  • 「操作性に優れ、ミサイルを計何十発も撃てる戦闘機を自由に乗り回し、数十、時には百を超える敵ユニットを破壊しながら戦う」という、エースコンバットほぼそのままのゲームをプレイできる。
  • キャンペーンのミッション数は21と普通だが、内容のバリエーションは豊富。多彩な無線演出に加えて、フィールドは大都市から未開地まで、寒冷地から砂漠まであり、多様なシチュエーションが楽しめる。
  • トンネル潜りも実装。本編では、トンネル潜りが必要と思わせて中に入るとダメージを受ける(ので実は必須ではない)という、お約束を逆手に取った仕掛けもある。
  • 本作オリジナルの架空兵器も登場する。
    • エアシップはその代表格。全編通して出現する中ボス的なユニットで、撃墜するには対空砲を全て無力化してからでないと不可能。中盤あたりからは頻繁に登場する。性能的には『ACE6』のギュゲス&コットスに近い。
    • 敵の中には、一目で分かる強力な兵器としてレールガンを使用してくるユニットもいる。見てからでも回避できる調整はされているが、弾道の軌跡にも判定があるので、ミサイルなどとは異なる対策を練る必要がある。
  • 本作の味方(特に航空機)は非常に強力で、知らないうちに敵を次々撃破してくれる。ミサイルの威力がプレイヤーと同じ上に攻撃頻度も高く、しかも難易度が上がると敵と同じように好戦的になる。
    • 敵エース機すら落とすこともしばしば。対エース戦で表示されるHPゲージが、味方の活躍で減っていることを確認できる場合も多い。
    • リザルトでは味方の撃破数も表示される。プレイヤーより多く敵を倒している時もある。
    • 一応、味方が敵を撃破すると6割減点されてスコアが加算されるというデメリットは存在する。しかし、『AC04』『ACE7』のように0点ではなく、また、そもそもミッションランクはないのでさほど痛手ではない。
  • キャンペーンの以下2ミッションはインパクト絶大。いずれも、エースコンバットファンの間で伝説になっている名ミッションをモチーフにしたもの。
    + ネタバレ
    • ミッション11「冷戦」
      • 本作の「ソラノカケラ」枠または「B7R制空戦」枠と呼ぶべき大規模制空ミッション。ゲームの丁度中盤に位置している点やロック調BGMが割り当てられている点でも同じ。
      • 敵味方含めて常に数十機の戦闘機が激しいドッグファイトを繰り広げる大混戦。その戦闘の激しさは、大量に残される飛行機雲やミサイルの煙だけでも分かるほど。
      • 後半は、大量の連邦軍機を引き連れたクリムゾン中隊との戦闘。8機のエース機を含めた中での戦闘になるため、非常に歯応えのある空中戦となる。
      • 「B7R制空戦」の内容が色濃いのが特徴。中でも無線演出における会話の流れは面白いほど似ている。『ACE0』経験者は一度台詞を聞き比べてみる価値あり。
    • ミッション21「王達」
      • エースコンバット最高のラストミッションと名高い「ZERO」の再来を思わせるラスボス戦。高性能架空機に乗ったクリムゾン1と一騎打ち*3を行う。
      • クリムゾン1の凶行により壊滅し、地獄と化したカスカディア首都プレシディアで行われる戦闘で、ラスボス戦にはこれ以上ないほどに相応しい舞台となっている。
      • 架空機PW-Mk.Iは多連装ミサイルランチャー、連射型レールガン、範囲攻撃型エネルギー弾と、非常に強力な兵器を有している。これらを一斉に放って攻撃してくると、フィールドの惨状も相俟って凄まじい光景となる。視覚的な迫力は申し分ない。
      • PW-Mk.Iは、エースコンバットに登場したボス級の架空機の要素を複数詰め込んだような戦闘機で、特に立場としては『ACE0』のADFX-02、武装は『ACE6』のCFA-44の要素が強い。リスペクト元のシリーズ作を超えようとして制作されたことが伝わり、それ相応の活躍を見せる存在となった。
      • 「ZERO」は「世界の終焉を防ぐ上での最終戦となる意義ある戦い」であるのに対し、本ミッションは「世界が終焉に近い状態を迎えて全てを失った中で行われる虚しい戦い」と、ある意味対照的な内容。決着に関しても、勝利した喜びを感じにくく、むしろ戦争の不条理さや物悲しさを強調した演出で締めくくられる。
  • 第59戦線のミッションはいずれも本編に負けず劣らずな内容。特に以下2ミッションは本編にはない要素で構成されていて高評価。
    + ネタバレ
    • ミッション4「EXPRESS LANE」
      • トンネルミッション。山岳地帯に建設された巨大高速道路トンネルを突破して行う敵司令基地強襲作戦。本編ではおまけ程度の扱いだったトンネルが、新モードではミッション内の主要素として本格的に導入された。
      • トンネルは非常に長く、安全重視で約3~4分、最速でも約2分掛かる。所要時間で言えば『ACE5』のハミルトンネルにも匹敵する。
      • 一見高難度だが、制限時間・シャッター・追撃機などの急かす要素はなく、プレイヤーのペースで飛べる。
      • トンネルに加えて、BGM・無線演出・敵基地の激しい対空砲火により、終始緊迫感に満ちた作戦が展開される。
    • ミッション6「FAUST」
      • ファウスト率いるエアシップ艦隊「ホワイト・フリート」との決戦。計5機のエアシップと多数の高性能機で編成されたエリート部隊と空中戦を行う番外編ラストミッション。
      • 旗艦「ルーズベルト」は、これまで登場してきた205級の改造機。通常兵装以外には高射砲とレーザーを搭載、特に高射砲はコルディアム兵器のような大爆発を常時空中に発生し続けられるほど強力。通常ユニット扱いだった他のエアシップと異なり、エースコンバットの超兵器クラスの性能を持ち、ラスボスに恥じない強敵振りを発揮する。
      • 『ACE6』のアイガイオン戦に近い戦闘と、『ACE7』のアリコーン戦のような無線演出を合わせたミッション内容であり、本編にも負けないほど熱い最終戦が繰り広げられる。
  • プレイの幅を広げる「難易度調整オプション」
    • 普通のプレイに飽きたらこの機能を使うことで新たな遊び方を模索することが可能。
    • 被与ダメージ増加設定では、プレイヤーは即死の危険があるほどのデメリットを受けるが、大抵の敵もミサイル1発で落ちるようになり、緊張感と爽快感を上げたプレイが可能。ミッションによってはこれがある方が簡単になる場合も多い。
    • 敵に特殊兵装を持たせる設定では、敵や味方のレールガン、多連ミサイル、自動機銃が所狭しと空を埋め尽くす。
    • 敵機倍増という大胆な設定も存在。これにより敵が合計100機以上出現する、ラスボスが2機になるなどの恐ろしい条件下での戦闘となる。
    • 組み合わせ次第ではゲームバランス度外視の無理ゲーと化すので注意が必要。実績/トロフィーなどには関わらないので、どのように設定するかはプレイヤーの自由。
  • コンクエストミッション独自の面白さ
    • アラートレベルが上がると、敵の出現数がキャンペーンでは見られないほどの量になる。使用する機体にもよるが、大量破壊の爽快感を覚えやすい。
    • エアシップが常に投入されるため、これを撃墜して高得点を稼ぐチャンスが多い。このエアシップ狩りが本モードの魅力とも言える。
    • ローグライク制モードということもあり、敵の配置はランダムで、常にアドリブを意識しながら戦う面白さがある。
    • 雇用で自軍の戦力を増やすことで大部隊を率いることが可能になり、『ACE6』のような「大軍vs大軍」の戦闘を行える。共闘感はキャンペーン以上のもの。

機体・兵装(評価点)

  • F-14D、F-15C、Su-37などの定番機の他、マニア寄りな機体も存在する。CF-105はゲームでまず登場しない機体であることや、特徴的な性能も相俟って話題となった。
  • 架空機も使用可能。以下の2機は隠し機体枠だけあって、これらの機体にしかない特性を有している。
    + ネタバレ
    • SP-34R
      • ミッション12のボス機体。通常ミサイル含む誘導兵器を一切装備しておらず、全て無誘導兵器で統一されている。
      • 宇宙戦闘機のようなデザインをしている。装甲に覆われたキャノピーや、加速で収納されるカナード翼と主翼なども特徴。
      • 武装は4種類のガンポッドとレールガン。誘導兵器がないため撃ち逃げができず、機体性能もそれほど高くないため、初心者が使ってすぐ強さを実感できる機体ではない。
      • しかし、DPSに優れたガンポッドを複数搭載し、その搭載量も優れるため、ボスキラーと言える性能を持つ。また、長距離攻撃はレールガンで可能で、機動性はフレアを犠牲にして迎角リミッターで補える。腕次第で非常に高い戦果を出せるため、使い込むことで面白さを見出せる架空機である。
    • PW-Mk.I
      • ミッション21でクリムゾン1が搭乗していたラスボス機がこの架空機。コルディアムエンジンを搭載した超高性能戦闘機。
      • 三面翼フランカーを『マクロスシリーズ』のVF-11に近付けたような外見。知名度の高い実在機に近いため、架空機にしては無難で人を選ばないデザインをしている。『ACE6』のCFA-44と同じく、機体上下にミサイルランチャーを持つ。
      • 架空の動力源で稼働する戦闘機というだけあって、他機種とは比べ物にならない運動性能を持つ。赤い粒子を散布しながら飛行する様子がさらに、本機が特別製であることを強調している。
      • 専用兵装として備付けのミサイルランチャー(BML-U)を使用可能。運用方法や仕様は『ACE6』のADMMと同じだが、最大ロック数も総弾数も非常に多い強化型のような感覚で使える。適当にロックして撃つだけでも、本作に登場する全敵ユニットに対応可能な、極めて高い攻撃能力を有する。
      • SP-34Rと同様にレールガンも搭載。また、SP-34Rと違って通常ミサイルを搭載するので、通常の戦闘も可能。
      • SP-34Rが玄人向けに調整された機体であるのに対し、こちらは隠し機体に相応しいバランスブレイカー級の最強機となっている。
  • エースコンバットを参考にしつつも、より発展した兵装システム。
    • エースコンバットでは基本的に1種類の特殊兵装しか搭載できないが、本作のSPウェポンは最大3種類も搭載可能。
    • あらゆる敵に対応できるようバランス良く搭載する、対空または対地のどちらかに特化させる、安全重視で長射程武器を積む、近接武器で積極的攻撃を可能にするなど、ミッションやプレイヤーの好みに合わせた兵装パターンを作れる。
    • 各スロット(ハードポイント)に様々な兵装を搭載できるという、後期の『サイドワインダーシリーズ』に近いシステムも兼ねている。
    • 搭載パターン次第では大幅に同時装填数を増やせるのも大きな特徴。以下、その例。
      • 対空/対地それぞれのマルチロック兵器を最も多く積める機体であれば、『ACE7』風に言う10AAM13AGMとして運用できる。
      • 本作のロケットランチャーは、「1個のランチャーから自動連射されるロケット本数×ハードポイント」の数までロケット連射を行える。つまり、8連射するURSであれば、この兵装に対応したハードポイント数が最も多い8個の機体で8×8=64発のロケットを一斉発射することも可能。
  • 強力な補助システムとして機能するSPモジュール
    • フレアは発射すれば確実にミサイル回避できる性能を持ちながら弾数は無限と、防御手段としては破格の性能*4。それでもヌルゲーにはなっておらず、約7秒のリロードを要することや敵の攻撃頻度の高さでバランス調整が行われている。
    • 迎角リミッターは瞬間的に機動性を上げられることから、エース機が出現するミッションで有用。フレアによる防御力をなくす代わりに攻撃のチャンスを増やすことができる。
  • ミッション中の操作システムはエースコンバットとほぼ同じ。
    • 使用するコントローラーやボタン配置次第では、PS2以降のシリーズ作とまるで変わらない感覚でプレイ可能。シリーズ経験者であれば、これまで培ってきた経験や操作の癖がそのまま通用する。
    • エースコンバットと同じ、高機動かつふらつきのないキビキビとした動きが可能で、快適さは十分。速度調整についても、ボタンを押している間に加減速を続けるシンプルなもの。
    • 向きたい方向を素早く確認できるカメラ操作も搭載。コクピットでのカメラ操作に至ってはこちらの方が可動域が広い。目標切替ボタン押しっぱなしによる注視も可能。
    • 他には、リアルタイムのマップ切替表示、兵装カメラ切替も搭載している。
    • 兵装切替は順送りの他、各スロットの兵装に対応したボタン押下で素早く切替もできる。コントローラーの十字キーに割り当てるなどして、一切キーボードを使わずゲームが可能。

BGM(評価点)

  • 作曲者はJose Pavli氏。全ミッションに異なるBGMが割り当てられ、同ミッションでも場面によっては別のBGMに変わるので、未使用含めて40+18(第59戦線追加分)曲とボリュームは十分。
  • ミッション内容やフィールドの雰囲気に合わせた曲作りがなされている。オーケストラ主体だが、時折ロックやテクノも挟まれるので、似たような曲ばかりということにはなっていない。
  • 「メインテーマとなるBGMが存在し、そのフレーズが全編通して他のBGMにも使用される」という、エースコンバットでよく見られる手法が用いられている。
    • そのメインテーマに最も近いのがミッション20の「Presidia」。大作映画のクライマックス兼感動シーンで使用されるようなBGMで、サビは勿論それ以外のパートのフレーズも他BGMに使われている。曲名はカスカディア首都の名称であり、ミッション内容も相俟って『ACE6』の「THE LIBERATION OF GRACEMERIA」を意識したような存在。
    • ミッション5「Calamity」は「Presidia」の簡易版またはプロトタイプと呼べるもの。サビにおける美麗なストリングスが非常に印象的で、序盤ミッションBGMの中では一線を画す存在感を放っている。
  • 以下2曲は本作2トップのBGM。Pavli氏がYouTubeで公開しているサントラ動画の中で、群を抜いて多い再生数を記録*5するほど人気。
    • ミッション11の「Showdown」は空中戦のイメージ通りであるハイテンポなロック調BGM。他は映画風の重厚さを意識した曲調がほとんどだが、この曲は特撮やロボットアニメのBGM風で、開き直ったほどにハイテンションなメロディー。メインテーマのロック調アレンジと言える。
    • ミッション21前半の「Kings」は、エースコンバットの歴代ラストミッションBGMにも匹敵するクオリティを誇る計7分の大曲。悲壮感を全開にしたイントロを経た後、立ちはだかるラスボスの恐ろしさと地獄のような光景のフィールドを表現した、禍々しく力強いメロディーが流れ続ける。そして、フィナーレにはイントロをさらに強化したようなパートが用いられて曲の締めとなり、その後ループするというもの。
  • 第59戦線追加BGMでは、ミッション4BGM「Redline」が高評価。さながらレースゲームBGMのようなハイテンポな曲調であり、高速でトンネル内を飛行するミッション内容に相応しい。
  • 上記以外には、ボス戦BGMのように緊迫感に満ちている対クリムゾン中隊戦BGM「Peacekeeper I/II」、星空が良く似合う透明感のあるテクノ調BGMの「Midnight Light」、明るくノリの良いメロディーのコンクエスト専用BGM「King's Court」などが評判。

その他(評価点)

  • 内容はフルプライスのコンシューマフライトSTGに迫るほど充実していながら価格が3,000円以下、Steam版の追加DLCで580円とかなり安価。

賛否両論点

ストーリー(賛否両論点)

  • ムービーシーンが存在しない。
    • このため、受動的かつ映画的演出でストーリーを楽しむことや、キャラクターの容姿を確認することはできない。
    • 強いて言えば、ミッション16終了後のメインキャラクター達の会話がムービーと言えるものだが、定点カメラで人がいない部分のハンガーが映るのみ。
    • もっとも、インディーゲームなので、ムービー演出を採用できないのは当然と言える。
    • また、00年代以降のゲームにありがちな「ムービーゲー」状態にはならず、テンポが良いという副次的な利点もある。
  • エースコンバットのオマージュが多いため、経験者はストーリー展開をある程度予想できてしまえる可能性がある。ゲーム後半ではその傾向が強く、中でもミッション15では後半に差し掛かった時点で話のオチがほぼ分かってしまうほど。
  • 終盤の展開について
    + ネタバレ
    • ミッション20ではプレシディア奪還及びカスカディア勝利が確定する。しかし、突如現れたクリムゾン1によってコルディアム弾頭ミサイルを撃ち込まれ、首都は完全に崩壊、両勢力は壊滅状態となり、他のメインキャラクター達は消息不明になるという大どんでん返しが起こる。
    • ミッション21におけるクリムゾン1の台詞
      • 自分なりの正義をモナーク延いてはプレイヤーに説きながら最後の戦いに挑む展開は熱いが、台詞の内容は矛盾に満ちたもの。
      • 具体的には、「モナークがいなければカスカディアは滅びずに済んだ」「モナーク達は秩序そのものである連邦に歯向かってさらなる混沌を招いた」「自分はカスカディア人であり、祖国のために戦っている」というもの。言動がちぐはぐなため、何度かプレイして聞き直さないと、何を言っているのか分からないという印象ばかりが残ってしまいやすい。
      • 『ACE0』終盤のピクシーを意識しているのは明らかだが、その半狂乱振りはむしろスレイマニに近い。
      • ただ、戦争物の作品において、ラスボス相当のキャラクターが自分の信じていたものを否定されたことに怒り狂い、世界を破滅に導くというのはよくある展開のため、ストーリー上の欠点とまでは言えない。むしろ、ラスボス戦の舞台を作り出す上での理由付けや、クリムゾン1が倒すべき敵であることを強調する演出としては十分に機能したと言える。
    • 戦いに勝利した後、ゲーム内では「戦争には勝利したがカスカディアは滅び、モナークは契約終了と同時に約束通りの莫大な報酬を手にした」ことが語られて幕を閉じる。
      • 壮絶な戦いの後にしては淡々とし過ぎており、ゲーム本編だけ見るとすっきりしない終わり方をした印象が強く残る。
      • しかし、ファイル・アーカイブでは戦争後の動向についても語られており、そこで一応のフォローは入っている。
      • 難易度マーセナリーのみ、スタッフロールで会話音声が流れる。ここで、味方のメインキャラクター達が全員生還していたことが判明する。ただし、字幕表示はないので、英語を聞き取れないと会話の内容は分からない。

ミッション(賛否両論点)

  • 基本的にキャンペーンのミッションは「指定されたターゲットの全滅」でクリアとなるものが多い。
    • つまり、ほとんどが正統派ミッションで構成されており、純粋な戦闘を楽しみやすい。
    • 一方、護衛や偵察と言った特殊ミッションはほぼなし。また、大半のミッションは指定ターゲット数が多いため長時間戦闘になりやすく、やや単調。
  • やり込みの指標となるシステムが未搭載。
    • 実績/トロフィー以外には機体の保有数やクレジット総額くらいしかなく、ミッションランクや勲章と言ったものはない。
    • 裏を返せば、やり込み要素に縛られたプレイを強要されることがない。そういう意味ではむしろ自由度は上がっている。
  • 容赦のない難易度マーセナリー
    • 敵機が増加する、終盤の高性能機が序盤ミッションから出現する、大型兵器の出現頻度が高くなるなど、目に見えて高難度化する。
    • これらが複合した結果、ハード以下の感覚でのプレイがほぼ無理になっており、マーセナリー用のパターン構築や高性能機への乗り換えを余儀なくされる。
    • 中でも、ラスボス戦ではマーセナリーによる高難度化の影響が最も大きい。
      + ネタバレ
      • 本来1対1の戦闘だが、数機の護衛機がいるため、まずはこれらの排除が求められる。それでも、PW-Mk.I自体のパワーアップに比べればまだ序の口である。
      • PW-Mk.Iの耐久力が激増しており、必ず長期戦になってしまう。ハード以下ではガンポッドを使って短期決戦に持ち込み、やられる前にやる戦法が使えたが、それが不可能になった。
      • PW-Mk.Iの複合攻撃は、元から全て避け切ることを想定していないような作りとなっている。ダメージは大きくないため、ハード以下ではそれほど大きな問題ではなかった。しかし、マーセナリーでの耐久力激増も合わさった結果、ゴリ押しは勿論、安全重視でもジリ貧に陥ってこちらの耐久力が尽きるという状況を招きやすくなった。
      • 特に、全ての攻撃が解禁される第3フェーズ以降が鬼門。ここからはまともなドッグファイトが不可能に近くなり、遠距離から安全にミサイルを撃つ戦法に終始せざるを得なくなる。だが、PW-Mk.Iは都合良く自機から離れてくれないため、安全な遠距離から攻撃できるチャンスを中々作れない。
      • 最終フェーズでは、ハード以下にはあったHPゲージが表示されなくなる。いつ終わるか分からない状況での戦闘になるため、心理的に大きな負担がかかりやすい。
      • 以上のことから、通常の機体でラスボス撃破するのは非常に困難。最低でも「『ACE6』のパステルナーク戦において最高難易度かつCFA-44を使わずにUAVを15機撃墜できる*6」くらいの腕前は必要。プレイヤーもPW-Mk.Iを使ってようやくまともになると言えるほどの攻略難易度となっている。
      • ただし、PW-Mk.I未使用での撃破は報告されており、決して不可能な訳ではない。対空ミサイルを大量に積める機体であれば中盤機程度の機体でも可能であり、ギリギリに近い形で辛うじてゲームバランスは取られている。

機体・兵装(賛否両論点)

  • 特徴の項でも触れたが、本作に登場する実在機は、全て架空機の名目で架空の名称となっている。
    • 例えば、F-14D→F/D-14、F-15C→F/C-15、Su-37→SK.37のように、型の表記位置や会社名の略称に用いる文字を変えるなどしている*7
    • ライセンス関係の問題を考えれば仕方のない話ではあるが、名称へのこだわりを捨てきれないプレイヤーにとってはどうしても気になる要素には成り得る。
    • 極力元ネタの機体が分かるように配慮はされているが、全く違う名称になっている機体もあり*8、改めてどの機体の名称かを覚える必要がある。特に、敵専用ユニットの中には分かりにくいものもあるため、種別に応じた対策が取れずに手間取るという実害が発生することも。

問題点

グラフィック(問題点)

  • 各種演出により、画面が見辛くなることが多い。
    • 画面揺れが激しい。オプションでこれの調整は存在するが、オフにしても完全に止めることはできず、プレイに支障が出やすい。
    • ロックオン機能低下はないが、雲の視界妨害による悪影響は『ACE7』以上。フィールドによっては厚い雲を形成していることがあり、視界ゼロに等しい状態で長時間戦わなければいけないことがある。
    • 後半ミッションではフィールドが赤一色で埋め尽くされることが多く、目が疲れやすい。
    • コンクエストでは天候もランダムで決定されるが、異常なまでに空が明る過ぎる/暗過ぎる場合がある。また、地上に接触するほど分厚い雲が形成されることも。
      • こういった天候(特にHUDが溶け込むほど明るい空)に当たるとまともなプレイは不可能で、ミッション中断を余儀なくされる。
      • プレイに支障はないが、明らかに雲の調整が済んでいない天候も存在する。
  • HUDの不備
    • 兵装射程スケールがなく、各ミサイル兵装のロックオン可能距離を覚えなければならない。
    • HUD視点での機体姿勢アイコンがない。目標注視を行っている場合、自機がどこを向いているのか分からず、操作ミスを招きやすい。

ストーリー(問題点)

  • 全体的にストーリーが分かりにくい。
    • キャンペーン開始時に世界観の大まかな説明があるのみで、すぐミッション1のブリーフィングに入ってしまう。勢力やキャラクターの事前説明がないまま本編が始まるため、プレイヤーが置き去りになる。
    • 賛否両論点で記載の通り本作にはミッション間のムービー等が無く、ストーリー進行は主にミッション中の無線会話で行われる。本作は日本語音声が収録されていないため英語の聞き取りができない場合は字幕に頼ることになるが、初回プレイ時は字幕を読んでいる余裕がない場面も多く、ストーリーの分かりにくさに拍車をかけている。
    • 専門用語や独自設定が多過ぎて、これらを理解するのに時間がかかる。ファイル・アーカイブでの解説はあるが、同じ用語の解説が分散している上に、ストーリー上重要度の低い用語の項目で量自体が多く、初回プレイでこれらを頭に入れるのは困難。
    • ミッション中の無線以外の会話場面では、発言中のキャラクター名は字幕表示されない。これが問題になっているのが、複数人が言い争い及び「取引」を行う場面であるミッション16デモシーンで、誰が喋っているのかが分かりにくくなっている。取引の内容が意図的にぼかされた演出も相俟って余計にプレイヤーを混乱させやすい。

ミッション(問題点)

  • 途中リトライ未実装。本作のミッションはクリアに10~20分要することが多く、失敗からのやり直しに手間がかかりやすい。
    • ミッション1の途中でミッション中のチェックポイントがないことがチュートリアル字幕で示されるため、チェックポイントが無いことは意図的なものと思われる。そのためか、一部ミッションではミッションアップデート時に機体の耐久が回復するようになっている。
  • ミッション開始直後のテロップ表示時間が長く、その間はHUDが表示されない。このため、すぐ近くで出現する敵への対応が難しくなる。
  • クリア後の待機時間が異様に長いミッションがある。
    • ミッション13などがこれに該当し、誰も話をしていない状態が10秒以上続く。ミッションクリア表示されれば、ポーズメニューからのスキップは可能。
    • 厳密にはクリアしていないが、ミッション20最終フェーズ終了後では、本来ならばデモシーンで行うような無線会話が3分近くの長時間にわたって行われる。この間はスキップもできないので、2周目以降は待機しているのがかなり面倒。
  • 調整不足かつ不備の多いコンクエスト
    • 機体保有状況はキャンペーンと共有ではない上、購入にはコンクエスト専用費用であるプレステージが必要。
    • マップ内のエリアには、あまりにも小さ過ぎて見つけにくいものがある。これらを知らないと、全エリア制覇したのにクリアにならないと勘違いされる可能性がある。
    • アラートレベルが一定以上の高さになると、キャンペーンの難易度マーセナリーをさらに超える難しさとなる。隠し機体を使わずに最大レベルエリアのクリアやコンクエスト制覇するのは不可能に近い。
    • 慣れたら慣れたで、「隠し機体のみを使い、強力な専用兵装でターゲットやエアシップを遠距離から安全に墜とし、リロード完了するまで逃げ回る」を繰り返すだけになるので、作業感を覚えやすくなる。
    • ミッション失敗時のゲームオーバーによる強制リセットは、プレイヤーにとってはデメリットしかない。リザルト表示前にAlt+F4でゲーム終了させればリセット回避できるので、猶更無意味な仕様。

機体・兵装(問題点)

  • 使用可能機体数が少ない。練習機仕様の下位互換機や、コンクエスト専用である既存機マイナーチェンジ版及び第59戦線のアップデートで1機追加された敵専用架空機を除いて19機。
    • 20機以上登場するのが普通なフライトSTGとしては物足りない数。
    • F-22、F-35、A-10、Su-47、Su-57、ラファール、タイフーンと言った、この手のフライトSTGで登場頻度の高い機体でいないものが多い。
      • 特に「いて当たり前」「いない方がおかしい」超有名機のF-22が不在なのは手痛い欠点。これをモチーフにしたVX-23という架空機は存在するが、外見はかなり違う*9ので代替には程遠い。
    • 評価点で記載の通り、本作は複座機を使用するとWSOが無線会話に加わるという他作品にあまり見られない特徴を持っているが、肝心の複座機が少なく、またそれらは序盤から中盤に解禁されるものばかり。終盤に解禁される高性能な機体は全て単座機となっており、複座機で最後までクリアするのは難易度的にある程度フライトSTGに慣れていないと厳しいものがある。
      • 高性能な機体は元ネタが単座機ばかりのため致し方ない部分もあるのだが、高性能機の中で唯一元ネタが複座機のF/S-15(F-15S/MTD)がF/C-15(F-15C)のモデルの流用のためか単座機となってしまっているのがかなりの痛手。F/S-15を元ネタ通り複座機としているか、あるいは架空機で高性能な複座機が用意されていればもう少し余裕をもってWSOの無線を楽しめたであろう。
    • 第59戦線では計6機しか使用不可能。これはPS5版のPSVR2への対応との兼ね合いもあると思われる。
  • 機体毎の性能差が大きい。チューニングシステムは未搭載なので、プレイヤー側で性能差の改善は不可能。
    • 低機動な機体は終盤ミッションやマーセナリーへの対応が極めて困難。特に、唯一のアタッカーであるSK.25は、基本性能があまりに低過ぎて使い物にならない。
    • スロットの多さが強さに直結する。このため、同レベルの他機体と比べてスロットが少ない機体は不利になりやすい。
      • MG-21は序盤機であることを考慮してもスロットが1個しかなく、攻撃面での性能が非常に低い。
      • F/E-18、SK.27/37は、ハードポイントの多い大型機であるにもかかわらずスロット2個という、実機とはかけ離れた調整がされてしまっている。
      • なお、SK.27/37はアップデートで通常ミサイルが4連装化したことで、他機体にはない強化が施されて改善した。
  • コンクエスト専用兵装が2種類存在するが、当モードが隠し機体でしかまともにプレイできないこともあって使われず終いになりやすい。しかも、どちらもキャンペーンで大きな活躍を期待できるような性能なので、MODを導入しない限りそちらで使えないのは非常に勿体ない。
  • オートパイロット機能が搭載されていない。ミッション完了後の暗転までの待機時、兵装カメラへの切替時、第59戦線ミッション4の最後のトンネル突破時が特に不便で、墜落防止のために手動で水平飛行状態にする必要がある。

バグ・不具合(問題点)

  • ミッション中のフェーズ移行処理が正しく行われず、リトライを余儀なくされる場合がある。
    • ミッション14では、極稀に山の中に地上ターゲットが出現し、攻撃が届かずに詰むことがある。
    • ミッション20では、後半の対艦戦で敵艦隊の全滅が早過ぎると高確率で最終フェーズへの移行が行われなくなる。隠し機体を使っていると非常に起きやすい。
    • 第59戦線ミッション2では、敵艦隊防空ラインに侵入すると敵全滅後の処理がされない。
  • コンクエストでは膨大な数の敵が出現するため、ハードのマシンパワーが足りないと常時処理落ちする。その影響か、レールガンをエアシップに直撃させたのにすり抜ける現象が時折発生する。
  • Steam版ではコンクエスト関連実績にバグあり。よりにもよって本作最難関実績の2項目で発生する。
    • アラートレベルが最大の30に達しても実績解除されないことがある。この場合は新規でデータを作り直して、再度レベル30まで到達しなければならない。
    • 全機体を揃えても実績解除されない。何故かキャンペーンの方で機体購入すると解除される模様。この対処法に気付かずに機体アンロックリセットを行ってしまうと膨大なやり直し作業を生むことになる。
  • ゲームプレイやストーリーを楽しむ上で大きな支障はないが、日本語訳の一部に不備がある。
    • UIやファイル・アーカイブのフォント等の調整が不十分で、文字のはみ出しや重なりがいくつか見られる。
    • 特徴欄で触れた「コルディアム(コルディウム、コルジウム)」のように、本作独自の用語の表記ゆれも多い。国名などは表記ゆれのせいでぱっと見別の国に見えるものもあるため混乱することも。
    • 台詞字幕の翻訳は概ね良いが、誤植をそのまま翻訳していたり、言い回しが不自然なものや誤字脱字を含むものが少ないながらも存在する。
  • PS5版には、ゲーム商品としての質を問われるレベルの深刻なバグがある。
    • 一度キャンペーンモードに進むと、「戻る」ボタンを押してもタイトルに戻ることができず、ブリーフィング画面を繰り返す。こちらはアップデートで解消済み。
    • 条件を満たしてもキャンペーンクリアトロフィー取得できず、そのデータでコンプリートが永久に不可能となるバグあり。
      • これを回避するには「第59戦線を一切プレイせず、本編を1周目ハード→2周目マーセナリーの順でクリア」しなければならない。
      • このバグが発生した場合、PS5のホーム画面から本作のセーブデータを削除(ゲーム内でのデータ削除では不可)、最初からのやり直しを余儀なくされる。
      • XやRedditでは、「戻る」バグが解消したバージョンでも発生していること、上記のプレイ方法を守ってもバグが発生する場合があることが報告されている。
      • 知らなければまず回避不能・遭遇したらデータ削除が必要・正しい方法でプレイしてもバグを確実に回避する保証なしという凶悪バグとなっている。
    • 上記バグが影響したためか、PS5版のPSストアでの評価は★2.6(2025年1月時点)と、Steam版では「非常に好評」とは思えないほどの低評価を下されている。

総評

エースコンバットファンによるエースコンバットファンのためのゲーム。
総じてインディーゲームとは思えないほど作り込まれており、一つのフライトSTGとしての完成度は並みのコンシューマゲームを超えている。
特に評価すべきはエースコンバットに対するオマージュ要素の多さであり、同シリーズのファンが喜ぶような内容で構成されている。
とあるレビュアーの言葉を借りるならば「遠い異国の地で味噌ラーメンを注文したら、思っていた通りの味噌ラーメンが出てきた」ようなもの。
有名シリーズ物の単なる模倣では終わらず、中身のクオリティでもそれに匹敵し、さらにはオマージュ元の良さを潰さない独自要素も兼ねた作品となった。


余談

  • MODについて
    • 追加機体
      • 発売から間もなくして、A-10などの本編未登場機が使えるMODが配信された。ただし、2021年3月時点では、使用可能機としての体裁は整っているが一部未完成(ハンガーでのギア描写がない・コクピット内部がガワのみなど)の機体、非武装またはハリボテ状態で実質使用不可の機体があるので注意。
      • 上記とは別の作者によるものだが、VX-23をF-22もといUF-22と入れ替えるMODも配信されている。こちらは初期収録機のような非常に高い完成度で、敵機として出現した場合でもスキンが本来のものと一致するように設定されている。同MODに『AC04』のメビウス中隊スキンも同時収録されていたことや、他のMODとの互換性も高いことから評判も良い。
    • スキンについては、実在機の再現、エースコンバット関連スキン、痛機、オリジナルなど種類が豊富。
    • 使用機体問わず、プレズが無線上に登場するMODが人気で、他のMODにも組み込まれていることが多い。中には、これと辻褄を合わせるために全ての単座機を複座化したMODを作成した者もいる。
    • 使用可能機の性能を見直したバランス調整MODが存在する。
      • 低過ぎる基本性能を上方修正する、搭載可能兵装の種類を増加、役に立たない兵装を別のものに入れ替え、スロットが少ない機体には通常ミサイルの連射数を増やすなどの調整がされ、各機の個性がより強調されるようになっている。
      • 兵装の中には本編には登場しなかったものも含まれており、さながら拡張パックのようなMODとして機能する。
    • 他には、全機体が全兵装を使用できるようになるMOD、全機体に隠し機体の運動性能を付加するMOD、アフターバーナーの色を変更あるいはコルディアムエンジンのエフェクトにするMODなど、見た目の大幅変更から難易度・性能変更まで多種多様なものがある。
    • PS5準拠の2.0β以降のバージョンに上げると、それまで使用できたMODは全て使用不可能となる(ファイル破損エラーが出力される)。
      • 旧MODを使いたい場合はバージョンを2.0βより前に戻す必要がある。
      • DLC発売後、全機体を第59戦線で使用可能となるMODが作成された。隠し機体を使って大暴れするなどの通常ではあり得ないプレイが可能。
  • Pavli氏はYouTubeなどで本作の全BGMを無料公開している。iTunesからサウンドトラックの購入も可能。
  • スタッフロールでは計2,467人のクラウドファンディング支援者を記載していることで、12分を超えるほどの長さになっている。エースコンバット絡みのハンドルネームを付けている支援者は多く、中には堂々とシリーズ名を名前に載せている者もいる。
  • YouTubeやニコニコ動画では、本作のBGMをエースコンバットのものと置き換えたプレイ動画が複数アップロードされている。特に、ミッション11,21で、似たようなシチュエーションのBGMに入れ替えているものが多い。
最終更新:2025年01月03日 23:45

*1 「Hands On Throttle And Stick」の略称で、パイロットがスティックやスロットルレバーから手を離す事無く、レーダーや兵装の操作を行えるように作られた操縦装置のこと。

*2 字幕表示なし。『AC04』では「くたばれ!」と表記。

*3 難易度マーセナリーでは護衛機を引き連れてくるため、厳密には一騎打ちではなくなる。

*4 他のフライトゲームでは、確実にミサイル回避できるが弾数制限あり(エースコンバット、サイドワインダーなど)、無限に撃てるが本当に効果があるのかまるで実感できない花火同然の存在(エアロダンシング、エナジーエアフォースなど)のどちらかであり、高性能と弾数無限を兼ねることはまずない。

*5 文字通り桁違いの再生数であり、共に100万再生を突破。

*6 UAVの15機撃墜はそのミッションの最高ランク獲得に必要な最低条件で、難しさの方向性がこれにかなり近い。

*7 時期的には00年代前半辺りから航空機メーカーが機体の著作権を主張し出したため。極端な例としてPS2の『エアフォースデルタ ブルーウィングナイツ』では「ゲーム本編で普通に登場する一部の機体が攻略本では権利許諾が得られなかった影響によりその情報が記載されていない」ことが挙げられる。余談ではあるが、『アフターバーナークライマックス』では、実在の戦闘機を名称も含めて収録する際にボーイングとノースロップ・グラマンにライセンス料を支払った上で公式に使用許諾を得ている。

*8 例えばAV-8B ハリアーIIは本作では「ACCIPITER」という名称になっている。一見元ネタに一切関係ないように見えるが、「ACCIPITER」は猛禽類の一種である「ハイタカ」を意味し、同じ猛禽類の「チュウヒ」から取られた「ハリアー」にかけたネーミングであると思われる。

*9 全体的な機体形状はF-22よりむしろ中国のJ-20に近く、J-20の機首及びエンジンノズル周りをF-22のそれに置き換えたような機体となっている。