100万$キッド 幻の帝王編
【ひゃくまんどるきっど まぼろしのていおうへん】
| ジャンル | ギャンブル |  | 
| 対応機種 | ファミリーコンピュータ | 
| 発売・開発元 | ソフエル | 
| 発売日 | 1989年1月6日 | 
| プレイ人数 | 1人 | 
| 定価 | 5,900円 | 
| 判定 | クソゲー | 
| ポイント | 昭和史最後に発売された歴史的ゲームソフト 突然始まるキャラ崩壊
 ポーカーのベットはかなり面倒くさい
 ノイズエフェクト使いまくりで目に悪い
 カジノ系ギャンブルゲームとしての出来は悪くない
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| 少年マガジンシリーズ | 
 
概要
『MMR』などで知られる石垣ゆうき氏による少年ギャンブル漫画作品『100万$キッド』のゲーム化作品。
原作は少年マガジンで1986年41号から1988年19号に連載された、少年誌におけるギャンブル漫画の草分け的存在。
本作は原作に倣い、ポーカーやルーレット等といったカジノ系ギャンブルを扱ったゲームとなっている。
昭和64年にソフエルから発売されたのだが、発売時期についてはゲーム史的に大きな意味を持つ(詳細は余談を参照)。
原作の主人公「二階堂ひろし」は、本作でもパッケージに描かれておりタイトル画面にも出ている。
だが、彼がこのゲームのプレイヤーキャラという訳ではない。
内容
「ドローポーカー」「ブラックジャック」「スロットマシン」「ラスベガスルーレット」と、4種類のゲームを収録している。
ゲームのモードは「フリーモード」と「クエストモード」がある。
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フリーモード
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上記4通りのゲームをその名の通り選んで自由に遊べるモード。
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クエストモード
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このモードでゲームスタートすると、主人公のひろしが「君の目標は世界のギャンブラーたちに神様と呼ばれている『幻の帝王』を倒す事なんだ!」と、ザックリしすぎた目的を告げる。
 ラスベガスから始まり、モナコ、ニューヨーク、日本を舞台に、その幻の帝王を探すために各地のディーラーとギャンブルで対決することになる。
 スロットを除き相手の所持金を0にすれば勝利となる。ディーラーの中には条件を満たさなければ勝負してくれないのもいる。
 このモードはパスワードによるコンティニューを採用している。
問題点
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目の疲れるノイズエフェクトのムダな多用。
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タイトル画面からいきなりそれで始まり、場所を移動すると、現地のグラフィックが出る前に再びそれが発生する。
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更に勝負に入る前にも発生する。
 
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操作にタイムラグがあり、連続入力がスムーズにできない。
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特にベットする場合、コインの種類を左右で選び、上下で増減させるという、ちょっとややこしい操作性。これは毎ゲーム必須な操作なので、スイスイできないのがテンポを悪くしている。
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特にドローポーカーでは相手の賭け額からスタートするので、せめてボタン1つで最大額を賭けられるなどの配慮ぐらいあっても良かったのでは?
 
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更にパスワード入力もやりづらい。30字はこの当時を思えば短い方ではあるが、上記の通りカーソルがスムーズに進まないことに加え、文字の並びも五十音を12×6に押し込めているため、直感的でなくわかりにくい。
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最初の段が「あ」~「し」で、「あ」の下に「す」が並んでいる状態。
 
 
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文字がオールひらがな。
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キャラの名前どころか、本来カタカナで表記する用語までひらがな表記。読みづらい上に、雰囲気も壊している。
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当時は『ドラゴンクエストシリーズ』でさえカタカナは限られたものしか使えない時代だったので、容量的な問題はあるのは仕方がないとしても、名前にせよ用語にせよ使用されているのはカタカナが圧倒的に多いので、容量的な問題ならすべてカタカナにした方がまだ合っていただろう。
 
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主人公は名前を入力する点からしても、クエストモード開始時にひろしが「君は」と言っていることからしてもプレイヤー自身なのだが、誰かと対面した一枚絵にいるのはモロにひろし。
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因みに上記の通りクエストモード開始時とラストでひろし本人も現れるのだが、その時はプレイヤーのグラフィックが別人(というより影絵のひろし)になるので紛らわしい。
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つまり、グラフィックのひろしは、ゲーム開始時は本物のひろし、ゲーム中は主人公(プレイヤー本人)、ラストはまた本物のひろし(しかも、ついさっきまでひろしのグラだったプレイヤー本人まで一緒にいる)というややこしいことになっている。
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おまけに、出会う人物がプレイヤーキャラを「ひろし」と呼んでくる。
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これなら名前入力も必要なく、原作の主人公ひろしがそのままプレイヤーキャラで良かったのでは?ついでにフリーモードでもこの意味のない名前入力をさせられる。
 
 
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クエストモードの人が対戦できるのかただのモブなのかが区別がつきにくい。
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一度話してみないとわからない上に、上記の通り操作性の滑らかさがないので、用もなく話すことすら鬱陶しく感じる。
 
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メッセージが固定のためかキャラ崩壊が激しい。
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最初「おれを なめるなよ!」と言ったかと思いきや、こちらが掛け金の上限を超えて賭けようとすると「かけきんがおおすぎます」だとか「わたしは ぶらっくじゃっくではありません」だとかキャラが全然定まっていない。賭け額のミスを連発していると果ては「あほかわれ! ええかげんに せいや!」と関西弁まで飛び出すなど、シリアスなのかコミカルなのかよくわからないことになっている。
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最初やラストのひろしにしても一人称が「おいら」と「僕」が意味もなく混じっていたりとメチャクチャ。
 
評価点
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ギャンブルゲームとして、システム自体には抜け目がない。
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ブラックジャックの「サレンダー」や「スプリット」「インシュアランス」といった細かいシステムなどもちゃんと取り入れられている。
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「ルーレット」に関しても4コマまで賭けられる。
 
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ドローポーカーの相手の立ち回りは単調に見えて時折、ハッタリをかましてきたりとそれなりに思考ロジックが出来ている。
総評
当時、このようなカジノ系ギャンブルのゲームは非常に少なく、一応独自性はある。ポーカーに関しては円滑に進めるための配慮が多少足らないところがあるが、それ以外に関しては入力操作のタイムラグを加味しても無難に楽しめるので、これだけなら名作ではないにせよクソゲーというほどではない。
しかし、カタカナ主体のゲームなのにアルファベットとひらがなの表記だったり、いちいち鬱陶しいノイズエフェクトの頻発など、快適なプレイを阻害する要素が多すぎる。
また、台詞使い回しのためにいきなり起きるキャラの崩壊など、細かい部分の作り込みが足りない部分も目立つ。
ゲームにおける昭和史の大トリとなった歴史的ソフトには違いないが、「それに相応しい名作」とは言えない水準に留まってしまったのは残念なことである。
余談
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本作の「ラスベガスルーレット」は、ディーラーのセリフからおおよその数字が特定できるとの研究結果が報告されている。(参考リンク)
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本作とFC版『スペースハリアー(タカラ)』は同日発売で「昭和最後のゲームソフト」である。
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しかもスペースハリアーは元々1985年のセガ作品の移植なので、純粋な新作である本作こそ正真正銘昭和史最後のゲームソフトと言っても過言ではないだろう。
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1週間しかなかった昭和64年内発売されたソフトは他に2日前の1月4日に発売された『がんばれゴエモン2』がある。これは昭和最後ではないが「昭和64年発売」となると紛れもなく昭和最後の本作を差し置いてこれが最も取り上げられることが多い。
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本作もスペースハリアーも昭和63(1988)年内に発売するはずが順延したためかクレジットは「SEGA 1986 TAKARA 1988」「SOFEL 1988」だが、ゴエモン2はハナから昭和64年内発売を意識していたのかクレジットも「KONAMI 1989」になっているせいとも考えられる。またゴエモンは後に押しも押されもしないコナミの看板キャラとして定着したこともあるだろう。
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経緯はどうであれ、本作は名実ともに昭和最後に発売されたソフトには違いないのに中身がイマイチなためか、インターネットが普及した現在でも、あまりそれを取り上げられない傾向にあるという気の毒なゲームソフトである。
 
 
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因みに平成最初の発売ソフトは1月14日発売のファミコンディスクシステムの『ハレーウォーズ』(タイトー)とPCエンジンの『ビジランテ』(アイレム)だが、ともにアーケードからの移植。
最終更新:2024年07月19日 00:43