けものフレンズ3 プラネットツアーズ
【けものふれんず すりー ぷらねっとつあーず】
ジャンル
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フレンズたちが"ちからくらべ"するカードゲーム(TCAG)
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対応機種
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アーケード(Nu SX)
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発売・開発元
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セガ
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稼働開始日
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2019年9月26日
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稼働終了日
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2021年9月30日 26:00
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プレイ料金
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1クレジット100円
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プレイ人数
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1人
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判定
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なし
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ポイント
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『けものフレンズ』アーケード初進出 自分だけのフォト(カード)を作れる点は好評 アプリ版との連動で入手したカードはゲームでは使えない どの層をターゲットにしているのか不明瞭
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備考
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1クレジットにつきカード1枚排出 Aime、ALL.Net対応
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概要
『ケロロ軍曹』の吉崎観音がプロジェクト・クリエイティブリーダー&アニメ版コンセプトデザインを務め、漫画・演劇など多方面に展開していったコンテンツ「けものフレンズプロジェクト」の、初となるアーケード作品。
とある群島に設立された巨大複合動物園“ジャパリパーク”内の新施設“プラネットアース”を舞台に、美少女になった動物・アニマルガールこと“フレンズ”達が2対2のタッグを組んで、それぞれ“ちからくらべ”をしたり“セルリアンたいじ”をしたりして競い合う内容。
同時期にサービスが始まったモバイルゲーム『けものフレンズ3』(以下アプリ版)との連動要素もある。また、モバイルゲーム『けものフレンズぱびりおん』とのコラボも行われた。
システム
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一言で表すなら「コンテンツファン向け」。
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コンテンツファン向けサービスの色が濃く、アーケードゲーマーが腕を競うようなゲーム性ではない。
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ゲームルールや操作は簡潔かつシンプルで、良く言えばとっつきやすいが、悪く言えば底が浅いとも言える。
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ただし稼働末期になると、やや複雑な新要素やハードな周回を要する要素も盛り込まれた。
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原則として1プレイ(1クレジット)ことに1枚のカード(現物の紙カード)を入手できる。筐体内に内蔵されたプリンタでその場でカードを印刷するオンデマンド方式。
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加えて、イベントモードへの挑戦や後述する幾つかの要素を楽しむにはプレイヤーデータ保存の為Aimeカード(もしくは互換品であるバナパスポートカード)が必要となる。
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排出カードにはQRコードが印刷されており、これを読み取って識別する(『艦これアーケード』等のようなマイクロチップ式ではない)
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排出カードの裏面には、現実の動物の写真や説明文が記載されている。これは全くのランダムであるため、表面と裏面が同じ動物(フレンズ)となっているカードは「表裏一致」として珍重されることも(ゲーム的にはメリットはない)。
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カードは3種類あり、「フレンズカード」「スキルカード」「なかよしフォト」を組み合わせてデッキを組むというもの。
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「フレンズカード」2枚、「スキルカード」2枚(2体のフレンズに1枚ずつ付ける形)、「なかよしフォト」1枚の、最大5枚のカードを使ってゲームを行う。
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「フレンズ」はそのままクエストで使用するキャラクター、「スキル」は組んだフレンズに効果を与える装備品カード、「フォト」はデッキ内のフレンズ両方に効果を与える他、フォトに写っているフレンズがデッキ内にいると、さらに効果が上昇する。
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バトル中は決定ボタンを押すことでスクリーンショットが10枚まで撮影でき、その写真を実際にカードとして印刷する事ができる。
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印刷したカードは「いつでもフォト」と呼ばれ、「なかよしフォト」と同じ扱いとなる。
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ゲームモードはメインとなる「ぼうけんする」、期間限定クエストを遊べる「イベントであそぶ」、後述する「きずなチャレンジ」、カードのみを購入する「カードをかう」の4種類。
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戦闘画面は、基本5VS5のコマンド入力式RPGだったアプリ版とは大きく異なり、2VS2で「セルリアン退治」もしくはフレンズ同士の「ちからくらべ」を行う。
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ルーレットで先行・後行を決めた後、攻撃の際はタイミングよくゲージを止め、防御は素早くボタンを押し、必殺技はボタン連打でゲージを埋める…など、ほぼすべてのコマンドにアクション性の高いミニゲームが付随する。
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一応コマンド入力式RPGと呼べるシステムなのだが、プレイ上の感覚としてはミニゲーム集をやっている気分に近い。
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クエストクリアの際はフレンズたちがハイタッチをするため、タイミングよくボタンを押すことでスコアにボーナスが付く。
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フレンズには体力ゲージの他、必殺技「けものミラクル」が発動できるミラクルゲージが存在し、満タンになることで発動が可能となる。
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2人同時に溜まると連続けものミラクルが発生し、ミニゲームのクリアによって効果が上昇する。
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相手側のけものミラクルは「コチョコチョ」のミニゲームをクリアする事で発動を妨害することもできる。
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戦闘中は一定確率でボーナスゲームが発生し、それぞれ味方側に有利な効果が起こる。
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クエスト終了後にはフレンズカードもしくはスキルカードが排出される。
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今回の「ちからくらべ」で倒したフレンズのカードが出る確率が高くなっているため、どうしても欲しいフレンズを倒した場合、深追いして連コインしてしまうこともしばしばである(コインを追加することでカードのみ連続で買える)。
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一定の確率でフレンズたちの写真撮影が発生し、「なかよしフォト」を入手できる。
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フォトにはフレンズをパワーアップさせる効果がある。
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フォト用のスタンプやフレームなどもクエストで入手する素材を用いてショップ画面で購入できる。
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アプリ版で入手したフォト(装備品の様な物)をQRコードの読み取り機能により実際のカードとして印刷可能。
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ただしそのカードを本作内で使用することはできない。単なるファンアイテムである。
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また、フレンズカードおよびスキルカードを、カード名などの装飾を消したイラストのみの状態で印刷することもできる。
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こちらもアプリ版との連動同様にゲーム内では使用できなくなるが、通常は装飾に隠れて見えない部分のイラストが見られるなど、コレクターには嬉しい要素。
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その他いろいろな選択肢があるが、原則としてカードを1枚排出するごとに1クレジット(100円)が必要となる。
評価点
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「自分だけのカードを作る」という新機軸。
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エモみの結晶「なかよしフォト」。
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ゲーム終了後、一定確率(けっこう高い)で「なかよしフォト撮影モード」が発生する。
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ここではデッキ内及び対戦相手のフレンズから2人を選び、選択したフレンズ達が仲睦まじく遊ぶ様子を観察しながら、タイミングよく7回までボタンを押して写真を撮り、うち1枚を採用して「なかよしフォト」として印刷する、というもの(その代わりフレンズorスキルカードの排出はされない)。
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フレンズを選択したとき、稀にランダムな3人目がやって来る事もあり、3人で遊ぶ姿を撮影することもできる。
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また、クエストの報酬で購入したフレームや飾りアイコンを使い、おなじみの「の」マークや数字など、様々な装飾を行うことができる。
装飾を所持しているとフレンズの能力が恒久的に上昇するが、フォトへの影響は無く性能を気にせず好きな装飾を行えるようになっている。
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こうして印刷されたフォトカードは、まさに自分で作り上げた自分だけのカードであり、愛着もひとしおである。ゲーム的に有利になるような組み合わせを狙うのもよし、エモい絵面を狙うのもよし。従来のTCAGには無かった要素である。
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前述の通り印刷された「なかよしフォト」に映っているフレンズでゲームを進行するとフォトの効果にボーナスが付く。
所謂「推し」を使用し続けるメリットにもなり、キャラコンテンツであるIPと噛み合っていると言える。
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さらなる高みへ「フレンズカード+」
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「フレンズカード」に、イベント等で獲得した素材を合成して、より強力な「フレンズカード+」を作ることができる。
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メインメニューの「カードをつくる」から、ベースにしたいフレンズカードと、使用するプラスジェムを選択すると、より強力な「フレンズカード+」が印刷されて出てくる。使用したジェムによってはイラストが変化する場合もある。
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ジェムごとに強化される能力値や付加されるスキルが変わるので、ある程度は自分の好きなように成長させることができる。
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ただし、「フレンズカード+」の作成にはAimeによるデータ保存が必須であり、作成者のAimeデータでしか使用できない(=紐付けあり)。また、カードを1枚印刷するたびに1クレジットが消費される。
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自分だけのカップリングを作れる「きずなチャレンジ」。
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専用のステージをクリアすることで、特定のフレンズ2人を「しんあいのリボン」で結ぶことができるモード。
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本モードは難易度が「げきむず(最高難易度)」かつ使用フレンズが「モード開始時に選択した2人」で固定され、一定のステージ数を攻略することが目的となる。
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「しんあいのリボン」で結ばれた2人には「しんあいLV」が新たに追加され、レベルに応じて様々な恩恵が得られるようになる。
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ただし、「しんあいのリボン」を特定のフレンズが複数のフレンズと結ぶことはできず、元の組み合わせと異なる組み合わせで「しんあいのリボン」を結んだ時点で「しんあいLV」は1に戻り、各種恩恵も受けられなくなってしまう。
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「しんあいのリボン」の恩恵。
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「けものミラクル」の強化。
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攻撃系であればダメージが上昇し、バフ系なら効果量が上昇するなど、単純にゲームを有利に進める事ができる様になる。
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その強化値は中々大きく、最大レベルの状態でうまくスキルカードとのシナジーを発揮できれば「きずなチャレンジ」の最後に待ち受けるボスや「大協力イベント」のボスなどの、作中最強クラスの敵であっても一撃で倒せるほどになる。
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特別な「なかよしフォト」が撮影できる。
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「しんあいのリボン」で結ばれた2体が楽しくダンスをする、というもの。
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非常に凝ったモーションが作られており、息の合った動きで楽しく踊る2体のフレンズの撮影はとても7回の制限では満足できないことだろう。
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専用の「プラスジェム」。
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前述した「フレンズカード+」を「しんあいのリボン」専用の特殊仕様で作成できる、というもの。
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このプラスジェムを使用して作成したカードは特別なフレームが採用され、2枚のカードを繋げることでカード同士がリボンで結ばれているかのような見た目になる。
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元々コンビとして描かれるフレンズ2人 はSSRイラストが繋げて1枚の絵になることも多く、しんあいのリボンで結ばれたカードには形容しがたい達成感がある。
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これらのように、「あらかじめ用意されたカードを集める」ゲームから一歩進んで「自分だけのカードを作る」という従来になかった要素を全面に押し出している。
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「アナザーカード」の存在。
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「フレンズカード」「スキルカード」は、入手時に確率で「アナザーカード」と呼ばれるバージョン違いのカードになる。
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アナザーカードはSRフレンズカードを除きイラストが元のカードから変化し、性能は変わらないものの、使用することで得られる経験値にボーナスが付く。
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つまり実質的に2倍の種類のカードが存在し、既に所持しているカードであっても変化後のイラストはどんなものなんだろう?と、収集欲を刺激してくれる要素となっている。
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ダブりカードの「印刷をしない」機能。
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Aime、ALL.Netを使用している場合、既に入手したことがある(アナザーカードと通常のカードは別で判定される)カードが排出されると「獲得ゲーム内通貨を増やす代わりに印刷を止めるかどうか」を選択する画面が表示される。
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ゲーム的に価値の低いカードが廃棄され、紙資源やインクの無駄が発生する事はTCAGではしばしば問題視されるが、自然な導線で問題を解決する環境に優しいこの機能は「動物をテーマにした『けもフレ』らしい」と言えるだろう。
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フレンズのCGモデリングなど、グラフィック面の出来が良い。
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フレンズについてはアプリ版と共用であり、モデル自体に殆ど違いがない。
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しかし本作では、大きめの液晶モニターを縦置きで使用しており、楽しく動き回るフレンズたちの全身を大サイズで見ることができる。繰り出される「わざ」も、より可愛らしく、あるいは迫力あるビジュアルで堪能できる。これはアプリ版に勝る大きな魅力となった。
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アプリ版は、先述のように5VS5の戦闘で、スマホの画面を横持ちでプレイするため、表示されるフレンズたちの姿が上半身のみや、とても小さなものになってしまっていた。
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前述した各種ミニゲーム成功時、カード読み込み時や印刷時などにアーケード版専用のボイスを聴くことができる。
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本作内のスクショをカード化できる、アプリ版のフォトをカード化できるなど、「攻略上は意味がなくてもファンアイテムとして嬉しいカード」「他人が持っていない自分だけのカード」を入手できるという試みは、あまり前例がなくユニーク。
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特筆するほどではないが、当時の全国ランキングではいわゆるランカー編成というものは固定されていなかった。強SSRキャラが固定化されこのフレンズを使えば最速1位!他は弱キャラ!と言った現象はあまり起きておらず、当時のtwitter告知ではアフリカゾウやアライさんを始め様々なキャラをメイン編成にしたランキングが発表された事もあった。(もっともこのランキングは最強編成とは微妙に異なるかもしれないが) 少なくとも「いわゆる人権キャラ」はおらず、どのフレンズ推しでも上位に行く可能性があったのは世界観にあったゲーム性であろう。
問題点
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そもそも誰をターゲットとしているのか良く分からない。
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アクションの多くが非常にシンプルで、ゲーム内の文字も大半に漢字が使われていないなど、全体的に児童向けのゲームデザインとなっており、『けもフレ』ファンの多くが青年層である事を考えるとチグハグ気味な印象は拭えない
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実際、筐体が『アイカツ!』や『プリティー』など低年齢層向けアーケードゲームのすぐそばに置いてある事が多く、大人のファンからは「遊び辛い」という声も見られている。
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各種カードのイラストも全体的に萌え寄りのタッチが多く、「子供向け」というにはやや疑問符が残る。
そもそもフレンズのデザイン自体に扇情的な恰好も多いのだが…。
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もっともアニメの時点で「おにいさん」「おねえさん」と呼称される専門家による動物の解説や映像等、児童向けの教育番組に対するオマージュ的な演出は存在していた。
また、過去に夏休みの朝に再放送された際には、児童層を意識したであろう映像が追加されている。
そのコンセプトを引き継ぎ、敢えて低年齢層に寄せた作風で展開していたとも解釈できる。
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2対2の対戦形式や2台同時に稼働しているゲームセンターなども見られている割に、おおよそ1人プレイ専用のゲームとなっている。
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スコアランキングはあるため、一応競う要素は残っているといえなくはないが。
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「大協力イベント」と呼ばれるイベント中は、一定条件下で店内の他プレイヤーのフレンズが助けてくれる仕様こそあるものの、同時に同じモードを遊ぶ必要があり友人同士でもなければ成立しにくいものとなっている。
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アプリ版のようなネット対戦機能も全くない。
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なお、筐体は『新甲虫王者ムシキング』の使い回しであり、そのためかゲームデザインも非常に似通っている。
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シナリオが存在しない。
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媒体の違いというのもあるが、アプリ版の方はシナリオ面を評価する声が見られており、アーケードの方にはシナリオが一切無いのは少々寂しい。
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アプリ版との連動で印刷したカードは本作で使う事ができない。
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先述の繰り返しになるのだが、公式サイトなどで連動を大きな売りにしていた割には、その実態はまったく実用性のないファンアイテム。「それでも面白い」と思う人がいた一方で、拍子抜けした人も。
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当初はエラー、故障、インク切れ、印刷ミスなどの報告が相次いでいた。
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これに関しては先述したムシキング筐体のリストア製品であり、本作のみのために作られた新しい筐体は無い事からコストを抑えた結果とも言える。
総評
ゲームそのものに大きな破綻は無くゲームの更新やカードの追加も小マメに行われていたのだが、残念ながら大きく話題になったとは言えず2年程の稼働で幕を閉じた。
結局は雰囲気、ストーリー、フォト等はアプリ版でもおおむね問題無く楽しめ、大きな差別化ができていなかった点が要因と言える。
一応、稼働中の情勢を踏まえて、2年も続いただけで立派だと評価する声もある。
アプリ版のシナリオでもフィーチャーされたフォトを現実の収集要素として大きく取り上げた点も評価できるだろう。
また当たり前すぎて評価から見落としがちだが、
SEGA特有のとても可愛らしい3Dモデリング
は令和の当時としても評価に値する。
動物の姿と原作を再現するだけに留まらず、ファンタジーで可愛らしく動きも完璧と言える程完成度は高い。DIVAシリーズや艦これAC、FGOACのセガチームならではの納得の出来。
余談
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アプリ版は2021年8月1日をもって、開発運営がセガからアピリッツへ移管している。
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また、アーケード版の稼働終了に併せてアプリ版内でのQRコード表示機能も削除され、アーケード版とアプリ版の連動要素は撤廃されることとなった。
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2022年6月6日、PS4版がアピリッツ名義で突如運営開始。ジャンルはフレンズたちと“わくわくどきどき探検”するRPG。
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しかしわずか10日後の6月16日から長期メンテナンスに入り、そのまま再開することなく8月2日にサービス終了が発表された。
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アプリ版は中国語圏など向けの海外版のリリースが2023年を目安に行われる事も発表されている。
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アーケード特有の問題点というわけではないが、『3』以降神話といった架空の生き物のフレンズ化が多くなったことには賛否意見が見られている。
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もっとも初代ゲームから四神は話の中心に居たり、フライ版漫画のピーチパンサーの存在等今更ではあるが。
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ゲーム自体は完全にオンラインサービスは終えているが、当時ゲーセンに配布されていたサーバルちゃんの等身大パネル(POP)は2023年現在も少数現存している。
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最盛期は400店舗以上、500台以上稼働した実績のあるゲームであり、POPも同様に数百は存在していたため、ゲーセン側の好意で今でも残っている可能性はある。
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ただし別ゲームの広告を全身に貼り付けられていたり、物騒なライフル銃のPOPを装備しているなど明らかにネタ的な運用をされている店舗もある。まあゲーセンの所有物なので自由ではあるのだが。
最終更新:2024年03月31日 17:38