本項ではセガサターン用ソフト『クロックワークナイト ~ペパルーチョの大冒険・上巻~』『クロックワークナイト ~ペパルーチョの大冒険・下巻~』を紹介します。(判定は上巻が「なし」、下巻が「良作」)



クロックワークナイト ~ペパルーチョの大冒険・上巻~

【くろっくわーくないと ぺぱるーちょのだいぼうけん じょうかん】

ジャンル アクション
対応機種 セガサターン
発売・開発元 セガ・エンタープライゼス
発売日 1994年12月9日
定価 4,800円(税別)
プレイ人数 1人
レーティング セガ審査:全年齢推奨
判定 なし
ポイント セガサターン初期のマスコット的作品
おもちゃの部屋をヘンテコ騎士が大冒険
癖は強いがコツを掴むと気持ちいい操作感
強引な分割販売で薄すぎるボリュームに

概要

セガサターンの発売初期に登場した2.5Dアクションゲーム(ローンチではない)。おもちゃの騎士の冒険を描いた、全年齢向けタイトルである。

本作は発売前から雑誌で大々的に扱われており、サターンの初動を支える役目を担っていた。初期のサターンを代表するソフトとして、今なお愛するファンは少なくない。

制作

本作品はセガサターン用に企画された最初のソフトである。
当初は剣と魔法のファンタジーとして制作されていたものの、「世界観に魅力が無い」「画面が暗い」などの理由から没を重ねており、最終的には幅広い客層に訴求するべく、ゲームマニアで無くとも親しめる「おもちゃの国」という世界観に方向性が落ち着き、そこからはスムーズに制作が進んだといい、誰でも楽しめるように難易度を控えめに作られている。*1


あらすじ

ゼンマイ仕掛けの人形「トンガラ・ド・ペパルーチョ三世」は、子供部屋の郊外で暮らしている。トンガラ自慢の祖父ガールックは、その昔、子供たちに大人気のゼンマイ仕掛けの騎士で、さまざまな冒険をしてきたが、今は行方知れず。トンガラの楽しみは、三代仕える従者プルンチョから聞いた祖父の冒険を空想することと、オルゴール人形のチェルシーと話をすることだった。

子供部屋のアイドルであるチェルシーは不思議な力を持っていて、夜12時に彼女が歌い出すと、おもちゃたちは自由に動くことができる。ただし、夜明けまでに彼女が飾り時計の家に帰らないと、おもちゃたちは二度と動けなくなってしまうのだ。

おや、今夜も12時の鐘とともに、おもちゃたちが息を吹き返し始めた。おもちゃ箱や戸棚の中から、おもちゃたちが続々と集まってくる。

しかし突然、広場がまっ暗になった!停電だ!すぐに明かりはついたものの、なんとチェルシーの姿が消えてしまった。その上、一部のおもちゃたちの顔つきが凶悪になっている。どうやら屋根裏部屋に何かいるらしい。

大変だ!朝までにチェルシーを助け出さないと、おもちゃの国が滅びてしまう‼︎

トンガラは、騎士の誇りを奮いたたせ、プルンチョとロバのバロバロを従えて、チェルシー救出にむかった。時を同じくして、ライバルのジンジャーも愛馬シルバーとともに出発した。

(『上巻』説明書より。引用にあたり一部省略)


特徴

  • グラフィック
    • このゲームの世界は全て3DCGで描かれている。
    • キャラクター造形は子供向けの人形劇さながらで、かの『ひょっこりひょうたん島』を彷彿とさせる。
      • 単純に子供だけをターゲットにしたわけではなく、パッケージ裏では懐かしさを感じさせる世界観が推されている。
    • 背景はポリゴンで描かれているのに対し、キャラクターの殆どはプリレンダCGで表現されている。
  • 作り込まれた世界観
    • 今作には個性的な登場人物が多数登場し、説明書はその紹介に多くのページが割かれている。
      • ゲーム本編ではあまり描写されないものの、作り込みには力が入っている。
+ 登場人物

人型のキャラクターはチェルシーを除き、香辛料をもじった名前になっている。*2

  • トンガラ・ド・ペパルーチョ三世
    • 本作の主人公。ちょっと愉快な、おもちゃたちの人気者。時代錯誤な騎士道精神の持ち主で、チェルシーに振り向いてもらうべく一途に頑張っている。ペパルーチョの一族はおもちゃ作りの巨匠によって作られ、プレミアがついているらしい(「サタマガ」インタビューより)。
    • どこか滑稽で頼りないサマはアクションにも現れていて、走るときは大げさに腕を振り、ジャンプの時はいちいち足をバタつかせる。動きは何かとピーキーだが、そんなトンガラを如何にして使いこなせるかどうかが本作の肝である。
  • チェルシー
    • 本作のヒロイン。トンガラの憧れの人。おっとりした性格だが芯は強い。舞台となる家の女の子の一番のお気に入りである(「サタマガ」インタビューより)。
    • このゲームの目的は、拉致された彼女を助け出す事である。
  • ジンジャー
    • トンガラのライバル。劇中では別のルートで冒険を繰り広げているらしく、上下巻ともにエンディングでは美味しいポジションをかっさらっていく。しかしトンガラが巧みなプレイをこなせば彼の実力を認めてくれるなど、懐の広い一面もある。
    • ゲーム中、トンガラが隠しゴールに到達すると、彼との会話イベントが発生する。このときボスステージに回復用のネジを配置し、トンガラの戦いをサポートしてくれる。
    • 決定版ソフトとなる『福袋』では、プレイヤーキャラの1人に昇格した。
  • ソルティア
    • 香水のビン。陰ながらトンガラに好意を抱いている女性。鼻っ柱が高くわがままで、トンガラは何かと困惑しているようである。
    • 上下巻エンディングおよび下巻のオープニングでは、彼女のソロが堪能できる。特にエンディングはファンからの人気が高い。
    • ゲーム内ではカジノを開いており、各部屋をクリアするとクラウン(後述)をかけて残機稼ぎに挑戦できる。
  • プルンチョ
    • トンガラの従者のコマ。3代に渡りペパルーチョの元で仕えている。トンガラを何かと子供扱いしてしまう癖がある。
    • ゲーム内では、各ステージの直前でアドバイスをくれる。下巻ではある場所で特定の条件を満たすと「幻のネジ」をプレゼントしてくれる。
  • ル・ポン
    • ジンジャーの従者のゴムボール。プルンチョとは謎の連帯感があるらしい。
    • ゲーム内ではプルンチョ同様、各ステージのアドバイスをくれる。ジンジャーから秘密にしておくように言われているヒントをうっかり漏らしてしまうことも。
  • オネオン・ド・ペパルーチョ
    • トンガラの父。凡人だが文才があり、詩集も出しているらしい。
    • 彼もまた各ステージでアドバイスをくれるのだが、何故か名前の通り「オネエ」言葉で喋る。
  • パ・ズール
    • ジンジャーの師匠の絵合わせパズル。禅に興味があり、いつも瞑想しているらしい。
    • 彼も各ステージでヒントをくれる。
  • バロバロ
    • トンガラの愛ロバ。祖父の愛馬を亡くして悲しむトンガラのもとに、プルンチョがゴミ捨て場から拾ってきたらしい。
    • 『上巻』ではムービーに登場するのみだが、『下巻』では彼に乗って攻略するステージが存在する。
  • シルバー
    • ジンジャーの愛馬。主人のことを誇りに思っている。
    • こちらも『上巻』ではムービーのみの登場だが、『下巻』では一部ステージの隠しゴールの先に登場する。ジンジャーの命令でネジをボス戦に配置してくれるが、高難易度ではイジワルして置いてくれないことも。
  • ガールック・ド・ペパルーチョ
    • トンガラの祖父。ペパルーチョ家をおこした野心家。トンガラが夢見がちな性格になったのは、幼いころに彼の伝説を聞き続けたのが原因だという。
    • 作中ではかなり前に行方不明になっているが、『上巻』終盤では彼の怪しい影が……。
  • システム
    • 本作は体力制で、攻撃を3回食らうことで1ミスとなる。
      • ステージ内に落ちている金のネジを拾うことで体力の上限が増え、最大5回まで攻撃から耐えられるようになる。
    • 残り人数が0になるとコンティニュー画面に移行する。
      • ステージ内にはクラウン(ビンの王冠)が多数落ちていて、これを5枚集めて支払うことでコンティニューが可能。
      • コンティニューしない場合は最初からやり直しとなるが、普通に遊んでいれば数十枚のクラウンが集まり、尽きることはほとんどない。
    • オプションで、ゲーム難易度(3段階)と初期の残り人数が設定可能である。
  • 構成
    • 舞台はアメリカの片田舎にある、3人の子供が住む家*3。4つの部屋を攻略し、最後は屋根裏部屋にいるラスボスを倒すことでエンディングとなる。
    • 各ステージのゴールには幅跳びゲームが配置されている。"CLOCKWORK"という文字がベルトコンベアのように流れてくる中、指定されたアルファベットの上に着地できれば1UPする。
      • ただし本作は残り人数の価値がインフレしているため、あまり旨味は無い。
    • それぞれの部屋は2つの通常ステージと1つのボスステージで構成されている。
      • 2つ目の通常ステージには隠しゴールがあり、難易度NORMAL以下で到達すればジンジャーがボス部屋に回復アイテムを置いてくれる。
    • 部屋をクリアすると、ソルティアのカジノを遊べる。
      • ここではクラウンを支払ってルーレットに挑戦でき、うまくいけば残り人数を増やせる。
      • ルーレットは目押しも可能だが、動きが速いため確実に成功させるのは難しい。
  • 主人公・トンガラのアクション
    • トンガラはカギを武器にして戦う。攻撃ボタンを押す事で前方にカギを突き、敵をパンクさせたり気絶させたりする事ができる。リーチは短め。
    • 気絶させた敵は攻撃ボタンで掴んで持ち運び、投げる事が可能。これを利用して多くの敵を連続で倒せば、1UPする事ができる。
    • 方向ボタン2回押しでダッシュが可能。発生までの隙が大きく、使いこなすにはややコツがいる。

評価点

  • クセは強いが病みつきになるアクション
    • 本作一番の特徴は、トンガラのヘンテコな操作性である。加速度が大きめに設定されていて、初速が遅い代わりにダッシュ時は結構な速度になり、滑りやすい。
    • 思ったところにそのまま進めるわけではなく、その操作性は『スーパーマリオブラザーズ』に近い。コツを掴む事で上達を実感しつつ、スムーズかつスピーディな動きを楽しめるようになる。
      • 例えるなら、レースゲームでドリフトの効きやすい車を使いこなす快感に近い。
  • ペナルティを抑えつつ、手応えも味わえるバランス
    • 今作は残機が山ほど手に入るので、あまりゲームオーバーになる事が無い。
      • 高得点を稼ぐとエクステンドするが、そのボーダーは低く、数ステージ遊ぶだけで1UPしてくれる。
      • あちこちに落ちている1UPアイテムはステージ再突入時も消失しない。場所を覚えて毎回入手すれば残機が減らなくなる。
      • 部屋クリア時のルーレットは10機以上稼ぐのもたやすく、挑戦に必要なクラウンも山ほど手に入る。
    • しかしステージ構成は難しめに作られており、上手く乗り越えた時の達成感を得られる塩梅に仕上がっている。それでいてやり直しを要求させられるストレスは控えめなので、クリアの喜びを誰でも手軽に味わえるのが特徴。
      • 後年の作品で例えると、『ドンキーコング リターンズ』の調整が極端になったものと言えるかもしれない。
      • 10年代からはアクションゲームにおいて残機制の撤廃が定番となっているが、そのトレンドを先取りしていたとも言える。
  • "おもちゃの世界"ゆえの多彩なギミック
    • 積み木や汽車など、部屋に応じて様々な仕掛けが用意されている。見ていて楽しいのはもちろん、求められるテクニックが豊富でプレイヤーを飽きさせない。
    • ボス戦もバラエティに富んでいる。トンガラの攻撃リーチは短いものの、間合いを考えながら敵の弱点を探っていくのが楽しい。

賛否両論点

  • 評価点で挙げたアクション性だが、「モッサリしている」と批判する声も少なくない。
    • アクションに快適な操作性を求めるプレイヤーにとっては、大きな難点となる。
    • ただし先述の通り、本作の制動は『スーパーマリオブラザーズ』の時代から存在しており、極端に不自然な動作をしているわけではない。加速度の処理は理にかなっており、逆に「操作性が良い」と評する意見もある。
    • 後述する様々なUI面と合わせると、「アクションゲームとしては破綻していないが、94年のゲームとしては前時代的」と言った方が近いかもしれない。
  • 癖のあるキャラクターデザイン
    • パッケージを見てもわかるように、本作のキャラデザは子供向け教育番組の人形劇ような造形であり、外観も独特でやや癖のあるデザインになっている。
    • 特に主人公のトンガラはセガサターン初期のマスコット的キャラとして位置づけられていたため、そのデザイン性に対し否定的な声もないではなかった。
      • おもちゃの国の住人と言う設定を踏まえればコミカルなデフォルメが効いたデザインは大きく外したものでもなく、世界観によく似合ったデザインにはなっているので、好みや感性の問題でもあると言える。
  • 中間地点が無い。
    • ステージは決して短くないが、死ぬと最初からやり直しである。
    • これも昔のアクションゲームではありふれた要素だったが、94年発売のゲームとしてはちょっと不親切である。
    • 特に、落ちたら一発アウトの面は何度もやり直しを余儀なくされる。

問題点

  • 薄すぎるボリューム
    • 上巻最大の問題点。残機稼ぎを怠らない限り、本作は2時間ちょっとでエンディングが見られてしまう。
    • その上やりこみ要素も殆ど無く、高難易度で更に1~2周すればやる事が無くなる。
      • 難易度は3段階に分かれているものの、劇的にクリアが困難になったりはせず、プレイ時間はあまり変わらない。
      • 隠し要素と言えるものは、4つのステージにある隠しゴールを探すことくらい。
      • いちおうスコア計算が行われているが、理論上は無限に得点を稼げるのでやりこみ要素としては成立していない。
    • 分作である事はタイトルで明示されているが、それでもフルプライスソフトとしては薄すぎる。
    • こうなった原因は公言されていないものの、「プレイステーションに対抗するため、未完成のキラータイトルを年末商戦に向けて無理やり切り売りした」という説が有力である。
  • セーブ不可能
    • 94年のゲームにもかかわらず、進行度を一切記録する事ができない。
      • いちおうステージ選択は可能だが、裏技扱いである。
    • 大人が遊ぶ分には多少不便なだけで済むものの、ゲームの時間を制限された子供が遊ぶには問題がある。
  • キーコンフィグが役に立たない
    • 今作はある程度自由にボタン配置を変えられるのだが、選択肢は「AかCでジャンプ、Bで攻撃」「その逆」の2種類のみ。セガサターンの商戦タイトルにもかかわらず、メガドライブ時代のボタンしか使う事が出来ない。
    • 親指をずらさなくて済む配置、例えばXとA(またはZとC)でプレイすることはできない。
    • ダッシュ用のボタンも用意されていない。キー2回押ししなくてもワンボタンでダッシュできる機能は、前年の『ロックマンX』で既に実装されていたが、本作はボタン数に余裕があるのに未実装である。
      • 本作はダッシュが反応するまでに時間がかかるので、未実装は大変悔やまれる。

総評

セガサターンをゲーマー以外にも手にとってもらえるよう、満を持して送り出された本作。
しかし急いで出したが故に、1本のソフトとしては薄い内容となってしまっている。
本作のシステムを十分味わうには、下巻も合わせて遊ぶことが推奨される。

今から遊ぶ場合には、下巻も購入する前提で手にとるか、上下巻のカップリング移植『福袋』の入手がおすすめである。


クロックワークナイト ~ペパルーチョの大冒険・下巻~

【くろっくわーくないと ぺぱるーちょのだいぼうけん げかん】

ジャンル アクション
対応機種 セガサターン
発売・開発元 セガ・エンタープライゼス
発売日 1995年7月28日
定価 4,800円(税別)
プレイ人数 1人
レーティング セガ審査:全年齢推奨
判定 良作
ポイント 難易度上昇・収集要素追加・ルート増加
これらの調整によりボリュームの薄さを改善
操作性などは前作据え置き
流石にサターンの看板は荷が重かった
だがハマったプレイヤーからは「隠れた名作」と評されやすい

概要(下巻)

『上巻』から7ヶ月、完結編として本作が発売された。

発売前には雑誌やテレビ番組とのコラボレーションも行なっており、「セガサターンマガジン読者から募集したギミックの採用*4」「テレビマガジンで行われたイラストコンテスト採用作品がゲーム内に登場」などの企画が行われている。


特徴(下巻)

  • 構成
    • 今回の冒険は新たな子供部屋から始まり、書斎やバスルームを通って、最後は本作らしくクロックタワー(時計塔)でラスボスと決着をつける。
  • 上巻からの変更点
    • 収集要素としてトランプが登場。各ステージに4枚配置され、全て揃えると金のネジが出現する。
      • エンディングの後は各ステージで集めた枚数が表示される。全て集めると、ちょっとした隠しコマンドを教えてもらえる。
      • 現在はネットで簡単に見られてしまう*5ため、楽しみにとっておきたい人はネタバレを踏まないよう注意。
    • アイテムの入った"卵"が新登場。ステージの各地に落ちていて、投げて攻撃する事が可能である。
    • ロバのバロバロに乗って走る強制スクロールステージが登場。
      • 前作のオープニングはトンガラがバロバロに乗って出発するシーンで締められるのだが、これを見た前作プレイヤーから「バロバロ」に乗るアクションを求める声が多く、実装に至ったらしい(「サタマガ」のインタビューより)*6
    • 2.5Dアクションらしく、軸の変化シーンや2ライン制ステージも登場するようになった。
    • コンティニューやルーレットに必要なクラウンの数が増加。
      • ルーレットの移動速度は少しだけ遅くなり、前作と比べて目押しがしやすくなった。
    • 前作だとコンティニュー後は部屋の最初のステージから再開していたが、今作は最後にミスしたステージからの再開となった。
    • 持ち運んでいる敵が目を覚ましても、それがトンガラに当たってダメージを受けることが無くなった。
    • ゴール時のミニゲームにジャンプ台が設置された。踏むべきパネルは視覚的にわかりやすくなるよう改善されている。
    • HARDクリア時は短めのエンディングムービーが流れるようになった。

評価点(下巻)

  • 前作の難点であったボリューム面がかなり改善された。
    • まず全体的に難易度が向上。前作もステージ難易度は高かったが、今作はより歯ごたえが増している。
      • ステージ数はそのままだが、クリアまでにかなりの試行錯誤を求められるため、それなりのプレイ時間を要することになる。
      • 特にHARDモードの終盤ボスは難敵揃い。パターンを覚えるだけでは乗り越える事が出来ず、反射神経ありきの白熱した戦いが繰り広げられる。
      • 体力が底をつく中、一瞬のスキを見切ってトドメを刺すクライマックスはまさしく騎士の真剣勝負さながらで、見事打ち破った時の快感、そして最終リザルトが表示された時の達成感はたまらない。
    • そこに収集要素のトランプが加わった事で、周回してやりこむ楽しさが増した。
      • これは一見すると「ドラゴンコイン」や「KONGパネル」のような任意のやり込み要素に見えるが、NORMAL以上のエンディングを見るとクリア時に集めた枚数が公表されるので、コンプリートする意欲を与えてくれる。
      • HARDで探し回るとキツくなるが、無理に高難易度で集める必要は無い(後述)。まずは最低難易度のTRAININGで場所を把握し、その後NORMALで集めれば効率良くコンプリートできる。初見で全て集めるのは困難なため、じっくり集めた方が本作をより一層楽しめる。
      • コンプリートを目指さない場合でも、希少価値の高い金のネジがもらえるのはありがたい。
  • コンティニューの制約も若干改善。
    • 普通に進むとゲームオーバーにならないのは前作同様だが、今回は「必要クラウンの増加」「コンティニューは死亡したステージからの再開(=ボス戦の場合はクラウンの集め直しが不可)」という仕様になったため、わずかながらゲームオーバーになるリスクが生まれた。
    • 寄り道をしないとクラウンが不足しがちなので、手慣れたプレイヤーほど死亡のリスクが大きくなり、スリルが増す仕組みになっている。
  • 自由度の増したステージ設計
    • 今作はショートカットや分岐が多めに用意されており、攻略の自由度が上がっている。
    • 周回プレイ時は以前と違ったルートを探ることも可能で、トランプ集めのために周回しても飽きにくい。
    • 手慣れてくると、高難易度でも1時間以内にエンディングが見られる。

問題点(下巻)

  • 前作同様セーブ不可能。
    • 今作はプレイ時間が伸びたため、前作以上の難点である。
      • 前作のデフォルト操作は「A・Cでジャンプ、Bで攻撃」だったのだが、今作はデフォルトでCにしかジャンプが割り当てられていない。A・Bで慣れてしまったプレイヤーは、起動の度にキーコンフィグを設定し直す手間がかかる。
  • トランプ集めの調整不足
    • トランプの隠し方や入手自体はそこまで理不尽では無いのだが、システム周りに何かと噛み合っていない。
    • 本作はアーケードゲームのような一方通行なので、一度クリアしたステージには二度と入れない。トランプを取りこぼした状態でステージをクリアすると、その時点でコンプリートが不可能になる。100%クリアを目指す場合は最初からやり直し確定。
      • 各部屋の第2ステージには隠しゴールが存在するが、何も知らずにここに入ってしまう事故が起きやすい。
    • 中でも悪質なのが強制スクロールの3-2。最後のトランプを取りこぼした後は自滅する手段が殆ど無く*7何十分もかけて進めた冒険を最初からやり直す羽目に。
      • 入手方法も「トランプがどこにあるのかわからないままジャンプ台を使用する」というもので、前方向にキー入力を押さないとスピードが足りず入手に失敗する。取りこぼすと致命的なトランプにもかかわらず、ミスを誘発しやすい。
    • それ以外にも、ゴール前に来たら時間切れを待たない限り自滅できなくなる2-1は不親切。
    • コンプリートを目指さない場合でも、3-1と3-2のトランプをステージ登場順に揃えた場合は金のネジを取るのが困難*8で、集めた苦労が台無しになる。
  • HARDクリア時のトランプ集めの報酬
    • トランプのコンプリート特典はNORMALとHARDで異なっている。しかし何も知らずにHARDでいきなり収集すると、肩透かしを食らう羽目に。
      + ネタバレ注意
    • NORMALのコマンドではステージ選択機能が使えるのに対し、HARDは隠しエンディングがいつでも見られるのみ。エンドコンテンツとして実用性のあるNORMALに比べて、HARDの方が明らかに格落ちしている。
  • そのうえHARDのトランプ集めはかなりキツいので、何も知らずに初見でこちらからクリアすると損した気分になる。HARDは見返りを求めず、あくまでやりこみ用のおまけと割り切った方が良い。
  • 相変わらず残念なキーコンフィグ
    • 今回は操作ごとにボタンを割り当てられるようになったのだが、それでも使い勝手が悪い。
    • そもそもキーコンフィグはボタンごとに操作を割り当てるのが一般的なのに、本作は1つの操作に対して1つのボタンしか割り当てられない。
    • LRボタンは割り当て不可能*9
      • 本作では「走行」「つかみ」「ジャンプ」の併用が必要になる場面も存在するが、サターンパッドでLRを使わずに3つのボタンをスムーズに同時押しするのは困難に近い。
    • それでいてダッシュ操作は方向ボタンとボタンのどちらかにしか当てはめる事ができないため、前作の項で触れた「走行を別ボタンに割り当てる」という遊び方は実質不可能になっている。
      • どうしても気になる人は、3つ同時押しができるようアケコンを用意するのもあり。
      • フォローしておくと、攻撃とジャンプを親指一本で押せるようになった点は改善されている。

総評(下巻)

2作に渡るトンガラの冒険は本作をもって堂々の完結。前作のボリューム面はカバーされ、遊びごたえのある分量になった。

総合的に見ると、本作のゲーム性はファミコン時代のアクションに近い。当時のファミ通の紹介文を借りるなら、グラフィックが進化しても変わらないゲーム性がそこにある。
制約のある操作性の中でテクニックを見出し、難しいステージを一気に突っ切るさまはどことなくストイック。90年代半ばのゲームとしては古い部分もあり、操作性については否定的な見方も存在する。

しかしそのストイックさこそ本作の魅力でもある。上手く動かせたときの爽快感は強く、残機周りは親切でストレスフリー。手ごたえと親切さが同居した、絶妙なバランスを味わうことができる。
アクションゲームに初めて触れる人から、すっかり遊びつくしたという人まで、幅広く楽しめる作品である。


余談

  • サターンでは数少ないファミリー向けゲームだった事もあり、雑誌などでは重点的に特集が行われた。
    • 下巻発売前にはゲーム誌だけでなく児童誌「テレビマガジン」でもイラストコンテストが開催され、絵本が出版された事もある。
  • その後の展開
    • 95年末には、上下巻の内容に追加要素を加えた完全版『ペパルーチョの福袋』が発売された。
      • ゲーム内容は『福袋』の方がお得だが、上下巻は中古価格が安いため、今から買って遊ぶには一長一短である。数百円程度の差が気にならない人は『福袋』の購入が推奨される。
    • 海外版は日本より少し遅れて発売された。
      • 海外では日本版『下巻』の代わりに、『福袋』から『上巻』の要素をオミットしたものが『Clockwork Knight 2』として発売されている。
      • 横スクロールアクションは日本より欧米市場の方が人気が高く、本作に関する情報は英語圏のサイトの方が充実している。ご丁寧にも、日本の雑誌のバックナンバーを丁寧に網羅したウィキも存在する。
    • 本作はニッチな支持にとどまり、以降は続編が発売されておらず、移植もされていない。
      • ラスボスが闇堕ちした詳細な経緯は、未回収の伏線として残されたままになっている。
      • 後に『ナイツ NiGHTS into Dreams...』が発売され、「サターンを代表するアクションゲーム」の立ち位置はそちらに移ってしまった。
      • キャラデザや古典的なゲーム性と絡めて「なぜセガはローンチにソニックを出さなかったのか」と批判されてしまう事も少なくなく、時にはアレックスキッド*10と並ぶセガの不遇タイトルとして挙げられることもある。
    • ただし決して黒歴史にされているわけではなく、『セガガガ』などのセガオールスターが集まる機会ではトンガラが顔を出す事もある。
    • 「もし"サターンミニ"があったら何を入れるか」という話題では頻繁に『ペパルーチョ』の名前が挙がるなど、本作のファンは決して少ないわけではない。今後もセガを代表するタイトルの一つとして、脈々と語り継がれていくと思われる。
  • 『トイ・ストーリー』のオマージュだと勘違いされやすいが、実は本作の方が1年先に作られている。
    • 奇遇なことに、その『トイ・ストーリー』も後にSega Genesis(海外版メガドライブ)にて、横スクロールアクションのゲームが発売されている。
  • 『下巻』のディスク内には、スタッフによる隠しメッセージが残されている。PCにディスクを入れる事で、誰でも閲覧可能(環境によっては見られない場合あり)。
    • ちょっとした内部事情が知られるメッセージもあれば、バグ取りに疲弊してポエムを書く者がいたり、よりにもよってソニーの社員に車をぶつけられた話があったりと、なかなかカオス。
      • スタッフ全員が真面目に書いたものなので『パチコン』『えりかとさとるの夢冒険』ほどふざけてはいないが、赤裸々なコメントの数々は読み応えがあるので必見である。

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最終更新:2023年10月19日 23:04

*1 「セガサターン・マガジン」1995年4月号の開発者インタビューより

*2 スタッフ曰く「ギャグっぽさで何か統一感を求めていたら香辛料系がピタっと来た」とのこと(「サタマガ」インタビューより)。

*3 「サタマガ」インタビューより。

*4 採用されたアイデアは「大砲」「新しい攻撃(ゲーム内ではミサイルを撃つ攻撃として採用)」「巨大な本」「折り紙の敵」「レコードのターンテーブル(ゲーム内では歯車として採用)」。雑誌では他にも様々なアイデアが紹介されており、「家の住人が起きて踏んづけてしまう」というユニークなものも存在した。

*5 厄介なことに、隠しコマンドを掲載しているサイトの殆どは、クリア特典であることを明記していない。

*6 加えて「ジンジャーを動かしたい」という要望も多かったのだが、こちらは『福袋』で実現した。

*7 敵を倒さずに放置しておけば自滅も可能だが、普通に死ぬ可能性が出てしまうため有用とは言えない。

*8 前者は水に落ちてしまい、後者はジャンプしながら取る都合で取りこぼしてしまう。

*9 キーコンフィグ画面でLRを押すと別ページに送られてしまう。

*10 メガドライブ以前から活躍していた、セガの元祖看板キャラクター。ソニックに立場を譲ってからは作品数も減少し、『セガガガ』では過去のヒーローとしてその哀愁が描かれている。