DRAINUS

【どれいなす】

ジャンル シューティング
対応機種 Windows 2000/XP/Vista/7/8/10 (Steam)
発売元 WSS playground, PLAYISM
開発元 Team Ladybug, WSS playground
発売日 2022年5月22日
定価 1,480円
判定 良作


概要

インディーゲーム開発チーム「Team Ladybug」が制作した、Steam専売の横スクロールSTG。
同チーム名義のゲームとしては初のオリジナル作品となる。
敵弾吸収能力を持ち、機能拡張により強化していく自機と、数多くの名作STGオマージュを含んだ作風で話題となった。


ストーリー

カーラル帝国の圧政に苦しむ、宇宙の片隅にある惑星ハルパクス。そこに集められた奴隷である一人の男が病に侵されていた。「惑星適応障害」というその病の治療には遠き故郷の星に帰らなくてはいけない。彼の娘もまた奴隷であり、父の病に為す術のない無力に打ちひしがれ、途方に暮れる。
その時、カエルにも似た奇妙な姿のヒューマノイドゲーニーが現れ「自分は50年後の未来から来た。銀河戦争が起こり、5000を超える惑星がカーラル帝国の手により消滅する。その戦争と、カーラル帝国の圧政を食い止めるためにこの時代に来た。君の手を貸してほしい」
なぜ自分なのか、自分に何ができるのか。何もかもがわからないイリーナだったが、父の病は刻々と進行している……迷う時間もなければ他に手もない。彼女はゲーニーの緑色の手を取った。
カーラル帝国の軍隊で溢れた宇宙に飛び出し、彼らを打倒しながら遠い故郷の星を目指す旅がいま始まったのだ。

※Steam販売ページより


特徴

基本内容

  • 全6面2周構成。モードによっては1周エンド。
  • 最大10個のセーブデータを作成可能。オートセーブで進行状況が保存される。難易度の途中変更は不可。
  • 新規データの場合、最初に難易度ないしモード選択を行ってからゲームを開始する。
    • 最初から選択可能なのはイージー(EASY)、ノーマル(NORMAL)、ハード(HARD)の3個。クリア後は理不尽(RIDICULOUS)、アーケード(ARCADE)が追加される。
    • 理不尽は本作の最高難易度。敵の攻撃が激しいだけでなく、ダメージを受けると一撃死となる。
    • アーケードは通常とは異なるルールでプレイする特殊モード。
  • 通常モード(アーケード以外)
    • 登場人物の会話を挟みつつゲームとストーリーが進行する。全難易度共通で2周エンド。
    • ゲーム開始前にチュートリアルをプレイ可能。不要ならばスキップしてゲーム開始。
    • ノーマル以下ではステルスバンパー機能を使用可能。オンの場合、地形への接触ダメージを無効化する(その代わり強引なすり抜けができなくなる)。ゲーム中に切り替え可能。
    • クリアしたステージであれば、いつでもステージセレクトで再プレイ可能。装備は引き継がれるが、最後にプレイしたステージの進行状況はリセットされる。
    • ゲーム中、アイテムとしてレコーダーを入手できる場合がある。ポーズメニューから選択し、サブストーリーに当たる会話イベントを見られる。全12個。
  • アーケードモード
    • このモードを選択した場合、業務用ゲーム風の起動画面及びタイトル画面に切り替わる。
    • アーケードではさらに3個のモードが存在。
      • ノーマルモード:ノーマル2周目相当の1周エンド。
      • ハードモード:理不尽1周目相当の1周エンド。
      • ロングモード:ノーマル相当の2周エンド。
    • ゲーム開始前に最大5文字のランキングネームを登録。ネームとハイスコアは1つのセーブデータ内で保存される。ネームは別ゲーム開始時に変更可能。
    • 会話イベントは一切発生せず、レコーダーも出現しない。
    • ポーズメニューからの機能拡張は1ステージにつき1回まで。また、ステージセレクトは使用不可。
    • ボスなどの特定の敵には制限時間が発生し、時間切れになる前に破壊することで高得点となる。

システム

  • 移動とポーズメニュー表示以外で使用するキー設定はショット、ミサイル、吸収、スーパーボム、スピード変更、スローモードの6個。ショットとミサイルは1ボタンで統一も可能。
  • 吸収機能
    • ボタンを押している間、エネルギー系攻撃(全て紫色で統一)を防御するバリアを展開。バリアは全方位型であり、エネルギーであれば巨大ビームであっても無効化する。
    • 敵弾を吸収すると自機の上に吸収ゲージが表示され、ボタンを離すと溜めた量に比例して威力や発射本数が強化される誘導攻撃リフレクターを発射する。
    • 吸収ゲージを最大まで溜めた状態でリフレクターを発射した場合、1秒間無敵時間が発生する。
    • 吸収中は画面左下のガードゲージが減少していき、0になると使用不可になる。吸収を止めると時間経過でゲージ回復。
    • バリアは敵本体、地形、実体弾(赤枠表示)を防ぐことはできない。
  • スーパーボム
    • 緊急回避攻撃に相当する武器。ポーズメニューで様々な種類から1個選択して専用ボタンで発動する。
    • 使用すると画面右下のスーパーボムゲージを1個分消費する。ゲージは敵破壊、吸収、フルパワーアップ状態でのパワーアップアイテム入手で回復。
    • 種類を問わず、発動すれば必ず1秒間の無敵時間が発生する。
  • スピード変更
    • スローモードボタンを押している間、通常よりも遅い速度で自機を精密操作することが可能。
    • スピード変更ボタンでは、押している間に通常用とスローモード用の速度を10段階から設定できる。ポーズメニューからでも設定可能。
  • パワーアップ
    • 画面上部には自機のパワーアップ状態が表示されている。パワーアップアイテムを入手すると番号の小さい順からパワーアップソケットが点灯し、パワーアップリストで設定した機能が有効化する。
    • ソケットはゲーム開始時は3個までだが、拡張で最大5個になる。機能未設定のソケットがある場合、その分のソケットは表示されなくなる。
    • シールドを装備している場合、シールドマークのソケットが最終段階として表示される。つまり、パワーアップリストで5個の機能を設定していれば6番目として扱われる。また、シールドの残り防御回数も表示される。
    • ダメージを受けると番号の大きいソケット(シールド装備時はシールドソケット)から無効化されてパワーダウン、全て無効化の状態でダメージを受けることでミスとなる。理不尽では一撃で全てのパワーアップを失った上でミス。
  • 機能拡張
    • 敵弾吸収や、敵を破壊した時に出現するクリスタル入手によって、エネルギータンクを溜めることができる。満タンになったタンクを一定数消費することで、様々な機能を自機に付加・装備できるようになる。
    • 各機能には以下の分類が設定されている。
      • SHOT:ショット。主力攻撃だけあって種類が最も多い。
      • MINE:ミサイル。上下攻撃や誘導攻撃を担う副兵装。
      • STABILIZER:スタビライザー。自機後方に装備される、後方攻撃専用の補助兵器。
      • BIT:ビット。1種類につき最大4個まで装備できる補助兵器。ショットとミサイルを発射するが、ショットは自機の弱体化版として発射される。
      • EX:対応するソケットが有効化された時点で、自機の基本性能を強化するパッシブスキル。
      • SHIELD:シールド。エネルギー系攻撃または実体弾を一定回数まで防御。パワーアップリストとは別枠で設定。
      • S-BOMB:スーパーボム。パワーアップリストとは別枠で設定。
      • OTHER:各ゲージ上限の増加など、拡張した時点で効果が反映される機能。
    • パワーアップリスト
      • SHOT,MINE,STABILIZER,BIT,EXは、このリスト内で設定する。分類ごとの設定順に制限はなく、プレイヤーの任意で可能。
      • ゲーム開始時、ソケット1番は初期装備機能で固定、4,5番は使用不可の制限があるので、OTHERの機能拡張で解除する必要あり。
      • 同じ分類の機能が重複した場合、ソケット番号の大きいものが優先され、小さいものは無効化される(ソケットは点灯するがOFF表記となる)。
    • 機能拡張はポーズメニューを開くことでいつでも可能(アーケードでは制限あり)。ステージクリア時も次に進む前に行える。
    • 2周目に入ってから追加される機能も存在。アーケードにおける1周エンドのモードでは、ステージがある程度進むと追加。

評価点

システム

  • 高性能・多機能を極めたような自機ドレイナス。
    • 単純に武器の種類が多いだけに留まらず、戦闘力の大幅向上に直結する各種補助兵器、ボンバー相当の強武器、防御どころか攻撃にも転用できる優秀な手動展開型バリアの吸収機能、吸収とは別の防御手段であるシールド、HPとして機能するパワーアップレベル(理不尽除く)、スピード変更機能と、スクロールSTGの自機が搭載し得るありとあらゆる能力を持つと言っても過言ではないほどの性能を誇る。
    • 生存力に至っては、STG自機としては規格外。以下の仕様により、他のSTGではまずお目にかかれないほど頑丈。
      • ドレイナスの大きな特徴の一つである吸収機能は、『RefleX』のS.S.S.と『斑鳩』の力の解放を合わせた性能を持つ。基本的にはS.S.S.とほぼ同じ存在だが、リフレクターは「ストックできない代わりに敵の攻撃が激しいほど短時間で連発できる力の解放」のような攻撃。これだけでも十分な防御手段を有している。
      • スーパーボムは弾消し能力を有しているので、吸収が使えない時はこちらも敵弾を防ぐ手段になる。また、必要なエネルギーは溜まりやすいので、一般的なボンバーのように出し惜しみをする必要はほぼなし。
      • リフレクター(吸収ゲージMAX時)・スーパーボム共に、1秒間もの無敵時間を発生できる。これらを使いこなすことで、総合的に長時間となる無敵状態を作りつつ敵の猛攻をやり過ごすことが可能。
      • シールドを装備していれば、直接的な被弾対策にもなる。基本的に防御可能な攻撃の属性が決まっているが、2周目にはエネルギー系攻撃と実体弾どちらにも機能するシールドも登場する。
      • 何重も存在する防御手段をすり抜けられて被弾してなお、自機はパワーアップレベルが事実上のHPとなるので被撃墜とはならない。理不尽ではレベルに関係なく即アウトだが、それでようやく従来のSTG自機の仕様と言えるほど、元の生存力が高い。
      • パワーアップアイテムは豊富に出現するので、シールド再展開や数発分のダメージ程度であれば簡単にリカバリーできる。しかも、スーパーボムには任意でいつでもパワーアップ可能な緊急パワーアップが存在するため、予め拡張していればリカバリーは極めて容易となる。
    • 吸収機能と並ぶ本作の主要システムであり、多種多様なプレイスタイルに対応したパワーアップ要素である機能拡張。
      • 言わば「買い物機能」であり、集めたエネルギータンクを使い、数多く存在する機能から好きなものをアンロックして自機に装備できる。
      • どのように自機を強化していくかは完全にプレイヤーの自由。ショットやミサイルなどの主要な機能から強くする、最初にシールドをアンロックして安全を重視する、ガードゲージを増やしてより効率よくエネルギーを溜められるようにするなど、状況や好みに合わせることができる。
      • パワーアップリストでの登録の仕方を考える面白さ。早い内に有効化したい・被弾しても失いたくない機能は番号の小さいものに登録し、そうでないものは後回しにするなど。敢えてソケットを未登録にしてシールドを早めに有効化と言った戦術も取れる。
      • A-RPGのように、状況に適した装備変更ができること。STGでは基本的にメインショットの切替ぐらいでしか装備を変更できないが、本作ではポーズメニューを開き、補助機能などを含めた自機の装備を丸ごと変えられる。
      • ゲーム中でもポーズメニューを開いた状態で、落ち着いて自機カスタマイズができるのは非常に便利。
  • ステージセレクトでは、クリア済みステージに現在の装備を持ち込めるため、本来入手し得ない強力な武器で敵を蹂躙するプレイが可能。
  • 本作のシステムは家庭用ゲームに特化したものであるが、アーケードモードでは限りなくゲームセンターのSTGに近い内容となり、アーケードSTG独特の緊張感を保ったままプレイできる。また、会話イベントがない代わりにゲームがスムーズに進行する。
  • 全ての敵には攻撃を当てた時にHPゲージが表示される。攻略上便利であることに加えて、多様な武器を試す上でその武器がどれほどの威力であるかを把握しやすい。

ゲームバランス

  • 2Dシューティングでは極めて少なくなってしまった、「誰でもクリアできる」低難易度を売りにしたゲーム内容。それでいて攻略のし甲斐があり、戦略性の高いゲームバランス。
    • 元々STGは一撃死×残機制が前提というミス許容の少なさ、そしてクリアを当たり前には作られないアーケードゲームを起源としている関係で非常に高難度化しやすいジャンルであった。 それ故ジャンル標準としての難易度も相対的にかなり難しめであり人を選ぶことが多々あったが、本作はそういった前提を見直し難易度を下げるべく設計されている。
    • 自機にHPを設け、さらに回復アイテムを頻繁に出現させることによって、とにかく頑丈でやられにくい。まずこれが低難易度に繋がっている。低難易度モードほどプレイヤーの死ぬ状況を大幅に少なくしてストレスフリーなゲームにしている。
    • ランクシステムなどの、攻略する上で無視できない小難しい要素は排されている。「攻略を楽にするためにわざと死ぬ」と言った厄介な細工の強要などとは無縁。
    • 本作におけるステージ構成や敵の攻撃パターンに関して、アクション系のあらゆるゲームジャンルに必ずと言っていいほど含まれている「初見殺し」も極力起こさないように配慮されている。
      • 巨大ビームや大型敵の体当たりなど、あからさまに危険な攻撃には必ず前兆がある。前者はチャージ音、後者は警告マーク表示など。これによって、訳も分からない内に死んだという状況が発生しにくい。
      • 高速の自機狙い弾でいきなり撃ち抜かれる、自力回避でしか対応できない弾幕を展開されることもほぼなく、大抵の攻撃やトラップには「見てから確実に対応できる」作りがなされている。「知らないと絶対に対応できない」レベルの露骨過ぎるものは存在しない。
      • 初見殺しが完全にない訳ではないが、仮にそれに近い攻撃が来た場合でも吸収やスーパーボムでどうにかなる。
    • 簡単とは言っても作業感の強いヌルゲーではなく、考えて攻略する楽しさも同時に兼ね備えている。
      • 弾幕STGのように大量の敵弾(状況次第では撃ち返し含む)が飛んでくる状況がよく発生する。視覚的なインパクトは十分であるし、吸収機能を筆頭にどのような方法を駆使して対処していくかを見極める必要性が出てくる。
      • パズル的な攻略を要する場面も用意されており、敵を倒すだけの単調な展開は避けられている。特に普通の攻撃が通用しない3面ボス戦は、吸収機能をフル活用した特殊な攻略方法を求めてくる*1で、他のボス戦にはないオリジナリティがある。
      • どのような機能を優先的に拡張・装備していくかが特に重要。通しで使える機能に特化させるか、状況に合わせて切替で使う機能を増やすかなどを考える面白さがある。
      • 2周目では1周クリア時点の装備を引き継ぐが、同時に敵も強化されて攻撃がさらに激しくなる。自機のパワーアップ状況に見合った難易度上昇が行われ、2周目独自の攻略方法も必要になる。
    • 自機が強い分、敵も物量や強力な弾幕など派手な手段で対抗してくる。それを破壊と弾消しでうまく攻略できれば、エネルギータンクを獲得して事実上の回復&強化ができる…と、大量破壊と吸収に大きな重要性と爽快感がもたらされている。
  • 最高難易度の「理不尽」モードは生粋のクラシックなSTGプレイヤーを意識した仕様になっている。
    • こちらは製作者からの挑戦状という位置づけであるため、手前のハードと比べても被弾許容が一気に半分以下に減ることから数段上の難易度と緊迫感になっている。
      さらに実体弾の数が増加したり一部の敵の攻撃パターンが大きく変わるため、ハード以下では不要だった攻略方法の構築やテクニックの習得が必要となり、人は選ぶもののやり甲斐を刺激する仕組みになっている。
  • 特定の難易度以上でクリアしないと解放されない要素は存在せず、コンプリートを阻む要素も少ない。 理不尽やアーケードに挑むかどうかは各プレイヤーの自由。
  • どの機能・武器も一定以上の実用性を有しており、選択の幅が広い。
    • 流石に全てが平等の性能とまではいかないが、少なくともどうしようもなく役に立たない産廃は存在しない。 自機の基本機能が強力、かつ低難易度で様々な機能を試しやすい環境ということもあり、実用性は考えず好みで選んでも問題ない調整がされている。
    • 下位互換に甘んじている機能についても必要なタンク数が少ないという点でバランスを取っており、上位互換の機能までの繋ぎという位置づけに収めている。
    • 2周目専用機能は入手時期が遅い・必要タンク数が多い代わりに、使ってその強さを実感できるものばかり。入手のためにタンク使用は我慢するか、逆に諦めて他の機能拡張に回すかの駆け引きが求められる。

演出・作風

  • 作品の雰囲気は、STGとしてはオーソドックスであるSF系。これにキャラクター・ストーリー要素を加えたもの。
    • キャラクターとストーリーも本作にとっては重要な魅力になっており、ゲーム要素しかない地味な作風というのは避けられている。
    • 人によってデザインなどで好みが分かれる可能性はあるが、キャラクター要素に媚びて反感を買うような作風でもないので、そう言った要素を嫌うプレイヤーにも向いている。
  • インディーゲームのSTGに有名作のオマージュが含まれるのは珍しくないが、本作には特にそれが豊富。かつての同人STG『神威』などのように、常に「どこかで見たことがある」ものが映し出されており、STG経験者ほど楽しめる要素が盛り沢山となっている。
    • 本作では『グラディウスシリーズ』、その中でも『グラディウスV』のオマージュが特に多い。弾幕要素とギミックをふんだんに取り入れた横STGという点でも似ている。
      • 2面後半、3面ボス、4面全般、5面中ボス、6面前半などに『V』の影響が強く見られる。
      • ドレイナスを強化すると、最終的にはビックバイパーに+αしたような性能になる。ビットやシールドは明らかにオプションや「?(フォースフィールドなど)」を意識しており、パワーアップメーター表示も『グラディウスシリーズ』のものに近い。
      • 他にも、ボスのデザインがコア系戦艦に似ていること、2面に『グラディウス外伝』のヘビーダッカー風の中ボスが出現すること、ボスラッシュの存在などが挙げられる。
    • タイトルの「DRAINUS」は何となく『DARIUS』を連想させるもの。同シリーズを知っていれば目に留まりやすい名称になっている。
    • 5面のボスラッシュはオマージュというよりパロディー全開の流れ。メタ要素の強い会話イベントも発生する。
      • ゼビウス』のバキュラを思わせる破壊不能の壁が出現したと思いきや、無数の小型機に分裂して『スペースインベーダー』風の動きで襲い掛かる。その次は『ファンタジーゾーン』のコバビーチほぼそのままのボスが出現。
      • トリを飾るのは、往年のシューターのトラウマである『ACグラディウスIII』のクリスタルキューブの群れ。やたら再現度の高い動きとグラフィックでよりトラウマを抉る演出になっている。
    • 上記以外には、自機の機能や敵の攻撃などに『R-TYPE』『サンダーフォースシリーズ』『サンダークロス』『レイクライシス』などを思わせるものが存在している。
  • ドット絵のような3Dポリゴンを用いた独特のグラフィック。
    • 製作者曰く「謎の新技術『3Dドット絵』」。ドット絵風のきめ細やかさと、3Dだからこそ可能な滑らかな動作の両方を兼ね備えている。
    • ゲーム開始時のドレイナス出撃シーンは特に印象的。画面全体にドレイナスが大きく映し出された後、サイドビューに切り替わり、高速スクロールから戦闘が始まる演出には迫力があり、尚且つ盛り上がる。
    • 自機の攻撃は緑、敵の攻撃の内、エネルギー系は紫、実体弾は赤で統一されているので、どれが何の攻撃であるかを判断しやすい。
  • BGMは総じてスピード感のあるテクノ調のものが用いられている。タイトル画面BGMのフレーズが使われている4面BGMや、緊迫感の強いボス戦BGMなどが印象的。

ストーリー

  • 明確なストーリー要素を前面に出しつつも、くどさはなくゲームを邪魔しない範囲で展開される会話イベント。
    • ステージクリア後やラスボス戦で長めの会話はあるが、テンポを損なうほどではなく丁度良い。ゲームの流れを切って会話が入る場面はボス戦前などに限られている。
    • チュートリアルもストーリーに組み込まれており、強奪したドレイナスを通じてカーラル帝国のドレイナスパイロット向け訓練を主人公イリーナが見ていたという流れになっている。
  • メインキャラで姉妹関係にある、妹のイリーナと、姉で敵側の司令官になったレイラのやり取り。
    • 敵司令官が自分の姉と知って戸惑いつつも改心するよう呼びかけるイリーナと、敵側に付きながらも良心を捨て切れていないレイラの葛藤が、本作の会話の主な魅力。
    • ステージが進むに連れてレイラの心の内が分かるようになっていき、ラスボス戦でゲームの展開にも影響していく。
  • 未来人としてイリーナの心の支えとなるゲーニーと、邪悪そのものな存在であるカーラル帝国総督イズモの会話もストーリーを盛り上げる。
  • サブキャラクターであり台詞は少ないが、各ボスのパイロット達も個性的で印象に残る。
  • ゲームとしての「2周目」を巧みにストーリーへ組み込んでいること。2周目への導入や、それによって展開されるストーリーが秀逸。
    + 1周目ラストからエンディングまでのネタバレ注意
    • 1周目ラスボス戦ではイズモに勝利するが、イリーナがイズモを殺すことを躊躇したせいで、父の故郷の惑星E-316を破壊する猶予を与えてしまう。そこでドレイナスで割って入ってきたレイラが惑星を守る代わりに死亡、イリーナは自分が姉を死に追いやってしまったと嘆き悲しむ。それを見かねたゲーニーは、未来への帰還に必要な残り1回分のタイムジャンパー(人が携行可能な大きさのタイムマシン)を使い、イリーナと共に過去へとタイムスリップ。今度こそレイラを救うために再度戦いに挑むというもの。
    • これによって再び1面から「デジャヴステージ」としてゲームが再開。会話イベントは序盤こそ1周目と微妙に違う程度だが、終盤になるに連れて大きく異なるものになっていく。そして、ラスボス戦ではイズモと戦うはずが何故かレイラと戦う羽目になってしまう。
    • 実はイズモもタイムジャンパーを使える未来人であり、2周目で会話していたレイラはイメージ映像だったこと、本物のレイラは既に拘束されていたことが判明する。また、「2周目のカーラル帝国軍が1周目よりも強い」のは、イズモが「1周目」のことを知っていて事前に兵力強化していたから、という理由付けがされている。
    • イリーナはイズモに圧倒され、『RefleX』7面のような絶体絶命な状況に陥る。しかし、あること(特定のレコーダーでその内容を確認できる)を理由に拘束を解かれていたレイラがドレイナスに乗って現れ、イリーナを危機から救う。そして、『斑鳩』の例の名シーンを彷彿とさせる方法で盛大な反撃を行い、散々姉妹を苦しめてきたイズモに引導を渡すというカタルシス抜群な展開で勝利を迎える。
    • エンディングにおいて、姉妹はE-316こと地球*2に辿り着くが、同時に必然ながらも悲しい別れを経験することとなる。姉妹はこの別れを無駄にしないためにも新たに歴史を築いていこうと決意する、という感動的な結末を迎える。
  • レコーダーから閲覧できる会話は本編を補完する要素であり、よりストーリーを面白くしている。
    • メインキャラクターの過去を描くだけでなく、本編では僅かな会話しかないボスのパイロット達の何気ない会話シーンも見られる。
    • 中には本編で起こる出来事の伏線になっているレコーダーも存在。「なぜあの場面であのキャラがいた/いなかったのか」などが描写される。

賛否両論点

  • 2周前提のゲーム内容。
    • 通常モードのゲーム攻略では2周することが前提で、1周だけでは本来のエンディングを見られない。会話イベントは異なると言ってもゲーム自体は難易度を除いてほぼ同じなので、面倒と感じられる可能性がある。
    • 本作は1周するだけでも約40~50分掛かるくらいに道のりが長い。これ自体は1周分のボリュームが充実しているという評価点であるが、それを2周すれば1時間半前後にもなるので、通しの場合は集中力の維持が難しくなる欠点に繋がる。
    • 幸い、2周目を含めても万人がクリアできる難易度調整がされているので、そこは安心できる要素。上級者しかまともにクリアできない2周目に真エンドを配置するSTGも少なからず存在する中で、このような調整をしているのは良い意味で珍しい。
    • アーケードでは1周モードもあるので、こちらで2周はせずエンディングを迎えることも可能。ただし、ストーリー要素が排されていること、機能拡張の制限などを受け入れてプレイする必要がある。
  • 自機があまりにも強過ぎて、ハード以下の場合、攻略方法がある程度分かると死ぬ要素が限りなくゼロになる。
    • 初回の慣れない内はともかく、セオリーが理解できるに連れて、普通にプレイするだけではミスを起こす方が逆に難しくなる。実質的に残機が形骸化すると言って良い。
    • 特に、スーパーボムの緊急パワーアップがあるとリカバリーが容易に行えるので、ミスどころか瀕死状態に陥ることさえほぼなくなる。
    • 簡単であることはそれだけ初心者が楽しめる余地がある、趣味的な装備でのプレイがしやすいことに繋がっている。
      さらなるやり応えを求めるプレイヤーへの対応は理不尽やアーケードハードモードに依存している節がある。
  • 「理不尽」独特の厳しいゲームバランス。
    • やはり一撃死化はとても重い。ハード以下では多少のゴリ押しも成り立っていたのが、こちらだとパワーアップ全ロストに繋がるので、別ゲーのように難しくなる。
    • さらに、敵の攻撃も目に見えて激化。HPありの状態で丁度釣り合いが取れるような弾幕が襲い掛かってくる。
    • 理不尽をノーミスクリアするのは至難の業だが、ノーコンティニュークリアに関しては意外とハードルは高くない。本作はスコアによるエブリエクステンドが比較的高い頻度で発生するため、他難易度ではほぼ無意味だった残機に助けられることになる。

問題点

  • 自力での復活が難しい。
    • ノーマル以上ではミスした際の救済措置はなく、後半ステージで貧弱なシングルショットのみをメインにして戦うのはかなり厳しくなる。吸収とスーパーボムがある、アイテムの数が多いと言っても、初期状態では敵に圧倒されて再度ミスする負のスパイラルに陥りやすい。
    • ノーミスが安定するハード以下ではこの問題を実質無視できるが、理不尽では常に死の危険があるので、一度でもミスすると一気にピンチな状況に陥る。
    • 緊急パワーアップがあればすぐにリカバリーできるが、ボムゲージが不足していればこの手段も取れない。また、理不尽ではリカバリーの最中、シールド装備前に被弾してゲージを無駄にすることもあり得る。
  • 細かいながらも不便な仕様がいくつか存在する。
    • スピード調整はゲーム全体のオプションでは行えない。新規データを作る度に調整しなければならず面倒。
    • ドレイナスのデザインの関係で、自機の当たり判定とショット発射位置の高さが異なる。
      • この2つは高さが一致しているのが一般的なので、先入観で弾幕回避や狭所突破しようとすると思わぬ事故に遭う。
      • 特に、真ボス戦は縦幅が狭い中で行われるので、注意しても操作ミスで被弾しやすい。
    • 無敵時間を活用する上で落とし穴がある。
      • 吸収ではボタンを押してからバリア展開までに僅かだがラグがある。また、吸収とスーパーボムは同時発動できない。
      • 上記2つは単体では大きな問題ではないが、「スーパーボムの無敵時間と吸収での防御を使って敵の猛攻をやり過ごす」際、吸収時のラグで一瞬だけ無防備な時間ができるので、注意しないと被弾の原因になる。
    • シールドが切れた時、無敵時間が終わるまではシールドが張られた状態として扱われる。このため、シールドが切れた直後にパワーアップしても張り直しができず、アイテムを無駄にしてしまう。
    • 1プレイが長丁場となる作品であるにもかかわらず、操作面でプレイヤーへの負担を軽減機能する機能(フルオート連射やトグル切替など)がない。
  • BGMが若干音割れを起こしている。ゲーム中は気付きにくいが、サントラで聞くと分かりやすい。

総評

スクロールSTGの根幹部分を極力崩さずに数多くの「ありそうでなかった」を実現し、総合的に非常に高い完成度を持つに至った意欲作。
システム面では吸収と機能拡張が特徴的であり、本作独自の魅力や周回して何度も試したくなる面白さに繋がっている。
最大の評価点は、初心者が快適にプレイできることを最優先しつつも、それと同時にSTGを攻略する面白さも両立したゲームバランスである。
これは製作者が意図した要素であり、その結果としてプレイする上での取っ付きにくさがほぼなくなり、STGが苦手なプレイヤーからも高評価を得た。
シューター向け要素も充実しており、無数に存在するオマージュと、最高難易度である理不尽の存在がそれに当たる。
総じて人を選ばず、興味を持ったあらゆる人間が楽しむことができ、ジャンルの魅力を最大限引き出すことに成功した万人向けSTGに仕上がっている。


余談

  • 本作が遊びやすさを重視した内容になったのは、『悪魔城ドラキュラシリーズ』のIGA(五十嵐孝司)氏との対談が切っ掛け。製作者によれば、「買った人全員がクリアできることを目指している」というIGA氏の発言を意識して開発したとのこと。
    • このコンセプトは成功し、Steamでは遊びやすさが中心に取り上げられて評価され、多くの好評レビューが投稿された(2022年8月時点で392件中96%が好評)。期間によっては「圧倒的に好評」にもなったほど。
    • また、身体にハンディキャップを抱えるプレイヤーからも楽しく遊ぶことができたとの報告が上がっており、製作者は目指していた通りのゲームになったとも語っている。
  • 本作の好評を受け、2022年12月にパブリッシャーであるPLAYISMからNintendo Switch版の発売が告知され、2023年2月2日にDL配信が開始された。また、同年5月25日にはNintendo Switch向け国内パッケージ版の発売も予定されている。
  • 本作はIGN Japanでレビュー記事を二度作成されているが、どちらの記事も評判が悪い。
    • ライターの今井晋が作成した一つ目の記事は、本作の根幹部分(意図的な低難易度設計)を真っ向から否定する内容で、それを理由に魅力がないとするもの。
      • 記事のコメントやTwitterでは「今まで見たことがないレベルで的外れ」「90年代のSTG高難度化を知らない人間が書いたような記事」「こういう高難度主義者がジャンルを衰退させる」と多数の批判が上がることとなった。
      • 今井のあまりの的外れ振りに製作者さえも驚くほど開発意図が伝わっていないと批判される始末。
    • 二つ目の記事は別のライターである渡邉卓也によって作成されたが、こちらではジャンルやプレイヤー層が全く異なる無関係なゲーム作品をいくつも引き合いに出して「間口の広いゲームではない」と無理矢理結論付けるような内容が記載された。
      • こちらも「マウントを取らないと気が済まないのか」「身内擁護のためにまた的外れなことを書いている」と批判されている。
    • 前述した製作者の批判ツイートを筆頭に悪い意味で反響が大きく、IGNJの記事作成後はこれらを名指しで批判する個人のレビュー記事が複数作成されている。
最終更新:2023年03月31日 23:03

*1 地形や破壊できない装甲を無視して攻撃できるリフレクターで倒すのが正攻法だが、弱点自体はどんな攻撃も通じるので、無敵時間を使って強引に重なることで他の武器でもダメージを与えられる。

*2 明言されるのはエンディングでのイリーナの台詞からだが、1周目の時点でも背景にイギリスのビッグベンが映っている。ちなみに、ビッグベンの時計台はPCのシステム時刻と連動している。