注意:本稿では、オリジナルのAC版『Fate/unlimited codes』と、同PS2・PSP移植版について記します。双方ともに「バランスが不安定」判定です。
【ふぇいと あんりみてっどこーど】
ジャンル | 対戦型格闘ゲーム | |
対応機種 | アーケード(SYSTEM246) | |
販売元 | カプコン | |
開発元 |
カプコン キャビア エイティング |
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稼働開始日 | 2008年6月11日 | |
判定 | ゲームバランスが不安定 | |
ポイント |
「世紀末聖杯戦争」 タイトルに違わずunlimitedに続いていくコンボ 『一度のミスも許されないゲーム』(byアルカディア) キャラゲーとしては申し分ない原作愛 |
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注意 | 本記事は『Fate』本編の若干のネタバレを含みます | |
Fateシリーズ |
今やPCゲーム界でその名を知らないものはいないほどの、TYPE-MOONの「伝奇活劇ビジュアルノベル」こと『Fate/stay night』。
一時期コミケなどを筆頭とする同人界をFate一色で埋め尽くすほどの勢いを見せていた本作には、ファンディスクやスピンオフをはじめとする多数の外伝が存在する。
そのひとつである本作、簡潔に言えば「『Fate』のキャラを用いた2.5D格闘ゲーム」である。なお、この記事では以降本タイトルを『uc』と略す。
他にもガードキャンセル、アドバンシングガード等、MARVEL VS CAPCOMシリーズに近くオーソドックスで癖の無いシステムが搭載されている。
キャラクターは原作からほとんどが網羅され、全13人が存在する。
+ | キャラクターを選ぶがいい。 |
+ | キャラクターを選ぶがいい。 |
+ | キャラクターを選ぶがいい。 |
しかし、このゲームが後に違う意味で人々の注目を引こうとは、誰が予想できたであろうか…。
ゲーマー達は「このゲームはキャンセル手段が多いからコンボゲーになるだろう」という予想を稼働当初から行っていた。
そしてその予想は見事に的中…するどころか、研究が進むにつれ「コンボゲーの中でも頭一つ抜けた凄まじいコンボゲー」という本質が姿を現し始め、結果プレイヤーたちの予想をはるかに超えたコンボゲーになってしまった。
+ | 実際に見てみたい方はこちらへ。 |
+ | なぜこんなことになってしまったのかというと… |
この「すさまじいまでのコンボゲー」状態から、本作は「世紀末聖杯戦争」という渾名がついてしまった。
重ね重ね、北斗の拳 (AC)の惨状になぞらえたものであることは言うまでもない。
熟練者の試合はジリジリ地上で距離を窺いつつ牽制合戦→技が刺さったらループコンボという、見た目には並の差し合いゲー以上に地味で面白味の欠けた試合展開になりがちである。
が、これは仕方が無い。「何か技がかすればそこから長いコンボで大ダメージ」「リフレクトキャンセルの存在があるため、相手の硬直、技の空振りに技を差し込みづらい」「空中ガードが無いためうかつなジャンプは自殺行為」などの要因があるため、そうせざるを得ないためである。
ただし、キャラによっては案外飛び込みも多い。
ゲーム専門誌『アルカディア』において「一度のミスも許されないゲーム」と評されたのもむべなるかな。
ゲームバランス自体の練り込みの甘さも多々指摘される。これは「二強」だけでなく「三弱」の存在が如実に示している。
+ | 三弱(キャスター、アサシン、桜)の場合 |
+ | 二強(ランサー、ギルガメッシュ)の場合 |
+ | 二強次点(セイバー、凛)の場合 |
どのキャラも人気が高く、また容量的にも『stay night』のサーヴァント全員を網羅できる余地はあったためだが、「なぜこのキャラを登場させなかった!」という声はどうしても挙がってしまう。
これは高い人気を誇る原作の対戦ゲームが抱える宿命のようなもので、誰もが納得出来るキャラ選定は非常に難しい。
平等な勝負に耐えうる対戦ツールとしては、本作は決して「良いゲーム」とは言い難い。
しかしこのゲームはただのコンボゲーではなく、ファンから評価される部分も多々存在する。
『AC北斗』がそうであったように、とにもかくにも原作再現要素が盛りだくさん。キャラの掛け合い・演出や性能など原作を反映したものが多く、ファンを大いに喜ばせた。
一部を列挙すると…
ちなみに、TYPE-MOON側が担当したデザインは、ゲーム外のポスター、パッケージ等のメインビジュアルとキャラクター選択画面の全身イラスト、会話用フェイスイラストのみ。
その他EDイラストなどはカプコン側の製作だがかなりそっくりに仕上がっており、原作ファンをして「スタッフは投影魔術を使ったのではないか」(*10)とまで言わしめた程。
こうした本作のキャラ演出は、後発のFateシリーズにも確実に影響を及ぼしている。
この手の格闘ゲームの常として、ストーリーや脚本などはあまり重視されない傾向にあるのだが、この作品ではファンも納得の本編のifを見事に描いている。
これも『AC北斗』や『戦国BASARA X』などがそうであったように、逆に開き直ったまでのゲームバランスに惚れ込んでしまった人間は少数派ながら存在する。
実際各地の大会でもランサーやギルガメッシュが席巻していたわけではなく、全盛期には多くのキャラ、そして使い手が各地の大会でトップに立っていた。
BGMはベイシスケイプが手掛けており、既存曲のアレンジ、新曲ともに評価は上々。
原作再現など光る部分も多々あったが、コンボゲーの道を行き過ぎたが故に格ゲー初心者からは敬遠され、格ゲー経験者の大半からもバランス崩壊っぷりに愛想を尽かされ見限られてしまった惜しい作品。
現在でも少数のゲーセンやガチ勢によるやりこみこそ続いてはいるが、稼働開始直後はインカムがまったく振るわず、ゲーセンからは早々に姿が消えてしまったというのが実情である。2008年当時はすでに出来のいい格闘ゲームがゴロゴロ登場し、そしてリバイバル稼働も見られ始めていた頃だったので、それらを超えた人気を獲得するには至らなかったのだ。
しかし、続編を期待する声もある。バランス、システム面の調整は勿論のこと、真アサシンや別ルートの士郎(*12)の参戦の他、ランサー以外の『Zero』キャラなどを加えた作品の要望もあった。それゆえ本作が尖った作品となり、結果格ゲーとしての続編制作の可能性が低くなってしまったことが一層悔やまれる。
【ふぇいと あんりみてっどこーど】
対応機種 | プレイステーション2 | ![]() |
発売日 | 2008年12月18日 | |
価格 | 通常版:7,340円 / 限定版:10,490円 | |
レーティング | CERO:B(12歳以上対象) | |
廉価版 | Best Price!:2009年12月3日/2,990円 | |
判定 | ゲームバランスが不安定 |
【ふぇいと あんりみてっどこーど ぽーたぶる】
対応機種 | プレイステーション・ポータブル | ![]() |
発売日 | 2009年6月18日 | |
価格 |
通常版:5,240円 限定版:6,240円(eカプコン専売) / 9,240円(Amazon専売) / 8,980円(ソフマップ専売) |
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廉価版 | Best Price!:2010年2月18日/2,990円 | |
判定 | ゲームバランスが不安定 |
※データは相違点のみ表記
長く遊べるミッションモードやミニゲームの追加、新規キャラとそれに伴うBGMやステージ、各キャラのエクストラカラーなど多数の追加要素があるため、実に気合の入った移植と言える。もちろん原作再現要素はAC版同様抜かりない。
しかし、スタッフは家庭用に際して調整を行わなかったばかりか、追加キャラによって世紀末聖杯戦争の勢いを加速させてしまった。
調整に関しては「移植」なので仕方ないかもしれないが、「バランス調整を放棄した」と思われても仕方ない追加キャラ勢の強さには批判の声もある。
+ | さあ(世紀末)聖杯戦争を続けよう |
PSP版はPS2版から更なるアレンジやバランス調整などが加わった「Ver1.5」といった趣。
コンボコマンドの簡略化が行われるなど格ゲー初心者にも嬉しい調整がされた(依然としてハードルが高い位置にある感は否めないが、AC&PS2版よりは遥かに簡単)。
ただ、慣れ親しんだコマンドではなくなったこと(コンフィグで戻すこともできない)を批判する従来からのプレイヤーも多い。
*1 原作設定では何もせずとも魔術に対しての耐性が非常に強い設定だが、それでは格闘ゲームの体裁がなりたたなくなる。
*2 「魔眼キュベレイ」中にあの「バスケ」を連想させるネタコンボができたりするが、あくまで見た目がそれっぽいだけにすぎず、異常なバウンドなどのバギーな挙動ではない。
*3 『stay night』ではもう一人アサシンのサーヴァントがいるのだが、本編の設定が深く関わるネタバレ事項なため解説は省く。
*4 原作設定としてもクラスそのものが聖杯戦争と相性が悪く、第五次サーヴァント内に縛っても直接戦闘を最も苦手とする一人と評されている。
*5 魔力に由来する攻撃にどれだけの耐性を持つかということを表すスキル。セイバーは対魔力スキルを「A」ランクとして持ち、現代の魔術師の使う魔術では傷一つ負わせることは出来ないと明言されている。
*6 なお、タイムリリースの間桐桜と家庭用限定のセイバー・オルタ、そして本作未登場の真アサシンは原作では最後に出現するルートでのみ物語に関わることになる。
*7 「エクスカリバーの鞘」のFateシリーズでの名称。所持者に強力な治癒能力をもたらす効果がある。
*8 巨体のバーサーカー(253㎝)と背が低い士郎(167cm)、極端な前傾姿勢を取るランサー(185㎝)はともかく、アサシン(175㎝)、ギルガメッシュ(182㎝)、アーチャー(187㎝)、言峰(193㎝)の高さがあまり変わらない。画面上であまり不自然に見えないのが救いだが、せめてアサシンの身長を再現していれば「小柄で攻撃を受けにくい」という強みになっていただろう。
*9 後の派生作品では割と簡単に使うシーンも見られるが、原作では基本的に出し惜しみする切り札中の切り札。
*10 投影魔術とは衛宮士郎とアーチャーが得意とする「物を模造する魔術」。要はこれは外注側に送られた「最高級の賛辞」なのである。
*11 原作において、一品モノの希少な能力を持った魔術師に対して与えられる名誉兼警戒態勢。あくまで本作ユーザー間においてだが、これも「最高級の褒め言葉」のひとつとして扱われている。
*12 ネタバレは避けるが、原作において士郎はルートによって使用する技が大きく変わることになるため、この技を使いたかった・これも入れてほしいという声もある。
*13 とは言っても『Zero』のサーヴァントは格ゲーに明らかに不向きな一癖も二癖もありすぎる者が多いうえ、時期的にネタバレによって興が削がれることも予想できた。その中から序盤で真名と宝具が明かされるランサーを選出したのは妥当な判断とする声もある。