世界樹の迷宮
【せかいじゅのめいきゅう】
ジャンル
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3DダンジョンRPG
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対応機種
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ニンテンドーDS
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メディア
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128MbitDSカード
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発売元
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アトラス
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開発元
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ランカース アトラス
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発売日
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2007年1月18日
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定価
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5,229円(税込)
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廉価版
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アトラス・ベストコレクション 2010年7月15日/2,940円
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判定
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良作
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世界樹の迷宮シリーズ
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概要
「現代の感覚で『ウィザードリィ』を作ったらどうなるか?」というコンセプトのもと、「3DダンジョンRPG再生計画」と題して制作されたRPG。現代ならではの発想とレトロゲームの良さを巧みに織り交ぜている。
このレトロと現代の融合は、公式特典CDでもネタにしている通り“懐古”がテーマであると同時に、キャラクターイラスト・メインビジュアル担当にライトノベル『吉永さん家のガーゴイル』シリーズの挿絵で人気を得た日向悠二(ひむかい・ゆうじ)氏を起用したり、販売促進としてポッドキャストに拠るスタッフ座談会を開くといった点にも見られる。
なお、本作は後にシリーズ化を果たしたため、区別する際には「世界樹I」もしくは単に「I」と呼ばれる。
本作の舞台は「エトリア」という小さな街。ギルドを組織して冒険者を集め、「世界樹の迷宮」と呼ばれるダンジョンを探索する。
世界樹の迷宮の最深部には何があるのか?それはエトリアの歴史に隠された真実に深く関わっていた…。
シリーズ通しての特徴・良点
キャラクター
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冒険者ギルドでプレイアブルキャラを作成し、最大5人のパーティーを組んで冒険に出る。設定できるのは名前とクラス、そしてクラスに対応したキャラグラフィック。
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クラスは全部で7つ。キャラグラフィックは1クラスにつき4種類(男性系と女性系で2つずつ)。
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物理攻撃役のソードマン、盾役のパラディン、探索サポートのレンジャー、状態異常付与による搦め手が得意なダークハンター、いわゆる魔法攻撃役のアルケミスト、補助役のバード、回復役のメディック、と個性ははっきりとしている。冒険を進めると新たに2つのクラスが解禁される。
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キャラデザインの日向氏は「ライトノベル出身のイラストレーター」ということもあり、絵柄は萌えを意識した可愛らしいものであった。氏のイラストが『世界樹の迷宮』の購買意欲増加やファン獲得に貢献したことは言うまでもないが、萌えを全面に押し出したスタイルには否定意見もある。
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ただし、スタッフはあくまで「脳内補完 (プレイヤーが自由にパーティの人物設定を想像、創造すること)」を強く推奨しており、キャライラストはあくまで「イメージを呼び起こすための呼び水」としている。公式サイトリニューアル後はあえてキャラグラフィックに性別を明記していないことなどからもそれがうかがえる。
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スキルツリーシステムを採用。各クラスはレベルアップ時に得る「スキルポイント」を使用してスキルを習得、あるいは強化する。多様なスキルが用意されており、同じクラスでもスキルポイントの割り振り次第で全く使用感が異なってくる。
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スキルは単独で効果を発揮できる単純なものから、味方と連携して真価を発揮する扱いの難しいものなど様々。例えばソードマンのスキル「チェイスファイア」は「味方が火属性攻撃を行った時にソードマンが一度だけ強力な追撃を行う」という効果であり、パーティ内に火属性の全体攻撃役がいれば全体攻撃2連発も可能になる。こうしたスキルの連携を考慮してパーティ構成を考えるのも面白い。
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スキルポイントを振りなおしたい場合は「休養」を行う。ただし休養するとレベルが10下がってしまうため、頻繁には使用しづらい。
以降のシリーズでは休養のデメリットが低減され、気軽にスキルの振りなおしができるようになっている。
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「引退」を行うと、引退した冒険者がいなくなる代わりに、その冒険者のレベルの半分 (上限Lv30) の新しい冒険者を登録することができる。この時、元の冒険者のレベルが高ければ高いほど新加入の冒険者の能力値とスキルポイントにボーナスが付く。
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キャラクターを最強状態にするには、最大レベル (Lv70) で引退させて登録したキャラを再度最大レベルまで育てる必要がある。引退システムを利用せずとも裏ボスまで撃破することは可能なので、そこまでするのはやり込みの域に入る。
ダンジョン探索・バトルバランス
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タッチペンを用いてダンジョンマップを自分で作る。
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世界樹の迷宮最大の特徴。最初の状態ではマップ画面には方眼紙よろしくマス目があるのみ。そこからタッチペンで壁を書き込んだり、扉や階段などを示すアイコンやメモ書きを設置することが可能。DSの機能を上手く3DダンジョンRPGに取り入れることに成功している。『ウィザードリィ外伝I ~女王の受難~』とは異なるアプローチである。
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シビアだが理不尽ではないバトルバランス。
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ゲームバランスはややシビアであり、戦法を誤ったり奇襲を受けたりすると簡単に死者が出る。といっても味方と敵の特徴を知り(死んで覚える、とも言う)、的確な戦法を取れば理不尽なほど難易度が高い、というわけではない。
基本的な操作には解説が挿入され、ボス戦の前には警告テキストが表示されるなど、ライトユーザーへの間口もある程度開かれている。
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迷宮からの脱出アイテム「アリアドネの糸」は文字通りの生命線。すぐピンチになる今作において、これを所持し忘れることは死活問題に関わるため、熟練プレイヤーは何らかの形で備忘録をつけていることが多い。迷宮入り口に「『いともった?』などとメモを残しておく」ことは公式も後にネタとするほど広まっている。
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このシビアなゲームバランスは、MMORPGから受けた影響が大きい。特に『Diablo2』と『FF11』から強い影響を受けているのが見て取れる。
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「封じ」システム
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毒、麻痺といった状態異常とは独立した、シリーズ特有の異常システム。
敵味方のほぼ全ての行動には「頭」「腕」「脚」の依存部位がある。例えば「頭技」には頭脳を使うアルケミストの術や、文字通り頭部を使う頭突きや火炎ブレスなどが含まれる。
封じ状態になると、封じられた部位に依存する行動ができなくなるため、敵がよく使う部位を見極めて封じることで、戦闘を優位に進めることができる。当然、味方側もよく使う部位が封じられないように注意する必要がある。
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行動を封じるだけでなく封じそのものの効果もある。例えば脚封じには回避率を0にする効果があるため、命中しにくい攻撃を当てる布石としても使える。
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強力な状態異常
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適正レベルでは2、3ターン放置すれば死ぬようなダメージを受ける「毒」や、行動不能なうえに物理攻撃の被ダメージが1.5倍になってしまう「睡眠」など、掛かると一気にピンチになるものが多い。
シリーズ伝統で毒攻撃してくる「毒吹きアゲハ」や、パーティ全体に異常を振りまく「危険な花びら」はトラウマモンスターとしてよく名前が挙がる。
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この手のRPGには珍しく、敵ボスであっても状態異常に完全な耐性を持つものは少ない。前述の封じと合わせて、ボスを行動不能にして攻め倒す戦法も可能。ただし状態異常や封じの成功率は彼我のステータス差に依存するため、ステータスの高いボスには異常が通りにくい。
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FOE
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これも世界樹の迷宮の大きな特徴。「Field On Enemy」の略称で、迷宮内を闊歩する強大な敵のこと。
通常の戦闘はランダムエンカウント制であるが、FOEだけはマップ上に姿が見えており、接触することで戦闘になる。強大な敵、という触れ込みの通り、初遭遇時にはまず勝てないような強さを持っているため、迷宮探索を進めるためには如何にFOEに接触せず回避するかが重要となる。言ってみれば動く障害物。
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プレイヤーがマップ上を1歩歩く、または戦闘中に1ターン経過するごとにFOEもマップ上で1回移動する。動きはFOEごとに様々で、同じ場所を往復し続けるだけのものや、プレイヤーを発見すると追いかけてくるものなどがいるため、FOEの動きの特徴および周辺の地形を把握することが上手く切り抜けるコツ。
戦闘中にFOEに接触されてしまうとFOEが戦闘に乱入してくるため、追われている最中にランダムエンカウントが発生した場合は緊張もひとしお。
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FOEの位置および向いている方向は下画面の地図上にも表示される。ただしプレイヤーが実際に踏破した部分に限られる。
全滅した場合はそれまでに描いた地図を引き継いで再開することも可能だが、その場合は踏破判定は引き継がれないため、どこを歩いたか分からずFOEの発見に支障が出やすい。FOEの出現エリアで全滅した場合、地図の引継ぎは基本的に非推奨。
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強力なぶん倒したときの報酬も大きく、多くの経験値を得られたり、入手できる素材から強力な武具を作れたりする。またマップ形状によっては大幅なショートカットが可能になる場合も。腕に自身があれば戦いを挑んでみるのもよいだろう。モンスター図鑑にはFOEも登録されるため、図鑑完成を目指す場合は全て倒す必要がある。
独特のテイストを持つテキスト
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世界設定(『II』ではディレクター)担当の小森成雄氏が手がけたテキストも本作の特徴の一つである。小森氏の趣味であろうか、テキストの言い回しには1980年代に大ヒットした輸入ゲームブックをオマージュしたものが多い。当時のゲームブックに心躍らせた世代には嬉しい演出である。
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その言い回しの例を上げると、「君は〇〇してもいいし、××してもいい。」「~~したまえ!」といったもの。単純な言葉でありながら、プレイヤーに選択がゆだねられていることが伝わってくる。
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ちなみに、各種図鑑コンプリート時のBGM名は「400 君の冒険は終わった」。これもとあるゲームブックが元ネタ。
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クエストの表題にはSF小説をオマージュしたものが多い。「華は無慈悲な森の女王(⇒ 元ネタは「月は無慈悲な夜の女王)」「老いたる大富豪の花への願い(→元ネタは「老いたる霊長類の星への賛歌」)」など、ちなみに、SF小説のタイトルへのオマージュは後に出たドラマCDや小説の章タイトルなどでも使われている。
BGM
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作曲担当は古代祐三氏。本作では、あえて音源をPC-8801のFM音源をサンプリングしたものを使用して作曲している。そのため懐かしくも斬新な楽曲になっており、その独創性、チャレンジっぷりは高く評価された。世界樹がジワ売れしていく中、同人サークルが競ってアレンジCDを出したのもその名曲あってこそだと言える。
今作の特徴
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ブーストシステム
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今作及びそのリメイク版にあるシステム。ブーストゲージを最大まで貯めることで使うことができ、ブーストしたターンに使用する通常攻撃およびスキルの性能が大幅に上がる。ただしブーストゲージを貯めるには最低でも数ターンは必要なため、ここぞという時に使う必殺技に近い。
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後半の衝撃的な展開
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ストイックなRPGであることを前面に売り出したので、「ストーリー性はあまりない」と思っている非プレイヤーが多いが、実際にはファンタジーにしては斬新な結末を迎える。特に終盤に明らかになる真実は、多くのプレイヤーが驚くこと請け合い。これから遊ぶ人はネタバレには十分警戒してほしい。
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ただし、オープニングからその伏線はしっかり張られているため超展開扱いはされにくい。
賛否両論点
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6層はワープ地獄・落とし穴地獄・ダメージゾーン地獄・避けられないFOEなど、少々やりすぎ&不毛な感がある。これは開発者の想定したゲームバランスと思われるのだが、マップのアイコン設置上限数を超えるほどのトラップ数はいかがなものか。
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アイコンの種類が少ないため、ワープ地獄エリアでは対応するワープをそれぞれアイコンに置き換えていくと全く足りなくなる。このため完全なマッピングをしようと思えば方眼紙などを用意して手書きするしかない。一応ワープに法則性はあるので無くても攻略不能という訳ではない。
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クリア後の一部ボスは特定の職をパーティに入れていないとまず倒せない。パーティ構成の幅が狭まるという否定寄りの意見が多いものの、クリア後のボスなのだからこれくらい厳しくても良いという肯定意見もある。
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次回作以降にも同様の問題は存在するが、システムの追加による選択肢の増加、また敵の調整によって、特定の職が必須になるという状況は改善されつつある。
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具体的な説明。冗長&ネタバレなので格納
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具体的にはクリア後ボスである三体のドラゴン(通称三竜)と裏ボスであるフォレスト・セルが問題。
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三竜はぞれぞれが特定ターンに使う属性ブレスの威力が極めて高く、パラディンの三属性ガードで無効化あるいは軽減するか、メディックの医術防御をブースト込みで使うかしないと即死を免れない。
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中でも氷竜が特に厄介で、ブレス以外にブレスと同等の威力の全体氷属性攻撃に即死効果の付与された絶対零度を使用してくる。この即死効果の付与率は極めて高く、即死耐性を付けるアクセサリを付けてもほぼ意味がない。よってこれに対しては追加効果も無効にできるパラディンのアイスガードを使わないとどうしようもない。
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同じく氷竜の使用するアイスシールドは、弱点である炎属性と物理三属性のダメージを1桁にしてしまい、雷属性を含む攻撃以外ではほぼ撃破不能になる。さらに雷攻撃で少しずつ削っていこうにも毎ターン自身のHPを回復する氷河の再生も使用してくるのでこの両方のスキルを打ち消せるバードかカースメーカーのいずれかも事実上必須である。
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裏ボスのフォレストセルは三色の属性攻撃に加えて物理攻撃も全て即死級の威力を誇り、三竜とは違い属性攻撃が特定ターン以外にも飛んでくるためパラディンでは対処しきれず、余程捻ったパーティ構成をしない限りはメディックの医術防御をブースト込みで使うことが必須になる。
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これらを纏めると、途中参戦職であるカースメーカーを除いて考えれば、基本的にはパラディン、メディック、バードの三職は必須ということになる。
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問題点
システム面での不備
下記に記す通り、システム面の不備が目立つ。しかしこれはシリーズ一作目でまだまだ荒削りであったため仕方のないところでもあり、シリーズを重ねていく度に改善がなされていった。
しかし、逆にこの「絶妙な不親切さ」こそが逆に斬新に見えたのか、もしくは一部のマゾプレイヤーの心を掴んだのだろうか? 一定数の固定ファン獲得に貢献したとも思われる。
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3DダンジョンRPGでは搭載が当たり前となっている「カニ歩き」ができない。特に隠し通路を探す際に大変不便である。
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まとめ売りのシステムが存在するのだが、操作がゲーム中で一切解説されない。
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貴重品(ミッションやクエストなどに必要なアイテム)が売却できず、アイテムを預ける場所もない。結果、アイテムスペースを圧迫する。ちなみにアイテム最大所持数は60個。
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戦闘のテンポが遅い。メッセージスキップはAボタン押しっぱなしでようやくストレスが無くなる速さになる。
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戦闘のコマンド入力の際、最後尾のキャラの行動をキャンセルできない。間違えた場合はそのまま行動を開始してしまうもので、一般的なRPGでもよくあることなのだが、シビアなゲームシステムのおかげでミス1つが本当に死へ直結する。
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特に、スキルコマンドを選択しようとして防御コマンドを入力してしまうケースが顕著。
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この点に関しては後のシリーズ作品でも長らくフォローがなく、リメイク版でようやく改善された。
ゲームバランス
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クラス・スキルのバランス調整が若干甘い。
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レンジャーは探索型クラスのはずなのだが、耐久力が高めで得意武器が弓なので前衛も後衛も務まり、スキル「ダブルショット」「サジタリウスの矢」の攻撃力が非常に高く、補助スキル・採集スキルも充実している…と万能かつ高性能。特に補助スキル「アザーズステップ」は取り回しが非常に便利な上に後述の「医術防御」とも相性抜群と隙が無い。さらに弓は全武器の中で最初に最強装備を入手するチャンスがあるなど環境的な優遇もある。
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メディックもかなり優遇されている。実践的な回復スキルを覚える唯一のクラスであり、本作は全体的に回復アイテムの値段が高いため金に余裕がない序盤はほぼ必須となっている。終盤以降は回復スキルの重要性が落ちるが壊れスキル「医術防御」を習得でき、「ATCブースト」、「ヘヴィストライク」によって攻撃性能も十分高いと隙が無い。
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医術防御はパーティー全体の属性耐性を上昇させるスキルなのだが、あまりにも効果が大きい。最大まで強化した医術防御は受けるダメージを半分以上カットし、通常であれば一撃死するような攻撃でも余裕をもって耐えられるようになる。これのあるなしでかなり難易度が変わってしまうため、適度な緊張感を味わいたいなら習得しないほうが良いと言われることも多い。
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不遇とされるのは隠しクラスのブシドー。全職屈指の攻撃力を誇り、構えを取ってから強烈な攻撃を放つのが最大の特徴だが、この構えが曲者。バフ扱いでありそのターンは攻撃できないため雑魚戦では使いにくく、長期戦になるボス戦では問題ないかと思えば戦闘不能や強化解除スキルなどで解除されると大きく継続火力が下がってしまうため注意する必要がある。しかも構えによって3枠しかないバフ枠を1つ取ってしまうためパーティや立ち回りが限定されやすい。
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このような難点を抱えながらも全体的にスキルの性能が飛びぬけて高いわけでなく、むしろ全体攻撃を持っていないなどの欠点が目立つ。それに加えて前衛屈指の紙耐久(中衛職のレンジャー以下)、最大TPが少ないのでガス欠も早い、そもそも隠し職故に途中参加になるので育て直しが面倒と厳しい性能。
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一応きちんと育て上げて装備を整えれば全クラス屈指の継続火力を発揮でき、複合属性攻撃や即死技などの珍しいスキルを持つため条件ドロップ狙いや特定の敵に対して有用な場面もあるなど長所は決してないわけではない。ボスのレアドロップ前提とはいえ仲間になって早い段階で準最強核の刀を比較的安価で購入できるという強みもある。
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余談だが、次回作以降で登場するブシドーはゲーム開始時から選択できるようになり、構えがパッシブスキルになっていたり、戦闘開始時に自動で構えるようになっていたり、全体攻撃を取得できるようになっていたり、全体的にステータスが向上していたりといった強化がされており、本作で目指していた方向である『癖のあるスキルと紙耐久がネックだが、使いこなせれば最高クラスの火力が出るロマン職』として機能するようになっている。
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アイテム「○○の逆鱗」の入手が非常に面倒。
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少し長い&軽微にネタバレなので格納
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特殊ボスである通称「三竜」を撃破することで10%の確率でドロップする。三竜の名の通り3種類いるため、3体の敵それぞれでドロップさせる必要がある。
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三竜は特定のターンに即死級の技を放ってくるので対策を打たないとまるで勝負にならないが、パズルボス的な初見殺し要素が多いので行動パターンを理解して撃破パターンを組めばかなり安定して倒すことができる。しかしそれ故に2回目以降は作業ゲーになりやすく、かといって適当に戦えるほど弱くはない上にHPが高く長丁場になるので時間がかかり面倒。
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中でも強烈なのが三竜の一角である氷竜で、氷竜のみ戦うまでに必要な移動距離が極端に長いため、なかなか出ないと何度も長いマップを進む必要があり悲惨。
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3種の逆鱗を商店に売ることで今作最強の剣である「真竜の剣」を作ることができるようになる。確かに強力ではあるのだが、三竜以上の強敵は裏ボスしかいない上、無くても全然問題なく倒せるので労力に見合った価値があるとは言い難い。そもそもパーティ構成次第では剣を使用する職が誰もいないこともある。
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ただ本作の真EDを見るためにはこの逆鱗も含めた全てのアイテム図鑑を埋めるというのが条件の一つなため、見たい場合は頑張るしかない。
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…のだが、発売から10年以上経った2017年にディレクターの新納一哉が隠しコマンドの存在を公表。ゲーム起動後にアトラスのロゴが出ている瞬間に特定のコマンドを入力することでいつでも真EDを見ることができるようになったので単純なやり込み以外で集める必要がなくなったことになる。なおこのコマンドの存在は10年余りの間ネット上で話題になることはなかったので完全に知られていなかったものと思われる。
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バグ・誤植が多い
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バグは無害なものから、極めて進行の妨げになるもの・プログラムミスにより効果の無いスキルがある等、大小さまざま。中でも隠し要素に関わる致命的なバグ(しかも発生すると取り返しがつかない)があるので要注意である。
残念ながらこの辺りはシリーズを重ねていっても改善されていないことが多いので、バグ情報だけはインターネットで事前に調べて自衛するか、或いは「世界樹シリーズはバグが多い作品だ」と割り切るかするしかない。
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スキルバグの例としてパラディンの「挑発」とレンジャー・ダークハンターの「シャドウエントリ」はデコイ効果皆無。進行に影響はないが取るだけ無駄。
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誤植で特に有名なのは、同階層の雑魚中トップ、全雑魚モンスター含めて第3位の攻撃力を持つ、とあるモンスターの説明文に記載された「攻撃力はさほどでもない」だろう。転じて世界樹関連の話題での「さほどでもない」は「とてもすごい」の意味になり、公式でも第四作でネタにされている。
総評
「温故知新」という言葉がピッタリの良作RPG。
初タイトルであるが故のつたなさこそあるが、NDSの機能にマッチしたマッピングの楽しさと独特のゲームバランスは高く評価された。RPG好きなら是非プレイして欲しい作品である。
余談
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小ネタとして、NPCの一人に『超執刀カドゥケウス』の北崎先生が友情出演している。メンバーの治療を行う施薬院院長として登場、超執刀でケガを治すのだろうか? もっとも本作の回復役は呪術医(僧侶等)ではなく、メディック(救急救命士、衛生兵)なので違和感は無い。
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ちなみに、『II』には月森孝介・利根川アンジュが友情出演。更に小森氏が過去に関わった『プリンセスクラウン』からグラドリエル王女も参加している。
その後の展開
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本作発売後、ディレクターを務めた新納一哉氏がイメージエポックへ移籍。そのため続編発売が危ぶまれていたが、残ったスタッフの手により続編『世界樹の迷宮II 諸王の聖杯』が2008年に発売。ファンを大いに喜ばせた。
以降も1~2年に1本のペースで新作がリリースされるようになり、アトラスの主力タイトルの一つにまで成長を遂げている。
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世界樹の迷宮のヒット以降、他社からも3DダンジョンRPGがぽつぽつ発売されるようになった。2008年3月には『エルミナージュ』が、5月にはサクセスより『幻霧ノ塔ト剣ノ掟』が発売。
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IPMが『Wizardry』の版権を獲得したことでDS/PS3などのハードで和製ウィズが再びリリースされるようになった。またエクスペリエンス(チームムラマサが独立して起こした会社)は『Generation XTH』シリーズや『円卓の生徒』といった3DダンジョンRPGを精力的にリリース。これらの出来事を踏まえて考えると、世界樹の迷宮スタッフらが掲げた「3DダンジョンRPG再生計画」はある程度の成果を上げた、と言えるのではないだろうか。
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2023年2月9日に本作と『II』『III』のリマスター版『世界樹の迷宮 I・II・III HD REMASTER』が発表された。対応機種はSwitch/Win(Steam)で、2023年6月1日の発売が予定されている。
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懸念されていた手書き地図の有無だが、携帯モードでのタッチによる描画、コントローラー操作での描画、Win版はマウスによる描画がサポートされていることが確定した。
最終更新:2023年02月10日 15:25