Wondrous Magic

【わんだらすまじっく】

ジャンル RPG
対応機種 スーパーファミコン
メディア 16MbitROMカートリッジ
発売元 アスキー
開発元 システムサコム
発売日 1993年12月17日
定価 9,800円
判定 ゲームバランスが不安定
ポイント 豊富な一枚絵
全方位リアルタイムバトル
不安定にも程があるゲームバランス
見てる分には面白い
一部の要素は後の作品に採用


概要

ファンタジー世界を舞台としたRPG。
様々な新機軸を打ち出した意欲的な作品であったのだが、ゲームバランスの酷さが災いし、高い評価を得ることはできなかった。

ストーリー

主人公のフィーリスが6歳の頃、母シリアは病死、父グナスはダーレスへ向かい消息を絶つ…
それから10年。16歳を迎えたフィーリスは、祖父のリンクルとともに、父に会うべくダーレスへ向けて旅に出る。

登場人物

+ 登場人物一覧
フィーリス・リ・インカート(アプレンティス Lev.1)
本作の主人公。名前はいつでも変更する事が可能である。どちらかというと魔法タイプ。ペットのチャルがいる。
リンクル(マスターウィザード Lev.7)
フィーリスの祖父。娘シリアが亡くなって以来フィーリスを育てる。長い旅にも同行してくれる。
知識も豊富で道中では色々な助言をしてくれる。モンスターにも詳しく弱点を教えてくれたり弱点を突いたりする事も可能。
シーラ
アリアの都の魔法院で働いている。若くて綺麗だけど勉強は厳しいと評判。シリアの事も知っており、フィーリスに色々と教えてくれる。
幻獣を召喚する力量も持ち合わせており、世界を救うべく各地を回り手練手管を駆使する。
ソルディック(パラディン Lev.8)
王宮剣士。ダブル・ソードの使い手として知られている。リンクルとは長い付き合いで、彼もまた力になってくれる。
王宮魔術師だったリンクル、王宮剣士のソルディック、グナスのトリオは評判が良かった。
フレディア(ウィザード Lev.8)
右腕かたわの魔法戦士。16のときに魔法戦士のあかし宝石「ブラッドストーン」を持ちネクストリアへ来た。
彼も主要メンバーの一人であり、剣と攻撃魔法を得意とする。後に意外な姿が分かる。
ガストール・ヴォイド(アンデッドハンター Lev.13)
ドワーフの戦士。家族のかたきをうつべくリンクル達に協力を申し出る。
ガスタック・ヴォイド(プリースト Lev.18)
フィーリスが抜けた際は回復役として同行してくれる。
イリオン
王宮魔術師の長をめぐってリンクルと戦って死んだと思われていたが、悪意の魔術師イヴァスをよみがえらせるべく何度も牙を剥いて来る。
ウェスト・ストーカー伯爵
20年前にダーレスを滅ぼしたとされる人物。イリオンとは因縁があり、悲しい過去を持つ。
倒すためにはロザリオが必要であるが、基本的に無益な争いは好まず、フィーリス達が太刀打ち出来ない段階で来た際はまともに相手にせず退場させてくれる。
セリシア(ハイクレリック Lev.26)
レ・リュースの都長(みやこおさ)。幻想庭園に行く際は彼女も同行してくれる。
  • 他にも多くの人物が一枚絵とともに登場する。
  • パーティーは最大4人まで。メンバーはストーリーの進行に応じて入れ替わる。

ゲーム内容

世界観

  • フィールド
    • 大きな地図上に城や街やダンジョンが点在しており、エンカウントもなく手軽にアクセス出来る仕様。
    • 行先名はしっかり表示されるので分かり易い。
      • 勿論、進行に応じて行先は増える。一部、洞窟を経由して往来する場合もあるが後に移動手段については解決する。
    • 表現する際は拡大縮小機能が活用されており『ファイナルファンタジーIV』のサイトロばりに広範囲も見られるので快適。贅沢を言えば回転機能も使って欲しかった。
  • 城や街
    • 全景が一枚絵で表示され、各施設を選択する仕様。
      • 建物内部はマップではなく一枚絵が表示される。あらゆる施設や王室、魔法教室など色々なイベントが用意されている。
      • 宿屋ではHP回復の他にセーブしたりアイテムを預けたりする事が出来る。なお、MPに該当する祈願力は教会に寄付をしてチャージする仕様。
    • 一部の村は全景ではなくマップを歩く仕様になっている。
  • ダンジョン
    • 塔や洞窟や採石場など色々用意されている。
    • クォータービュー仕様であり、フィーリス達も一列に歩くのではなく正方形というよりもひし形状の配置で移動して、更にジャンプもするので立体感がある。
      • ジャンプは一応、穴を跳び越える判定もあるのだがそれが必要とされる場所が一切なく難易度も何故かそこだけ異様に高かったりする。要はオマケ程度。
    • 戦闘は幻獣とエンカウントする方式。
  • 通貨
    • 普通のゲームの通貨は1種類が相場だが、本作ではオニキスとベゼッタの2種類存在する。
      • この手の仕様は珍しく『Secret of Evermore*1』の仕様を先取りしているとも言える。
    • 幻獣を倒すとオニキスという宝石を落とす。これを施設で両替してもらえる。1オニキスで10ベゼッタに相当。
    • 所持金は65535でカンストする(65535オニキス+65535ベゼッタ)。
  • アイテム
    • 装備品や回復は勿論、中にはユニークな効果も多数。1つ1つにアイコンと解説文が付いて分かり易い。
    • リュックに60個まで貯蔵。城下町の宿屋で預ける事も可能。更に各メンバー毎に9個までアイテムを装備可能。
    • アイテムは『???』と不確定名の状態で手に入れる事があり、街の施設に行くと鑑定してもらえる。
  • セーブは宿屋で行う
    • ファイルは3箇所で任意の場所に可能。プレイ時間は記録されない。
    • タイトル画面ではセーブファイルのコピペやリネームが行える。
  • 魔法
    • 独特の仕様で2つに大別。「呪文」は体力を消費して攻撃。「祈願」は祈願力を使って回復が行える。
      • 祈願力は宿屋ではなく教会にお布施をして回復してもらう仕様。

戦闘

  • 全方位リアルタイムバトル
    • ドラクエ型の1人称視点画面の構成でLRボタンで向きを変えられる
      • スクロールは1画面ずつ、あわせて4画面ループで1周する仕様。
      • 自分の位置とそれに対する敵の相対位置もレーダーマップとして白い点で表記される。回転にも連動する。
  • 戦闘方法
    • リーダーとお供(最大3名)で参加することとなる。
    • リーダーとなるメンバーはセレクトで選択できる。
      • 分かり辛い仕様で、画面上のゲージもしくは装備した魔法・アイテムなどのアイコンから頼りにどのキャラを選んだかを判断しなくてはならない。
      • ターンが回ってくる前はアイコンが青味で表示されている。
    • プレイヤーはリーダーとなっているキャラをのみ操作して、その他のお供メンバーはそれぞれのAIに従ってめいめいに行動する。リーダーの目の前にいる敵に攻撃するとも限らない。
  • アイコン仕様
    • 武器・アイテム・魔法などは全てアイコンで表示。
    • 移動中には事細かく表示されていたのに対し、現在HPは棒グラフ。MPなども数値も一切表示されず、敵から食らったダメージ数も非表示で大味なバトルに仕上がっている。
  • Yボタンで武器攻撃
  • Bボタンでアイテム・魔法を発射
    • 戦闘中にXでアイテム、Aで魔法を出して選ぶ事が可能。消費MP、現在MPともに非表示なので注意。
    • 歩行中に両者とも予め9個まで装備しておくことが出来る。
  • PAUSEボタン
    • 忙しい戦闘もポーズしている間は待つ事が出来る。その間に視点を切り替えたり、アイコンを選ぶ事も可能。
    • 敵の名前も表示されている。
      • ただし、戦闘中に表示される文章はこれのみ。
  • AIも搭載されており自動で戦ってくれる仕様も実装されている。
    • 敵は4方に配置されており全滅させれば良い。大型でアニメーションをする点は評判が良い。
    • なお、大型ボス戦では画面は固定。回転はしないようになっている。
  • 逃げる事も可能。四方向のうち敵がいない画面に合わせて、上ボタンで逃走出来る。ただし、それまでに倒した敵のEXPや通貨は一切得られない。
  • 経験値
    • 次にレベルアップするまでの経験値という仕様になっている。ちなみに最大Levは50。

評価点

  • 全方位バトル
    • 360°の中で戦うと言う発想は面白い。遠景をループで使用して、それも高品質なグラフィックなので臨場感も増している。
  • 敵のアニメーション
    • 攻撃する際、ダメージをくらう際、倒れる際の動作が用意されている。
    • ボス戦闘は画面いっぱいの大きさでしかも動くので迫力がある。
    • こちらからの魔法エフェクトもド派手で面白い。敵を凍結させた際は青めに変色するようになっている。
      • ただし、スクロールさせた際は通常色で表示されているのは甘い。
  • 敵のグラフィック、背景、文章いずれも高品質であり、普通のRPGとしても見栄えが良い。
  • 練り込まれた世界観
    • 序盤はチュートリアルに近い仕様であり徐々に慣れていけるようになっている。また図書館も用意されており世界について色々と綴られている。
    • 作中では女神シュレルと幻獣の神イヴァスの戦いが、99代目の娘は剣士と契り子を宿す。その力による復活を企てていたなど色々と語られる。
      • 細かいところでは石化しても喋れたりする理由も説明してくれる人もいる。
  • 量も質も豊富な一枚絵
    • 本作では各地で一枚絵が出て来る。プロローグからして5枚以上使われている。
      • サイズも1画面で収まらないのも用意されており、スクロールしてくれるのでカメラワークの臨場感がある。
    • 1枚1枚が丁寧に描き込まれており、品質も量もトップクラスの素晴らしさである。
  • セーブのタイミングを間違えて詰まないように配慮されている
    • 港ではボス戦の直前にセーブ出来たりするが、ボスに負けても詰んだりする事はなく負けてロードした際は港から再開するようになっている。
  • 自由度は高い
    • 序盤のうちは一本道であるが、中盤あたりから行けるところが増えて、終盤では全ての場所に自由に行けるようになっている。
    • 一度行ったら二度と来れないようなダンジョンはなく、宝箱を全部集めてみるというやり込みも楽しめる。

賛否両論点

  • フィールド
    • 行先を選んで簡単に移動出来るので楽と言えば楽だが、フィールドを歩き回る自由度や、プレーヤーが乗り物を操縦する楽しみも無くなっている。このあたりは好みが分かれる。
  • ダンジョンのギミックは薄い
    • あるのは、滑る床、出没針(タイミングも甘い)、ワープ魔法陣くらいでアクション要素は申し訳程度である。
    • やる事は、宝箱から「宝箱のカギ」を拾って、カギのかかった宝箱から「トビラのカギ」を手に入れる事くらいである。
    • ちなみに、落とし穴を飛び越える事も一応出来るが、これだけは判定が厳しく難しい割にメリットは一切ないと思われる。普通に回り込んで来た方が確実である。
  • パーティーメンバーは固定
    • 進行に応じてメンバーは決まっており、プレーヤーが選択する余地はない。

問題点

非常に悪いゲームバランス

  • エンカウント率が高い
    • 数歩歩く毎にエンカウントするので時間がかかる。これだけなら普通のRPGにも良くありがちではある。
    • ただし、後述する問題点…1戦闘毎に4画面分、ボスまでの道中が長い、セーブの類は一切なし、全滅したらゲームオーバー、など数多い。これらが複合する事により更に厄介なものになっている。
  • 逃げる事も出来るが、アイコンではなく「敵がいない画面を向いて上ボタン」という独特の仕様に加え、登場人物達からはそういう助言は得られないので分かり辛い。
  • エンカウントを回避するアイテムや魔法はあるにはあるが、アイテムの方は高価であり幻獣もたまにしか落とさない。また、エンカウントを防止する魔法はリンクルがLev40になってようやくフェイドLev1を覚えるので容易な事ではない。
  • ついでに言うと、大きな扉のあるところでエンカウントする際は何故か扉が非表示になっている。
  • 戦闘
    • 自分が選んでいるキャラが誰なのか非常に分かり辛い
      • 信じられないかも知れないが本作では、戦闘中に表示される項目はHPゲージと武器・魔法・アイコンのみである。
      • 文章も数字も表示される事はなく、移動中には詳細まで見れたはずの現在HP・MPやアイテムの解説は一切見られないので、大味な戦闘になってしまっている。
      • 味方側のパラメータは画面上部に菱形上に配置されたHP棒グラフのみで、フィーリス達の顔グラやドット絵、名前すらも表示されない。
      • 仲間の配置は歩行時の菱形状になっているがしっかり覚えていないと本当に誰が誰だか分からなくなりがち。セットした魔法やアイテムから推定する事も出来るが快適とは言えない。
      • ただし、本作にはAIという概念があるので自主的に行動はしてくれるし状況に応じて回復アイテムを使ったりはしてくれる。
    • 敵のグラフィックに優れている一方、味方側はグラフィックも名前も一切出てこないので慣れが要るし見た目も良くない。
  • 戦いが長引く
    • 本作の全方向バトルは4画面分あるので、その分雑魚敵も多くなり最大では10体くらいで取り囲んでくる。
    • 全体攻撃をしても敵に与えたダメージは1体1体表示されるので、これまた時間がかかる。
  • ストーリーは少女漫画のように上品で丁寧な仕上がりに対し、戦闘は大雑把に剣と魔法で殴り合うという下品なものになっている。ついでに言うと敵を攻撃すると甲高い声で痛々しい。
  • ボス戦
    • まずそこまでの道中が長い上に、ボス前にセーブポイントが無く、雑魚敵も普通に跋扈しており、色々な意味で消耗して辛い。
    • 本作では負けたらゲームオーバーなので、下手をすればそれまでの長時間のプレイを棒に振ることになりやる気を削がれる。
    • また、一部のボス戦では視点を全方向に回転出来る仕様であるが、開始時になぜかボス以外の方を向いている事もある。
    • このあたりを見ても戦闘面での調整不足は明らかであろう。
  • エンカウント率の高さに加え、これらの戦闘バランス、マップ構成などの欠陥が複合した事により非常にストレスフルな事になっている。

演出面

  • グラフィック
    • 多彩なイベント画像が用意されている一方で、メニュー画面を開いた際には顔グラの類は一切ない。
    • クォータービューなのに歩行グラフィックは斜め移動ではなく上下左右のみ。上下以外は左右に統合して無理矢理感がある。
    • 宝箱も斜め仕様ではなく普通の正面画像である
      • 伯爵の館ではワープ直後の主人公達に隠れて見落とし易い場合もあるので注意。
  • 回転視差
    • 方向を変える際は、遠景が滑らかにスクロールするのは良いが、敵の位置を示す点は滑らかに移動しないのは不自然。三角関数を使って回転させて欲しかった*2
    • 遠景は、回転視差として使っているので、多重スクロールは余計。
      • 遠景は視点の方向に応じてスクロールすれば良いが、手前のキャラは座標計算をされているわけではなく遠景と連動しているのみで臨場感というよりは戦闘画面を4枚、ループで押し付けられている印象が強い。
    • SFCの作品において、遠景と回転拡大縮小機能7と座標計算を駆使してカメラワークという概念を実現した作品はレースゲームなどはたくさんあったが、本作を通じてRPGにもそういう風を吹き込めなかったのは残念なところである。
      • なお、同社からは本作を最後にこの手の仕様は一切出ていない。
  • 通貨
    • 2種類の通貨があるが、両替が煩雑なだけで有難味は薄い。
  • アイテム関連
    • アイテムは自動整頓はなく、手動での並び替えも出来ないので不便。
  • 武器屋関連
    • 武器屋では装備後の比較が表示されないので面倒。
    • 資金増加バグ
      • ライトアーマの定価が1000ベゼッタで売値が1200ベゼッタになっている。つまり、売り買いをすれば同じ場所で一回ごとに200ベゼッタ増やす事が出来る。
      • そもそも、定価<売値というのがありえない事で、他で売って来るならまだしも買った直後に高値で売れるのはおかしい。明らかな調整ミス。
  • デフォルトネームは空白でやらないと出ない。
  • 序盤の「魔法の森」で変なやりとりがある
    • 出口にさしかかったところ主人公フィーリスが突然ダダこねて、その後にリンクルが消えて置き去りにされるイベントがある
      • 正解は回復魔法を使うだけなのだが、知らないうちは、単独でエンカウントしたり、変に遠回りをして大変な目に遭う。
    • 自分から旅に出たはずなのに、開始早々、出鼻をくじかれており、流れがおかしいと言える。
  • 進行不能バグ
    • 幻想庭園最上部でセリシアからマーブルを受け取る場面があるが、アイテムが一杯だと「しかしリュックがいっぱいで_もうアイテムは持てません」と表示、あとは無限ループに陥る。
  • レベルMAXの際の表示
    • Lev.50になると次は65535と表示とあり、次はLev.51があるのかと思い経験値を稼いでも表記が0のカンスト状態。こういう際は数字ではなく横線で表記すべき。
  • ここまで来ると、バランス面では欠陥だらけであり、テストプレイが不十分なまま世に出されてしまった疑いが濃厚である。

総評

世界観は練られており豊富な一枚絵、本作独自の要素、全方位リアルタイムバトルに、敵もアニメーションをしたり迫力のあるボスなど非常に作り込まれており、本当なら良質なゲームになる可能性はあったものの、ゲームバランスの悪さが災いし、大きく評価を落とす事になってしまった。

余談

  • アスキーは以降も色々と発売しており、本作の鑑定や城下町の仕様などを採用している。
  • 全方向バトルを採用した作品は珍しいが、実は他のメーカーからも発売されている。
    • 本作のおよそ丁度1ケ月前にも、やのまん製作の『アレサ ARETHA the SUPER FAMICOM』が発売されている。後に『アレサII』、その後にはバンプレストから『グランヒストリア』が発売されている。
最終更新:2024年03月09日 21:47

*1 聖剣伝説2からの派生作品。略称SoE

*2 こういう用途なら三角関数は近似値でも十分であり、sinθは直線、cosθは放物線で妥協すれば演算量も少なくコストパフォーマンスが良い。というくらいはやって欲しかった。