Ghost of Tsushima

【ごーすと おぶ つしま】

ジャンル アクションアドベンチャー


対応機種 プレイステーション4
プレイステーション5 (完全版のみ)
Windows(Steam/Epic Games Store)
発売元 Sony Interactive Entertainment
開発元 Sucker Punch Productions
【Win】Nixxes Software
発売日 2020年7月17日
定価(税別) 通常版: 6,900円
デジタルDXエディション: 7,900円
プレイ人数 1人(本編)
1~4人(冥人奇譚)
完全版 【PS4/PS5】2021年8月20日/7,590円
【Win】2024年5月17日/7,590円
レーティング CERO:Z(18才以上のみ対象)
判定 良作
ポイント オープンワールド時代劇ゲーム
驚異的なロードの速さ
重厚なストーリーと個性的な登場人物
バグが一部話題になるも愛嬌でウケた
PlayStation Studios作品


WARNING!!!!!!!
残虐描写を多分に含むCERO:Zのゲームです。


概要

『怪盗スライ・クーパー』シリーズや『inFAMOUS』シリーズで知られるSucker Punch Productions開発による最初の元寇(文永の役)を題材にしたオープンワールドゲーム。

13世紀の対馬をモチーフにしたマップを舞台に、強大な蒙古(モンゴル)軍に立ち向かう1人の侍の生き様を描く。
すっかり海外発ならではのネタと化してしまった「勘違いニッポン」とは一線を画す、日本の時代劇への愛とリスペクトに溢れた作風は大きな話題を呼んだ。
キャストには主人公の仁役に「硫黄島からの手紙」のツジ・ダイスケ氏、ハーン役に「ナイト・ミュージアム」のパトリック・ギャラガー氏を起用。
なお、あくまで元寇を題材にしているだけなので、人物などは架空である点に注意*1


ストーリー

本編

文永(十三世紀後半)、モンゴル帝国(大元・蒙古)は東方世界の征服をもくろみ、立ちふさがるすべての国を蹂躙していた。
東の果て、日本に侵攻すべく編成された元軍の大船団を率いるのは、冷酷にして狡猾な智将、コトゥン・ハーン。ハーンは、侵攻の足掛かりとして対馬に上陸する。
これを防ぐべく集結した対馬の武士団は、初めて見る元軍の兵略によって初戦で壊滅。島はたちまち侵略の炎に包まれる。

だが、かろうじて生き延びた一人の武士がいた。

境井 仁(さかい じん)。

仁は、境井家の最後の生き残りとして、たとえ侍の道に反した戦い方に手を染めることになっても対馬の民を守ろうと決意する。

冥府から蘇った者「冥人(くろうど)」として、あらゆる手段を使って故郷を敵の手から取り戻すのだ。

(公式サイトより)

壹岐之譚

謎の毒によって苦しんでいる民を見た仁。そこを調査すると壱岐の“オオタカ”が仁を待っているのだという。

オオタカ軍を討つべく壱岐へ渡った仁。しかし、仁はオオタカに捕らえられてしまう。

捕らえられた仁は、ボスであるオオタカと出会い、“霊薬”と呼称する謎の液体を仁に飲ませたのだった。それこそが、民を苦しめているオオタカの謎の毒だった。なんとか開放されるも、仁は毒を飲んでから謎の幻覚が見えるようになってしまう。

壱岐はかつて侍が攻めて虐殺した島で、幼少期の仁が、父の討死を目の当たりにした場所でもある。

今や壱岐は罪人を島流しする場所になっており、海賊もいたりと、治安は悪い。仁は幻覚に苦しみながらも、壱岐の浪人“・蔵(てんぞう)”、女海賊“ふか”などと手を組み打倒オオタカに挑む。


特徴・システム

陰惨な作風

  • 時代や背景ゆえに、「生きたまま人間を火あぶりにする」「首を刎ねる」といった容赦のないゴア表現が多いのが特徴。
    • 首を刎ねるのは敵だけに限らず、主人公である仁も体力が0になったときには(直接的ではないものの)首を刎ねられてゲームオーバーという形で描写される。そのため、開始直後のゲームに慣れていない時期は返り討ちにあって首を刎ねられる仁を何度も目にすることになる。
    • 主人公である仁も「裏切者の首を杭に突き刺して見せしめにする」「敵を毒で皆殺しにする*2」「(プレイヤーの操作により)背後から部隊長の首を一振りで断ち落とす」といった強烈な行動を取るので、耐性が無い人は注意。
  • レーティングからしてCERO:Z(18歳以上のみ対象)のゲームであり、各種メディアで話題になった作品ではあるが、ゴア表現や陰惨な描写が苦手な方は購入前によく検討してほしい。

探索

  • オープンワールドで表現された対馬
    • 題名にもある通り、本作は蒙古の襲撃を受け、各地を占領された対馬が舞台となっている。
      • 大きくはゲーム開始後に探索する「厳原(下島全域)」・中盤に訪れる「豊玉(上島南部)」・終盤の舞台となる「上県(上島北部)」の3エリアに分かれており、シナリオの節目にある拠点攻略クエストをクリアすることで次のエリアに行くイベントが発生する。
    • 各地には蒙古に奪われた村や拠点、砦などがあり、これらを制圧するとプレイヤー側の拠点となる。いくつかの拠点では「蒙古の大軍が待ち受けている」と警告されるが、それらはメインシナリオで攻略する拠点であり、然るべき時の前に踏み入れると弓矢の雨で即死する。
      • 奪還した拠点は高速移動先として使えるようになるほか、周辺マップの開放や場所によっては商人や職人が来て装備の強化ができるようになる。また、一度奪還した拠点はイベント以外では蒙古兵が出現しなくなる。
    • 奪還を一切しなくても各地にある流民の野営に商人がいるので、最低限の補給は可能。
    • また、壹岐之譚では全く新しいマップ「壹岐島」が舞台となる。
  • 誘い風
    • この手のオープンワールドゲームによくあるコンパスは存在しないが、タッチパッドを上にスワイプすると目的地に向かって風を吹かせることができる。
      • 元寇といえば神風が有名であり、それをゲーム内の要素として取り入れたとのこと。
    • タッチパッドを左にスワイプすると、天候を変える笛が吹ける。曲の設定はメニューから行う。
    • 初期は晴れにする曲だけだが各地にいる「こおろぎ」を入手することで増えていき、嵐や霧など様々な天候に変更できるようになる。
    • 壹岐之譚では動物相手に吹くミニゲームが用意された。
    • 『ASSASSIN'S CREED』などと同じで口笛を吹くとすぐに来てくれる。名前を数通りから選べることもあり、プレイヤーの中でも愛着が湧きやすい。終盤では…。
    • 壹岐之譚では突撃と馬鎧が追加された。

装備

  • メインウェポンは直接戦闘で使う太刀、闇討(後述)で使う小刀(脇差)の2種。
  • サブウェポンは長距離用の飛び道具として半弓、長弓、手投げ武器、吹き針の4種と近距離用の飛び道具として苦無、とりもち玉、煙玉、油の4種がある。
    • サブウェポンは最初からすべて使えるわけではなく、技能として習得したりサブクエストをクリアすることで解禁されていく。また、技能習得によりそれぞれの派生武器が使えるようになる。
  • 体用の装備は鎧と兜、面頬(マウスガード)の3種。
    • 鎧は護符とあわせて追加効果の付与が主体であり、防御力を上げるものは限られている。
    • 兜や面頬はパラメータに影響しないアクセサリ扱い。
  • 太刀と脇差、鎧、弓は各地の街にいる刀鍛冶などで強化できる。
    • 武器は強化すると攻撃力やチャージ速度が上昇し、鎧は強化すると特殊効果の種類が増えたり効果が強化されたりする。
    • 太刀と弓は装具を入手する事で見た目を変更出来るが性能に特に変化は無い。

戦闘

    • 敵である蒙古兵は、基本的に「剣兵」「盾兵」「槍兵」「剛兵」「弓兵」に分かれており、剣兵なら素早い攻撃を繰り出すといった具合に戦術が異なる。これらに対し、後述する「型」を使い分ければ有利に戦えるようになる*3
      • ストーリーが進行すると敵兵が強化され、剛兵は火筒*4を用いる者が、弓兵は火矢や毒矢を使う者などが現れるようになる。
    • 道中で現れる敵は蒙古兵だけでなく、食い詰めて野盗へと身を堕とした民や、同じく食い詰めて蒙古に寝返った牢人、野生の動物(猪と熊が該当)も存在する。ちなみに、野盗は蒙古兵で言う「盾兵」「剛兵」が存在せず、牢人は「剣兵」しか存在しない。
      • 蒙古兵・野盗・野生動物は各々が敵対するようになっており、場所によっては蒙古兵と野盗が争っていたり、蒙古兵または野盗が熊に襲われているといった場面も。
      • そしてその様子に高みの見物を決め、生き残った方を仕留める漁夫の利戦法も当然可能。蒙古兵の拠点が野盗や熊に襲撃されている場合もあり、その場合は敵が減って戦い易くなる。
      • 特殊な動物として蒙古兵が使役する犬や鷹が存在し、気づかれると近くの蒙古兵を呼び寄せてしまう。特に上空から索敵を行う鷹は視界が広く、かなり離れていても気づかれるので、優先して仕留めるのがセオリー。
    • メインクエスト及びサブクエストのボスとの戦闘では冥人の暗具や兵術が使用できず、一対一のチャンバラとなる。
    • 壹岐之譚では「呪術師」という、敵を鼓舞して耐久力などを上げる兵が追加される。
  • 闇討
    • 気づかれていない状態で敵に接近すると一撃で殺せる、いわゆるステルスキル。
    • 技能習得により最初に殺した相手の近くにいる敵を最大2人まで連続で殺せるようになる。
    • 部隊の隊長格の闇討は終盤まで不可能だが、イベントである技能を習得すると闇討できるようになる。ただし一般兵士とまとめての闇討は不可能。
    • 侍としては外道である「冥人」としての主戦術であり、この戦い方の修得を余儀なくされる調整が仁の葛藤をプレイ感からも引き立てる。
  • 一騎討ち
    • 気づかれていない状態からボタン長押しで名乗りを上げ、一番近くにいる敵との立ち合いとなる。敵の攻撃に合わせてボタンを離せば、カウンター攻撃によって一撃で倒せると同時に、気力が最大になる。
    • 逆に相手が攻撃する前にこちらが攻撃してしまうと、こちらがカウンターをもらってしまい即瀕死のダメージを受けてしまう。
    • 当然、相手の攻撃をそのまま受けてもダメージを受けてしまう。終盤になるとフェイントをかけてきたり攻撃速度が速くカウンターを取りにくい敵も登場する。
    • 技能を習得したり装備を整えることで、最大5人を連続一騎打ちで倒せるようになる。
    • 当然ながら一騎討ちが終了すると周辺の敵に気づかれた状態になるので、以後は正攻法で倒していく必要がある。正統派の侍らしい戦い方だが、攻略面ではリスクも高い。
  • 気力
    • 敵を倒す・攻撃を食らう・ほか一部の戦闘スキルを成功させるとでたまっていくゲージ。気力を一定数消費して体力回復できたり、「傳承」イベントで覚えた強力な技を発動できる。他にも、スキルを覚えることで体力が尽きた時に気力を消費して復活できるようになる。
      • 様々な要因で仁の命綱になる要素であり、回復手段も基本的に敵との戦いに限られるため、難易度が上がるほど気力の管理が重要となる。
    • 対馬各地にある稽古台を完了させるとゲージの数を増やせる。
    • 部隊長を殺すか、砦攻略中の気づかれていない間に稽古の動きを見極めることで型の習得ポイントを得られる。
      • 稽古を見極めてから倒せば2ポイント分となる。
    • 直接戦闘時の構えや攻撃のモーションが変わるだけでなく、対応した兵種に有利な性能を持っており、敵に合わせて変えることで有利に立ち回れる。
  • 冥人の型
    • 終盤に習得する特殊な型。習得すると画面右端に冥人ゲージが表示されるようになり、敵を倒すとゲージがたまっていく。
      • 反面、一度でもダメージを受けるとゲージがリセットされてしまうので、使いどころはもちろん敵の攻撃を完璧に捌く技術も求められる。 
    • 敵7人の撃破、または隊長への闇討で冥人の型が使用可能になり、通常兵を一撃で倒せる強力な攻撃を3回行えるようになる。
  • 耳を澄ます
    • 画面が暗くなり、一定範囲内の敵が赤く、アイテムなどが白く縁取りされる。同じSIE作品では『The Last of Us』の聞き耳に近い。
    • ただし屈みの低速移動しかできないため、迅速な行動には向かないし、解除すると縁取りも残留することはない。
  • 鉤縄
    • 序盤のイベントをクリアすることで解禁される。
    • 空中でR2を押すことで鉤縄を投げ、高い場所に登ったりターザンのように離れた場所に移動できる。どこででも使えるわけではなく、使える場所には布や縄が括り付けられている。
    • 高いところから降りるときにロープ代わりにして安全に降りるといった使い道も。

難易度

  • 難易度は易しい・普通・難しいの3段階でオプション設定から変更する。
    • 敵の体力値・崩しゲージは固定だが敵の攻撃頻度、探知範囲の広さ、仁の被ダメージなどの敵性能が大きく変わるだけでなく、復活スキルの気力消費量が1から最大3へ増える、受け流しと回避の猶予が短くなる、スローモーション演出が短縮または排除されるなどプレイヤーアクション自体にも縛りが生じる。
    • 変動幅はかなり大きく、「易しい」ではカジュアルなプレイヤーでも楽しめるが、「難しい」だと「普通」より格段に高いスキルが要求される。ただしトロフィーには一切影響せず、難易度設定の変更タイミングにも制限はほぼない。
  • アップデートにより最高難易度「万死」が追加。敵の探知速度が上がるうえに、受け流しと回避の猶予がさらに減少、仁と通常兵のすべてが確定2撃で死ぬ攻撃力に変化する(ボスへの与ダメージのみ変動なし)といった専用の変更によって、文字通り一瞬のミスが死に直結する極限状態となる。
  • 同アップデートでは難易度「易しい」専用の戦闘アシストも追加され、アクションが苦手な人でも十分に本作を楽しむことが可能。
    • 敵の探知速度・連続行動・ガード不可攻撃の頻度が緩和され回復行動中への攻撃も行わなくなり、剛兵の攻撃を仁の強撃で中断できるようになる。

冥人奇譚

  • アップデートにより追加された、最大4人でプレイ可能なオンラインマルチプレイモード。本編とは独立しており、対馬各地にいる語り部に話しかけるかタイトルメニューから移行する。
    • 「奇譚」の名前通り、語り部による過去の冥人の伝承を追体験する形をとっており、本編とは打って変わってホラー・伝奇要素が強いのが特徴。
    • プレイヤーキャラクターはアバターに近い性質を持つ。職業にあたる「役目」があり、直接戦闘に秀でる「侍」・弓による狙撃が主体の「弓取」・ステルスキルに特化した「刺客」・サポート役の「牢人」の4種類から選択する。侍・弓取・刺客は本編で仁ができることを分割して特化させたイメージ。
      • 役目は開始後しばらくは選択したもので固定だが、クエストをクリアしてレベルに当たる格を上げていくと他の役目も解禁できるようになる。
    • クエストはストーリーモード「奇譚」・サバイバルモード「九死」・プレイヤー2人同士で戦う「群雄」・強力なボスとのレイドモード「大禍・百鬼」の4種。難易度は3~4段階から選択可能。
      • 最大4人で協力するco-opが主体だが、「群雄」はプレイヤーが2人ずつ2組に分かれて対戦するVSモード。ソロでもプレイ可能だが、マルチプレイが前提だけあって総じて難易度は高い。

評価点

美しいグラフィック

  • 一面に広がる芒野原、紅葉や銀杏が舞う寺、雪と氷に覆われた山など、日本の原風景ともいえる景観は圧巻の一言。景色を見て回るだけでも楽しい。
    • その一方で、焼き払われた村や廃屋、見せしめに殺された人の遺骸が陰惨な光景を作り出しており、蒙古に占領されているという現実を突き付けてくる。
  • また、昔のフィルム映画を再現して画面がモノクロになり時々ノイズが走る特殊な高難易度オプション「黒澤モード」が実装されており、オプションでいつでも切り替えられる。
    • オンにすればまさしく黒澤明の世界であり、色に頼らない見切りをこなすことになる。明記はされていないが、音や声もこもったような感じになる。
    • この名前を使うためにわざわざ黒澤プロダクションに許可を取ったという逸話がある。

豊富な探索要素

  • 対馬には体力が増える秘湯、気力が増える稽古場、護符が手に入る神社や狐の巣など様々な探索スポットが用意されており、ほとんどが仁の強化につながるので、ただ回るだけの作業にはなりにくい。
    • また、それらのスポットも高速移動先として登録されるので、見つければ見つけるほどプレイアビリティも向上していく。
    • 収集物も蒙古の文化を垣間見れる「蒙古の品」に天候を変える曲を使えるようにする「こおろぎ」や、武家の逸話が聞ける「のぼり旗」などが対馬全土にちりばめられている。

サブクエスト

  • 本編に影響しないサブクエストも多く用意されている。
    • 大別して琵琶法師の語る対馬の伝説をもとに装備や技を探す「傳承(伝承の旧字体)」や、民の困りごとや問題を解決する「浮世草」がある。現場から真相を推理する様は中世日本の推理ドラマのような楽しみができる。
      • 傳承は謎解きやボス戦をこなす必要があるため一筋縄では行かないが、得られる装備や技は苦労に見合うだけの性能を持つ。
      • 浮世草は短いお使いや戦闘をこなす文字通りのサブクエスト。事件を解決してもハッピーエンド…とは言い難いものも多く、苦い結末となる胸糞悪いシナリオの方が多い。世の無常さを感じられる。
  • 「○○之譚」とついた浮世草はその仲間に関連した連続性のあるエピソードとなる。浮世草なのでクリアしなくても「仁之道(メインクエスト)」は進められる*5が、仲間をより深く知ることができる。

多彩な立ち回りが楽しめる手強い戦闘

  • ガードを崩せるが出があまり早くない強打、敵の隙に打ち込んでダメージを与えられるがガードされると大きな隙にされる速打を使い分けねばならない。
    さらに敵は数を活かしてこちらの攻め手を潰そうとするうえ、攻撃力もストーリーが進むほど加速度的に激化するため、複数の敵に対してのごり押しは難しい。
    ステルスキルなどで敵を予め減らす、ガードを固めつつ敵の攻撃をジャストガードや回避で受け流して攻撃を差し込むなど、適切なアクションが必要となる。
    • 数の暴力は間違いなく脅威であるが、通常設定であれば高難易度戦闘を売りにした作品ほど顕著ではない。
      序盤ならば仁の耐久力には意外と余裕が感じられる程度にはなるし、低難易度モードであればジャストガードの猶予が伸びたり、敵の行動頻度が落ちたりして受け流しがしやすくなり、アクションが苦手な人でもクリアできる程度に留まる。
    • これにより敵の隙を窺うジリジリとした緊張感、敵の攻撃を時に避け、時に捌くチャンバラアクション、見事受け流してカウンターを叩き込む爽快感が楽しめる。
      • 一騎討ちまたはステルスによる先制のみならず、ゲームが進むと敵に合わせた型と立ち回りの切り替え、各種サブウェポンなど多くの選択肢が与えられ、使い方を覚えると戦闘が一気に楽しくなる。
  • 直接戦闘だけでなく闇討によるステルスキルや弓矢での狙撃といった隠密向けアクションも充実していき、プレイヤー次第で様々な戦い方ができる。
    • 屋根裏や床下から家の中に侵入することもでき、いわゆる「障子裏からグサリ」といった時代劇ならではのステルスキルも可能。
    • 戦闘・任務の種類も豊富で「一騎打ち」「暗殺」「防衛戦」「捕虜の護衛」「多数対多数」などバリエーションが実に多く、マンネリを抱きにくい。
      • また、こうした複数の仲間が参加するゲームでは、仲間が棒立ちだったり無能だったりと批判される作品もあるが、本作の仲間は敵に対してきちんと戦ってくれるため、ストレスが湧き辛い。思考ルーチンもキャラの武器・戦法によって差別化されており、イメージや設定に合った戦い方をしてくれる。

ゲーム性とシナリオがマッチしている。

  • 侍のような「一騎打ち」や「正々堂々」という誉れある戦いでは蒙古には歯が立たないことを示すため、序盤は否が応でも返り討ちにされる負けイベントが存在する。
    • その後のメインクエストで闇討ち・飛び道具の使用などステルスプレイのチュートリアルが行われ、以降も上述のゲーム性、および「見つかれば敵が捕虜を殺そうとする」と言った点でなどで侍らしくない戦法を使わざるを得ない箇所を随所に配置することで、仁の信念と正義感の間の葛藤をプレイヤーに追体験させるようにしている。

重厚で渋いストーリー

  • 主人公の仁は元々は誉(ほまれ)を重んじる武士らしい性格であったが、最初の防衛戦と宿敵ハーンに正面から挑み敗れたことで誉だけでは勝てないと悟り、闇討などの手段を問わず蒙古を討つ「冥人」となって徐々に侍の道から外れていく。
    • さらに伯父であり父代わりであった志村とも戦へのスタンスの違いから軋轢が生まれていくなど、誉という「理想」、そしてそれだけでは勝てないという「現実」の板挟みになり苦悩する姿が見事に描かれている。
    • PVにも使われた、志村の「誉ある戦いを忘れるな」に対する仁の「誉は浜で死にました」のやり取りは2人の決裂を端緒に表す、本作を象徴するワンシーンと言える。
  • また、その容赦のない戦いぶり故に守るべき民からも忌避される、自分が用いた毒が蒙古によって運用されてしまい、結果的に蒙古の利になってしまうなど、仁を絶対的な正義とは描かないことで物語の重厚さを増している。
  • 壹岐之譚では仁のトラウマである父の死がクローズアップされており、侍たちの暗部や海賊との確執、復讐が混ぜられて良質な追加ストーリーとなっている。

個性的ながら魅力的な登場人物

  • 前述のように主人公の仁は闇討など侍としての外道に手を染めていくが、それらは全て「民を守り、蒙古から対馬を解放する(そのために手段を選んでいる余裕はない)」という仁なりの信念のもとで行っており、嫌悪感は抱きにくい。
    • 一方で敵や裏切り者には容赦せず、文字通り手段を選ばない苛烈さも持ち、それがストーリー終盤で表面化していく。
    • サブクエストでは殺害現場から捜査して、真犯人や真相を突き止めるという探偵のような役割を演じることもある。
  • また、仁のほかにも様々なサブキャラクターが登場する。それぞれにスポットを当てたサブクエストもあり、内面や事情をより深く知ることができる。
    • 前述の仁の伯父「志村」のほかにも、瀕死だった仁を助け冥人として戦うきっかけを作った女盗賊「ゆな」・ゆなの弟で臆病だが優秀な刀鍛冶「たか」・お調子者のトラブルメーカーだがどこか憎めない酒売り「堅二」・仁の弓の師匠で弓の腕は対馬一だが偏屈で傲慢な「石川定信」など、それぞれの事情から蒙古に抗うために力を貸してくれる。
    • 中でも夫と息子を蒙古との初戦で失い、残った一族郎党を野盗に皆殺しにされた「安達政子」は仁以上の復讐鬼として描かれ絶大なインパクトを与えてくるため、プレイヤーからは「対馬のアマゾネス」「対馬のバーサーカー」などの物騒なあだ名をつけられることになる。
      • 開発によると「味方側のサブキャラクターは仁の内面の想いを極端に表現した」とのことであり、それぞれが仁の内面を映す鏡として描かれている。
    • 蒙古軍の総大将であるコトゥン・ハーンは当代皇帝クビライ・ハーンの従兄弟という設定。冷酷な悪役ではあるが、対馬侵攻に際し周到に準備を進める智謀と、病み上がりでありながら仁を一蹴する武力を兼ね備えた豪傑として描かれており、仁にとって最初から最後まで超えるべき、そして倒すべき敵であり続ける。
      • 一般兵と異なりハーンほか部隊長クラスは日本語を話せるが、これも「来たるべき日本侵略に備えて日本語を学んだ」という設定により違和感を感じさせない。一方でバトルで追い詰められると日本語を使わなくなり、余裕がなくなったことを表す演出としても機能している。
  • 共に旅をする馬は自分で3通りから名前を選べることや、ファストトラベル直後のじゃれあいなど、どの人物よりも愛らしい存在として表現される。
  • 日本語吹き替えの声優も仁役に中井和哉氏、ハーン役に磯部勉氏、志村役に大塚明夫氏といったベテランが名を連ね、渋い演技で物語を盛り上げてくれる。

考察されたローカライズ

  • 洋ゲーのローカライズと言えば文法がおかしかったり、場面に合ってなかったりなど、誤字・誤訳が起こることは少なからずだったが、本作のローカライズは海外製と思わせないほど見事な高質。
    • 日本語版スタッフが「時代劇のエンタメ」を目指したという通り、非常にプレイヤーにゲームに入り込めるような翻訳にしてある。
      • 具体例を上げれば、手紙は一般庶民が書いたにしては漢字も多く、教育レベルが高い。しかし、時代考証に忠実にし過ぎてしまうと、ひらがなばかりで濁点も使わないような手紙になってしまうため、あえて現代風に寄せて読みやすくしている。
      • また探索などで詠むことになる和歌も、鎌倉武士らしくある程度武骨な五七五七七となり、そのうえどの選択肢の組み合わせでも意味の通る和歌が出来上がる。
    • 名前についてもきちんと考察されている。登場人物の読み方はエンタメ性を重視しているのだが、主人公の「仁(じん)」は当時の武家の本名である「諱(いみな)」が基本的にすべて訓読みであり、主君や両親以外から諱を呼ばれることはないとの考えから、本名は「境井仁(さかいひとし)」であり、通称が「仁(じん)」である…などのように裏設定がある。

ロードの速さ

  • オープンワールドゲームは扱うデータの多さからロード時間が長い傾向にある。
    • しかし、本作はPS4専売ということでサッカーパンチがPS4のハード特性に合わせた徹底的なチューニングとデータ圧縮を施した結果、ロード時間わずか数秒という破格の速さと快適さを誇っている*6
    • 開発によると「データを圧縮しすぎたためにこのような事態が生じた」「200m四方の地形データなら2MBに抑えられる」「もっと短くできたがロード中のTIPSが読めなくなるため意図的に遅くした」とのこと。
      • しかしそれでも読み切れないことが多かったため、ロード時間をあえて延ばすという異例のアップデートが行われた。ボタンを押すまでロード画面を閉じないオプションも後に追加されている。

中世日本のオープンワールド

  • オープンワールドといえば『Grand Theft Auto』シリーズなどのようなアンダーグラウンドの現代劇やヨーロッパの舞台が多いが、中世の日本というオリジナリティ溢れる舞台である。これを日本の企業ではなく、海外のゲーム会社が制作したというのも評価されている。
    • 加えて過去の日本を舞台にした作品を多く手掛けた国内のコーエーテクモでさえ、取り上げたのは安土桃山時代~江戸時代が多かったのに対し、それより過去の鎌倉時代を題材にしたゲームは国産ゲームにも数が少ないため、歴史好きとしても楽しめるようになっている。

大らかな表現

  • 日本発売ゲームにおいては規制がかなりゆるい。遺体の切断、破壊、欠損表現などの中世の残酷な戦場が表現されており、世界中を恐怖に落とした蒙古の残酷さがしっかりと描写されている。

良質なDLC

  • 壹岐之譚の壹岐島は追加ストーリーだけでなく、武具・アイテムなども多く追加されており、納得のボリュームとなっている。

賛否両論点

一部のバグ

  • オープンワールドの宿命として、本作発売当初は何かとバグが取り沙汰された。しかしそのどれもが余り致命的ではなくシュール極まりない絵面で、笑いを誘った。
    • 一例を上げると橋に入る際の柱に引っかかって馬だけが橋を渡るなどして起こる歩行バグや、斬首した敵兵が自身の首を求めて這いずり回るというゾンビバグなど、ホラー風味だがどこか笑える絵面まで様々。
      • とはいえ、バグは少ない方が良いのは当たり前の事であり、全てのプレイヤーから好意的に思われているわけではない。

ボス戦

  • 前述のように、ボス戦では冥人の暗具が一切使用不可となり、戦闘が苦手で闇討ちメインで進めてきたプレイヤーには壁となる。
    • 特に、序盤の山場である金田城のボスはそれまでのサブイベントで戦うボスと比べても段違いな強さを誇る強敵である。
      • 特に「武士(守り)」のスキルに手を付けていなかった場合、非常に辛い戦いを強いられる。

時代考証と時代劇

  • 前述のように海外の作品でありがちな「外国人からみた勘違い日本」という描写もほとんど無く優れた時代考証が評価されているが、いくつかの要素で時代考証が無視されている他、前述したように登場人物なども史実通りというわけではない。
    • 鎌倉末期なのに一般兵士が当世具足*7に身を包み、打刀と小太刀の二本差し*8で登場する。
    • 元側にもトンデモ兵器があり、小高い丘の上に設置された無限に発射できる火槍を奪い、沖合を進む蒙古軍船に矢の雨を降らせ沈めていくシーンがある*9
    • ゲーム的な都合とはいえ、蒙古もいない百姓の家に「くない」や「てつはう」が補填用に落ちているのはややシュールである。
    • とはいえ、黒澤モードの存在などからわかるように本作はあくまで「時代劇アクションゲーム」であり、歴史ゲームではないので、基本はフィクションと割り切ってプレイする方が無難*10

LGBT要素

  • 登場人物の政子と舞やサブクエストの百姓など同性愛を匂わせる要素がチラホラ見受けられる。
    • 昨今の世相を反映してのことだと思われるが、そういった要素が描写されるシーンはいずれもやや唐突かつ必要性の感じられないものが多く、「出す意味はあったのか」といった意見もある。
    • 歴史的にも鎌倉時代での同性愛の歴史的な伝承が無く*11、中世日本の再現としては疑問符が沸く。

  • 石川の弟子である女武者で、蒙古とつながっていたり、盗賊をしたりと余り良くない印象を持つ彼女だが、彼女のエピソードの終わり方が少々スッキリしない。
+ ネタバレ注意
  • 仁と石川に追われる巴は最終的に蒙古も裏切って本土に渡り、石川と仁はそれを見届ける…という結末である。
  • だが、そもそも盗賊生活を石川に咎められたのは正論であり、蒙古と繋がり弓の指導をして、対馬の民の虐殺に加担したのは紛れもない事実である。
  • さらに彼女の弓による捕虜虐殺等の残虐な現場を見ると、決して許されるような人物とは思えない描写が目立つ。
  • 一応、「蒙古に脅されて仕方なく教えた」「拷問を受けていた島民をひと思いに殺めた」などの言い訳はしており、全くの悪人とも言えないと思われるが、プレイヤー視点では悪人が逃げ去ってしまったという印象を抱きやすい。
    • もう少し彼女のエピソードが掘り下げられていれば印象が変化したという意見もある。

難易度曲線

  • 上述の通り、本作は冒頭から「迫り来る残虐無比な蒙古の脅威に対峙する中で、武士としての理想と現実に葛藤する仁」の姿がゲームバランスを通して見事に表現されているのだが、実のところそれは序盤=第一幕までの話という意見がある。
    • もちろん個々人の探索の度合いや難易度の選択にも依るが、中盤≒第二幕に入る頃には強力なスキルが出揃い始め、それまで苦戦していた敵の攻撃を嘘のように容易にいなせてしまうような展開も多く見られるようになる。例え卑劣な冥人技を使わず「誉れプレイ」に徹したとしても、である。
      • ステルスで多用することになる冥人技は「笛以外で天候を荒れさせてしまう」というちょっとした副作用があるため、ストーリー的にも心理的な意味でもさりげなく誉れプレイに誘導されてしまう人は多く、序盤をすぎればそれでも意外となんとかなってしまう。
    • スキルは経験値の蓄積などでのスキルポイント獲得で習得できるが、経験値レベルが上がって称号が変わると、徐々に仁の姿に恐れ慄き腰を抜かしたり逃げ出したりする蒙古兵が増えてくるため「蒙古側からしてもいかに仁が恐るべき存在に成り果てたか」をも表現していると見れば、依然として絶妙なストーリーテリングではある。
      • 同時に、そう成り果てた時期からゲームバランスとしては些か大味になっていく、とみる向きもある。成長を感じさせてくれると言えばそうだし、単純に爽快でもあるのだが。

問題点

物資・素材関係

  • 「物資」は主に武器や防具の強化で消費する通貨の役割を果たすが、1周中に漠然と拾うだけではやや数量に余裕がない。素材やサブウェポンを売却して物資と交換することもできるため有限というわけではないが、それらの所持数にも余裕はないため意識して集めないと必要量に達しにくく、自分のプレイスタイルで何を強化するべきかは熟考する必要がある。

サブウェポン関係

  • サブウェポンは罠師から売買する事ができるが、いくつかは非売品のため自分で集めるしかない。
    • 特に面倒なのが吹き針。毒草を拾得するとそのまま補充されるのだが、特に目印もないので群生地を知らないと補充難易度が大幅に上がる。
      • 毒針の材料となるトリカブトは終盤に群生地が説明されるが、敵を同士討ちさせる混乱毒の材料となるヒガンバナはそういった説明が一切ない。そのくせ使い勝手は混乱毒のほうが良いのが困りもの。
  • 総じて使い勝手が良い割に所持数が少なめで、あまり乱発できない。
    • 罠師に素材を渡せば拡張してくれるが、サブウェポンごとに拡張する必要があり、素材集めのために猪や熊を大量に狩る必要がある。
    • また、拡張しても上限が大きく増えるわけではないので、根本的な解決には至らない。
      • 暗具は強化を行えばどれも非常に強力となる*12ため、所持数を多くしないのはゲームバランスを考慮したものと考えられる。
      • 使える場面は限られるものの、あるプレイヤーによって矢の所持数を増やすためにとんでもない方法が考案された。
        + その方法とは…
      • 基本的に敵に当たった矢は消滅するが、本作では当たった矢が一定確率で消滅せず再度回収できるようになる護符が存在する。…のだが、この護符の効果、なんと味方NPCに刺した矢にも適用される。
      • NPCに刺さった矢は所持数にはカウントされないため、その護符を装備して予めクエストに同行する味方NPCに矢を射ち込んでおき、残弾が少なくなったらNPCから矢を回収して補充するという荒業で実質的な所持数を増やせることが判明したのである。
      • 結果、矢でハリネズミのようになったNPCが普通に生活するという凄まじくシュールな絵面が展開され、多くのプレイヤーを爆笑の渦に叩き込んだ。
      • この方法は、作中の言動から実行しても良心が痛みにくい石川先生で行うプレイヤーが多かったことから「石川ストック」と呼ばれネタにされた。

入れなくなるエリア

  • いくつかの拠点は、一度出ると二度と入れなくなる。該当するのはシナリオの節目として攻略する「金田城」と「志村城」、前線基地となる「志村の戦陣」の3か所。
    • 高速移動先としては引き続き利用できるが、門の前までしか行けず中に入れない*13
    • 幸い装備含めた収集品は置かれてないので取り返しがつかなくなることはないが、マップでは商人の情報が表示されるのに利用できないというのはいかがなものか。

マップの見づらさ

  • 本作のマップは当時をイメージした水墨画のようなタッチで描かれている。これ自体は作品の雰囲気に合っているのだが、村などがアイコンでしか表示されないうえにコンパスがないので、商人など特定の人物やポイントを探すのに苦労する。
    • 頭上にアイコンはあるものの、そもそもどこにいるのかがわかりにくい。
  • エリア同士の境界が曖昧なため、ストーリーを進めないと行けない場所であることに気づきにくい。
  • ミニマップもないので、敵の位置をしっかり把握しないと背後から気づかれることもある。
    • 通常のオープンワールドのマップマーカーの代わりであり、作中に違和感なく溶け込んでいる点は好評だが、高低差が全く考慮されていない。
      • 真っ直ぐ進んだら崖(行き止まり)だったということもしばしばある。
  • 黄金色の導き鳥
    • 仁が未発見の探索箇所に近づくと、黄金色の導き鳥が現れてその場所まで案内してくれるのだが、そこまで付いて行って地図に記載されるまでずっと纏わり続ける。
    • それがたとえサブイベント中だろうが蒙古の拠点でステルス中だろうがお構いなしに仁の周囲を飛び回り続ける。人によっては鬱陶しく感じる。
  • クエスト
    • ボスや敵を倒すと物資や収集物が現れるが、クエストによっては強制的にムービーに入り、そのまま場所を移動することもある。その前に物資や収集品を取り忘れた時に不便。
  • 神社
    • 参拝に対して異常に困難な道のりとなっており、ギミックが非常に多い。加えて昇り方も分かり辛くなっている。
+ 改善された問題点

エンドコンテンツの乏しさ(改善済み)

  • 秘湯巡りや神社参拝など寄り道要素自体は多いものの、ほとんどが仁の強化やプレイアビリティの向上に直結することからクリア前に終わらせた方が良いケースがほとんどで、クリア後はやることがなくなりやすい。
    • 一応蒙古の残党などはいるが、一騎討ち+αで狩れる程度の小規模な部隊しか登場しないので、クリア前の拠点攻略のようなステルス戦闘は楽しめなくなる。
    • 装備も種類がさほど多くない上に強化しきってしまうと素材が不要になってしまい、集める意味がなくなってしまう。
    • 2020年10月17日のアップデートで2周目モードと冥人奇譚が追加されたことで、この問題は概ね改善されている。
    • また、2021年8月20日のアップデートで拠点攻略やボス戦のリプレイが可能になった。

リップシンク(喋りに合わせた口の動き)が英語(改善済み)

  • 海外版でも日本語吹き替えを実装するというこだわりを見せているにもかかわらずリップシンクは英語。「日本人キャラクターが英語で喋っているムービーに日本語吹き替えを当てた」状態になってしまっている。
    • インタビューによると技術的や時間的な制約、カットシーンの作成方法との兼ね合いから見送りになったとのこと。開発陣も実装したかったようで、後述の『Director's Cut』では日本語時の口パクが作り分けられた。

総評

今までの海外ゲームとは一線を画する時代劇へのリスペクトと愛に溢れた作風と重厚なストーリーは、世界中のプレイヤーを虜にした。
戦闘に関してはやや難易度が高いが、闇討や一騎討ちといった本作独自のシステムさえ覚えてしまえば、緊張感のあるステルスプレイやチャンバラを楽しめる。

史実や時代考証を掘り下げるとおかしな点もあるが、そんな事を気に留める必要は全く無い。なぜなら、これは「古き良き時代劇映画」をゲーム化したものだからである。
数多くの時代劇が制作された昭和の時代、それを楽しむために前知識は何も必要なかったし、娯楽優先で考証は二の次だった。
時代劇が娯楽の中心にあった年代・世代の作品から受けた影響を濃縮し、サッカーパンチは全世界の誰にでも楽しめるサムライの物語・新たな時代劇を作り上げた。それが「Ghost of Tsushima=対馬の冥人」である。

オープンワールドゲームのファン・時代劇愛好家、面白いゲームを求める方のいずれにも是非プレイしていただきたい傑作である。


余談

内容と直接関連する事情

タイトル名関連

  • 「冥人」という辞書にない造語で、仁への通称の英語「Ghost」を訳している。つまりタイトルの「Ghost of Tsushima」は「対馬の冥人」という訳となる。
  • タイトルロゴの「O」に書かれている重なった2つの三角形は境井家の家紋*14で、インタビューによると仁の故郷にある2つの山を表しているとのこと。
    • ちなみに、ゲーム内でゲームマーカー等に用いられている菱形が四つ合わさった模様は「丸に四目結」といい、実際に対馬を治めていた宗家の家紋である。

現実や史実との差異など

  • 現実における対馬島は全体のおよそ9割が山や森であり、本作のような平地は海沿い以外には殆どない。
    • 元々は現実通りに山林の多いフィールドだったが、『ワンダと巨像』に着想を得て平地が多いフィールドにしたとのこと。
      • この点も現実よりゲームとしての面白さを優先させた結果のフィクションと言える。
  • 史実上の元寇では幕府は対馬に対して見殺し同然の対応をとり、多数の住民が虐殺されたり奴隷として中国や中央アジアに売られたりすることになった。
    • 日本も報復として捕虜にしたモンゴルの兵士を虐殺したりやはり奴隷として中国に売り払ったりしたので、「(侵略側の)モンゴル人と(被害者の)日本人が同じ奴隷商人の元で連れ立って中国や中央アジアに奴隷として売られる」と言った想像を絶する残酷な結果を生んでしまった。
      • 時の侵略戦争を知っていることで誉れなどと悠長なこと言っている場合ではなく、なりふり構わず手段をいとわずとゲーム攻略への力も入るというものである。

ゲーム関連の事情

  • 発売前後には、舞台が中世日本でステルスアクションやワイヤーアクションといった要素により雰囲気の近かった『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』と比較され「高難度即死アクションゲーム」と誤解されることで、購入ハードルが相当高くなっていた。
    • しかし、実際には『ライズ オブ ザ トゥームレイダー』の様な「しっかり強化していけば無双も可能なステルスアクション」かつ難易度選択可能であり、発売直後から盛んになったゲームプレイ配信でそのことが周知され購入者の裾野を広げた感がある。
      • ちなみに、開発スタッフへのインタビューにて「このゲームの発売前年に『SEKIRO』がGOTYを受賞したことでプレッシャーが掛かったのではないか?」という質問に対して「むしろ、日本を舞台にしたアクションが世界に通用する事が分かり自信に繋がった」と回答している。同時に「開発スタッフの多くが『SEKIRO』のファンである」とも答えている。
  • 本作のトロコンは「冥人奇譚」のものを含めると決して簡単ではないが、2021年1月1日現在で本編実績完遂のプラチナトロフィー取得率は12.9%とオープンワールドゲームとしては異例とも言える高いパーセンテージを誇る。本作がプレイヤーに愛され、やり込まれた証と言えるだろう。
    • 売上の面でもSIEのPS4タイトルの新規IPでは過去最速となる、わずか3日で累計240万本を記録した。国内でも新規IPかつCERO:Zの作品ながらパッケージ版だけで40万本以上を売り上げており、如何に本作の注目度・評価が高かったかが窺い知れる*15
      • さらに、2021年3月22日時点で累計販売本数が650万本を突破、2022年7月には何と973万本を突破したことが報告されている。
      • 2023年5月に『ファミ通』が行ったSIEのCEO(当時)であるジム・ライアン氏へのインタビュー中で、日本国内において実売100万本(Director's Cut含む)を突破したとされている。
  • 「The Game Awards 2020」ではGOTYこそ『The Last of Us Part II』に譲ったものの、プレイヤーボイス部門では1位を獲得した。
  • 2021年3月26日に映画化が決定し製作中であることが発表された。
    • なお、本作で仁役を演じたツジ・ダイスケ氏は自身のTwitterで、映画でも仁を演じられるなら尻出しOKと語っている(参照)。

SCE作品のクロスオーバー小ネタ

  • 本編で獲得できるトロフィー「須来の装束:伝説の夜盗の格好をする」の元ネタは、恐らくサッカーパンチプロダクションが手掛けたアクションゲーム『怪盗スライ・クーパー』の主人公であるアライグマのスライ・クーパーと思われる。
    • 該当する装備にはスライ・クーパーの要素がほぼ無いに等しくゲーム中でもノーヒントであるため、ある意味本作におけるトロフィーの獲得難易度は最高である。
    • ちなみに、この実績解除のトロフィー名は最初は「狸の装束」であったが、ご存じのようにアライグマとタヌキは似て非なる動物である。指摘があったため修正したのだろう。
  • DLCの舞台である壹岐では、イースターエッグとしてスライ・クーパー、亀のベントレー・ワイズタートル、カバのマーレー・ザ・ヒッポが浮世絵風に描かれた洞窟がある。その洞窟内にはスタッフの名前がカタカナで書き綴られている。

論争関連

  • 発売直後、海外で本作が「文化の盗用」だとして一部層に批判された。ただし、当の日本で批判的な論調が皆無だったこともあり、本作のユーザー評価への影響はなかった。
    • 「文化の盗用」とはポリティカル・コレクトネス(政治的な正しさ)の一種で、「自分と異なる民族の文化を取り扱ってはいけない」という思想である。
      • 本作とは逆に同年発売の『The Last of Us Part II』では深刻な影響が見られ業界とユーザー総合点で評価が割れたことを含め、ゲームであっても政争の種にされ弄ばれることを改めて証明した事件だった。

実在の対馬関連

残虐描写を多分に含んだCERO:Zのゲームでありながら、そもそも普段ゲームに触れる見込みの希薄な層とのコラボが複数確認されている点も特筆すべき点と言える。

コラボ関連など

  • 本作の発売に合わせ、長崎県の公式観光情報サイト「ながさき旅ネット」にて対馬市とのコラボ特集ページが公開された。
    • 他にも、対馬市とSIEによる特設サイト「Ghost of REAL Tsushima」が公開されている。対馬市長からのメッセージやツジ・ダイスケ氏のインタビューなどが閲覧できる。
  • 本作を通じて対馬の知名度向上・魅力アピールに貢献した功績により、アート・クリエイティブディレクターのJason Connell氏とクリエイティブディレクターのNate Fox氏には対馬市から感謝状が贈られ、対馬市永久アンバサダー(大使)に任命された。
    • ちなみに、ゲームクリエイターが大使に任命されたのは初とのことである(参照)。
  • TV番組「世界ふしぎ発見!」の対馬特集で本作が大々的に取り上げられた。番組内では制作陣が現地でロケハンを行った事が語られている。
    • 予告CMのナレーターに千葉繁氏(石川先生役)を、本編のナレーターに大塚明夫氏(志村役吹き替え)を起用したことが一部で話題になった。

ローカル紙におけるリーク

  • 本作の正式発表は2017年11月だが、その1年前に構想段階でSucker Punchが対馬に取材を行ったところを小規模な記事ながらも対馬新聞に全部すっぱ抜かれ、本作の存在がリークされていた(参照1)。
    • なんとこの記事には、対馬を舞台にしたゲームを作るために取材に来た旨だけでなく、SIEとSucker Punchの名刺すらも新聞にがっつり掲載されていた(参照2)。
      • しかしその対馬新聞自体が「対馬逸品屋」からでなければ購入できないほどのローカル紙であり、主な購読者が地元の高齢者のみでゲーム業界関係者が皆無に等しかったせいか、IGNなどのメディアを含めてリークされた事実そのものが認知されなかったため、ネットにリーク記事すら流れることはなかった。

その後の展開

  • 2021年8月20日に完全版『Ghost of Tsushima Director's Cut』がPS5/PS4で発売。既に本編を購入している場合は大型DLCという形で購入が可能。
    • デジタルデラックス版でのみ入手可能だったDLCやこれまでのアップデートに加え、完全新規ストーリー「壹岐之譚」やその他の追加要素が含まれる。
    • PS5版では4K・60fpsに加えハプティックフィードバックやアダプティブトリガーにも対応し、日本語音声に合わせたリップシンクも実装。
  • また、『Director's Cut』のWin版が2024年5月17日にSteamとEpic Games Storeにて発売された。
    • 移植はこれまでSIE作品のPC移植を幾度も手掛けたSIE傘下のNixxes Softwareが担当している。
  • 同年9月3日より「冥人奇譚」のスタンドアローン版もダウンロード配信されている。
    • こちらもアップグレードを購入することで『Director's Cut』にすることが可能。
最終更新:2025年02月12日 22:54

*1 地名については概ね現実に準ずるが、実際の位置関係や気候・地形などは異なる。

*2 一応、自軍の犠牲を増やさないためという理由はある。

*3 弓兵のみ、有利な型は無いが体力が低くどの型でも簡単に倒せる。

*4 本作における銃火器にあたる武器。

*5 ただし、序盤のいくつかの譚はメインクエストも兼ねている。

*6 国内ではあまり知られていないが、サッカーパンチはPS1全盛時代に敢えてN64でその手腕を鳴らしていたほど筋金入りの技術屋集団である。開発スタッフは僅か200人程度という超少数精鋭揃い。

*7 鉄砲が主戦力となった戦国時代後期に作られたもの。

*8 室町時代に主流となったスタイル。

*9 火槍とは、おもちゃのロケット花火と同じ原理で矢を飛ばすもので最初期の火薬兵器。ゲーム内で登場するタイプのものは、元寇襲来から約75年後に朝鮮で原型が開発されている。

*10 実際の有名時代劇にも史実より見栄えを重視した部分は多い。

*11 特に女性同士の恋愛は全く伝承がない。男性にバイセクシャルの伝承が数多く見られるのは戦国時代以降の名立たる戦国武将の多くが現れてからである。

*12 強化後のくないやてつはうは一発で敵を倒せる他、煙玉は既に敵に見つかっていても再び暗殺可能な状態にできるなど。

*13 バグなどを用いれば中に入ることはできるが、中はもぬけの殻なので特に意味はない。

*14 実際にあるものではなく、本作オリジナルの家紋である。

*15 GOTYにノミネートされ非常に高い評価を得た『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』でさえ25万本である。