ファミスタ'90

【ふぁみすたきゅうじゅう】

ジャンル スポーツ(野球)
対応機種 ファミリーコンピュータ
メディア 2M+64KbitROMカートリッジ
発売・開発元 ナムコ
発売日 1989年12月19日
定価 5,800円(税別)
プレイ人数 1~2人
判定 良作
ポイント BGM一新で初めて続編らしくなった
ファミスタらしいお手軽なリーグ
選手の再現度もアップ
ファミスタシリーズリンク


概要

1989年12月にナムコより発売された人気野球ゲーム第5弾。 前作は前々作のマイナーチェンジだったが本作ではBGMが一新されたり本格的リーグ戦が導入され続編らしくグレードアップ。
それに併せて当時では恒例のバッテリーバックアップが搭載された。
その一方で5,800円と特別高くはないものの当初の強みだった価格のお手頃さが失われた(『'88』『'89』は4,900円、『無印』『'87』は3,900円だった)。

前作は任天堂とのライセンス契約更改が難航したため期限切れ前に駆け足で発売する必要があったことから『'89』と称しながら実質『'88』のマイナーチェンジ*1で異例の夏季発売となったが、無事解決し改めて本来の時期に正式な続編を発売した形になった。
そのため1989年は年内に2つ発売するという重ねて異例な事態となった。 『'90』と冠しているが、選手データは1989年終了時のものがベースになっており、同年オフのトレード等も反映されていない*2ので1990年シーズンの要素はかけらほどもなく実質『'89』である。

本項目では前作からの変更点を主体に記述する。


変更点

  • リーグ戦モードの導入*3
    • 参加チーム数(2~6)、イニング数(1・3・5・9)、試合数(1~9)、本拠地が自由に設定できる。
      • それまで、雑誌企画などでファミスタのリーグ戦などがあったが、それはリーグ表はカミベースで人間が管理するアナログ関与だったが、それがゲームとして正式にできるようになった。
    • 参加チームは現実のセ・パなどは一切関係なく自由に決められ、同じチームを複数人が使用することもできる。またチームの途中変更も可能。
      前作では隠れチーム扱いだったプロスターズ、アニメスターズ(前作の「オールドリームス」から改称。どちらにしても略称は「A」)をプレイヤーも使えるようになった。
      更に「助っ人機能」があり、プレイヤーの名前を入れておくと、それに応じて足・技・力に特化したステータスを設定し代打として登場できる。
    • ちゃんとマジックまで計算される。
  • 球場が6パターンに増えた。
球場名 モデル球場 左翼 右翼 中堅 備考
どうむ 東京ドーム 100m 100m 122m
かせんじき 巨人軍多摩川グランド 85m 85m 110m
ところざわ 西武ライオンズ球場 95m 95m 120m
たからづか 西宮球場 91m 91m 119m 両翼にはラッキーゾーンあり*4
ふえいふえい フェンウェイ・パーク 95m 92m 119m 左翼は更にフェンスも極端に高い
だいそうげん オリジナル 不明 不明 160m 両翼の先が見切れているので打球が画面外まで転がる
  • 「どうむ」「かせんじき」は前作から引き続き登場。「しゃちほこ」「ろっこうさん」が姿を消した。
    • 隠しコマンドによるテストモードで確認できる。
  • スイッチヒッターとサイドスローが新たに実装された。
  • ラインドライブの実装。
    • 3割打者の打球はラインドライブがかかるようになり内外野間に落ちるクリーンヒットが出やすくなった。
    • 逆にホームランが出にくくなった。
  • 試合中のBGMが一新された。

評価点

  • 他の野球ゲームとは差別化されたスタイルのリーグ。
    • 他作品が本格的で重厚なスタイルのリーグが多いが本作は試合数のみならず少ないイニングの短い試合も可能など、ファミスタらしくお手軽に楽しめるスタイルになっている。
      • 参戦するチーム数も自由に選択でき、現実のリーグにも縛られない。しかも途中変更まで可能。
      • 同じチームでも助っ人である自身の参戦で、多少の違いを持たせることもできる。
      • 消化する順番も自由に選択でき、CPU同士の試合はもちろん観戦パス可能。
  • 特に斬新なオリジナルスタジアム「大草原球場」。
    • 左右翼不明でセンター160mというホームランは絶望的だが同等の距離を飛ばせばランニングホームランできる。
    • また両翼の先が見切れているのでヤマカンでボールを探す必要がある。そんな打球自体元々ホームラン性だが、偶然ボールを取れればホームラン阻止にもなる。
    • 上記の通りスタンドに叩き込むホームランは出にくいものの、外野への飛球が非常にヒットになりやすく、打たせて打つ式で乱打戦になりやすい。
      • 基本的にCPUは外野への飛球はまずアウトにしてしまうが、この広さのせいでかなり高い確率でヒットになる。
    • 当時はだいたい現実の球場の再現が多かった中でこのような趣向は真新しかった。
  • 前作ではプレイヤーが操作できなかったアニメスターズ(オールドリームス)やプロスターズが自分で操作できるようになった。
    • 往年の名選手のファンや野球漫画のファンにとっては嬉しい趣向。
  • サイドスローやスイッチヒッターの実装で、より実在選手の再現度が高まった。

問題点

  • 大草原球場は上記の通り新鮮な乱打戦が味わえる反面、ファール時のレスポンスが遅い。
    • ファールグラウンドのヨコが無制限も同然なため、他のグラウンドのように「内野スタンドに飲み込まれてファール確定」がない。
      • そのため、あからさまに取れそうもない大ファールが飛んでも地面に着いたと見なされるまで認定されないため結果的に時間が長くかかる。
  • リーグ戦用バックアップが1枠しかなくリーグを開始した時や試合が終わるごとに強制セーブされる。
    • このため大規模なリーグ戦をしている間に、短時間で終わる小規模なリーグを行えない。
  • 「大草原球場」の外野フェンスが不自然に低い。
    • それほど気にする必要はないが、この球場のフェンスがやたら低く、何もない部分にあたって打球が跳ね返されるように見える。
    • エンタイトルツーベースが実装されていないなら、そんな不自然な挙動を避けるため、グラフィックでフェンスを高くしても良かったのでは?

総評

2つの新球場「ふえいふえい」「だいそうげん」は、これまでとはまるで違ったスタイルの野球が楽しめるので、馴染みある中にも新しい味を入れてきている。
遅まきながらリーグ戦を初実装し「手軽で自由なリーグ」という点も、ライバルシリーズとの差別化ができており、二番煎じ感をまるで感じさせない。
元々の手慣れた操作性は引き継ぎつつBGMを一新するなど、これまでの続編のようなマイナーチェンジ感の強かったものとは違いファミスタ初の新作とも言ってもいいぐらいだろう。


その後の展開

  • 本作以降は年末に、翌年の年度を冠して1993年(タイトルでは『'94』)まで年次発売することになる。
    • 翌1990年12月21日に続編『ファミスタ'91』を発売。
      • この頃にはスーパーファミコンが発売され、ファミコンにしても4Mの大容量を活かした濃密な内容のRPGが増えてきたことや後述の供給過多などで野球ブームも終焉し、売上げの面ではかなり落ちたものになった。
      • ゲームのイメージとは真逆の哀愁漂うCMソングで有名になった。
  • 1990年9月14日にゲームボーイソフトとして初の『ファミスタ』を発売。
    • BGMは本作と同様のものだが、初作品らしくベーシックな作りで『'87』程度のボリュームにとどまっている。投高打低という点ではそれ以上。
    • ファミコンの年度ナンバリングとは別口に数字のみのナンバリングで『4』(1996年11月25日発売)*5まで発売されるがファミコンやスーパーファミコン(1作目『スーパーファミスタ』1992年3月27日発売)のような年次リリースはされなかった(『2』の時点で1年飛ばして1992年7月発売)。

余談

  • 「ふえいふえい球場」のモデル「フェンウェイパーク」はアメリカの球場で、メジャー等アメリカ球界の情報が一般レベルではほとんど入ってこなかった当時、その認知度が低かったためゲームオリジナルの球場と誤解されることが多かった。
  • 翌年度を冠して年末発売するというスタイルは他の例ではハドソンのPCエンジンソフト『ボンバーマン'93』『ボンバーマン'94』などもある。
    • こちらは元々ハドソン自身がPCエンジン実質ファースト(表向きはサードパーティ)なので本作のような深刻な事情が絡むものではない。
    • ゲームではないが近年でも2013年の大晦日に行われた「NHK紅白歌合戦」で泉谷しげるが「春夏秋冬2014」(元々は1972年の曲)と題して歌ったことがあった。
  • 前作はライセンス契約更改問題のゴタゴタのせいで駆け足で開発して間に合わせで出したことや、それからわずか半年にも満たず更に年内2つ目の発売ということもあって、それをカバーすべくこれほどまでの豪華仕様になった可能性が高い。
  • ファミコン野球ブームは『プロ野球ファミリースタジアム』や『燃えろ!!プロ野球』に始まり1988年には新しい顔ぶれも続々参戦し、一気に開花した野球人気だが本年に入ると、いささか供給過多気味になってきた風潮もあった。
    • 同時にやや粗製乱造じみた一面が目立ってきたこともあり、野球人気も本作発売の頃にはだいぶ衰え、本作も例外ではなかったがやはりその火付け役だったということで存在感は大きく、発売初週のみながら売上ランキングでは、これまで通り1位を勝ち取った。本シリーズが売上ランキング週間1位を取れたのは結果的に最後となった。
      • 翌年の『'91』は野球ゲームブームの終焉後という不遇な時期をものともせず、ファミコンソフトの中に限ればしっかり発売初週1位をモノにしていたが『スーパーマリオワールド』をはじめスーパーファミコンソフトの大部分には敵うはずもなかった。更に翌々年の『'92』は発売初週でファミコンソフトに限っても1位を取れず、7作目にしてついに落日を感じさせる結果となった。
  • CMでもオリジナルソングでリーグモードをアピールしている。
    • 曲は全然違うが『'91』以降もCMはオリジナルソング路線で展開された。むしろ現在ではそっちの方が有名になる。
+ CM


最終更新:2024年08月13日 12:08

*1 中日・巨人間でトレードされた中尾孝義や西本聖、近鉄のパット・ドッドソンといった開幕時の所属選手は取り込めているものの選手のデータは当年ではなく前年をベースに作られ近鉄のハーマン・リベラ、西武のオレステス・デストラーデといった途中で加入した選手には対応できなかったため、結果的に1988年と1989年の中間のような中途半端な位置付けになった。

*2 ヤクルトから阪神に移籍したラリー・パリッシュやロッテエから広島にトレードされた高沢秀昭など。

*3 今までのも設定上でリーグ戦といえばリーグ戦には違いないが1試合ずつ総当りなのと負けたら即ゲームオーバーで優勝以外順位がなかったのでステージクリアモードに近かった。

*4 前作の「ろっこうさん」のものより狭くなっている

*5 ただし『4』のみ複合タイトル『ナムコギャラリーVOL.2』の収録作品扱い。