本項目ではアーケード版『大工の源さん べらんめ町騒動記』と、そのアレンジ移植のファミリーコンピュータのロムカセットソフト『大工の源さん』について併記します。


大工の源さん べらんめ町騒動記

【だいくのげんさん べらんめちょうそうどうき】

ジャンル アクション
対応機種 アーケード
発売・開発元 アイレム
稼働開始日 1990年7月
プレイ人数 1人
判定 良作
ポイント 今やパチンコ定番シリーズ発祥のゲーム
アーケードながら馴染みやすい好バランス
大工の源さんシリーズリンク


概要

1990年7月にアーケードで導入されたアイレムのアクションゲーム。
主人公の「源さん」こと「田村源三」を操作して、木槌を武器に様々なパワーアップアイテムを絡めて進んでいくアクションゲームではスタンダードなスタイル。


内容

地上げや手抜き工事、土地転がしといった悪徳な手段で私腹を肥やす「黒木組(くろもくぐみ)」の手によって源さんは自分の家を壊された。
怒りに燃える源さんは愛用の木槌片手に単身「黒木組」へ乗り込んでいく。

源さんのプロフィール

  • 本名・田村源三
  • 1970(昭和45)年10月10日生まれ・天秤座
  • 血液型 RH+ A型
  • 職業「桐島組」に祖父の代から三代で勤める大工

システム

  • システムはオーソドックスな横スクロールアクションゲームで、武器は木槌1つで戦う。
    • 木槌は基本は左右に振る形だが、上に向かって叩いたり、下に向かって地面を打つことで地響きを起こし、敵の動きを止めたりできる。
    • 振らずに下のみにレバーを入れることで木槌をタテにした防御ができる。
      • ジャンプして着地と同時に地面を叩くことで更に強力な地震を起こすことができ、この場合敵を直接倒すことができる。
      • パワーアップした「ビッグハンマー」ならばジャンプの必要がなく、立ったまま地面を叩くことで敵を倒せる強力な地震を起こすことができる。
    • ライフの概念はなくミスが即死となる(アイテムにより一度のみ回避できる場合あり)。
    • クリア時は残りタイムがスコアに還元される。
    • 一度クリアしても終わりではなくエンディングを挟んで難易度の上がった2周目に突入、これをクリアすることで本当のクリアとなる。

アイテム

  • ブロンズのニッカボッカ
    • ジャンプ力が上がる。
  • ちから石
    • 木槌が強力な「ビッグハンマー」になる。
      「ビッグハンマー」になるとジャンプの力を借りなくても強力な地震を起こせて、直接叩いた威力も倍になる。
  • スーパードリンク
    • 木槌の攻撃が1回転になる。
      反面、木槌の打つ方向を自在に振れなくなり、同時に前述の地響き攻撃ができなくなる。
  • お金の袋
    • ボーナス点が入る。
  • 安全ヘルメット
    • 1回だけ攻撃に耐えられる。
  • 源さん
    • 源さんの残り人数が1人増える。
  • これらは主に木箱などを破壊すると出現する。

ステージ構成

  • ステージ1「部乱目町商店街」
    • ボス:コンクリ大将
    • 特にギミックなどはないステージ。
  • ステージ2「部良望台土地開発」
    • ボス:鉄球マシーン
    • いたるところに叩くと揺れたり、上から垂直落下してくる棘鉄球がある。
  • ステージ3「かもめ埠頭」
    • ボス:ヤンキー小僧とポンコツセダン
    • 序盤では崩れる土管の山があり、後半では上からクレーンがしつこく襲ってくる。
  • ステージ4「黒木組工事現場」
    • ボス:杭打ちマシーン
    • 工事中のビルらしく釣り上げられた鉄骨や、電気らしきものを伴う棘などがある。
  • ステージ5「月天田地下水道」
    • ボス:巨大モグラ
    • 炎や爆弾が噴き出してくる場所がある。後半ではたくさんのブロックを崩して掘り進んでいく。
  • ステージ6「黒木組ビル」
    • ボス:黒木組社長*1
    • ステージ2同様に吊り下げられた棘鉄球があり、また足場の水道管を叩くと落ちる場所などがある。

評価点

  • 一発即死ではあるものの、難易度はそれほど高くはなく特に序盤はそれなりにとっつきやすいバランスで構成されている。
    • 当時のアーケード作品は大体が高難度だっただけに、このぐらいならば初心者でも馴染みやすい。
    • 一撃死に関しては当時ライフ制が増えてきたコンシューマのアクションゲームに慣れていると理不尽に感じられるかもしれないが、AC作品で考えれば難易度バランスでカバーされている。
  • 「木槌」の用途の広さ。
    • 攻撃だけでなく、防御にも使ったりヨコだけでなくタテ方向にも叩けたり更には地響きで敵の動きを止めたりなど基本のままでも使い勝手が良い。
    • また、ジャンプして着地で叩くという技術介入によって強力な地震を起こすというテクニックなども盛り込まれている。
    • 木箱をはじめとして障害物をガンガン壊していく様は、ある種の爽快感にもなっている。
  • パワーアップアイテムが豊富。
    • また、それらが隠れている場所を叩いて壊すという探索の面白さ。
    • アイテムそのものも特性が被らず、それぞれの強みが保たれている。
  • ステージのギミックも豊富。
    • 源さん自身に襲い掛かって来るだけでなく、棘鉄球などはそれを叩いて壁を壊すのに利用したりクレーンで釣り上げられた鉄骨の足場を利用して登ったりと、様々な展開に合わせて豊富に配置されている。
    • ボス戦でも、それらの特有のギミックが色とりどりでステージにも自然な形で溶け込んでいる。

問題点

  • 少々ボリュームが少なく感じられる一面もある。
    • 全6ステージで1ステージあたりもそこまで長くない。
    • 2周目があるとはいえ、見た目が同じまま難易度だけが上がっているというあまり変化がない内容。
  • エンディングが少々解せない展開。
    • 「黒木組が改心してめでたしめでたし」と言いながらまた改心する前にまるまる戻る。
    • 2周目をクリアしても結局1周目とまんま同じ展開でしかない。
    • こんな有様なので、敵役の黒木氷介は後発作でも「改心してもすぐに元に戻るどうしようもない男」という設定になっている。

総評

一発即死のゲーム性ながら、序盤のステージは非常にとっつきやすく難易度もほどほどに抑えられており、アーケードの悪癖「売上重視の高難度ゲー」と違って初心者にもある程度やさしく作られている。
武器は木槌一つながら、単純に叩くにしても上と左右に使えたり、防御や地面を叩くことでの足止めや自身による攻撃など様々な用途が広く、プレイヤーのテクニックも試されるし、壁や木箱などを次々に壊していく爽快感もある。
ゲーム自体はアクションゲームとしてスタンダードな部類ではあるが、総じてバランスの良い作りになっている。後にアイレムの看板キャラとして定着する源さんのデビュー作として快調なスタートを切れたと言えるだろう。


その後の展開

  • 1991年11月にファミリーコンピュータ用ソフトとしてアレンジ移植された。(後述)
    • アーケードは本作のみに終わり以後はコンシューマ系で主に展開されることになる。

余談

  • 上記の通りビッグハンマーを手に入れるアイテムは「馬鹿力」と直接「力」という文字が見えるのに、インストカードでは「ちから石」と「ちから」がひらがなになっている。
    • 漢字で表記してしまうと某ボクシング漫画の象徴的作品に登場する減量苦の果てに死んだ某有名ボクサーと同じ名前になってしまうので誤読を防ぐため敢えて「ちから」とひらがな表記にしたのだと思われる。
  • 大工の源さんは後の1996年2月に「CR大工の源さん」として三洋物産からパチンコとなり更にシリーズ化され、それを通して知名度は急上昇することになる。
    • 同年11月に発売された日本テレネットのパチンコシミュレータシリーズ『Parlor ! Mini』(SFC)の第4弾にも採用されることとなる。
    • 更にパチンコシミュレータも同社製機の開発を数多く手掛けたアイレム自身が『三洋パチンコパラダイスシリーズ』(後に略称を正式名称に据えた『パチパラシリーズ』と改題)として発売することになる。
  • 後のシリーズではセーラー服がお馴染みとなるヒロインの「カンナちゃん」だが、本作では私服での登場であった。
    • 後発作でもしばらくは私服姿で描かれる事も多く、セーラー服の定着は実はもっと先の話である。また、髪型も時々変わっていた。
    • 主人公の源さんも青い半被は着ておらず、後のシリーズから入るとカンナちゃん共々かなり異なった印象を受けるだろう。
  • 欧米では『Hammerin' Harry』のタイトルでリリースされた。
    • 当時の海外へのローカライズではよくあった日本要素の排除が行われており、背景やボイスも変更されている。
    • 主人公の源さんもタイトル通り「ハリー」という名前になっている。しかしゲーム終了後のハイスコアのネームエントリー画面では「GEN TAMURA」の表記が残っている。

大工の源さん

【だいくのげんさん】

ジャンル アクション
対応機種 ファミリーコンピュータ
発売元 アイレム
開発元 タムテックス
発売日 1991年11月15日
定価 6,500円
プレイ人数 1人
判定 良作
ポイント ファミコン化でよりとっつきやすくなった
独自のボーナスステージあり
ライバル「ダン」こと「八波弾」のデビュー作
大工の源さんシリーズリンク

概要(FC)

1991年11月に発売された上記アーケード作品『大工の源さん べらんめ町騒動記』のファミコン移植版。
単に移植しただけでなく、一部アレンジが施されアーケード版になかったボーナスステージなどが追加されている。

本項目ではAC版(上記)との相違点を中心に触れるものとする。


内容(FC)

  • 全般的に上記作品の移植
    • 概ねACイメージで再現されているが、アレンジによりギミックなどは簡略化されているか、ほとんど別物になっているものもある。
    • 前述の通り、AC版にはないボーナスステージなども新搭載されている。
  • AC版では一撃でやられていたが、FCではライフ制となり、最大値は4だが「初期値=最大値」ではなく、初期値は3。
    • これに伴いライフを回復するアイテムも登場(後述)。
  • AC版で登場したアイテムはほぼ持越しだが1UPがなくなり、ビッグハンマーにパワーアップする「ちから石」が「巨大木槌」に変更されている。
    • 1UPはスコア制で1万点・2万点・4万点到達時、以降は4万点毎に1人増える。
  • 一部直接攻撃が通じなかったボスがいたが、どれも普通に木槌の攻撃で倒せるようになった。
  • 一部のステージクリア後にボーナスゲームに突入する。
    • AC版ではEDにのみ登場していた源さんのガールフレンド・カンナちゃん(桐島カンナ)が敵に攫われ、源さんが助けに行く構図となる。
    • スコアを稼ぐだけでなく、一定以上ポイントを稼ぐとアイテムが取得できる。
    • 縛られて吊るされているカンナちゃんを叩くとマイナスポイントになるが意図的でもない限りできないような位置にいる。
  • 1つだけストックしておいてセレクトボタンで使用できる「特殊アイテム」が登場
    • 特殊アイテムがある状態で別のアイテムを取ると上書きされる。
  • コンティニューは無制限にできる。
    • ただ普通にミスした場合の再開は進行状況に応じた中間点、またはボス戦から再スタートとなるがゲームオーバーでのコンティニューを挟んだ場合はそのステージの最初からとなる。

特殊アイテム

  • スロータイマー「のろのろ君」
    • 一定時間敵のスピードが遅くなる。
  • パワードリンク「いっぷく」
    • 体力を1ポイント回復。
  • 先祖のお守り
    • 画面内すべての敵にダメージ。
  • 愛のおにぎり
    • 体力が全回復。

ステージ構成

  • ステージ1「部乱目町商店街」
    • ボス:コンクリ大将
    • 特にギミックなどはないステージ。
    • クリア後にビル窓からザコ敵が飛びかかって来るボーナスステージに突入。
  • ステージ2「黒木組工事現場」
    • ボス:爆裂マシーン
    • 特殊なギミックはヘドロで、流されて通れない箇所があり機械で流している敵を倒すことで通れるようになる。棘鉄球もあるが1つのみ。
    • クリア後にモグラたたきのボーナスステージに突入。
  • ステージ3「鴎港水道路」
    • ボス:ヤンキー小僧とポンコツセダン
    • クリア後に爆弾たたきのボーナスステージに突入。
  • ステージ4「黒木組ビル」
    • ボス:社長秘書たえこさん
    • ギミックはパイプラインの一部に叩くと割れて油(触れるとダメージ)が噴き出してくる部分がある。後半にはAC版でステージ2に多くあった垂直落下の棘鉄球が多数配置されている。
    • 屈強な漢衆ばかりでなく見た目が普通の女性社員も襲ってくるが遠慮は無用だ!木槌で改心させてやれ!*2
  • ステージ5「黒木組社長宅」
    • ボス:黒木組社長
    • ビームを撃ってくる銅像や、ダメージの棘鉄球、足場として使わなければならない鎖鉄球などギミックが豊富。

評価点(FC)

  • FC移植による映像面の劣化はあれども、全体的な移植の再現度は高い。
    • ステージのギミックなども大多数はほぼそのままのような形がとどめられているため雰囲気はしっかり味わえる。
    • 雰囲気の再現度の高さだけでなく、新しい敵なども加わりAC版の雰囲気を保ちつつ新しさも感じられる良質なアレンジ。
    • 「てやんでい!」のボイスもほぼそのまま。
  • コンシューマに合わせて更にとっつきやすいバランスに変化。
    • 特にライフ制の採用は大きく、この当時は一発死のタイプは少なく難しいゲームでも採用されているだけに、欠かせない要素だろう。
    • 更にセレクトで使用できる特殊アイテムが導入されたことで、これも難しい局面などの突破に大いに役に立つ。
  • ボーナスステージの導入。
    • AC版になかったもので、しかも源さんらしさも活かされておりACクリア経験者であっても改めて楽しめる要素になっている。
    • また残機アップにスコアが関与していることもあって、その補助になってくれるのは初心者にとってもありがたい。

問題点(FC)

  • 見た目の雰囲気こそ再現されているが少々簡素化されている点は否めず、ACと比べるとやはり見劣りする部分は見受けられる。
    • 特に鉄球やクレーンといったギミックは、少々安っぽくなっている感がある。

総評(FC)

AC作品のFCへの移植は、アレンジを加えつつも劣化ゲーになりやすいのが通例だが、本作はファミコンオリジナルの要素も多く、そのような劣化感を感じにくい出来になっている。
元々とっつきやすいバランスだったAC版をFC用に上手くバランス調整し、新要素を加えながらも元の雰囲気はしっかり維持しつつ上手くアレンジできている。
当時はスーパーファミコン発売により初心者エントリー路線にシフトしたファミコンに向いた新しいスタイルにも適しており、同時に今後シリーズの続編は高難度傾向になっていくこともあって、その入門として後に繋げる意味でも理想的な形になっている。


その後の展開(FC)

  • 1992年7月24日にゲームボーイソフトとして『大工の源さん ゴーストビルディングカンパニー』が発売。
    • 世界観は一転して名前の通りガイコツやオバケ、ゾンビといった死人系の敵を相手に戦う。
    • ゲームシステムそのものは本作を引き継いだものになっているが、新しくシューティングのステージもある。
  • ファミコンでは1993年10月22日に『大工の源さん2 赤毛のダンの逆襲』を発売。
    • 世界観は元通りだが、この作品でも上記作品を引き継いでアクションとシューティングを併載した構成になっている。
    • こちらはファミコン末期作品ながら難易度はかなり高いものになっている。

余談(FC)

  • 後にライバルキャラとなる「赤毛のダン」こと「八波弾」は本作のステージ2で初登場するが、この当時は中ボス程度ながら生身ではザコに毛の生えた程度の扱いでしかなかった。
    • 説明書では「宿命のライバル」と書かれているものの生身では強くなく、爆裂マシーンに乗ってきても大して強くないので印象が薄い。
    • 上記続編にてライバルキャラとしての立ち位置を固めることになり、『がんばれ!大工の源さん』でも後半のボスとして登場した。また、『がんばれ!』では「赤毛のアン」みたいだからなのか「赤毛のダン」を名乗るのをやめて「ダイナマイト・ダン」に改名している。
    • 後の定番となるパチンコシリーズでもライバル「ダン」こと「八波弾」は登場し2002年の3作目『CR江戸っ子源さん』(L7・M6)と早いがこれは大工ではないため事実上スピンオフ扱い。
      • 本来の大工としての登場はだいぶ遅く、2013年の『CR大工の源さん韋駄天桜 XLC』『パチスロ大工の源さん 炎の源祭篇』と、かなり遅く厚遇なのか不遇なのか微妙。
    • ゲームでは登場しないがアザミという妹がいる*3
  • 欧州ではNES版『Hammerin' Harry』として発売されたが、北米ではAC版と違いNES版は発売されていない。
    • 背景やボイスの変更は同様だが、FC版で特筆すべき点はやはり『ロックマン』等でもおなじみの海外特有のパッケージで源さんの格好をしたシルヴェスター・スタローン似の大男が描かれている
      このパッケージイラストは『大工の源さん ゴーストビルディングカンパニー』の海外版にも流用されている。
  • AC版ではEDのみの登場だったカンナちゃんだが、前述の通り今作ではおまけゲームに登場し、以降もゲーム中の出番が多くなっていく。
    • ボーナスゲームではお馴染みとなるセーラー服姿の初披露となるが、EDの一枚絵ではAC版同様に私服となっている。そもそも説明書やカセットのイラストでは私服姿で描かれており、こちらは髪型すら違っているので同一人物には見えにくいほどである。
    • 次回作以降もしばらくは容姿が安定しなかったが、やがてパチンコでもお馴染みの姿へとイメージが固まっていく。
      • しかしデザインが一新された2020年のパチンコ『P大工の源さん 超韋駄天』では、またも変貌を遂げている。源さんなど他のキャラは元のイメージが残っておりトレードマークの武器もあるので分かり易いのだが、カンナちゃんは髪を下ろした上にトレードマークのセーラー服も無くなり、ハリセン*4も持っていないので言われなければ誰だか分からないほど。
最終更新:2024年02月25日 18:53

*1 後のシリーズでは「黒木氷介」とフルネームが設定される。

*2 説明書では投げナイフの如く万年筆を構えたイラストが描かれているので、恐らく彼女達も戦闘要員なのだろう。

*3 初登場は2008年のパチンコ『CR寿司屋の源さん MTA』。時期的にゲームでの最終作『いくぜっ!源さん 夕焼け大工物語』と被るのでゲームでの出演は未だなし。アニメには登場している。

*4 PSP版『いくぜっ!源さん』でプレイアブルキャラになった際に使用。