カイザルへの税金

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カイザルへの税金 - (2017/01/15 (日) 15:25:27) のソース

イエスの言葉尻をとらえて陥れようとしたファリサイ派とヘロデ派の人々が、イエスに「皇帝に税金を納めるべきか」という質問をした。

ファリサイ派は、普段は一般の職を生業としながら、非常に厳格に律法やユダヤ人の伝統を守ろうとする人たちのことである。自然と神の民として誇り高く、異教徒のローマ帝国に支配されていることなど容認できない、と考えていた。一方ヘロデ派の人々は、聖書も大事だけれども、今ローマ帝国に逆らってもいいことはない、信仰の点では多少妥協しても、ローマ帝国の庇護のもとで得られる利益を追求するといった、世俗的な人たちだった。

もしイエスが「皇帝に税金を納めるべきだ」と答えば、ファリサイ派は「イエスは異教徒であるローマの手下である」と悪評を立てることができる。一方でもしイエスが「皇帝に税金を納めるべきではない」と答えれば、ヘロデ派は「ローマに対する反逆である」と訴える根拠になる。したがってこの質問には肯定しても否定してもイエスが不利になるように仕組まれた質問だった。

#image(https://img.atwikiimg.com/www65.atwiki.jp/trinity_kristo/attach/312/66/tiberius_denarius.jpg)
これに対し、イエスはデナリオン銀貨に皇帝ティベリウス(在位:紀元14年~37年)が描かれていることを示し、「皇帝のものは皇帝に、神のものは神に返しなさい。」と答えた。これにより、イエスは「ローマの手下ではない、ユダヤ教徒である」ことを示しつつ、「ローマへの反逆はしない」という態度をも示し、ファリサイ派とヘロデ派の双方のもくろみは崩れた。

なお、当時の皇帝はもちろんユリウス・カイザルではないが、ユリウス・カイザル以降の皇帝は民衆から「カイザル」と呼ばれていたため、聖書ではカイザルの名が出てくる。(新共同訳ではこの点を踏まえ、「皇帝」と訳している)

マルコ12:13-17
>さて、人々は、イエスの言葉じりをとらえて陥れようとして、ファリサイ派やヘロデ派の人を数人イエスのところに遣わした。彼らは来て、イエスに言った。「先生、わたしたちは、あなたが真実な方で、だれをもはばからない方であることを知っています。人々を分け隔てせず、真理に基づいて神の道を教えておられるからです。ところで、皇帝(カイザル)に税金を納めるのは、律法に適っているでしょうか、適っていないでしょうか。納めるべきでしょうか、納めてはならないのでしょうか。」
>イエスは、彼らの下心を見抜いて言われた。「なぜ、わたしを試そうとするのか。デナリオン銀貨を持って来て見せなさい。」彼らがそれを持って来ると、イエスは、「これは、だれの肖像と銘か」と言われた。彼らが、「皇帝(カイザル)のものです」と言うと、イエスは言われた。「皇帝(カイザル)のものは皇帝(カイザル)に、神のものは神に返しなさい。」彼らは、イエスの答えに驚き入った。

マタイ22:15-22
>それから、ファリサイ派の人々は出て行って、どのようにしてイエスの言葉じりをとらえて、罠にかけようかと相談した。そして、その弟子たちをヘロデ派の人々と一緒にイエスのところに遣わして尋ねさせた。「先生、わたしたちは、あなたが真実な方で、真理に基づいて神の道を教え、だれをもはばからない方であることを知っています。人々を分け隔てなさらないからです。ところで、どうお思いでしょうか、お教えください。皇帝(カイザル)に税金を納めるのは、律法に適っているでしょうか、適っていないでしょうか。」
>イエスは彼らの悪意に気づいて言われた。「偽善者たち、なぜ、わたしを試そうとするのか。税金に納めるお金を見せなさい。」彼らがデナリオン銀貨を持って来ると、イエスは、「これは、だれの肖像と銘か」と言われた。彼らは、「皇帝(カイザル)のものです」と言った。すると、イエスは言われた。「では、皇帝(カイザル)のものは皇帝(カイザル)に、神のものは神に返しなさい。」彼らはこれを聞いて驚き、イエスをその場に残して立ち去った。
 
ルカ20:20-26
>そこで、機会をねらっていた彼らは、正しい人を装う回し者を遣わし、イエスの言葉じりをとらえ、総督の支配と権力にイエスを渡そうとした。回し者らはイエスに尋ねた。「先生、わたしたちは、あなたがおっしゃることも、教えてくださることも正しく、また、えこひいきなしに、真理に基づいて神の道を教えておられることを知っています。ところで、わたしたちが皇帝(カイザル)に税金を納めるのは、律法に適っているでしょうか、適っていないでしょうか。」
>イエスは彼らのたくらみを見抜いて言われた。「デナリオン銀貨を見せなさい。そこには、だれの肖像と銘があるか。」彼らが「皇帝(カイザル)のものです」と言うと、イエスは言われた。「それならば、皇帝(カイザル)のものは皇帝(カイザル)に、神のものは神に返しなさい。」彼らは民衆の前でイエスの言葉じりをとらえることができず、その答えに驚いて黙ってしまった。 

トマス福音書にも並列箇所がある。(トマス100)
>人々がイエスに金貨を示し、そして彼に言った。「カイザルの人々が私たちから貢を要求します」。彼(イエス)が彼らに言った。「カイザルのものはカイザルに、神のものは神に返しなさい。そして、私のものは私に返しなさい。」