ステファノ(Στέφανος Stéphanos)は、
新約聖書の『使徒行伝』に登場するユダヤ人キリスト教徒(西暦35-36年頃没)。
キリスト教における最初の殉教者、すなわち信仰のために自らの命を犠牲にする者であったとされている。
ステファノの名前は明らかにギリシャ風である。このことからも分かるように、ステファノはギリシャ語を話すユダヤ人(ヘレニスト、ユダヤ系ギリシア人)であり、初代教会において彼はヘレニストの代表であった。
ステファノの死
ステファノは天使のような顔を持ち、「不思議な業としるし」によって人々をひきつけたため、これをよく思わない人々によって訴えられ、最高法院に引き立てられた。
さて、ステファノは恵みと力に満ち、すばらしい不思議な業としるしを民衆の間で行っていた。
ところが、キレネとアレクサンドリアの出身者で、いわゆる「解放された奴隷の会堂」に属する人々、またキリキア州とアジア州出身の人々などのある者たちが立ち上がり、ステファノと議論した。しかし、彼が知恵と“霊”とによって語るので、歯が立たなかった。
そこで、彼らは人々を唆して、「わたしたちは、あの男がモーセと神を冒瀆する言葉を吐くのを聞いた」と言わせた。また、民衆、長老たち、律法学者たちを扇動して、ステファノを襲って捕らえ、最高法院に引いて行った。そして、偽証人を立てて、次のように訴えさせた。「この男は、この聖なる場所と律法をけなして、一向にやめようとしません。わたしたちは、彼がこう言っているのを聞いています。『あのナザレの人イエスは、この場所を破壊し、モーセが我々に伝えた慣習を変えるだろう。』」
最高法院の席に着いていた者は皆、ステファノに注目したが、その顔はさながら天使の顔のように見えた。
そこでもステファノはユダヤ人の歴史を引き合いにしながら「神殿偏重に陥っている」とユダヤ教を批判した。
大祭司が、「訴えのとおりか」と尋ねた。
そこで、ステファノは言った。(中略)
(ステファノは言った)
かたくなで、心と耳に割礼を受けていない人たち、あなたがたは、いつも聖霊に逆らっています。あなたがたの先祖が逆らったように、あなたがたもそうしているのです。いったい、あなたがたの先祖が迫害しなかった預言者が、一人でもいたでしょうか。彼らは、正しい方が来られることを預言した人々を殺しました。そして今や、あなたがたがその方を裏切る者、殺す者となった。天使たちを通して律法を受けた者なのに、それを守りませんでした。」
人々はこれを聞いて激しく怒り、ステファノに向かって歯ぎしりした。
ステファノは聖霊に満たされ、天を見つめ、神の栄光と神の右に立っておられるイエスとを見て、
「天が開いて、人の子が神の右に立っておられるのが見える」
と言った。
このためファリサイ派によって石打ちの刑に処せられた。
人々は大声で叫びながら耳を手でふさぎ、ステファノ目がけて一斉に襲いかかり、都の外に引きずり出して石を投げ始めた。証人たちは、自分の着ている物をサウロという若者の足もとに置いた。
人々が石を投げつけている間、ステファノは主に呼びかけて、
「主イエスよ、わたしの霊をお受けください」
と言った。
それから、ひざまずいて、
「主よ、この罪を彼らに負わせないでください」
と大声で叫んだ。ステファノはこう言って、眠りについた。
サウロは、ステファノの殺害に賛成していた。
「さて、わたし(パウロ)はエルサレムに帰って来て、神殿で祈っていたとき、我を忘れた状態になり、主にお会いしたのです。
主は言われました。
『急げ。すぐエルサレムから出て行け。わたしについてあなたが証しすることを、人々が受け入れないからである。』
わたしは申しました。
『主よ、わたしが会堂から会堂へと回って、あなたを信じる者を投獄したり、鞭で打ちたたいたりしていたことを、この人々は知っています。
また、あなたの証人ステファノの血が流されたとき、わたしもその場にいてそれに賛成し、彼を殺す者たちの上着の番もしたのです。』
すると、主は言われました。
『行け。わたしがあなたを遠く異邦人のために遣わすのだ。』」
参考
最終更新:2020年09月29日 17:14