科学による人種の起源

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聖書における人種の起源はノアの三人の子供たちとされている。
しかしながら、アメリカ大陸の発見により、ネイティブ・アメリカンという、聖書では説明のできない人種が現れた。これにより、ノアの子供たちから人種ができたとする説は揺らいでいくこととなった。

ネイティブ・アメリカンの発見

普遍史こそ真理と考えていた中世ヨーロッパ人にとって、この新大陸とそこに生きる人類は、彼らの世界観を根底から揺るがした。現実の存在を無視することは叶わず、地理学者のゲラルドゥス・メルカトルも「新インド(アメリカ)とアジアは異なる大陸」という言葉を沿え、1569年に初のメルカトル図法による世界地図を作成した。

では、このアメリカ大陸とそこに住む人類(アメリカ先住民、インディオ、インディアン)は何者なのか。アウグスティヌスは人間を「理性的で死すべき動物」と定義しているが、ここで言う理性とはキリスト教を受容するだけの資質を持つか否かであった。1537年には教皇パウルス3世から「インディアンは人間であり、カトリックを理解でき、それを熱望している」という教書が宣言されたが、多くの議論が行われた。

普遍史によれば、すべての人類の起源は大洪水を経てノアと3人の息子に遡ることが出来るはずである。では、アメリカ先住民が人間だとすれば、彼らの起源はこの3人の誰なのかという疑問が人間的権利論と同様に沸き起こった。この問題が最も古く文献に残された例は、1535年にスペインの歴史家ゴンサーロ・フェルナンデス・デ・オビエードが著した『新大陸自然一般史』に見られ、彼は二つの説を並立して述べている。一つは紀元前1658年頃に古イスパニア人が大西洋の西に発見した島に当時の王名からエスペリデス諸島と名づけた故事を由来とする「古イスパニア人説」、もう一つはカルタゴ人がアトランティスの西に発見した島に移住したという「カルタゴ人説」である。オビエードは、この二つの民族が段階的に移住した先がアメリカ大陸だと考えた。

バリャドリッド論戦以降、先住民起源について様々な説が盛んに提示された。ひとつのグループはオビエード同様伝説・伝承に基づくもので、ラス・カサスの「東インド起源説」、プラトンの説を由来とする「アトランティス生き残り説」、ホメーロスの詩にあるギリシア神話の英雄オデュッセウス漂流時の子孫とする「ギリシア人起源説」などがあった。

聖書記述から起源を説明しようという試みもあった。「イスラエル起源説」は、シャルマナサルによってイスラエル王国が滅亡した際に連行された10の部族(「列王記」下17-6)の末裔というもので、聖書の正典から除外されている「エズラ第二書」で彼らは信仰と律法を守るために東へ旅立ち1年半後に「アザレス」という地に至ったとある(第13章)。このアザレスが新大陸と考え、同書にある終末にこのアザレスの人々が再び現れ最後の審判を受けるという下りから、アメリカ先住民の発見は終末が近いと考える人もいた。「オフィル起源説」は、ハムの子孫ヨクタンとその孫オフィル(「創世記」10-29)が、それぞれユカタン半島とペルーの原住民だという説で、その根拠は発音が似ているというものであった。

これらヨーロッパの伝説や聖書にアメリカ先住民の起源を求めようとする解釈は、彼らを既知の民族と強引にでも結び付け、聖書の「民族表」に源流を見出そうとした考えに発していた。その本質は、新大陸の住民を普遍史の中になんとか組み込もうという試みでもあった。

そのような中、イエズス会宣教師のホセ・デ・アコスタ(1540年 - 1600年)は革新的な方法で新たな説を打ち立て、1590年に『新大陸自然文化史』を発表した。彼自身はあくまで普遍史を正しいものとみなし、すべての生き物はノアの方舟に遡ると考えていた(第1巻20章)[2- 9]が、その視点に立ってペルーを中心に南アメリカの動物相に着目すると、アジアとの共通点が多数見受けられることに気づいた。アコスタは、新大陸には既知の大陸のいずれかと繋がっているかもしくは近接した場所があり、そこを通って動物や人類が移動したものと考えた(第1巻24章)。伝説や聖書記述のみを盲信しない科学的な立論はヨーロッパで広く認められ、アメリカ先住民族はアジア人の末裔という評価が定まった。

新大陸の発見は、地球には実は四大陸があり、そのどれに住む人間も化物的ではないどころか独自の文化を持つ集団だということを明らかにし、世界はヨーロッパ中心ではないことを知らしめた。これは普遍史の基礎を大きく揺るがすもので、存亡の危機が迫った。しかし、アコスタの説によって普遍史はかろうじて矜持を保った。さらにモンテーニュは『エセー』において新大陸を「新しく、子供の世界」(3-6)と評したように、ヨーロッパは自らを先進的な「大人」の立場にあると考えることで優越さを維持した。こうして普遍史は生き残りに成功した。

ミトコンドリアDNA解析

細胞内に存在するミトコンドリアはATPを産生する微小器官である。そのミトコンドリアは母系遺伝であり、母親から子へと伝わっていく。したがって、世界中のミトコンドリアDNAを解析することで、「ミトコンドリア・イブ」が分かるのである。ただし、ある家系で男子のみが生まれ女子が生まれなかった場合、その家系のミトコンドリアDNAは断絶されてしまうため、必ずしもミトコンドリア・イブが現生人類すべての母ということにはならない。


ミトコンドリアのハプロタイプ(生物がもっている単一の染色体上の遺伝的な構成、具体的にはDNA配列)に関する図である。ハプロタイプL0からL3がアフリカにのみ存在する一方その他の地域はMかNどちらかしか存在しない。このことから、人類はアフリカからやってきたことが科学的に証明された。


なお、Y染色体の系統樹についても同様に調べられており、アフリカとその他の地域では差が見られる。ミトコンドリアDNAほと明瞭ではないが、例えばハロタイプCTはアフリカ外にのみ見られる。また、この解析によって、「Y染色体・アダム」がわかる。