鋼の錬金術師(2003)

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鋼の錬金術師(2003) - (2023/07/22 (土) 16:48:36) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2012/06/16 Sat 00:06:05
更新日:2024/05/03 Fri 13:31:49NEW!
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とりもどせ、すべてを




『鋼の錬金術師』とは、2003~2004年に放映された、『月刊少年ガンガン』で当時連載中だった荒川弘同名漫画のアニメ化作品。


【概要】

製作はボンズ・アニプレックス。
監督は『地球防衛企業 ダイ・ガード』『シャーマンキング(2001)』の水島精二が担当。
脚本家陣はストーリーエディター(シリーズ構成)の會川昇を筆頭に、井上敏樹、吉永亜矢、高橋ナツコ、高山カツヒコ、石川学、大和屋暁が名を連ねている。

放映当時は原作のストックがまだ1年アニメとして放送できるほどには貯まっておらず*1、設定を大幅に変更し、原作のシナリオを下敷きにしつつも大胆な脚色を行い、原作とは一味違った世界観となった。
これにより、1巻のキャッチコピーであったダークファンタジーの要素に重きにおいた、少年漫画らしさを抑えたシリアス色の強いストーリーが特徴となっている。
その功績あってか、現在も多くの人気アニメとコラボしている事で有名なユニバーサル・スタジオ・ジャパンとの初めてのアニメコラボに採用されたり、ゲームやCD等グッズやDVDも大ヒットし、各方面から高い評価を得ている。
特にロイ・マスタングのキャラクターソングは劇中で使用されなかったにもかかわらず、オリコンチャート11位を記録している。

一方で一部原作ファンからは「改悪」だと批判する声も根強く、特に原作と大きく異なる結末や、放送時刻や原作の掲載雑誌のターゲット年齢層から考えても必要以上に悪趣味な一部設定は賛否が分かれている
もっとも、放送当時の原作で描かれていなかった部分との相違に関しては『改悪』とは言い切れない面もある*2
「どちらも好き」というファンももちろんいる他、批判する層にも「原作とは別作品として見れば面白い」等、アニメ作品としてのクオリティーは認めているという声も見られる。

原作者もオリジナル展開自体には肯定的なのだが、悪趣味すぎてスタッフの中でも賛否両論だったキャラクターデザインを却下したり、とある終盤の展開に対しては「通すべきではなかった」と発言している。
ただし、第17話ラストの演出は10年以上もの間評価し続けており、アニメ全体に不満を持っていると発言したわけではない。

TV版の好評を受けて、2005年には完結編となる劇場アニメ映画『鋼の錬金術師 シャンバラを征く者』が公開された。

また、2009年には原作のストーリーを忠実にアニメ化した『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』(以下『FA』)が放映。
それによって、単に「アニメ版」というとどちらの事を指しているのか分からないため、話題に出す場合はこちらの方は『2003年度版』『水島版』『旧アニメ版』等と呼ばれて区別される。
ファンの間では『一期』と称される事もあるが、2つの作品に繋がりはなく、制作会社ではこの2作は別作品として扱われている為、正確には間違いである*3
制作会社が同じボンズなため、錬成陣や銀時計など一部の美術設定は継承された。
一方、版権は全て『FA』の方に引き継がれているようであり、『FA』放映以降、今作が他作品とのコラボレーションや公式グッズに使われた事はない。

本作の声優陣はエルリック兄弟やアレックス・ルイ・アームストロングマース・ヒューズイズミ・カーティスキング・ブラッドレイなどの一部は『FA』でも続投しているが、
ウィンリィ・ロックベルやマスタング、リザ・ホークアイ、ホーエンハイムやホムンクルス達など大半のキャラの声優陣は変更、もしくは別キャラ役にスライドされている。
ストーリーの半分以上がオリジナルエピソードであるが故に、原作とは大幅に印象が変わっているキャラが多いのが理由だろう。

余談だが、アプリゲーム『鋼の錬金術師 MOBILE』において『FA』に登場しなかったホーリングやバルドなどのキャラクターは、今作で起用された声優を約20年越しに続投して登場している*4


【ストーリーの変更点】

  • 1クール目は原作第1話のリオールの事件の後は、兄弟の人体錬成の後から第9話まで国家錬金術師になりたての頃の過去回想が大半を占める。
    • そのため、序盤のエピソードは時系列が錯綜している。
  • タッカー家に下宿して国家錬金術師資格試験の受験勉強をするエピソードを追加。この為に後々の悲劇がより大きなものとなる。
  • 第五研究所のエピソードも大幅に追加。エドが賢者の石を錬成するという誘惑にかられる場面もある。
  • 真理の扉→門。門の向こうもオリジナル。
  • シン国等の周辺諸国や、リン・ヤオランファン、フー、メイ・チャンといった関連人物は一切登場しない(OVAに限り、シャオメイと思しきパンダのみ登場している)。
  • 同様にオリヴィエ・ミラ・アームストロング率いるブリッグズの面々も登場しない
……etc.
特に原作ストックを消費しきった後半は小説版の内容を除いて完全なオリジナルストーリーとなり、原作にあった場面や登場キャラクターは第7巻の部分までである。

ちなみに作者のおまけ漫画によれば、アニメと原作で重要なネタが被らないように最終回の構想を先にアニメスタッフのお偉いさん(多分監督かプロデューサー)に話していたらしい。
確かに当時の原作の流れと照らし合わせると共通点がちらほら見受けられる。
※ややネタバレになるが、マスタングの目だったり、アニメ最終回でのエドの行動が原作クライマックスのものと一致しているように思えたり……おい重要なネタ被せてるじゃねえか。

また、作者が思いつきながらもまだ漫画では描いていなかったネタをアニメで先にやられてしまったということも何回かあったらしく、公表されているものではマスタングの無精髭などが該当する。

また、錬金術の持つ万能さの誘惑と自身のエゴに従った錬金術師達が対価として『業』を負い、自らのエゴが産んだ生命に恨まれる展開など、
原作の「お父様」に相当する絶対悪が登場しない*5分、錬金術……とりわけ人体錬成の加害性に焦点を当てているのも特徴である。
ホムンクルスや錬金術の設定の違い、「改悪」と呼ばれる部分も含めて「生命そのものの重み」「愛する人の『死』をどう受け止め、克服するか」といったテーマを押し出している点も、本作の特徴である。

分かりやすく両作品の違いを例えるとすれば、原作が「叩かれても、へこたれても、道をはずれても、倒れそうになっても綺麗事だとわかってても人間は何度でも立ち向かう、周りが立ち上がらせてくれる*6であれば、
旧アニメ版は「人間は愚かで間違いを犯す、だからこそ美しい*7と、人間賛歌の方向性が異なっているのである。


【登場人物】

主に変更点について紹介。

《主人公サイド》


10歳で母の死を経験した為、人体錬成を決意。
また、国家錬金術師資格を得る前から親しくしていた少女のキメラ化からの惨殺死体の直視、快楽殺人鬼の襲撃を経るなど、原作に比べて幼い頃から何度も酷い目に遭う。
さらに賢者の石を追い求めている事が強調された結果、そこを付け込まれてホムンクルスの悪事の片棒を担がされかけたり、
正当防衛ながら人を殺すという現実を目の当たりにして狼狽したりと、メンタル面での追い詰められっぷりが著しい。

これらの境遇から、原作では言わないような気弱で人間不信な発言も多く、また誰からも目つきの悪いチビガキ扱いの原作と違って美少年(公式名称)として扱われる事もあるため、
原作ファンからは改悪部分としてこのエドの性質の違いが挙げられる事もある。通称「ホモニーサン」。原作は「ノンケニーサン」
しかし、原作にあったギャグ描写もないわけではなく、物語前半ではむしろ原作よりコミカルな面が強調される事も多かった。

他にも賢者の石の情報を求めるために自分が国家錬金術師の道を選んだ事をマスタングに出世の為に利用されただけだと思い込んだり、
イシュヴァール殲滅戦での軍の非道な行いを聞いて以降の軍人に対する不信故に、軍の追跡から兄弟を保護しにきたハボック達から逃亡するために暴力を振るって骨折させるなど、大人への反抗的な態度も多く見せていた。
それでも過去のトラウマと向き合い、成長していくのだが、最終話前にまさかの出来事が……


原作とは違い、人体錬成には乗り気ではなかった他、穏やかで優しい性格が強調されており、引っ込み思案で暗い所がある。

たった1人の家族であるエドの事を誰よりも気にかけており、若干ブラコン気味でやや依存体質。
兄にべったりな言動は物語が陰鬱さを増す前の物語前半では鬱陶しがられる事も多く、エドには軽くあしらわれたり、アルの言葉よりも少佐の言葉を信じて行動されてしまうといったシーンもあった。
その積み重ね故か、バリーからの指摘で自分という存在を疑った時には原作以上に引っ張った。

同じ弟である事に親近感を抱いているのか、ニーナを惨殺した上に自分や兄を危うく殺しかけ、その事について謝罪や弁解をしたわけでもない傷の男にも何故か友好的であり、エドが傷の男を罵った時には擁護する場面もあった。

終盤、仮の肉体である鎧にある変化が起こり、物語の最も重要な鍵を握る真の「ヒロイン(公式名称)」と化す。
なお、前述の穏やかさを強調するためか、生身のアルは髪と瞳の色が茶色がかっており、原作より母親に似た容姿になっている。

なお、とある理由で髪を兄のように伸ばし、兄と同じアンテナを立てる事になる。
これに対したアンサーであるかは不明だが、原作のアルは自分の本来の容姿を「兄さんみたいにキツい顔してない」「スキッと爽やか金の短髪!」と誇らしげに形容している。


原作者から「原作以上にヒロイン度を増やしてください」と注文され、その通りアニメ本編とゲームでの出番や衣装のバリエーションこそ増えたものの、原作序盤の主な活躍シーンをエドにスライドされてしまい、
原作者の意向とは真逆に原作以上に機械オタクである事が強調された上、自分の浅慮さを深く反省して涙する原作と違い、思慮が足りない行動をした後で更に口を滑らせてアルを軽視するような発言をしてエドからも引かれてしまったりする。

これらの大幅なキャラ改変はファンから「空気が読めない」「エドに色目使いすぎ」などと非難され、『裏鋼』では監督直々にヒドインの烙印を押されてしまった。脚本コンビはヒロインに恨みでもあるのか
ヒューズとの絡みの多さを逆算してか、両親の死にある確執を生んでいたりと本筋にも大きく関わってくる。
劇場版の扱いは……これについてはもはや何も言うまい。


《アメストリス軍サイド》

ロイ・マスタング
CV:大川透

童顔なのは変わらずだが、29歳とは思えぬダンディボイス。担当声優の大川氏はこのような若いキャラクターを演じる事に驚きを覚えていた。
原作のような青二才ぶりは少ないが、例によって原作よりも打たれ弱く、言葉足らずな節がある。
こっちでも雨の日は無能なのだが、水を分解して水素爆発を起こすという応用技を見せた原作と異なり、発火布が濡れると完全に打つ手がなくなる。
イシュヴァール殲滅戦でのトラウマと罪の意識から原作以上にエルリック兄弟の身を案じているが、そう感じさせない物言いと態度のせいでエドからは終盤まで不信感を抱かれていた。
中盤のエドが軍人そのものに対する不信感に囚われる中、ようやく本心を明かした際はせめて自分達の事は信用して欲しかったという意味を込めて、勝手な判断で逃亡した事を咎めている。
その後はエドとの関係も多少修復されたものの、ヒューズの死を伏せていた件に関しては自分達を気遣った結果であると理解できても、複雑な感情を抱かれていた。

最終盤では「人が理不尽に殺される世の中を変える為に大総統になる」というを捨て、ヒューズの仇を討つために大総統邸を襲撃する。
たしかにヒューズの死に関与はしていたものの、下手人共犯は大総統ではないのだが……
だいたい、マスタングが反逆者として処分されてしまえばそれこそヒューズは犬死にである事を理解しているのかいないのか
大総統を倒した後は襲撃犯を追って来たアーチャーに狙撃されて片目を失明するのだが、屋敷が炎上し、大総統やその子息が殺害されるという大事件を、目撃者もおり他に容疑者もいない中単独で起こしておいて、何故か逮捕される事もなく、軍籍も排除されなかった。

軍に刃向かったユーリとサラ・ロックベル夫妻を上官命令で射殺した過去があり、その事が大きなトラウマとなっている。
そのせいで拳銃恐怖症になってしまい、軍人でありながら発砲する事が出来ない。
……傷の男戦で威嚇射撃してた事は忘れよう。そもそも「その何百倍も殺した指パッチンの方はトラウマになっていないのか」とツッコんではいけない

リザ・ホークアイ
CV:根谷美智子

重要な設定が語られる前のアニメ化だった事もあり、原作ほどマスタングに因縁があるわけではないが、原作と同じく、あるいはそれ以上にマスタングを人として、そして一人の男性として愛しているような描写が見受けられる。
劇場版ではウィンリィほどではないにせよ彼女の扱いもなかなか酷く、原作者にも円盤特典の四コマでネタにされており、OVAの特別映像ではその事を愚痴りはっちゃけまくっている。一人乗りだ!
背中はキレイ。

〇ジャン・ハボック
CV:松本保典

髪がツートンカラー。原作とは異なり、中央では恋人が出来ない為退役はしない。
原作エピソードの映像化ではあるものの主役回もあるなど、ホークアイ以外いまいち空気気味なマスタング隊の中では比較的優遇されている。ちなみにフラれた元カノの名前はグレース*8
原作者の不定期連載作品であった『上海妖魔鬼怪』のスターシステムキャラであるという関係からか、同作のドラマCDでは本作の彼の声優が主人公・ジャック役を担当している。

〇ヴァトー・ファルマン
CV:室園丈裕

当初はヒューズの部下として登場し、後に自ら志願してマスタングの部下となる。
トレインジャック事件での協力者として出番が追加された。

〇ケイン・フュリー
CV:白鳥哲
〇ハイマンス・ブレダ
CV:志村知幸

アニメでは特に目立った活躍はなし。ゲームにおいては「赤きエリクシルの悪魔」ではフュリーが、「神を継ぐ少女」ではブレダがハボックと共に事件解決の為に駆けつける。
原作とは異なり、他の司令部へ異動とはならない(これはファルマンも同様)。
『FA』では両者のキャストが別役で起用され、フュリー役の白鳥氏はグラトニー役に、ブレダ役の志村氏はジェルソ役にスライドされている。


概ね原作と同じだが、アーチャーの部下になってからは兄弟に冷淡な態度を取らざるを得なくなった。
また、原作通りの筋肉美を披露するシーンはあるものの、ギャグ描写は多少抑えられている。

優しすぎるが故に敵を殺せず出世の道を閉ざされた原作と違い、イシュヴァール殲滅戦においては他の武闘派国家錬金術師に遜色ない戦果を挙げている。
ちゃんと国家錬金術師として戦ったというのにその武勲を一切認めて貰えず出世なし、招集を蹴った一般兵のヒューズがクビどころか何故か彼より階級上の中佐に出世するという本作一の理不尽に晒されている。
それでも今作の癒し担当。物語後半では中佐に昇進する。

家族は両親とキャスリン以外登場しないが、長女~三女は設定上は原作と同じくいるのか、存在しないのかは不明。
仮にオリヴィエが登場していた場合、マスタングの自主降格からの窓際族を許しそうにもないので少なくともブリッグズにはいないだろう。


これは『FA』にも引き継がれた設定だが、原作では青~黒系統の瞳の色が黄色に変更されている。
序盤が引き延ばされた結果、出番も増加。
ラッシュバレーでの出産取り上げのエピソードは彼ら夫妻にスライドされた。
死亡するのは2クールの最後、つまり丁度折り返し地点である。
それ故に慣れ親しんだ視聴者にはなおさら強い衝撃を与えた。

○マリア・ロス
CV:斎賀みつき

CVがCVなので、やたらとイケボ。
原作以上にエドとの絡みが増えており、部下としてではなく純粋に大人としてエドを心配するなど、母性的な面が目立つ。
原作ほど不幸な目には遭わない。
男慣れしていないのか、ホーエンハイムに唐突に口説かれた時には恍惚とした表情をしていた。

バスク・グラン
CV:青森伸

出番は少ないものの、原作者から正式なキャラデザ表を渡されていたらしく、重要キャラでも当時未登場だった場合は原作と大幅に違うキャラデザで登場する事が多い今作には珍しく原作通りの姿で登場。
原作では名前のみの登場かつ、ホムンクルスが巣食う第五研究所の責任者だったためか性格が大きく異なっており、原作におけるレイブンやクレミン、エジソンのような軍の暗部代表として描かれている。
後に原作で登場した際にはその性格の違いに多くのファンが驚く事に。


原作以上に「白さ」を強調して、腹黒さが増している。『裏鋼』では男性軍人達を顔採用していた事を暴露した。アッー!

セリム・ブラッドレイ
CV:津村まこと

大総統子息。「普通」の男の子。
養子であり、父を心から尊敬していたが……

○ハクロ
CV:堀川仁

ある意味では本作における最大の被害者とも言えるかもしれない。
原作では器の小さい堅物オヤジながらも、洪水から身を挺して妻子を庇うなど家族に対する愛情は確かだった、良くも悪くも普通の人だったのに……
実写映画版第1作で彼はとある重大な役割を担う事になったのだが、それに関しては「本アニメにおけるとんでもない改変を意識したのではないか」という見方もある。

○東方司令部の将軍
CV:塚田正昭

原作におけるグラマン中将。だが、アニメ放映の時点では原作で名前が明かされていなかった為、名無しでの登場となった。
原作のようなタヌキじじいっぷりはあまり見受けられず、穏やかで善良な将軍だが、要所では切れ者としての鱗片も覗かせていた。


《サブキャラ》

イズミ・カーティス
CV:津田匠子

原作では虚弱体質は専らギャグ描写になっていたが、こちらではよりシリアスに描かれており、確実に命を蝕まれている。
本作の特徴でもある「錬金術と愛情のもたらす業」を象徴する人物の一人で、人体錬成の結果、救いがたい一つの存在を生み出してしまう……
自らの罪を受け入れている原作と違ってなかなか己の罪に向き合う事が出来ず、優柔不断とも言える言動が目立つ。
劇場版では故人となっているが、死の先にある場所で、やっと自分の生み出した存在を『母親』として迎える事が出来た。

○シェスカ
CV:若林直美

原作ではチョイ役だったが、こちらでは大幅に出番が増えた。
ヒューズの死後、彼の遺志を継いでホムンクルスの謎を追う。
地味にキャラソンまで貰っている。ホムンクルス組は一曲も歌わせて貰ってないのに……

○ラッセル・トリンガム
CV:岡野浩介
○フレッチャー・トリンガム
CV:荒川美奈子

本作の癒し担当その2。
元々は『小説 鋼の錬金術師 砂礫の大地』のオリジナルキャラクターだが、逆輸入されてドラマCDと同じCVでアニメ版にも登場した。
なんと終盤で大きな秘密を握っていた事が判明。


原作との差別化なのか、名字が追加されている。リオールの街の設定自体が改変されており、白い肌は褐色に変更。
原作のロゼ同様、エドの助言で生きる希望を見出した……と思いきや、軍やホムンクルスによってさらに運命を狂わされる羽目に。
後半の「命の価値」という部分に関わる……今作の改変部分には概ね好意的な原作者が唯一「通すべきではなかった」と眉を顰めた、最も批判の多いエピソードの中心人物。
詳細は個別記事を参照。

終盤ではウィンリィを差し置いてヒロインのような活躍を見せる。ロゼという名前には何かジンクスでもあるのだろうか
劇場版においては本人は背景モブとしてのみの登場ながら、ウィンリィやリザ、挙句には彼女本人すら差し置いてなんと彼女のそっくりさんがヒロインを務める。


エドのライバルキャラとして描かれているため、原作よりも年齢が引き下げられ、若々しい顔立ちになっている。
最初から国家錬金術師を狙った連続殺人鬼としては登場せず、キメラ化したニーナを目の当たりにし、殺害した時から悲劇を生み出す錬金術への復讐を決意。
同じ弟だからかアルとの絡みが多かった他、民族戦争によって全てを失った復讐者としての側面より、亡き兄との確執や錬金術師としての苦悩がクローズアップされている。

直接の元凶ではなく、また本人も正当だと思い込んでいるのでわかりづらいが、実はロゼ問題における第二の加害者でもある。

○スカーの兄
CV:水島裕

原作と違い、チート兄貴ではない。
恋人を蘇らせようと人体錬成を試み、精神を病んでしまう。
人体錬成の対価については明言されなかったが、劇中の描写から判断するとおそらく性器と思われる。

ショウ・タッカー
CV:永井誠

『FA』でも声優が続投したが、キャラクター性が違う為に同じセリフでもかなり演技が異なっている。
歪んではいるものの、一応最期まで娘への愛情はあった原作と違い、自分達を描いた絵を貰ってすぐに燃やして捨てるなど、娘にまで苛立ちを覚えている描写があった。
悪行が明るみになった後、軍に連行されて表向きには死刑を執行されたものの、ナンバー66(バリー)、ナンバー48(スライサー)のように秘密裏に生かされ、第五研究所でホムンクルスと共に賢者の石の研究を行う。
その時には自身もキメラ化していた。
前述の通り娘に対する愛情が薄いため、富と権力に目が眩んだのか、研究者としての欲望に負けたのかが分かりづらくなっており、中盤以降の彼の言動は狂気そのもの。
死亡フラグを何度も建てていたが、その度にうまく切り抜け生き延びていた。

○ニーナ・タッカー
CV:こおろぎさとみ

タッカーの一人娘。
数日の付き合いだった原作より遥かに長い時間をエルリック兄弟と過ごす事になり、国家錬金術師資格の受験にも付き添い、胎児の取り上げの手伝いもウィンリィではなく彼女が務めた(原作ウィンリィほど役立ったわけではないが)。
末路の悲惨さは原作とさほど変わらないが、死後も彼女の尊厳は蹂躙され続ける事になる。

彼女のキメラ体には監督やメイン脚本家も使用するか迷うほどの非常に残酷なデザインが用意されていたが、原作者が待ったをかけた為にマイルドなものになったという経緯がある。
「本来ウィンリィがロゼの役目をやらされるはずだった」という有名なデマはこのエピソードとの混同、もしくは深読みが原因だろう。

ティム・マルコー
CV:戸谷公次
イシュヴァール殲滅戦をエドに語り軍に保護されたが、今作では完全な賢者の石を作り出せなかったからなのか、ラストとグラトニーに人質ごとあっさり始末されてしまった。

○バリー・ザ・チョッパー
CV:伊藤健太郎

原作では魂を鎧に定着させられた後の姿と死体しか描かれていないが、こちらでは生前の彼も登場。
若い女だけ(原作では男女関係なく斬っていた)を狙う連続殺人鬼であり、国家錬金術師になった直後のエドとウィンリィをパニックホラー映画さながらに襲うも撃退され、御用となった。
何故か女装しており(CV:石津彩)エドとウィンリィの油断を誘った。
ちなみに、女装した姿は彼が初めて殺した自分の女房に扮したもの。
原作においても、バリーが初めて殺したのはラスト似の女房だという裏設定がある。

原作と同じく第五研究所の崩落から逃れて脱走する。
一時的に協力関係となる原作と違い、しつこくアルを狙ってイシュヴァール人のスラムを襲撃したが、他の傭兵達と共にあっさり死亡した。


原作ではまだシルエットしか登場していなかったのでほぼ別人。
原作で印象的だった確たる信念や覚悟といった独自の美学をほぼ持たない、正真正銘の変態サイコ野郎。白スーツも着ない。
CVを務めたうえだ氏は『FA』でハボック、ビドー役にスライドされた。

○トリシャ・エルリック
CV:鷹森淑乃

帰って来ない夫を死の直前まで想い続ける一方で、息子達の気持ちにあまり寄り添えていなかった。
最期まで優しい母として描かれてはいるものの、夫が蒸発した時点で無気力になっており、原作と違って治る病を意図的に放置して自ら手遅れの状況に追い込むという消極的な自殺を行なっている。
その罪は後に息子達が精算することになる……


エルリック兄弟の父親。
原作のヴァン・ホーエンハイムに相当するキャラクターだが、こちらでは全ての元凶とも言うべき立ち位置に置かれた。
詳細は個別項目を参照。


ライラの存在の追加はあるものの、ユースウェル炭鉱を乗っ取られてしまうところまではほぼ原作と同じ。
なお、炭鉱での出来事は『FA』ではカットされた関係で、『MOBILE』がリリースされるまでは本作が唯一このエピソードが映像化された媒体であった。
同じく落ちぶれた浮浪者の姿で再登場するが、何だかんだでしぶとく生き延びた原作と異なり、
なんと民衆を煽る為にあっけなくホムンクルスに殺害され、その死体は横暴な軍の犠牲者として偽装されてしまう。


《ホムンクルス》

ラスト
CV:佐藤ゆうこ

人間を見下す一方で、「人間になりたい」という願望を強く持つ。
スカーとの出会いによって自分の存在に疑問を抱くようになる。
色んな意味で原作とは真逆であり、ホムンクルス側の主人公とも言うべき人物。今作の幼女枠

グラトニー
CV:高戸靖広

真理の扉の設定が大きく異なっているので、原作での正体である「真理の扉の失敗作/擬似・真理の扉」という設定も当然なくなっている。
一人称が違う以外に人格や容姿には特筆すべきほどの差異はないが、今作ではラストの仇がマスタングではないため……

エンヴィー
CV:山口眞弓

性別がぼかされている原作と違い、完全なる男性。
原作を始めとした他メディアでのエンヴィーも男性扱いされがちなのは、容姿がほぼ同じである彼の存在も一因か。
前半では顔見せ程度の出番しかないが、後半ではキーパーソンと化す。何故か「あいつの息子」であるエドに異常なまでの憎しみを抱いており……


第五研究所に封印されていたが、エドとラスト一行の戦闘の影響で封印が解け、脱出した先でキメラ一行とキンブリーを仲間にする。
強欲っぷりはそのままだが、豪放磊落な原作と違い、己の存在の歪さに苦悩する描写が多く見受けられる。
USJコラボの特別ムービーでは間違って男に頬擦りしてしまった事に身震いし、マジギレした挙句には返り討ちにされるなど、原作よりもコミカルで狭量な部分が描かれている。
原作において彼の代名詞だったセリフ「ありえないなんてことはありえない」はラストの発言にスライドされている。
死に顔のグロさはトラウマ級。

スロウス
CV:鷹森淑乃

原作では名前通りのめんどくさがりなガチムチ巨漢だったが、今作ではダウナー系の美女。
普段は「ジュリエット・ダグラス」という偽名を用いて、原作のシュトルヒに代わり大総領秘書官をしている。
ちなみに原作におけるダグラスは憲兵司令部局長のおっさん。
その容姿は誰かに似ているが……


キャラデザはエンヴィーに似通っているが、本作のオリジナルキャラクター。
ヨック島に突如出没した謎の少年。
右腕と左足の皮膚の色が濃く、更に右腕には獣の噛み跡のような傷がついているが……
「命の重み」「錬金術の業」という本作の特徴を集約した、象徴的キャラクター。
CVを務めた水樹氏は『翔べない天使』でアルモニを演じ、更に『FA』ではランファン役を演じた。

○プライド
ホムンクルスのリーダー格。その正体は謎に包まれている。

今作におけるキング・ブラッドレイの正体。
人間ベースではなく純正ホムンクルスであり、再生能力を備えている。
でもその能力込みでも大佐単騎で撃破されてしまうので、戦闘力は原作と比べ物にならないほど劣る。というか原作版のブラッドレイがあまりにも強すぎた。

○あのお方
ホムンクルスを裏で操っている謎の存在。
原作の「お父様」の立ち位置にあたる。
その正体はイズミが袂を別った元師匠のダンテ(ライラ)。


《オリジナルキャラクター》


上昇志向の塊。アメストリス軍の暗黒面を濃縮したような存在。
本作のミスリード要員。ひたすら貧乏くじを引かされまくったかわいそうな人。
CVを務めた速水氏は後に『FA』のブルーレイ特典OVA『盲目の錬金術師』でジュドウ役を演じた。


ヨキの屋敷で働いていた錬金術師見習い。他者、ひいては強者に影響されやすいらしく、再登場時には性格や思想が丸っきり変わっていた。
彼の没落後はダンテの下で修行し、錬金術を学び直していたが……

○ダンテ
CV:杉山佳寿子

ダブリスに住んでいる老婦人の錬金術師。フラメルの十字架を用いた陣を使用する。
イズミの元師匠だが、今は人体錬成を行った彼女を破門している。
屋敷にグリードが帰ってきた時には既に何者かによって殺害されていたが……

クララ/怪盗サイレーン
CV:白石美帆

全体的にシリアスな今作には珍しい、井上敏樹節が効きまくった異色のオリジナルキャラクター。
詳細は個別項目を参照。


【それ以外の変更点】

○紅い石
「賢者の石」の未完成品と呼ばれる物質。この作品においてはこれが原作における「賢者の石」に相当し、賢者の石はこれの上位互換にあたる。
「紅い水」と呼ばれる人体に有害な液体を凝縮・結晶化させる事で完成する。
ホムンクルスにとっては非常に美味であるらしいと同時に人間への憎悪を強く刻みつけるようであり、石を大量摂取したホムンクルスが今まで穏やかだったのにもかかわらず突如凶暴化し、人格を書き換えられたかのような言動を取る事も。
劇中で登場する賢者の石の紛い物や、不完全品と呼ばれる物質は全てこれ。

賢者の石には及ばないが、錬金術の錬成増幅作用があり、イシュヴァール殲滅戦では国家錬金術師に配布されてイシュヴァール人の大量虐殺に用いられた。
また、紅い水の状態でも純度が高ければ強い錬成作用が発生する。

〇銀時計
国家錬金術師の証として与えられる銀の懐中時計。
所持者の錬金術の力を増幅させるという設定が追加されており、この時計を入手する事もエドが国家錬金術師を目指す目的の一つになっていた。
しかし、真相は銀時計内部に密かに仕込まれていた紅い石が錬成増幅作用をもたらしていたというものだった。
劇中ではアーチャーが大規模な軍事侵攻をする際に、国家錬金術師から預かった銀時計に更に多くの紅い石を内蔵させていた。

この錬金術の力を増幅させるという設定は何故か実写映画版第1作にも引き継がれたが、こちらにおいても紅い石(賢者の石)が仕込まれていたのかは不明。

賢者の石
生きた人間の命を材料にしている点は原作と共通だが、複数の製法が存在する他、
原作は高エネルギー体である人間の魂だけを抽出して作成していたのに対して、こちらでは肉体や精神も材料にしている。
本作における賢者の石は錬金術の設定が根本的に異なっている点も関係しているが、死者の完全なる蘇生すら可能としている。
ただ、これは『門』やホムンクルスの設定と矛盾するため、正確には完全に死者を模倣した新しい人間なのかもしれないし、
最終的にはそれが賢者の石による恩恵であったかも怪しくなるのであまりこの事については深く考えない方がいいかもしれない。

最初に登場した製法は紅い水に人間の命を封じ込める方法で、純度の高い紅い水と材料となる人間を専用の錬成陣の中に入れ、錬成する事で完成する。
ホムンクルスに脅迫されていたとはいえ、エドは刑務所の囚人を材料に賢者の石を作りそうになり、400年前にはホーエンハイムがこの製法で賢者の石の作製に成功している。
この作成法は術者にも相当な負担がかかるらしく、ホーエンハイムは錬成に耐え切れず一度命を落とし、ダンテの執事らしき男性の肉体に乗り移っている。

イシュヴァールに伝わる製法はこれとは異なるもので自分自身に錬成陣を描き、人柱となる人間の命を自らの体に封じ込めていき、十分に溜まった力を開放する事で賢者の石になる。
スカーの左腕こそが彼の兄が研究していた未完成の賢者の石そのものであり、終盤で苦渋の末にスカーがあるものを賢者の石にする事に成功する。

○ホムンクルス
原作と最も設定の異なる存在。
その正体は錬金術師が行った人体錬成の失敗によって出来上がった『肉塊』が、上述の「紅い石」を食べて成長し、人の姿に変化したもの。
原作序盤でのトリシャ錬成時のミスリードをそのまま解釈した設定とも言える。

体内の紅い石の力により、様々な能力と高い再生能力を持っているが、殆どのホムンクルスが不完全な人間として生まれた事に強い劣等感を抱いており、賢者の石の力で本当の人間になりたいと強く願っている。
そのため、原作のホムンクルスと異なり、ホムンクルスである事への矜持などは一切持っておらず、むしろ自らのオリジナルである死者への劣等感や、経験したはずのない記憶に苛まれる者がほとんど。

ただし、劣等感や死者の記憶、人間になりたいという衝動は最初から持っていたわけではなく、体内に取り込んだ紅い石が直接の原因であるかのような描写も見受けられ、
術者の技量が紅い石無しにホムンクルスの肉体を維持出来る程のものである場合はそれに該当しないという可能性も仄めかされている。

弱点は自分のオリジナル=錬金術師が蘇生させようとした人間の遺骸。
これが近くにあると気分が悪くなり、戦闘はおろかまともに身動きする事すら出来なくなる。
エド曰く「本物になれなかった歪な存在だから、本物を前にすると竦む」との事。
通常時は普通に触ったり保管出来たりしているのに戦闘中に持ち込まれると途端に萎縮するのは何故なのかは分からない。

他にも遺骸を使った対ホムンクルス用の「封印の錬成陣」が存在し、この錬成陣にかかったホムンクルスは体内の紅い石を全て吐き出してしまい、大幅に弱体化する。
遺骸がホムンクルスを封印するなら、遺骸が材料のホムンクルスは常に封印状態じゃなきゃおかしい気もするが……
当然遺骸が現存していない場合は封印の術はなく、倒す場合はそのまま戦っていくつあるかも分からない体内の石を使い切らせるしかない。

ちなみに人間ベースでない限り、切断されたパーツや死体は即座に再生したり霧散する原作と違って衣服は着脱式であり、基本的にどの個体も死体が残る。

○「門」
原作における「真理の扉」に相当する場所。
一人一人に個別のものがあった真理の扉とは違い、一つしか存在しない模様。
地獄の門を彷彿とさせるデザインで、扉の内部には無数の黒い赤子が潜んでいる。
人体錬成を行った者が辿り着き、対価を持っていかれる。
その正体はあまりに衝撃的なもの。
その正体は物語最終盤で明かされるが、「錬金術世界」とパラレルワールド……「現実世界」を繋ぐ機関。
現実世界の死者の魂はこの門に吸い寄せられ、錬金術世界で錬金術を使う為のエネルギーに還元される。
故人のイズミが中にいた事から、錬金術世界の死者の魂もここに吸い寄せられるようだが、現実世界には供給されない為何に還元されているかは不明。
この仕組みを悪用して黒幕が現実と錬金術世界を繋げてしまうのが劇場版の事件の発端である。
「真理」のように意志を持った住人は存在しない為、何故人体錬成を行うとこのエネルギー変換の場にアクセスするのか、何故錬金術世界の術師が対価を要求されるのか、何故賢者の石の製造に関わっているのか、このポンプのような機関を誰が、何の為に創り出したのかは不明なままであった。


【主題歌】

いずれも高く評価され、大ヒットとなった。
特に1期OP「メリッサ」は今現在も「ポルノグラフィティの代表曲」と評するファンも多い。著名な人物の中では米津玄師/ハチ、キヨ(ゲーム実況者)などがこの曲に影響されて音楽活動を始めたり、最も好きな楽曲であると公言している。
ニーナ死亡回では1期ED「消せない罪」が特殊仕様になっており、使われたイラストは全てニーナとの思い出に差し替えられている他、ラストカットのエドの表情が少し改変されている。
また、2期ED「扉の向こうへ」は最後に流れた回がヒューズ死亡回であり、この回だけ黒地にスタッフロールの特殊仕様EDだった。
重苦しいBGMと葬儀シーンの暗転の後に流れたこの曲が印象深いファンも多いとか。

オープニングテーマ

1期OP、第1話ED「メリッサ
歌:ポルノグラフィティ

2期OP「READY STEADY GO」
歌:L'Arc〜En〜Ciel

3期OP「UNDO」
歌:COOL JOKE

4期OP「リライト」
歌:ASIAN KUNG-FU GENERATION


エンディングテーマ

1期ED「消せない罪」
歌:北出菜奈

2期ED「扉の向こうへ」
歌:YeLLOW Generation

3期ED「Motherland」
歌:クリスタル・ケイ

4期ED「I will」
歌:Sowelu



追記・修正は世界の原則じゃなく、いつかまた逢う日まで交わした、僕と冥殿との…約束だ。



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