名捧げ

名捧げは、己にとって唯一の主に命懸けの忠誠を誓うことである。


概要

大神が眷属神にする際に使われた契約の派生で生まれた。*1
生殺与奪の権利を主に委ね、自分が絶対的な臣下であることを示す*2。形式上ではなく実際に魔力的な縛りが発生する為、主の命令には逆らえない*3。実際に面と向かって命令せずとも、名捧げの石を介して命令することもできる(石を握った状態で命じれば何気ない言葉でも命令になる*4)。一方で、主をだましたりして害することなども可能な模様。
主が名を返すことなく死ねば、共に死ぬが*5、主の魔力によって窮地で生かされることもある*6
ひとたび名を捧げた者は時流が変わったからと主を変えることはできず*7、主が落ちぶれる時は共に落ちることになる。*8
名を捧げた者が、主以外の他の者に仕えることは、主が許さない限りできないとされる。*9

各地の状況

エーレンフェスト

ガブリエーレとその側近による名捧げ

エーレンフェストに馴染めなかったガブリエーレは、自らの派閥を確固とするため側近の子等に名捧げを強要した。*10
ガブリエーレヴェローニカゲオルギーネと三代に渡り、忠誠の証として名捧げを求めた。

魔力圧縮と連座回避のための名捧げ

エーレンフェストでは、ジルヴェスターによって、旧ヴェローニカ派の子供達がローゼマイン式魔力圧縮方法を教授されるには、領主一族への名捧げが必須とされた。*11
ジルヴェスターの説明を受け、大多数の旧ヴェローニカ派の子供は躊躇したが、ローデリヒは逆に、名捧げをすれば領主一族の信用を得てローゼマインの側近になれると判断し、ローゼマインに名捧げすることを決意した。*12
更に、旧ヴェローニカ派の子供達が領主一族に叛意がないことと、派閥に関係なく連携ができていることを、貴族院の領地対抗戦で確認したジルヴェスターは、旧ヴェローニカ派の粛清を決断する際、貴族院の子供達は領主一族へ名捧げをすることで、連座から回避させることとした。*13
ジルヴェスターの連座回避策の説明を、フェルディナンドからローゼマインらが受けた直後、旧ヴェローニカ派であるダールドルフ子爵夫人がローゼマイン暗殺未遂事件を起こした。これにより、ダールドルフ子爵らが連座処分対象となったのを受け、連座によるエーレンフェストの魔力の減衰を避けるべく、ローゼマインがジルヴェスターに、貴族院の学生限定の名捧げによる連座回避を、大人(ダールドルフ一族全員)へも拡張することを提案した。*14
ジルヴェスターが、この提案を受け入れ、更に一般化した結果、エーレンフェストでは旧ヴェローニカ派の粛清時に、領主一族に名捧げをすれば、成人・未成年問わず、連座は避けられることになったが*15、 名捧げは犯罪者の身内が連座から逃れて命を長らえるために使うようなことではない、ローゼマインの提案が名捧げの意味を変えてしまうことになる――とローゼマインはボニファティウスに説教された。

アーレンスバッハ

エーレンフェストよりも頻繁に行われており、名も捧げられぬ臣下など信用できないとされているが*16、単にガブリエーレが臣下が離反できないよう強制した結果の可能性もあり、実際にアーレンスバッハでそうした習慣があるのかの描写はされていない。
少なくともゲオルギーネが言い、ディートリンデフェルディナンドに一方的に欲したような、相手の行動を縛るために名捧げを求めるのは普通ではないとされている。

名捧げの石

名捧げの石はその者の名が刻まれ、主に委ねられる生殺与奪を可能にする命そのものである。
最初にメダル登録をした名前で神々に存在を認識されるため、フェルディナンドは「クィンタ」の名で名捧げ石を作製した。もしローゼマインが名捧げ石を作るとしたら、ローゼマインではなく「マイン」の名を刻むことになる*17
主の魔力で縛られた状態になると、白い魔力に満ちた線が細い網目状に周囲を覆い、真っ白の繭のような物になる。*18
白い繭の状態では他者が触れることはできないが、主の魔力を取り払うことができれば名を奪える。*19
己の名を封じるに相応しい品質のものを用意するため、普通は成人して魔力の成長が止まるまで自分の名を捧げるのに相応しい品質がはっきりとしない。*20
シュタープを持たなければ名捧げの石は準備できない。*21
返す時は主*22もしくは名を捧げた当人*23の処置が必要。*24
一度作製した石を処分することは本人にもできない。*25
箱から出した名捧げ石に魔力を叩きこんだ場合、直接魔力攻撃をするようなものなので、名捧げ石が金粉になる前に死体が出来る。*26
主が石を触ると本人の名前が頭に浮かぶので、複数持っていても誰の石なのかが分かる。*27
名を捧げた側は、自分の石とは魔力的に引かれあう感じがするため識別可能だが、他人の石は誰の物か判別することは不可能(自分の石ではないところまでしか分からない)。*28

名捧げの儀式

大々的な儀式ではなく、ひっそりと行われる。
名捧げは神に誓うような儀式ではなく、自分が主と定めた者に誓うものであるため、仕える者が自分の言葉で主に忠誠を示す。
名捧げをすると言いながら、主となる者を騙し討ちする場合もあるため、主にとって信頼できる者が一人か二人立ち会う。
洗礼式を終えていて魔力を扱うことができれば名を受ける事はできるが、シュタープ無しで名を受けた前例は無い。*29
名捧げの石が主の魔力で縛られる際に、名を捧げる者は、主との魔力の差に応じた苦痛を感じる*30
魔力差が小さいと苦痛は小さいが*31、魔力差が大きいと脂汗をかくほどの苦痛となる*32
魔力が高い方が名を捧げると、低い側が縛るのが相当大変でかなり苦しむが、可能ではある。*33

名捧げの影響

名捧げをした者は主の魔力の影響を受ける副作用があることがローデリヒの加護の取得の際に明らかとなった。薄くだが、主の属性を取得することが判明する。*34
ローデリヒは属性のために名捧げをするような者が増えることによって、名捧げの名と意味が変わることを恐れ、この事を公開しないように忠言している。*35
名捧げで得られる属性の影響はそれほど大きくはない。
下級に近い貴族はその恩恵を大きく感じられるが、上級に近い貴族は自分の適性が多くて魔力が多いため、少しの上乗せではほとんど感じ取れない。
エルヴィーラに名捧げを変えたミュリエラが加護の再取得によって、属性自体も主が変わることによって変動することがわかった。*36
普段は魔力で縛られていることが気にならないが、主が絶対の命令を下そうとした時は魔力の影響が強まる。その際命令を了承すれば己を縛る魔力はいつも通り気にならないものになり、一方命令を拒絶すれば死に至る事となる(ただしどのような形で死亡するのか(例:その場での心臓麻痺等)は不明。*37
全力で威圧中とか、魔力が枯渇して死にかけているとか、魔力が暴走して死にかけているとかするレベルの変化があると、名捧げをしている主の魔力の変化を感じ取れる。*38
名捧げした者が死亡した場合、体内から取り出された魔石は主の魔力で包まれており、死亡者の遺族ではなく名捧げされた主の所有物となる。*39

名捧げした者の一覧

人物 時期 立会人 備考
ジルヴェスター イェレミアス 13年秋(?)~ 不明 *40*41
ヴェローニカ ダールドルフ子爵 不明 不明 *42
オズヴァルト 不明 不明 *43
トルデリーデ 不明 不明 *44
フェルディナンド ユストクス 前01年冬*45~15年春*46
15年春*47
リヒャルダ *48
エックハルト 01年or02年*49~15年春*50
15年春*51
ユストクス *52
ラザファム 前01年冬~02年冬に名捧げ*53
02年冬以前〜*54
不明 *55
フェルディナンドに名捧げしていたのは3名のみ*56
ローゼマイン ローデリヒ 12年冬~ リヒャルダ
ハルトムート
*57
グレーティア 13年冬~ ローゼマインの女性側近 *58
マティアス 13年冬~ ローゼマインの護衛騎士 *59
ラウレンツ 13年冬~ ローゼマインの護衛騎士 *60
ミュリエラ 13年冬〜14年春 ローゼマインの女性側近 エルヴィーラに主を変更。*61*62
ハルトムート 14年春~ オティーリエ *63
クラリッサ 14年夏~ 不明 *64
フェルディナンド 15年春(毒に倒れている間)
15年春*65~17年春予定*66
なし 魔力枯渇を防ぐためユストクスにローゼマインが説得されて預けられていた名を奪ったが、救出後すぐに名を返した*67
女神の御力の影響を受けないようにフェルディナンドがローゼマインに騙し打ちで名捧げ石を染めさせる*68
エグランティーヌ 15年春~ ハルトムート
アナスタージウス
*69
ヴィルフリート バルトルト 13年冬~ 不明 *70
シャルロッテ カサンドラ 13年冬~ 不明 *71
メルヒオール ベルトラム 17年冬以降実施予定 未定 アウブとの面談でメルヒオールに捧げたいと宣言*72
ディルク 17年冬以降実施見込 未定 アウブとの面談で孤児院を守る人物に捧げたいと宣言*73
エルヴィーラ ミュリエラ 14年春~ ローゼマイン 加護の再取得の儀式時に変更*74
ゲオルギーネ グラオザム 前10年頃*75 不明 マティアスの父
ロイエーア 不明 不明 マティアスの母
マティアスの長兄 13年夏~ 不明 マティアスの兄*76
ヤンリック 13年夏~ 不明 マティアスの兄
グローリエ 不明 不明 ダールドルフ子爵夫人
シドニウス 不明 不明 ラウレンツの父
ヴィルトル子爵夫人 不明 不明 ラウレンツの母
バルトルト
カサンドラの父親
不明 不明 ギーベ・ベッセルの弟*77
バルトルト
カサンドラの母親
不明 不明 グラオザムの妹*78
ギーベ・ベッセル 不明 不明 ミュリエラの血縁上の父親*79
ギーベ・ベッセルの妹 不明 不明 ミュリエラの洗礼式上の母親*80
ゼルティエ 不明 不明 グラオザムの姉か妹*81
グラーツ男爵(?) 不明 不明 状況からの推測
貴族街で騎士団を撹乱する
目的で暴れていた貴族達
不明 不明 ヴェローニカに強要され、寿命を考えて同世代のゲオルギーネに安易に忠誠心も無く名捧げをした貴族達*82
粛清時は息を潜めていたが、エーレンフェスト侵攻時に処分されていない駒としてゲオルギーネに利用される
騎士団に助けを請い「名捧げを解除したい!」と泣き叫びながら本意では無い攻撃を行って、主の死と共に死亡した
ガブリエーレ ダールドルフ子爵の母(?) 不明 不明 ダールドルフ子爵の発言内容からの推測*83
グラオザムの母(?) 不明 不明 ダールドルフ子爵およびマティアスの発言内容からの推測*84
シドニウスの母(?) 不明 不明 状況からの推測*85
ベッセル子爵の母(?) 不明 不明 状況からの推測*86
先代アウブ フェルディナンド ?~02年冬頃 不明 ヴェローニカへの名捧げを回避する為に、自分かジルヴェスターに名捧げすることを先代アウブに提案された*87
名捧げ石は存在するが、ローゼマインに預けた13年冬時点では名捧げしていない状態*88
先代アウブの死亡前、最期の言葉を交わした際に返された*89

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  • 主の死とともに臣下が死ぬと、名捧げの石は崩れて粉状になって消える@設定等まとめ (2022-10-02 23:53:58)
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