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本項ではアッパーバージョンの『CAPCOM VS. SNK MILLENNIUM PRO』についても記述する。
CAPCOM VS. SNK MILLENNIUM FIGHT 2000
【かぷこん ばーさす えすえぬけい みれにあむふぁいと つーさうざんど】
ジャンル
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格闘ゲーム
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対応機種
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アーケード(NAOMI) ドリームキャスト プレイステーション(PROのみ)
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販売・開発元
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カプコン
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稼働開始日
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無印:2000年8月18日 PRO:2001年6月6日
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発売日
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【DC】無印:2000年9月6日 【DC】PRO:2001年6月14日 【PS】PRO:2002年4月18日
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判定
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なし
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ポイント
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夢のクロスオーバー ぶっちゃけほぼ『ストII VS. KOF』 問題の多いレシオ関連
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CAPCOMクロスオーバー関連作品シリーズ
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SNKクロスオーバー関連作品シリーズ
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概要
格闘ゲームブームを起こしたカプコンと、そのライバル的存在であったSNKがクロスオーバー!まさに夢の対決が実現した。のだが……
本作はその中のカプコン側リリース一作目。当時最先端基板であるNAOMIにて発売、以後互換基板であるDC、そしてPSに移植された。
登場キャラクター
(初出作品別、括弧内はレシオ値)
(上記の内、モリガン・ナコルル・豪鬼・ダン・ジョー以外には性能違いのEXキャラクターが存在(リュウは殺意、庵は暴走が対応))
特徴
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グラフィックはカプコン側は『ストリートファイターZEROシリーズ』や『ヴァンパイア』のドット絵、SNK側はそれらとは異なるフォーマットで新規に作り下ろしたもの。
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カプコン側は原則使い回しだが、『ZERO』は『II』の前日談という設定なので、リュウは新たに「SNKキャラと同じ画風で書かれたストII時代のリュウ」ということで新規に書き起こされた。それに伴い、ケンと豪鬼も同じフォーマットで書き直されている。
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また、ベガもZEROのマッチョベガと違い「SNKキャラと同じ画風のストIIベガ」として新規で作られた。
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基板はNAOMI、DCへの移植版発売はアーケード稼働の翌月だった。
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操作系はSNK側に寄せ、弱強・パンチキックの4ボタン。中攻撃は基本的にはなし。
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カプコン側の中攻撃で重要なものは特殊入力技として再現されている。例としてリュウは左斜め下方向に入れての強キックでしゃがみ中キックが出る。
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ゲームルールは『THE KING OF FIGHTERSシリーズ』のような勝ち抜き戦。ただしチーム人数は変動し、1~4人で組むことが可能。
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キャラクター属性「グルーヴ」
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CAPCOMグルーヴとSNKグルーヴのどちらかを選択可能。CAPCOMキャラクターもSNKグルーヴを使えるし、その逆もまた。但し、チーム全体で一つのグルーヴしか設定できないため、キャラとの相性はよく吟味したほうがよい。
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「CAPCOMグルーヴ」
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『ストリートファイターZERO』・『ZERO2』、及び『ZERO3』の「Z-ISM」がベース。
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攻撃によりスーパーコンボゲージがLv1からLv3まで溜まり、その具合でキャラの攻撃力もアップする。
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スーパーコンボ使用時にはボタン入力によってゲージ使用量を変えられる。ボタン数の関係上、強ボタンでLv2、弱強同時押しでLv3となる。
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「SNKグルーヴ」
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初期の『KOF』シリーズ(『'97』・『'98』での「EXTRA」相当)がベース。ただしこちらも攻撃避けではなく回り込みのため『KOF'96』の方がやや近い。
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ゲージ溜め動作によりエクストラゲージが溜まり、最大まで溜めると攻撃力がアップするMAX状態になり、全消費で超必殺技が使える。
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体力が一定以下になると超必殺技が使いたい放題になり、更にゲージも満タンだとMAX超必殺技が使用可能になる。
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本作最大の要素「レシオ」
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各キャラクターに最初からレシオという、簡単にいうと強さの度合いを示す数値が1~4で固定されている。
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女性や線の細いキャラクターなどは1、ボスクラスのキャラクターは3、隠しキャラクターの一部はレシオ4、それ以外は2という具合の設定。
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一応、高レシオのキャラほど単発攻撃力や体力は高目に設定されてはいるのだが、しかし…(後述)。
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チーム作成は、この合計がちょうど4になるようにしか組み合わせることができないので、必然的に人数は1~4人で組むことになる。
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EXキャラクター
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隠しキャラクターとして、デフォルトで使えるキャラクターほぼ全員にEXキャラクターという性能違いの裏キャラクターが存在している。感覚としてはサムライスピリッツシリーズの修羅・羅刹に近い。
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主に必殺技の入れ換えが行われており、例えば通常版の京はラッシュ重視の『KOF'96』以降の性能を、EX京は波動昇竜系の『KOF'95』までの性能を再現している。
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一見通常版から必殺技が減っただけに見えるキャラクターもいるが、そうしたキャラクターは通常キャラクターとは異なる特殊技を持っていたり、同じ必殺技でも性能が異なるなどの差別化が行われている。
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ただし完全な別キャラクターながらもリュウは殺意リュウ、庵は暴走庵がEX扱いになっている。また、隠しキャラクターであるナコルルとモリガンと豪鬼にはEXが存在しない。
評価点
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とにかく(アーケードでは)初のドリームマッチ。会社内でのクロスオーバーが各社煮詰まってきていたところ、まさかの会社越境の対戦にファンは涙した。
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しかしその人選は決して褒められた物ではなかった(後述)。
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新規に書き下ろされたドット絵、背景などのクオリティは高い。SNK側のキャラクターもカプコン側と違和感なく溶け込み、それでいて元のデザインの良さは殺されていない。
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メトロシティやパオパオカフェなどのステージ背景に、両社のキャラクターが随所にカメオ出演するなど芸が細かい。
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『KOF』や『ストIII』シリーズのような、ステージの演出も評価が高い。
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鳥が通過してからキャラクターが向かい合う画面になるタイステージや、篝火の炎が燃えながら画面が広がる城門前のステージなど、かなり凝った作りになっている。
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次回作では、こういった演出は無くなってしまったため惜しむ声は多い。また、ステージもすべて完全オリジナルになっている。
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EXキャラクターの存在で広がるバリエーション。
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パワーウェイブがまったく使えないEXテリーなんてものもいるが、キャラクターの人数が実質倍近いので好評である。
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NAOMI基板とDCとの連携
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カラーエディットしたキャラクターをアーケードで使えたり、いろいろな連携が見られた。
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キャラクターイラストを、両者を代表するデザイナーであるカプコンの西村キヌ、SNKは当時まだ在籍していた森気楼が担当している
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選択したグルーヴによって画風のタッチが変化し、西村氏が描いたSNKキャラクターや森気楼氏が描いたCAPCOMキャラクターを見ることができる。
問題点
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レシオによるバランス崩壊
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最初からキャラクターに序列を与えてしまうという改革は失敗だった。高レシオのキャラにはそこまでの優位が与えられていないことが多く、結局はレシオ1×4が強い。
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レシオは性能よりも設定上の立ち位置で決まっている面が大きく、レシオ1のキャラクターだからといって単純に弱いというわけではない。また、ステータスなどにもそこまで極端な違いがない。
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そのため結局、合計すれば体力も性能も他レシオと大差ないレシオ1×4人チームが強い、という単純な結果に。
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レシオ1に最強キャラ疑惑のあるキング(ノーマル)がいるのも痛い。強脚払い、及びスライディングの隙が少なく、回り込みも高性能な上に「ダブルストライク」をノーゲージで使える必殺技として所持しているため、本作で重要な『差し合い・飛び道具の打ち合い』を制しやすい。さらに超必殺技の「サイレントフラッシュ」がLV1から高性能で、出掛りに長めの無敵時間がある上、ガードされてもほぼ問題ないほど隙が小さい。空中コンボに取り入れることで投げや強脚払いからの追撃にも使える万能技となっている。
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また、レシオ1抜きにしても隠しのナコルルがあまりにも突出しており、ナコルル+レシオ1×2チームも4人チームに負けず劣らず強いほどである。レシオ2ではナコルルの次点だが、守りの堅いガイルも猛威を振るった。
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隠し要素であるペアマッチモード(弱P+強Pを押したままゲームスタート)では全員のレシオが2に統一(攻撃力・防御力もそれに合わせて調整)され2人固定になるが、コマンドが必要かつ2人だけしか使えないということもあり、一般的なルールにはならなかった。
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キャラ選出の大幅な偏り
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カプコン側はさくらと隠しのモリガンを除いた全員が『ストII』シリーズに登場しているキャラクターである。
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さらに内訳を見ると、無印『ストII』時点で登場していた12人全員が参戦している。ここまでやるといっそ清々しいほど。
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『ファイナルファイト』や『MARVEL VS. CAPCOM』に登場していたCAPCOM側キャラクターも不在。ここまで極端に偏る人選は後にも先にも本作のみ。
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SNK側も大半が『KOF』シリーズ登場済キャラで、当時KOF本編に出場経験が無かったのはライデンと隠しのナコルルのみ
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一応、大元の作品を辿れば『KOF』オリジナルは5+1人で、残りは『餓狼伝説』から5人(+ライデン)、『龍虎の拳』から3人と、『KOF』参加内でもある程度は散らしてキャラは選出されている。
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『KOF』不参加を優先するとマイナー作品やキャラばっかりになってオールスター感がなくなってしまうし、そもそも『KOF』自体が自社内のお祭作品である為、これは仕方ないとも言える。
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このためこれでは実質的に『ストリートファイターII vs. THE KING OF FIGHTERS』ではないかと揶揄されることも多い。
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第一弾ということで比較的世界観の近い2作を中心にし、時代劇やファンタジー要素は薄めの世界観にまとめたのであろうと思われる。
その割にはなぜか背景にスーツ姿の柳生十兵衛がいたりするが、これについては本編の十兵衛ではなく『真サムライスピリッツ 覇王丸地獄変』の開発時にスタッフの落書きから生まれた「柳生課長」という公式スピンオフキャラ。
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空中ガード等の対空を制御するシステムがなく、無敵技及び対空技がかなり強いバランスであるため、「差し合い重視の守りが強いゲーム」であったこと。
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一概に悪い点とは言えないが、全体的にジリジリと相手の体力を減らしていく展開になりがちで、攻めて勝つ爽快感はあまりないゲームであった(高レベルの対戦になるほど特に)。
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ボタン減によるカプコン側キャラクターの違和感
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操作感自体はストリートファイターに近いだけに、かえってボタンの少なさが違和感増大。
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ただし順押しコマンドの瞬獄殺やダークネスイリュージョンは若干出しやすくなった。
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カプコン側の使い回しキャラクターのドット絵が汚い
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新規に書き下ろされていないストリートファイター出身のキャラクターは『ZERO3』のグラフィックの使い回し。そのまま拡大だけしたようで、ハードのドット比違いのしわ寄せが来た。
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特に、『ヴァンパイア』からの使い回しであるモリガンは、ドットの粗さに加えてタッチが違うので非常に浮いてしまっている。
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さらに描画バグもよく見られ、グラフィックが壊れてる事が度々あった。
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SNK側や今回書き起こしのリュウ辺りは非常に綺麗なドットなのでその差がますます顕著。
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また、開発初期はそのリュウ等も『ZERO3』のドットが使用されていた。カプコン側で胴着キャラクターとベガのグラフィックが浮いているのはその名残。これならSNK側も『ZERO3』の画風・アスペクトで描けばよかったのではないのだろうか…
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(無印では)キャラクターごとのエンディングが一切無い。また、どのエンディングも後味が悪い。
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シークレットファクター(隠し要素)をオープンにするためにバーサス(通貨)が必要になるのだがこれの入手量とショップの値段のバランス設定がおかしい。
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1回エンディングまで到達すると大体300~400バーサス位もらえるのだが安い物でも200はする上、EXキャラクターはレシオによって2000~7000バーサスと高く、ナコルルやモリガンは乱入戦(これもそれぞれ購入する必要がある)に勝利したうえで自分のサイドのEXキャラクターをすべてオープンにしないとショップに並ばず、値段も8000バーサスと高い。
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豪鬼に至っては乱入戦に勝利した上でモリガンとナコルルを両方オープンにして懐かしのテーマも購入する必要があり、やっとショップに並んでも購入には9500バーサス必要になる。
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これでは数百回クリアしないとコンプリート出来ない。
総評
色々と問題は山積しているが、独自の背景や演出、BGMなど注目すべき点も多く、また本作の新要素は全て続編への叩き台にもなっており、まさに礎になった作品といえる。
PRO
本作と続編『2』とのちょうど中間あたりで出たアッパーバージョン。
変更点(PRO)
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新たに火引弾(ダン)と東丈(ジョー)が追加。
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この2人は無印版ではプレイヤーとしては登場してないが、共通EDにおいて大会優勝タッグということになっていた。
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キャラクターごとのエンディングが追加。
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上述の通りダンとジョーがプレイヤーキャラクターになったことで二人が優勝チームという設定がなくなったため、優勝はプレイヤーチームとなったため、簡素なものではあるもののエンディングが追加されている。
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前作の隠し要素は最初から開放(PS版除く)。
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DC版は無印版のシークレットファクター全開放の項目も用意されている。
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乱入CPU(モリガン、ナコルル)のレシオが4に強化。
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プレイヤーキャラとしては2のまま。このため、乱入キャラは前作のように簡単には倒せなくなった。
評価点(PRO)
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高レシオキャラの強化
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全体的に見るとレシオ1・レシオ2は基本ステータス及び性能面がかなり弱体化し、逆にレシオ3・レシオ4は基本ステータス及び性能面が上昇していることが多い。これにより「レシオ1×4」「ナコルル×レシオ1二人」のチームは、かなり勝ちにくくなっている。
問題点(PRO)
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追加キャラ自身の問題
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ダン・ジョーともにEXキャラクターは存在せず、完成度はどちらも手抜き感が否めない。
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ダンは新規グラフィックではあるものの『ZERO』ベースでアスペクト比もそれに準拠しており、ほかの胴着キャラクターと比べて動きがぎこちなく違和感がある。
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ジョーは次回作に向けて制作途中のものを引っ張ってきたせいか技がやや少ない。
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なお、ダンの出典作品は『ストZERO』、ジョーは『餓狼伝説』(+『KOF』出場済)と、本作の出場作品枠の偏りをさらに上昇させる選出となってしまっている。
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PS版固有の問題
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AC/DC版では全開放状態だったのに、PS版で無印判のように順次アンロックしていく方式に逆戻りしている。
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選択グルーヴに関わらずCAPCOMキャラクターがSNK絵、SNKキャラクターがCAPCOM絵に固定される。
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その他ハード性能のハード性能の問題で色々と削減されている。
総評(PRO)
AC/DC版はバランス調整とシークレットファクター全開放を行った上位バージョンと言える出来だが、PS版はいろいろと劣化した上にシークレットファクターが解禁制に逆戻りしたという劣化移植ものといえる。
その後の展開
本作の一年後にシリーズとして『CAPCOM VS. SNK 2 MILLIONAIRE FIGHTING 2001』(以下、『2』)が発売。続編の『2』が2D格闘ゲームの決定版とでもいうべき大作になったことに比べ、正直本作は続編へのつなぎ、前段階というイメージが強い。
実際『2』は異例ともいえるほどさまざまな機種に移植されているが、本作は発売当時のハードへの移植のみであり、配信なども一向にされない。本作の独自要素を全て見直した『2』が非常に評価が高いということは、裏を返せば本作が失敗だった、ということを裏付けているとも考えられる。しかし、本作があったから『2』がある、ということを忘れてはいけない。