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ファイアーエムブレム 外伝 - (2019/07/31 (水) 14:54:11) の編集履歴(バックアップ)


ファイアーエムブレム 外伝

【ふぁいあーえむぶれむ がいでん】

ジャンル シミュレーションRPG
対応機種 ファミリーコンピュータ
発売元 任天堂
開発元 インテリジェントシステムズ
発売日 1992年3月14日
定価 6,800円(税別)
プレイ人数 1人
セーブデータ 2個(バッテリーバックアップ)
レーティング CERO:A(全年齢対象)
※バーチャルコンソール版より付加
配信 バーチャルコンソール
【Wii】2009年11月4日/500Wiiポイント(税5%込)
【3DS】2013年4月3日/500円(税5%込)
【WiiU】2014年8月20日/514円(税8%込)
判定 なし
ポイント 自由育成型FEの元祖
FE初の複数主人公
ファイアーエムブレムシリーズ関連作品リンク


概要

現在でもシリーズ作品が発売され続けている人気SRPG『ファイアーエムブレム』シリーズの第2作目。
ただし、FEシリーズの中ではシステム面の差異が大きいのでやや異端扱いされている。

前作『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』(以下、『暗黒竜』)と世界観がつながっている。
時系列としては、「前作終了後~『ファイアーエムブレム 紋章の謎』第二部開始前」の物語である。
ストーリーに直接的なつながりはないが、前作のキャラクターが一部登場する。
後述するが、とあるキャラがどの様な経緯で『紋章の謎』の第二部に出てきたのかとエンディングの謎は本作をやると分かる。


ストーリー

+ 微妙に長いので格納

―バレンシア大陸は、すべてふたつの顔を持っている。
それは、大陸が二人の神によって造られたときに定められた運命だという。

優しさと美しさをもって自然とともにあることを望む大地母神ミラ、
そして、力と欲望のみが人類の生存の道と信ずる邪神ドーマ。
このふたつの力は長い間、激しく争っていた。

そして、長い戦いのあとに新しいかたちが生まれた。
大陸は南と北にわかれ、北はドーマの支配下に、南はミラの支配下におかれるようになった。
北は、騎士の国リゲル王国、南は、文化の国ソフィア王国。
リゲルは大陸を守り、ソフィアは豊かな実りを与える。
長い間ふたつの国はそれぞれの道を歩んでいた。

しかし、ときは変化をもたらした。
平和なときになれたソフィアの人々は、やがてミラの教えを忘れ、自然と共に生きることを忘れた。
豊かな実りは分け与えられることなく捨て去られていき、
凶作の続くリゲルでは飢えと苦しみのなかで、多くの人々が倒れていった。
バレンシアの調和がくずれ始めた。

助けを求めるリゲルの人々に与えられたのは、あざけりの笑いのみ。
ソフィア王国の心ある者も、国王リマ4世の無関心な態度の前には、なすすべがなかった。

ソフィアの仕打ちに怒り狂ったリゲル王ルドルフは、ドーマ神の命に従いミラを封印した。
ふたつの王国は戦乱へと突入し、兵力のないソフィア王国は敗北の一途をたどるのみだった。
ソフィアの人々は戦闘で荒れ果てたわが国を見てはじめて、自分達の過ちに気づいたが、
ときはすでに遅かった。

ソフィア国のドゼー宰相はリゲルにねがえり、王家のものを暗殺し侵略の手引きを始めていた。
今まさにソフィア城は、リゲルの手に落ちようとしていた……。
※Wiiバーチャルコンソール、ソフト紹介ページより抜粋


システム

戦闘マップにおける基本的なゲームシステムは前作と同様。ここでは、前作からの変更点をメインに記述する。

  • 本作では全体マップを任意で移動し、敵シンボルと遭遇することで戦闘マップに入る。なお、全体マップでは、戦闘準備やセーブなどを行なえる。
    • 全5章構成。全体マップの移動可能範囲は章ごとに異なる。
      • ただし、5章ではハマり防止なのか、地下に行き壁が崩れて戻れなくなって以降からセーブができなくなる。
    • 敵シンボルは固定配置されているものの他に、特定の拠点からランダムに出現しマップ上を動き回る増援部隊もある。また、踏み込むたびに戦闘できる場所もあるため、前作と比べると経験値稼ぎや弱いユニットの集中育成が簡単。
    • マップ上には戦闘の発生しない町・修道院といった施設もあり、普通のRPGのように一般人と会話したり、仲間やアイテムが見つかるイベントが発生したりする。
  • 主人公は男女1名ずつで、それぞれ別々のルートを進軍する。
    • アルム(男主人公)軍はほぼ一本道で主に敵国の大軍を相手に戦い、セリカ(女主人公)軍は秘境の道なき道を進んで魔物と戦うというシチュエーションが多い。
    • 2つの軍でメンバーを入れ換えることはできないが、死亡したキャラクターを別サイドで復活させれば、そちらに加えることが出来る。また、旅の商人を介してアイテム(後述)を受け渡すことはできる。
  • 各戦闘マップのクリア条件が前作では原則「主人公が拠点を制圧する」で以後のシリーズもこれが基本だが、今作のみラスト(ラスボスの撃破)を除き「敵軍の全ユニットの撃破」になっている。
    • この関係か「戦闘マップ中の敵軍に増援部隊出現」と「戦闘マップで敵ユニットを説得してその場で仲間にする」がシリーズで唯一存在しない。
      • 敵ユニットの数が増えるのはビグルの増殖、ならびに祈祷師などの召喚魔法で魔物が出現するものがあるが、後者は召喚者を倒すと全部消えてしまうといった演出もあり、明らかに増援とは異なる。
      • 敵軍から寝返るキャラクターは数名いるがいずれも戦闘マップ中に加入することはなく、撃破しないで先に進む*1ことでその先の非戦闘マップ(村や砦内部)で会話して加入させる。
  • 前作同様、ユニットは経験値を稼ぐとレベルと能力が上がるのだが、兵種によっては下級職→上級職→最上級職と2回以上クラスチェンジを行える系統も存在する。
    • レベルアップの機会が増えたぶん成長率は前作よりも抑えられ、その一方でパラメータの最大値は20→40へと増加している。
    • クラスチェンジ時の能力アップは、クラスの基準値より低い能力値が基準値まで底上げされる方式。
  • 武器や盾といったアイテムに関する仕様が変更された。
    • 「基本装備」とでもいうべき「攻撃力・重さ・必殺率が0で命中90(弓のみ70)」の武器(種類は兵種ごとに違うが名前だけ異なるのみ)を全員最初から持っていることにされ、「武器が無くて攻撃できない」という状態が存在しなくなった。
      これ以外にアイテムとしての武器もあり、これを持たせればそのユニットの攻撃力が上昇するなどの追加効果が得られる*2
      耐久度の概念も無くなり、標準装備もアイテムの武器もいくら使おうが一切消耗しない(というより今作には消耗品が一切ない)。
      • その代わりにアイテムの持ち替えは編成画面でのみ可能で戦闘中に切り替えることはできない。
    • これらの理由によって、本作には店や金が存在しない。
    • これはどちらかというと、武器が消耗品だった前作の方が当時のSRPGとしては異色だった、ともいえる。
  • 他のFEシリーズの弓兵は「遠距離攻撃が得意な代わりに、隣接している敵には攻撃できない」といったユニット特性を持つが、本作では隣接していても攻撃できるうえ射程が大幅に強化されている。シリーズ経験者は戸惑うかもしれない。
    但し、上記の通り 基本装備の弓は威力が0なので特効対象の飛行系に対して「特効で武器が素の3倍の威力」になっても0×3=0で結局いつも通り 、力の分しかダメージを与えられない*3
    • 通常でも1~3マス、弓系アイテム装備時もしくは最上級職のボウナイトだと1~5マス。5マスもあれば敵の魔道士系の射程外から攻撃できる。
    • ただし大半の弓の命中力は低く、基本装備の弓でさえ敵専用の斧にすら劣る。 もっとも常識的に考えると飛び道具は近接武器より当てにくいはずだが。
  • 魔法は魔道書使用ではなく、キャラクターごとに使える魔法の種類と習得レベルが決まっている。
    • また回数制限が無い代わり、使用時は使用者のHPを削るようになった。残りHPが足りないと魔法が使えなくなるので「敵の攻撃をかわしたのに反撃で力を使い果たし死ぬ」というようなことはない。しかし、攻撃/反撃のたびに確定でHPが減る仕様なので前作以上にHPの管理が重要となる。
      • 回復魔法もこの仕様。僧侶系ユニットも「マップ上の回復拠点(砦や回復の床など)に戻る」「自動回復系の装備を持つ」「自らも前線に立ち、相手のHPを吸い取る魔法『リザイア』で戦う」などしてHPを補う必要も多い。
  • 後のシリーズで「支援効果」と呼ばれるシステムの原型のようなものが見られる。
    • たった一か所のみだが初めて両軍合同で戦闘を行うラスボス戦闘で、特定のユニットを隣り合わせて配置したとき、攻撃が必ず必殺の一撃になる、というもの。
  • セーブファイル選択画面で特殊な入力を行うと、入手経験値が2倍+両軍のアイテム受け渡しが自由になるイージーモードで遊べる。

評価点

  • 敵や武器が有限でないのでユニット育成がやりやすく、キャラクターを育てる楽しみを気の済むまで味わえる。
    • 本作で追加されたクラス「村人」は、レベルを上げると騎馬系・歩兵系・弓系・剣士系・魔法系のいずれかから職を選べる。
      各職とも更に1~2段階分の上級職が用意されており、育て甲斐がある。
      • 魔戦士の無限ループは有名だが、実際には騎馬兵の機動力と魔道士の魔法防御を併せ持つ最強クラスの一角でもある。敵側に魔法系のユニットが多いため実用性も高い。
    • 魔法もHP消費性になった事で使いやすくなっており、召喚魔法も追加された。
      • 燃費が悪いもののワープは相変わらず強力。召喚魔法もこちらが経験したやっつけ負けを敵側に味わわせることが可能。
  • ユニットの種類が増え、戦術の幅が広がった。
    • 剣と魔法の両方を使用できる「神官」や、デフォルトで1~5という鬼射程を誇り機動力もある「ボウナイト」など、それまでなかったタイプの兵種が増えた。
    • 敵専用ユニットにも、後述の「魔女」や、魔物を無限に召喚する「祈祷師」、自ら分裂してどんどん増える「ビグル」など恐ろしいものが追加。
      • 魔法攻撃を行う筆頭である「魔女」は、マップによっては無限に登場する上、一定確率で同MAP内の任意の位置にワープし、かつワープ後に続けて移動と攻撃を行えるという壊れた能力を持つ。運が悪いと集中砲火を受けて瞬殺される。
  • マップクリアで部隊全員に経験値がもらえる。
    • レベルアップこそしない(次レベル寸前の経験値99で止まる)ものの、シスターのような戦闘能力に問題があるキャラのレベルアップが容易になった。
  • 戦略性を要求されるマップ構成。
    • 稼ぎによるユニットのインフレやイベントの少なさで目立たないものの、ユニットの配置やマップ構成は意外とよく練りこまれておりギミックも豊富。
      • 味方が分散された状況下での(この時点ではかなり強敵になる)パラディン3人による草原地帯での遊撃、砦内への入口をバロンで守り多数のボウナイトで援護する要塞、ランダムで全体攻撃魔法を放ってくるボス、突然壁が消えて敵の進撃が激しくなるなど、今作のみのギミックも意外と多い。
    • 増援部隊の存在。出現も移動もランダムだが、どこで迎撃するかによって難易度も変わる。以下のような不利な状況はなるべく避けたいもの。
      • 固定敵と増援部隊が一緒にいる場所に攻め込んだ場合、一度に2部隊を相手に戦うことになる。
      • 全体マップ上で敵のターン時に攻め込まれた場合、攻守の配置が逆転した状態となり、更に敵ターンからの開始となる。戦闘マップによっては味方がバラバラに配置されたまま猛攻を受けてしまうため苦戦を強いられる事も。
    • アルム編、セリカ編はそれぞれ目的が違い、敵の編成やマップにもそれが現れている。
      • アルム編は前作同様「悪(?)の帝国との戦争」を描いており、登場する敵も敵国の将軍が多い。セリカ編は辺境の大地を進み、その地に巣食う賊や戦争の裏で陰謀を企む妖術師たちとの戦いを描いている。
  • 2つの軍隊が別々に同時進行するという設定を生かしたストーリー展開。
    • 両軍は基本的に交わることはないが、進軍ルート上の仕掛けを協力して解いたりする。また、最終マップでは「ラスボスの軍勢に囲まれて満身創痍のセリカ軍にアルム軍が合流。ラスボス撃破に向け共闘する」というシチュエーション。最強クラスの敵がひしめきあい、戦闘時はラストバトル戦専用BGMが流れるなどテンションの盛り上がりは最高潮に。
      • なお、複数の主人公がラストバトルまで合流しないのは本作のみ。聖戦の系譜では前編と後編で主人公が交代し、烈火の剣、新・紋章の謎、覚醒では常に共闘。聖魔の光石、暁の女神では終盤で合流を果たす。
  • グラフィックの改善。
    • 自軍側のキャラクターは顔パーツの差分が用意され、色違いキャラがいなくなった。
    • 戦闘アニメーションに関しては特に改善され、既存のクラスも書き直されて躍動感が増した。走り方等でやや浮いた感のあった前作から一転、FCにしては驚くほどの動きを見せる。
      • 自軍と敵でそれぞれ専用クラスが多く、グラフィックが多数用意されている他、特殊攻撃や新規魔法まで多彩。魔物系まで小気味良く動く。
      • 特筆すべきは「アルムがラスボスに止めを刺す専用のアニメーション」で、これは今でもファンの間で語り草となっているほど。
  • BGMも前作に比べて大幅に増加。
    • 緊張感あふれるものからこれはと思わせるものまで、なかなか良いものが揃っている。特に「ミラの加護とともに」という題が付き『スマブラ』にも収録されたセリカ編の味方フェイズ曲は本作を代表する一曲として知られる。
  • 『とつげき』や『みんなあつまれ』などオート操作が実装されている。AIはそんなに頭がいいわけではないが、前作ならともかく育成重視の本作においては経験値稼ぎで負ける余地のないザコを掃討するときがあるので地味ながらありがたい。
  • 『たいきゃく』コマンドというマップから離脱して最初から仕切り直せるコマンドも実装されている。
    • 自由に育成出来ることも相まって一見使い道がなさそうに見えるのだが、倒した敵が復活しない・本作は育成しないと非常に厳しいマップが多い・勝手に動く第三勢力NPCが登場するなどの対策が出来る為、あまり育成をしないプレイでは重要コマンドとなっている。
+ 戦闘シーンの一場面

賛否両論点

  • 難易度のバランス
    • しばしば難易度の低い評価がなされる本作だが、育成せず漫然とプレイしていると逆に極端な高難易度となる。序盤でも一気に突撃してくるナイトや攻撃と防御を兼ね備えるアーマーなど強敵が出現し、敵部隊の増援などで大変な目に遭う事も多い。終盤になればドラゴンゾンビ三連戦などの鬼門も待ち構える。
      • もっとも加賀作品の常として、育成なしでもきちんと突破できるようになっているのは流石である。
    • しかし、十分な育成さえ行えば一転して難易度が低くなってしまう。攻略上はそこまで執拗に成長させる必要は無いのだが、1回のレベルアップでパラメータが2ポイント上昇するアイテム「天使の指輪」や、大量の経験値を持つ敵「マミー」などの存在が育成欲を刺激させる。
      • 前述した魔戦士クラスによる村人ループはその代表格。パラメータをカンストさせようものなら敵部隊は文字通り一瞬で壊滅するほどになり、ある種のカタルシスを生む事に…。逆に極限の育成を目指す場合、魔戦士以外のクラスを選ぶ意味がなくなってしまう。
      • 魔法使い系もレベルが上がってくると強力な補助魔法が増える。その筆頭となるのが「ワープ」で、育成した戦士や弓兵を最優先で倒したい厄介な敵の傍に送れば暗殺できるし、回復床を陣取って反撃だけで敵を薙ぎ倒す等やりたい放題*4。他にも「ディル」*5「リブロー」*6「リザーブ」*7と戦況を覆す性能のものが揃う。
    • ただし、評価点でも述べたようにこれらは育成による強化の裏返しでもあり、成果を分かりやすく実感できる点から言えば爽快さにも繋がっており、一概に難点とは言い切れない。
      • 『聖魔の光石』や『覚醒』、『白夜王国』など後のシリーズでも同じシステムを搭載していることから、育成を楽しむプレイヤーの支持もまた多い事を示していると言える。
  • 戦闘能力の低い僧侶系ユニットの育成方法が前作と大きく変わった。
    • 全ての僧侶系ユニットが使用制限のない攻撃魔法を常備するようになり、レベルアップに励むなら前線で戦う必要がある*8
    • 前作の僧侶は敵に攻撃された際にその敵を倒した時と同等の経験値が手に入るというとんでもない仕様なので、それと比べれば「レベルは上げやすくなったが、レベルを上げなければ役に立たない」、と一長一短である。
      • 魔法をレベルで習得するようになった関係上、レベル度外視で運用できた前作の僧侶と同じ考え方で接してはいけない。ただ、本作は僧侶系ユニットも複数の攻撃魔法を覚えたり、育成ポイントが多数存在するため、レベルの成長自体は比較的容易である。
  • ストーリー面
    • 敵の違いなどからアルム編の方が目立つことが多く、逆にセリカ編の敵はモンスターなどが多く地味に感じる事も。
    • 中盤までのボス敵であるドゼーに意味深な捨て台詞*9があるが、これが終盤に明かされるストーリーと整合性の取れないものになっている。
      • もっとも、第1章のソフィア城の人の説明によると、ドゼーは自分の罪を他人に擦り付けた前歴があるので、単純に死ぬ間際の最後っ屁としてでまかせを言っただけの可能性も大きい*10
  • 乱数の仕様によりレベルアップ時の能力の上がり方は10種類前後のパターンに限られる。
    • 攻略本などの記載の上昇率は%表示になっているが、例えば仮に力の成長率20%と速さの成長率20%だったとして、両方とも上がる確率は4%、とはならず乱数表に20%と20%を満たす並びがどれだけあるか次第になっている。つまりキャラクターによっては特定の同時上昇パターンが絶対に起こり得ない。
    • これはリセットしてでも能力を良くしたいプレイヤーにとって不評で、パターン調査が必要になってしまう。
    • ただ、成長を天運任せて気にしないなら、特定の数種類の上がり方がなんとなく多いと感じるだけの話ではある。また、クラスチェンジ時に特定の能力が一定値まで必ず底上げされるため、普通にプレイする上での支障はない*11
  • 低確率で敵がアイテムをドロップするのだが、とにかく入手困難(高いものですら0.258%、低いものになると0.014%とネトゲ並に低い)であり、中でも「太陽」は限られた場所でしか狙えない。セーブがきかない最終局面でたまたま入手して微妙な気分になることも。
    • あまりにもレアだったため、レア槍3種類については入手したという証拠写真を投稿するとテレフォンカードを抽選でプレゼントするという攻略本掲載の企画まであったほど。
    • 余談だが、ドロップアイテムは最大10枠に制限されている*12。このため仕様を知っていると目当ての敵以外*13がたまたまドロップしてガッカリする事も。もっとも10枠全て埋める事すら根気と幸運が必要だが…。
  • クラスチェンジの仕様
    • クラスチェンジはミラのしもべに話しかけなければ行えない。これ自体は貴重品かつ各アイテム毎に使用クラスの制限があった前作よりも緩和されているのであるがミラのしもべ自体の数が少ない為に何度もしもべの所に訪れる必要がある。
      • 設定上ダンジョンの奥や安全な場所にあるがスタート地点近くと言った移動や戦闘面で手間のかかる場所に配置されている上に三章以降は敵も出現する様になる為に更に手間がかかってしまう。

問題点

  • テンポの悪化
    • 前作と比べ敵味方ともに命中が下がっている。地形効果の補正が強く(ただの床で-10%、雑多に存在する樹林で-40%)、同格同士の戦闘では命中率を7~8割しか確保できない。
      • 地形効果とは別に「馬止め」という騎馬ユニット(ペガサスは無関係)の侵入を防ぐ地形もあるが、登場箇所がセリカ軍ルートの1か所しかない。
        セリカ軍には正規プレイでは「アーチャーのレオを最上級職のボウナイトまで育てる」か「村人のアトラスをナイト系にさせる」でないと騎兵が居らず、ここの敵軍にも騎兵がいないのでほぼ完全に設定が死んでいる地形になっている。
    • 本作で新規に作られた戦闘アニメの出来は素晴らしく良いのだが、一部の上位クラスは演出の時間が長いため戦闘が間延びしてしまう。ただし設定でアニメーションをOFFにする事は可能。
      • 魔物たちもゾンビの動きが遅いのはイメージ通りなのだが、こいつらは雑魚で多数出てくるのでやはり戦闘が間延びしやすい。
  • 攻撃魔法の性能差
    • ゲーム中では「黒魔法」とされる攻撃魔法だが、その半数が今一つ使い勝手に劣る。具体的には大別して消費HP・威力・命中・重さ等があるが、後発の呪文ほど「威力はあるがHP消費が莫大で重い」デメリットがあるため、取り回しのいい魔法でHP消費を抑えつつ敵の再攻撃を封じた戦術の方が安定してしまう。
    • 実用範囲のものは「ファイアー」「サンダー」「エクスカリバー」「エンジェル」の4つで、この中でもファイアーは安かろう悪かろうの性能、サンダーも射程こそあるが命中率の劣悪さから使い勝手に劣る。
      結果、高命中で素早さに負担をかけず、なおかつ消費と威力のバランスの良いエクスカリバーとエンジェルが飛びぬけて優秀になってしまい、他の魔法の出番が無くなってしまう。
      • これが後述する「村人から魔道士」が不遇な原因の一つでもあり、優秀な魔法を覚えるユニットとそうでないユニットで大幅に性能差が開く事になる。
        困ったことに 誰がどの魔法を覚えるのかは一切ヒントがない ので、ろくな魔法を覚えないキャラを魔道士にしてしまったと気がついても、そこまで行くまでが長い(「これが最終習得魔法」という説明もない)ので、大抵はセーブしておりもう取り返しがつかない。
      • 「上級職から村人に戻れる」のは汎用性の高い魔戦士ではなく、賢者の方がよかったのでは?と言わざるを得ない。
  • ユニット/キャラクターの落差
    • 村人からの転職では、職業による使い勝手の落差が激しい。
      • クリフ以外の村人は覚えられる魔法の数があまりに少なく、彼以外にとって魔道士クラスが地雷になってしまっている。*14
      • セリカ編ではナイトが居ない・ソルジャー(アーマー)も一人だけという理由でこれらを選択しがちだが、これらの職業はセリカ編でのマップの地形(悪路が多い)と相性が全くかみ合っていないため、機動性を発揮できず後悔する場合が多い。
      • また、村人は複数種のユニットにクラスチェンジできるが、その際クラスを選べず勝手に指定される。任意のクラスを選べない為、運が悪いと何度もクラスチェンジの選択をやり直させられる場合がある。
    • シナリオでディーン(剣士)とソニア(女魔道士)のどちらかが仲間になるイベントがあり、片方は倒さなければならないのだが、明らかにソニアの方が優遇されている。
      • 敵側では部下共々魔女としてワープによる強襲を行うソニアと、移動ロスが多い砂漠上で近接攻撃しかできない部隊のディーンでは攻略難易度に大きな差がある。
      • 仲間になった際の初期能力値はどちらも優秀だが、ソニアは女魔道士クラスでは唯一初期エクスカリバー*15修得済みである一方、ディーンと他の傭兵系の仲間3名との違いは初期能力値*16と初期装備*17だけである。おまけに総合成長率でもソニアが圧倒しておりますますディーンを使う価値が無い。
      • ストーリー上でもソニアは敵側の主要人物に因縁を持つ*18が、ディーンは特にそう言う因縁とは皆無である。
      • この手の二者択一要素は前作にもあり、のちのシリーズ作品でも手を変え品を変え受け継がれているものであるが、ここまで両者の格差が大きいのは本作くらいのものである。
      • しかし、ディーンは魔戦士ループによる育成をするならば、最終的には一部パラメーターを除けばソニアを圧倒できるし、職業選択をやり直す事により兵種のバリエーションを増やせるという大きなメリットもある、それとソニアはクラスチェンジ条件が厳しくよほど稼がないと終盤まで女魔道士のままという面がネックである。
    • ステータスの一つである魔法防御はキャラクター毎に固定され、更にクラスチェンジでしか変動しない。魔防の初期値が低いキャラとクラスの組み合わせによってはかなり厳しいことになる。
      • 中でもアーマーナイトのバルボは特に厳しく、本来は弱キャラではないのだが魔防の初期値が0・魔女の登場率が高い・悪路でまともに進めないの三重苦により、最前線での壁役を期待されるはずが他キャラに守ってもらわねば死んでしまうという逆転現象になっている*19。このミスマッチは明らかに狙ってやったものと思われる。

総評

あえて「外伝」の名を冠するだけのことはあり、SLGとしての戦闘システムを前作から引継ぎつつも、それ以外の箇所に意欲的なシステムを多く盛り込んだチャレンジ精神溢れる作風が見てとれる。
ユニット育成システム関連は評価点と問題点の両方にまたがっているが、実際に賛否が割れるのもまさにそこであり、育成要素にやり甲斐を見出すかバランス調整放棄と見るかで好みが分かれるだろう。

もともと人を選ぶジャンルだったSLGのハードルを下げたSRPG。
本作はそこから更にもう少しRPG側に寄った作りになったわけだが、仕様上どうしても生じてしまう「作業感」をフォローするか、あるいは育成したキャラクターを活躍させる機会を増やすか、そのあたりにもう一工夫あれば文句のない名作になれたかもしれない。


余談

  • 何度も発売延期された。
    • 今作品では、1991年10月からかなり延期をしている。そのため、オープニングやクレジットの年号は「1991年」のままである。
    • FEシリーズは『暗黒竜と光の剣』から、何かしら大作ソフトやクリスマス商戦の影響で、発売当初ローソン限定販売だった『トラキア776』まで(一般発売作品では『烈火の剣』まで)発売日が一定することはなかった。
  • 敵を倒したときに稀にドロップする強力なレアアイテムとして「月光」「流星」「太陽」の3つの槍が存在する。本作の発売当時には「入手した証拠写真を任天堂に送ると記念品がもらえる」というキャンペーンが存在していた模様。
    • 後のシリーズでは主に強力なスキルとしてこの名前が使用されている。
  • 後に発売された『ファイアーエムブレム 聖魔の光石』は、「復活する敵相手に気のすむまで育成を楽しめる」「敵軍に魔物が数多く登場する」「合流、連動要素こそないが、ダブル主人公制を導入」など、外伝を元にした作品と言える。
    • また、「複数チーム」や「敵増援との駆け引き」等の要素は完全オミットされているものの『ファイアーエムブレム 覚醒』でもフリーマップ形式が採用されている。
  • 後に今作のゲームデザイナーである加賀昭三が手掛けた『ティアリングサーガ ユトナ英雄戦記』でも、魔物の存在、フリーマップ、ダブル主人公制が受け継がれている。
    • セリカ編での「僻地を旅して物語の背景や隠された真相を知る。」という展開は以降の作品にも取り入れられていることが多い。
  • FEシリーズにはどの作品にも「アンナ」という名前の赤毛のポニーテールの女性が登場しているのだが、シリーズを通して本作のみ登場しない。

設定面のあれこれ

  • 機種の限界で、公式イラストと顔グラフィックの髪の色が一致していないキャラクターが非常に多い。特にアルム、パオラ、カチュア、エスト。
    • そのせいもあり、メディアミックスや公式設定資料集のアルムは、「青髪」と「緑髪」の2パターンという表現が多い。
  • 前作キャラクターの1人であるパオラが、死亡時の台詞において何故か妹エストの恋人であるアベルに「帰れなくてごめんね」と謝っている。
    • 前作ではパオラとアベルの繋がりは無かったため、単純に三姉妹のセリフを取り間違えたミスという説が有力だったが、これを元にしてか後の『紋章の謎』以降ではパオラがアベルに片思い*20しているという設定が公式になった。
  • 説明書では太ももむき出しの色っぽい女性のようなのに、ゲーム中ではなぜか男というキャラがいる。実に残念である。
  • この作品から魔法に「黒魔法」と「白魔法」の概念ができる*21が、取説や攻略本で白魔法とされている「リザイア」は、ゲームコマンド時には黒魔法扱いになっている。
    • 以降の作品のリザイアは「女性専用」「光魔法」「闇魔法」と設定がバラバラで、ファンの間で軽い論争が起きることもある。
  • 概要で述べた「とあるキャラ」について。
    + ネタバレ注意
    • 前作で敵として登場しマルス達に倒された「カミュ」だが、本作では記憶をなくして「ジーク」というキャラクターとして登場する。そして彼は、本作の戦乱終了後に記憶を取り戻す…。
      • 本作で語られるのはここまで(当時はまだ『紋章の謎』は出ていない)。後に『紋章の謎』第二部で、正体を隠し、名を変えて再びアカネイア大陸に登場することになる。
      • 余談中の余談だが、この「ジーク」という名前はネット上での加賀氏のHNであるとか。また、加賀氏が製作に関わった『ティアリングサーガ』にも「ジーク」というキャラクターがいる。

リメイク