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デスカムトゥルー

【ですかむとぅるー】

ジャンル アドベンチャー

対応機種 Nintendo Switch
プレイステーション4
Windows(Steam)
発売元 イザナギゲームズ
開発元 Too Kyo Games
Esquadra
発売日 【Switch】2020年6月25日
【Steam】2020年7月17日
【PS4】2020年11月12日
定価 【Switch/Steam/PS4】1,960円
【PS4パッケージ】3,800円
レーティング CERO:B(12歳以上対象)
判定 なし
ポイント 「映画か、ゲームか」を標榜する実写ムービーADV
映画1本分の価格とボリューム
シナリオは同作者の『ダンガンロンパ』とネタ被り気味
俳優陣はそこそこ豪華


概要

イザナギゲームズの初作品であり、『ダンガンロンパ』シリーズの立ち上げ・シナリオで有名になった小高和剛が監督・脚本を務めた。
開発も小高和剛が代表を勤めるトゥーキョーゲームスと『R-Type Dimensions EX』やFC風ADV『偽りの黒真珠』のPS4/Win版移植などを手掛けたエスカドラとの共同開発である。
』『428 ~封鎖された渋谷で~』のように実在の俳優を使っているが、それらのゲームのような静止画での進行ではなく、実際に撮影された映像を使用している。
公式でも「これは映画なのか?ゲームなのか?」とのキャッチコピーを掲げている通り、映画にゲーム要素を加えたADVとして製作されている。
価格帯もDL版で税込み2000円弱と、映画を意識したものとなっている。

あらすじ

あるホテルの一室で目を覚ました男には記憶が全くなかった。状況把握の為、テレビを見るとニュースでは、自分と同じ顔をした 空木 真(カラキ マコト) という男が連続殺人の容疑で指名手配されていると報じていた。

部屋を調べるとバスルームで女が寝ている。その時、いきなり警官が部屋に訪ねて来る。男は戸惑いながらも警官を部屋に入れると、バスルームの女を見た警官は男を連続殺人鬼と断定し、射殺する。

次の瞬間、時間が逆行していた。


特徴

  • システム
    • ゲームは基本的に映像で自動進行していく。途中には選択肢の分岐が存在するので、選択肢でBADエンドを回避し、トゥルーエンドに辿り着くことが目標である。エンディングは全部で2種類である。
    • 選択肢の選択シーンでは主人公の一人称視点に切り替わり、VRのように視点を360度周囲に動かせる。空中に浮いている選択肢のパネルを選んで○ボタンを押し続けることで、その選択肢が選択され、また自動進行の映像に移る。
    • 選択肢によってはバッドエンドとなる。
      • バッドエンドの際にどこまで戻されるかは予め決まっており、「直前の選択肢に戻される」と「最初まで戻される」に大きく分かれるが、後者の場合でも主人公は記憶を引き継いでいるため、フラグも含めて完全に最初に戻されるということは基本的にない。
  • デスメダル
    • 主人公が死亡した際(基本的にゲームオーバー)に得られるメダル。1つのシーンにつき1回までの獲得となる。
    • メダルが蓄積することで、以下のおまけ要素「デスチューブ」が解放されていく。
  • デスチューブ
    • ゲームクリア後、上記の「デスメダル」を集めることで見られるおまけ要素。メダル獲得数に応じて自動的に解放され、解放順を選ぶことはできない。
    • 俳優の佐藤二朗がキャスターを演じる作中のニュース番組の未使用部分(作中で使われるのは冒頭の10秒程度であるため、残りは各演者アドリブで遊んでいる)や、撮影風景などの動画が解放される。

評価点

  • 今となっては希少な実写ゲーム
    • 昨今では数少ない実写ゲームである。『街』『428』などの名作や『四八(仮)』のような問題作ならいざ知らず、他に有名な作品となると『学校であった怖い話』ぐらいまで遡ってしまうほど稀有なジャンルであり、実写というだけでも非常に希少性は高い。
      • 当Wikiに記事がある作品と言えば『相棒DS』、『ストリートファイター リアルバトル オン フィルム』、『ツインゴッデス』、『GUNDAM 0079 The War For Earth』などがあるが、大抵原作付きかイロモノである*1。ゲームの表現力が上がってきた90年代頃は(主に海外で)実写ゲームが多数作られていたり、或いは部分的に実写を取り入れた作品も見受けられるが、それもまだCG技術が乏しかったという事情が大きい。そのため、CG技術が発達した今となっては殆ど見かけなくなってしまっている。
      • 残念ながら本作ではジャンルの再興には至らなかったが、その挑戦自体は評価される向きもある。
  • 俳優や演技には全く問題なく、媒体の違いを越え、ゲーム作品である本作でも十分な演技ができている。
    • 主役に『ダンガンロンパ』関連作でも舞台版の主役やアニメのメインキャラ役で知られる本郷奏多、その他、ヒロイン役の栗山千明や佐藤二朗といった知名度の高い役者が参加している。声優の梶裕貴も俳優として参加。
    • キスシーンやアクションシーン、ホラーシーンなど見せ場もある程度ある。
  • CGなども使われており、演出性にも問題はない。
    • ストーリー上、作中の舞台がほぼホテルの中に限られるというところはあるが、気になる点はそのくらいで特に低予算臭などは感じられない。
    • カメラワーク等も問題なく、役者の演技も含めてテレビドラマ作品と同等程度の演出性や臨場感は十分感じられる。
    • VR視点で選択肢を選ぶシーンもあり、単なる映像作品とのゲームならではの差別化もないわけではない。

賛否両論点

  • 既視感のあるシナリオ
    • 『ダンガンロンパ』シリーズライターの小高和剛氏が手掛けたということでファンが注目したが、蓋を開けてみると『ダンガンロンパ』とネタが被っている部分も多く、既視感が強い。
    • 指摘される部分は、本作・『ダンガンロンパ』の双方の具体的なネタバレになるため詳述は避けるが、「これは『ダンガンロンパ』の設定と似ていないか?」という声もしばしばある。
    • 無論こういう要素を王道的な要素とみなしたり、あくまでも『ダンガンロンパ』とは別ゲーであり、細かな設定等には差異があるのだから問題はない、という意見もある。また、『ダンガンロンパ』をプレイしていないプレイヤーにも問題はない。
  • 映像での演出
    • 本ゲームは上記の通り映像で進行していくため、静止画やイラストではなく「動き」を滑らかに表現できる部分はやはり他のADVよりも優れている。
    • 一方で、静止画やイラストで読むことで声や動きをプレイヤーが妄想できる部分も従来のノベルゲームの楽しみ方の一つであった。その為、ゲームの楽しみの一つが失われてしまったという意見も散見される。
    • 静止画やイラストでは違和感が無かった非現実な部分も違和感を生じるという意見もある。
    • 映像では映画やドラマと同じように俳優の実力差や演技の幅が出てしまう。

問題点

  • ADV「ゲーム」としてはボリュームが少なめ
    • 一通り見ると3~4時間程度。全てのBADエンドを回収しても5時間に満たない。
    • 本作は映画を意識した映像作品、かつ価格帯もほぼ1本の映画分であり、実写の製作コスト等を考えれば妥当の域は出ていないが、やはり1本の「ゲーム」として見ると少なく見えてしまう。
    • さらに本作は所謂「ループもの」であり、(微妙に異なりはするが)ほぼ同じ場面・同じシーンも多いため、体感的に2時間ドラマや映画よりも少ないという印象を受けやすい。
  • 選択肢の意味が薄い
    • シナリオ分岐や別ルートのようなものがなく、選択肢を間違えると即死BADエンドという場合が殆どで、ほぼ一本道の構成である。
    • 選択肢による工夫や遊び心というものもない。
    • 推理パートの選択肢は、間違えても主人公が自動で修正してしまうため進行には関与していない。
      • さらに推理部分も、別ルートでご都合主義に真犯人がベラベラ喋ってくれた真相を、ただ真犯人の前で言い直すというもの。
    • 一本道でもそれが気にならないほどのシナリオの完成度なら問題ないのだが、下記の通り、それに見合ったレベルとは言い難い。
  • やや大雑把で細かい点の気になるシナリオ
    • 本作終盤に明かされる「どんでん返し」は数点あるものの、主要な部分は本作の世界観や少ない登場人物から予想が割とつきやすい。
    • キャラクターのバックボーンがほとんどないため、キャラに感情移入し辛い。
    • 真犯人は一企業が作り上げるシステムをハッキングできるというスキルを持っているが、そのスキルをどうやって身につけたのかは不明のままである。
    • 本作に登場するシステムは警察に大手IT企業が協力した、という設定であるが、話の流れを聞くと一警官が大手IT企業とコネを持っていたかのような描写があり、なかなかに不自然。
      • ドラマや映画のあるあるネタ程度の難点であり致命的にクオリティが低いという訳ではないが、ゲームシナリオという新しい視点で描いている作品ながら、結果的にそういった問題がついて回ってしまっている。
  • クルシマ ネネ
    • 主人公である「空木真」のファンとしてたまたまホテルに居たという女であるが、彼女が何故ホテルにいたのか、という理由は不明。
    • 分岐の一つでは、結果として主人公は彼女に殺されてしまう。しかし登場が非常に唐突であり、 BADエンドを増やしたいが為に生み出されたような出オチのキャラ と評されている。
  • システム
    • スキップがなく早送りしかないので、選択肢を間違えてゲームオーバーになった場合や、2周目以降のプレイがやや億劫。
  • 終盤の選択
    • ネタバレになるので詳細は避けるが、要するにどちらかの選択肢を選ぶことで、現在のセーブデータは消去される(ロードできなくなる)というもの。
    • しかし、長時間やり込んだ訳でもない上記の通り3時間程度に終わるデータに思い入れなどなく、初めからやり直しても大した手間ではないので、 だからどうした と言いたくなる選択肢である。
    • さらにこの選択だけ真犯人が時間制限を設けてくるが、 タイムオーバーしても時間を元通りにしてくれる。 真犯人、優し過ぎるだろ…。
    • 「沈黙」という第三の選択があるわけでもないのに意味のない時間制限である。
  • 映像の質は「映画」としては低予算感あり
    • 登場人物が少なく、シーンの大半がホテルの内部という小さい範囲で完結しているため、どうしても内容が小規模に感じられる。
    • 映像自体も悪くは無いが、CGを使った「ドラマ」の域を出ず、「映画」と聞いて想像されるようなダイナミックな域に達しているとは言い難い。

総評

数少ない実写ゲームとして意欲的な作品。
映画畑を経験したスタッフが作品を率いており、著名な役者も出演しているため、コンセプト通り「映画のようなゲーム」を作ることには成功している。

しかし、シナリオ自体はご都合主義や『ダンガンロンパ』とのネタ被りなども含め、ややゲーム的なSF要素を含んだ2時間ドラマ程度の出来に終始している。
「ゲームとしては」低ボリュームということも合わせ、質も量もイマイチという評価となってしまい、実写ゲームの名作に肩を並べることは適わなかった。


余談

  • ネタバレ防止としてインターネットでの実況配信を制限している。無視した実況プレイヤーが刑事告訴寸前まで至った例もある。
    • ストーリー重視のゲームでネタバレをされると売り上げに響くというのは勿論だが、本作の場合は寧ろ内容が上記の通りなので、それこそドラマや映画の違法アップロードのような形になってしまうというのが大きいと思われる。
  • 本作発売から3ヶ月後、イザナギゲームズの第二弾にして小高和剛が代表を勤めるトゥーキョーゲームスが開発した『ワールズエンドクラブ』がApple Arcadeで配信。その翌年、完全版となるNintendo Switch版が発売された。
    • こちらは実写ではない普通のゲームであり、本作で行き詰った結果の方針転換にも見えるが、実際は本作よりも前から開発が始まっており、寧ろ本作の方が急遽開発が決まった実験作だった模様である。
    • 2022年4月14日にはイザナギゲームズ第三弾で、もちろん実写ではない『冤罪執⾏遊戯ユルキル』が発売された。但し、こちらには小高和剛やトゥーキョーゲームスは関わっていない。
最終更新:2023年07月21日 17:21

*1 NDS時代に特に出回った「○○監修」という触れ込みの体感ゲームや実用ゲームも本人出演などで実写を取り込んでいる例が多いが、これもマイナーの部類である。