本記事はPSP版の解説です。原作に当たる3DO版はこちらを参照してください。
ジャンル | アドベンチャー | ![]() |
対応機種 | プレイステーション・ポータブル | |
発売・開発元 | マーベラスエンターテイメント | |
発売日 | 2009年6月4日 | |
定価 | 4,800円(税抜) | |
レーティング | CERO:C(15歳以上対象) | |
プレイ人数 | 1人 | |
判定 | クソゲー | |
劣化ゲー | ||
ポイント |
3DOで好評を博した実写ミステリーを大胆にリメイク 売りだった実写をシルエットで代用して感情消失 作品を楽しむうえで欠かせないシーンが劣化&大量カット ゲームシステムの大前提が説明書に書かれていない ミニゲームも悪化 同じプロットのADVなのに評価は原作と真逆 |
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西村京太郎シリーズ |
3DOより、知る人ぞ知る国産実写ADVのリメイク作品。
原作はパック・イン・ビデオより発売されていたが、今作は同社を2007年に吸収合併したマーベラスにより発売されている。
元はあまり普及せず終わったハードの作品ゆえ、実際に触れたプレイヤーは限られていたものの、今作は晴れて初のリメイクとなった。
ジャンルはコマンド選択式ADV。
ボウガンで男が殺された事件を皮切りに、東京と和歌山で次々と殺人事件が勃発するので、十津川警部とともに真犯人を突き止めていく。
より詳細なシステム・シナリオ等は原作記事を参照。
原作記事では割愛しているが、本記事では説明に必要となるため、最低限の情報を記載する。
原作は3DOの特徴を活かした実写ムービーが売りだったのだが、代わりに今作は『かまいたちの夜』のようなシルエット(*2)の人物を並べたものとなっている。
+ | ムービー詳細(ネタバレ注意) |
ここまでなら単に「原作より表現が弱くなった」で済む話なのだが、問題はここから。
以下に挙げる問題の多くは、同じくコンセプトでリメイクされた後発の『鞍馬山荘』には無い、固有のものがほとんどである。
十分な開発時間が無かったのか、原作映像のほとんどがまともに再現されておらず、改悪と言って良いほどの変更が加えられている。
その実「シルエットに置き換えたから劣化した」というだけの話ではなく、原作が高評価だったにもかかわらず各種レビューでシナリオが低評価を受けるほど、作品の印象が別物となっている。
PSP版はプロットこそ3DO版と同じだが、実際に味わえるストーリーは全く異なると考えた方が良い。
+ | 環境の都合で動画が見られない人向け・文章解説 |
+ | 詳細:物語の核心に触れるネタバレ注意 |
+ | 物語の核心に関わるネタバレ含む |
今作の説明書には、3DO版説明書に書かれていた重要な情報が書かれていない。攻略情報なしでは本来の意図通りに遊べない状態に陥っている。
PSP版のレビューは3DO版から据え置きのシステムまで酷評する意見も見受けられるが、この前提の違いに要注意。
+ | 物語の核心を含むネタバレ注意 |
原作の良かった部分を大量に削り、結果的に真逆の評価を受けてしまった失敗リメイク。
説明書に重要な仕様が書かれておらず、新規プレイヤーが前情報なしで遊ぶと退屈な作業ゲーになるのは避けられない。
最低限のプロットだけ見せられるシナリオは面白さが損なわれており、各種ムービーシーンは作画崩壊アニメさながらに大人の事情がダダ漏れである。
ましてミニゲームに至っては時代に合わせた改良を試みて失敗する有様。
今作の実態は、ガワだけ整えた未完成品と言ってよい。
シナリオ部分の残り滓が運良く刺されば普通に楽しめる可能性はあるが、実情としては「真エンドを見る前に挫折した」「最後まで遊ぶことなく中古に売った」という感想すら続出しており、とてもおすすめできる代物ではない。
3DO版の代替品として買うにも不向きであり、どうしても今作が気になるなら3DO本体を手に入れてでも原作を遊ぶことが推奨される。
(2025年現在PSP版は高騰しているので、その方が安上がりになる場合も……)
+ | 時刻表トリックのネタバレ注意 |
*1 3DOでは他機種のSELECTに相当するXボタンが存在し、この隠しコマンドに使用されていた。
*2 より正確には、『2』以降に準じたポリゴンモデル。
*3 発売当時の雑誌やゲームメディアの紹介記事、マーベラスの紹介ページ、パッケージ裏を確認しても、これ以上の説明は本当に一切無い。もちろんゲーム中でもこれ以上の特筆性は一切ない。なお公式HPはフラッシュを使用していた都合、現在ではアーカイブでも閲覧不可能のため未確認。
*4 特にこの直前には婚約者から命を助けてもらったばかりであり、彼の優しい内面をある人物に訴えかける場面もあるため、当初と感情が変わっていた可能性も否定できない。
*5 特に店主はゲーム後半で警察に怒りを見せると大きく態度が変わるため、そのギャップを感じる上でも重要なシーンであった。
*6 ホテルから出る通行人が彼女の叫びを見て怯える描写があり、その怒りと辻井の焦りを示す上でそれなりの意味があった。
*7 原作では電話で怒鳴りつけていた。どうやら電話するモーションも用意できなかった模様。ちなみに呼び出した相手は売れっ子カメラマンなので、普通ならまず来てもらえないはず……
*8 原作では取り調べ室の外でやりとりしていた。
*9 それどころか元ネタの『かまいたちの夜』すら、1作目で「お金」のハンドジェスチャーを取るシーンがわざわざ描写されているのだが……
*10 3DO版では「公衆電話をかけられなくて困っていた中年男性が待ちあぐねて中を覗くと人が死んでいた」という、インパクトを重視したものだった。ちなみにPSP版は展開が大きく変更され、「何らかの会合に出席していたモブの男が定時報告のために帰宅しようとしたところ、通りすがりに遠くから電話ボックスで死んでいるのをたまたま見つける」というものになっている。
*11 PSP版はエンディングにおける重要なモノローグが欠けている。