*2つのモーセの歌 [[出エジプト記]]15章の、葦の海でモーセらが民と歌った歌と、[[申命記]]32章の、死の間際のモーセが歌った歌は並列している。 **出エジプト記のモーセの歌 出エジプト記15:1-18にある。 葦の海の奇跡について歌ったもの。 >主に向かってわたしは歌おう。 >主は大いなる威光を現し >馬と乗り手を海に投げ込まれた。 >主はわたしの力、わたしの歌 >主はわたしの救いとなってくださった。 >この方こそわたしの神。 >わたしは彼をたたえる。 >わたしの父の神、わたしは彼をあがめる。 >主こそいくさびと、その名は主。 >主はファラオの戦車と軍勢を海に投げ込み >えり抜きの戦士は葦の海に沈んだ。 >深淵が彼らを覆い >彼らは深い底に石のように沈んだ。 >主よ、あなたの右の手は力によって輝く。 >主よ、あなたの右の手は敵を打ち砕く。 >あなたは大いなる威光をもって敵を滅ぼし >怒りを放って、彼らをわらのように焼き尽くす。 >憤りの風によって、水はせき止められ >流れはあたかも壁のように立ち上がり >大水は海の中で固まった。 >敵は言った。「彼らの後を追い >捕らえて分捕り品を分けよう。 >剣を抜いて、ほしいままに奪い取ろう。」 >あなたが息を吹きかけると >海は彼らを覆い >彼らは恐るべき水の中に鉛のように沈んだ。 >主よ、神々の中に >あなたのような方が誰かあるでしょうか。 >誰か、あなたのように聖において輝き >ほむべき御業によって畏れられ >くすしき御業を行う方があるでしょうか。 >あなたが右の手を伸べられると >大地は彼らを呑み込んだ。 >あなたは慈しみをもって贖われた民を導き >御力をもって聖なる住まいに伴われた。 >諸国の民はこれを聞いて震え >苦しみがペリシテの住民をとらえた。 >そのときエドムの首長はおののき >モアブの力ある者たちはわななきにとらえられ >カナンの住民はすべて気を失った。 >恐怖とおののきが彼らを襲い >御腕の力の前に石のように黙した >主よ、あなたの民が通り過ぎ >あなたの買い取られた民が通り過ぎるまで。 >あなたは彼らを導き >嗣業の山に植えられる。 >主よ、それはあなたの住まいとして >自ら造られた所 >主よ、御手によって建てられた聖所です。 >主は代々限りなく統べ治められる。 **申命記のモーセの歌 申命記32:1-43にある。 ***序幕 >天よ、耳を傾けよ、わたしは語ろう。 >地よ、聞け、わたしの語る言葉を。 >わたしの教えは雨のように降り注ぎ >わたしの言葉は露のように滴る。 >若草の上に降る小雨のように >青草の上に降り注ぐ夕立のように。 >わたしは主の御名を唱える。 >御力をわたしたちの神に帰せよ。 ***神に背くイスラエルの民① >主は岩、その御業は完全で >その道はことごとく正しい。 >真実の神で偽りなく >正しくてまっすぐな方。 >不正を好む曲がった世代はしかし、神を離れ >その傷ゆえに、もはや神の子らではない。 >愚かで知恵のない民よ >これが主に向かって報いることか。 >彼は造り主なる父 >あなたを造り、堅く立てられた方。 >遠い昔の日々を思い起こし >代々の年を顧みよ。 >あなたの父に問えば、告げてくれるだろう。 >長老に尋ねれば、話してくれるだろう。 ***イスラエル人を守る主 ※「ヤコブ」とは、エジプトを脱出して荒野をさまようイスラエル人を意味している。 >いと高き神が国々に嗣業の土地を分け >人の子らを割りふられたとき >神の子らの数に従い >国々の境を設けられた。 >主に割り当てられたのはその民 >ヤコブが主に定められた嗣業。 >主は[[荒れ野]]で彼を見いだし >獣のほえる不毛の地でこれを見つけ >これを囲い、いたわり >御自分のひとみのように守られた。 >鷲が巣を揺り動かし >雛の上を飛びかけり >羽を広げて捕らえ >翼に乗せて運ぶように >ただ主のみ、その民を導き >外国の神は彼と共にいなかった。 >主はこれを丘陵の地に導き上り >野の作物で養い >岩から野蜜を >硬い岩から油を得させられた。 >彼らは、牛の凝乳、羊の乳 >雄羊の脂身 >バシャンの雄牛と雄山羊 >極上の小麦を与えられ >深紅のぶどう酒、泡立つ酒を飲んだ。 ***神に背くイスラエルの民② エシュルンとは「直ぐな者」という意味で、イスラエル人を指す。 >エシュルンはしかし、肥えると足でけった。 >お前は肥え太ると、かたくなになり >造り主なる神を捨て、救いの岩を侮った。 >彼らは他の神々に心を寄せ >主にねたみを起こさせ >いとうべきことを行って、主を怒らせた。 >彼らは神ならぬ悪霊に犠牲をささげ >新しく現れ、先祖も知らなかった >無縁の神々に犠牲をささげた。 >お前は自分を産み出した岩を思わず >産みの苦しみをされた神を忘れた。 >主はこれを見て >御自分の息子、娘への憤りのゆえに >彼らを退けて、 >言われた。 >>わたしは、わたしの顔を隠して >>彼らの行く末を見届けよう。 >>彼らは逆らう世代 >>真実のない子らだ。 >>彼らは神ならぬものをもって >>わたしのねたみを引き起こし >>むなしいものをもって >>わたしの怒りを燃えたたせた。 >>それゆえ、わたしは民ならぬ者をもって >>彼らのねたみを引き起こし >>愚かな国をもって >>彼らの怒りを燃えたたせる。 >>わが怒りの火は燃え上がり >>陰府の底にまで及び >>地とその実りをなめ尽くし >>山々の基を焼き払う。 >>わたしは、彼らに災いを加え >>わたしの矢を彼らに向かって射尽くすであろう。 >>彼らは飢えてやせ衰え >>熱病と激しい病魔のために弱る。 >>わたしは野獣の牙を >>地を這うものの猛毒と共に彼らに送る。 >>外では剣が命を奪い >>家には恐れがあって >>若い男と女、乳飲み子と白髪の者を共に襲う。 ***憐れみを持たれる主 しかしイスラエル人を滅ぼすと、異邦人が自らの神を正しいと信じる根拠にしてしまうため、神は憐れみによりイスラエル人を生き延びさせた。 >>わたしは言ったであろう。 >>「彼らを跡形もなくし >>人々から彼らの記憶を消してしまおう」と。 >>もし、敵が高ぶり、苦しめる者が誤解して >>「我々の手が勝ちを得た >>これを成し遂げたのは主ではない」と言うのを >>わたしが恐れなかったならば。 >>彼らは思慮に欠けた国民 >>彼らには洞察する力がない。 >>もし、彼らに知恵があれば、悟ったであろうに。 >>自分の行く末も分かったであろうに。 >>もし、岩なる神が彼らを売らず >>主が渡されなかったなら >>どうして一人で千人を追い >>二人で万人を破りえたであろうか。 >>しかし、彼らの岩は我々の岩に及ばない。 >>我々の敵もそのことは認めている。 ***異邦人への主の復讐 >>彼らのぶどうの木は、ソドムのぶどうの木で >>ゴモラの畑で育ったもの。 >>その[[ぶどう]]は毒ぶどう >>その房は苦い。 >>そのぶどう酒は、蛇の毒 >>コブラの猛毒。 >>これは、わたしのもとに蓄えてあり >>わたしの倉に封じ込めてあるではないか >主は御自分の民の裁きを行い >僕らを力づけられる。 >主が見られるからである >彼らの力がうせ去り >未成年者も成人した者もいなくなったのを。 >主は言われる。 >>「どこにいるのか、彼らの神々は。 >>どこにあるのか、彼らが身を寄せる岩は。 >>彼らはいけにえの脂肪を食らい >>注がれた酒を飲んだではないか。 >>さあ、その神々に助けてもらえ >>お前たちの避け所となってもらえ。 >>しかし見よ、わたしこそ、わたしこそそれである。 >>わたしのほかに神はない。 >>わたしは殺し、また生かす。 >>わたしは傷つけ、またいやす。 >>わが手を逃れうる者は、一人もない。 >>わたしは手を天に上げて誓う。 >>『わたしの永遠の命にかけて >>きらめく剣を研ぎ、手に裁きを握るとき >>わたしは苦しめる者に報復し >>わたしを憎む者に報いる。 >>わたしの矢を血に酔わせ >>わたしの剣に肉を食らわせる >>。殺された者と捕らえられた者の血を飲ませ >>髪を伸ばした敵の首領の肉を食らわせる。』」 >国々よ、主の民に喜びの声をあげよ。 >主はその僕らの血に報復し >苦しめる者に報復して、その民の土地を贖われる。